No title（〆）

いや、マジで勘弁してくださいって！……あー…一杯だけですよ、マジで！ほんっとに帰りますから！(退勤直後に上司に捕まれば必死の抵抗も虚しく飲みに連行され。道すがら恋人へと『上司に誘拐されました…。帰りてぇ。一杯だけ付き合って帰る』手短にメッセージを送信してはため息を吐きながら上司と歩き)

…うはっ、誘拐とかウケる。怖くて誰も連れてけねーよ。（ソファーに横たえスマホで動画を鑑賞し暇を潰している最中、恋人からの連絡を受信すれば直ぐに内容を確認し吹き出して。『誘拐はウケますね。でも上司さんなら安心だー、奢って貰えそうですし。ガッチリ胡麻をすって来てくださいね。俺はお昼寝しまーす。』とメッセージを送信すると、スマホを腹部に載せて浅い眠りに就き）

あー…クッソ。(程よく回った酔いを誤魔化すべくタクシーの中で目を瞑り頭を振ってから恋人からの返信を確認して。回る視界の中『帰りまーす。』とだ返信しては車内で目を目を瞑り。)

…やっべ、爆睡しちった。（気付けば深い眠りに就いており、目覚めるなり慌ててスマホを確認しては恋人を迎えるべくアウターを肩に引っ掛けマンションの外へと。冷たい風に身を縮ませ佇み、相手の帰りを待ち）

…ん、あざっす(自宅前まで着いたタクシーを手癖のように電子マネーで支払いを済ませれば、重い目蓋は冷たい空気で微かに冴えて。視界の端に映った恋人の姿に人目を憚る事なく歩み寄っては緩む笑みで)悠チャン、ただいまぁ。遅くなってごめんなぁ。

（スマホでSNSを確認している最中、タクシーがマンション前へと訪れれば微笑を刻み端末をボトムのポケットへとしまい。此方へと歩み寄る相手を抱き留め暫し抱擁しては、一旦解放し身体を支える様に腰元に腕を回し室内へと誘導して）おかえりなさーい。いーえ、やっぱお付き合いは大事っすわ。何より俺も動画観てたら爆睡してましたー。えへっ、入りましょ。今日は早めに休みましょうね。

(嗅ぎ慣れた香水の匂いを纏う相手に安心したように小さく息をつきながら抱きしめ、支えられ体重を預けては回る視界も微かに収まり、促される儘に室内へと入り)今日さ、前に話してた昇進の内示が出たんだわ。週明けにはちゃんと辞令出る予定で、なかなか誘い断り切れなくてさぁ…。まぁでも、悠チャンがゆっくり寝てたんならちと安心した。起こしてごめんなぁ。…はー、今日こそ早めに帰って悠チャンとゆっくりしたかったのになぁ。

おおーっ、凄いじゃないですか！おめでとうございまーす。俺の彼氏が昇進ですって。誇らしいやー。そりゃ飲みに行って大正解っすよ。俺も先に知ってたら、何か準備したかったなー。（エレベーターに乗り込みつつ心からの祝福の言葉を掛け拍手をしては、表情を緩ませつつ釦を操作し恋人宅のフロアへと。通路を進み扉前へと赴いては、解錠し広く開き相手の入室を待ち）俺は毎日ダラダラお留守番してるんで、惜しむ要素なんて何にもないっすよ。ささっ、入って入って。

ハハ、言っても営業ブロックのリーダーになるレベルの微々たるモンだけどなぁ。でもまぁ、正直先輩押し除けて昇進っつーのは正直嬉しい。こんな日はさぁ、悠チャンとゆっくり酒飲みたかったのに、願い叶わずだわ。(酔い任せに戯けた口調でくつくつと笑いながら、自分を支える相手の肩に額を預け誘導される儘に歩き。促され玄関を通り立った状態で革靴を脱ごうとするもふらつく足元に思わず舌打ちを弾かせ。諦めて廊下の床に腰掛けては靴を脱ぎながら緩く首を傾げながら相手を見つめ)…ふ、やだなぁ。俺は悠チャンと過ごす時間が一分一秒だって減りゃ惜しいんだよ。いつだってお前と一緒がいいの。

うわぁ、ブロックのリーダーならスゲーじゃねーっすか。ははっ、先輩が部下になっちまうパティーンっすね。浩二さんっぽいイケイケ具合っすわ。俺もお祝いしたい気持ちは十二分にあるんすけど、新トップの誕生は会社的には一大イベントでしょうし。上司飲みが大正解っすね。…おーっと、大丈夫ですか？（相手が扉を潜ったのを認めると己も後に続くも、ふらつく様子を見ては焦った表情をし。下方から視線を注がれれば屈んで目線を揃え、紡がれた言葉にくすくすと肩を揺らして笑い）帰ってくるなり甘いなー。こんな良い日にそう言って貰えるのは嬉しいですよ。じゃあ、ロスっちゃった時間を早く埋めましょ。部屋に入ったら、ぎゅーでもちゅーでも何でも差し上げますね。

（恋人を寝具へと運べば、寝巻きへと着替えさせて布団を肩まで確りと掛けて。自身の寝支度を済ませると、隣に横たえて寝顔を眺めつつ、疲弊しているであろう身体を厭う様に頬を撫で。唇へと口付けを贈っては、柔な口調で語り掛ける様に独りごちて）おやすみなさい、浩二さん。…俺はいつでも傍にいますからね。浩二さんが忙しい時は、申し訳ないって思われるんじゃなくて支えれる存在になりたいです。…今日も朝までしっかり寝てくださいね。愛してますよ。（徐に相手の腕を拝借すると、身を寄せ目蓋を下ろし程なくして規則正しい寝息を立てて）

…いや、マジでなぁ。(通勤中、片手のスマホで『おはよ、悠チャン。昨日はごめんなぁ、いつもあんがと。夜会議あるからちと遅くなるかもだけど、今日こそは飲まずに帰る。早く帰れる日増えるっつって結局これだもんなぁ。ごめん。行ってきます。』と打ち込んだ文面を見つめては昨夜の事を思い出しため息を吐き。シャツの上から首元を撫ぜ、気持ちを切り替えるべく表情を引き締めて)

…ちょっと色気が足りないかなぁ…。（アルバイト退勤後に恋人からの連絡を確認しては、『大丈夫ですよ。気を付けて帰って来てくださいね。』と入力するも、送信を躊躇し暫し思案しては、『ぴえん、寂しいです。早く帰って来てくださーい。』と涙を流す絵文字を加えて送り。続け様に『煙草吸ってから帰りますね。愛してますよ。』と送信しては、目的地へと向け夜道を足早に進み）

（帰宅を果たし真っ直ぐに寝室へと恋人を連れ運べば、着替えさせて布団を掛けて。胸に湧き上がる侘しさを払拭する様深く息を吐けば、自身の寝支度を済ませて隣に横たえ瞼を伏せ）…言霊だ。口に出さなきゃ平気なのに。…まんまとやられちまったなぁ。おやすみなさい。朝までぐっすり寝てくださいね。

あー……マジつっかれた…。(残業を終え社内の喫煙所に立ち寄れば無人なのをいい事にその場で蹲み込んでタバコを吸い、スマホを取り出し恋人へのメッセージ欄を見ればマスクの上からも苛立ちを隠し切れない表情も僅かに綻び『今日こそこれから真っ直ぐ帰りまーす。3度目の正直。』と送信してから自宅へと。仕事を引き摺らないようにとドアノブを掴みながら深く嘆息しては苛立ちごと吐き出し、玄関を潜りながらへらりと笑みを浮かべ靴を脱ぎリビングへ進み)ただいまぁ。

…ウケる、帰って大丈夫なのかしら。（大量の買い物をし帰宅すると、キャットタワーの前で胡座を掻き猫と戯れて。ポケットに仕舞っていたスマホがメッセージの受信をすれば、内容を確認し一笑。徐に立ち上がり目薬を手にして戻っては、恋人が玄関の扉を開けたところで点眼し、目に涙を溜めた様に仕立て上げつつ猫を胸に抱えじろりと相手を見遣り）…寂しかったです。ばかー。

え…──いやいやいや！マジかよ！待って、頼むから！…っあー、マジごめん。期待させた俺が悪かった。ごめんな、下手な事言うもんじゃなかったわ。…な、だから頼むから…泣いたりしないで。(恋人の滲んだ瞳に息を飲んだのも一瞬、ひどく慌てた様子で口元のマスクを下ろしながら落ち着きなく相手に駆け寄り。対面になるように蹲み込んで相手の瞳を至近距離で確認すれば痛ましげに顔を歪め、今度は情け無い声で早口気味に言葉を紡ぎ。ゆっくりと伸ばされた手が何度か躊躇った後に相手の頬にそっと触れて)


めちゃくちゃ遅くなってごめんなぁ、作業してたけど終わったしあんま気にしないで。待たせたし寝てても平気だし。これは蹴ってくれな。

……ぷっ、浩二さん恋人泣かしたらそんな反応するんすね。可愛いー。ま、目薬なんすけどね。（相手の慌てふためく反応を見れば拗ねた表情を維持しようとするも敵わず、声を立て笑いつつ掌の中に隠した目薬を見せネタバラしを。愛しげに肩口に腕を回し抱き付いては、疲弊しているであろう身体を労る様に背を撫で、至極穏やかな声色で）おかえりなさい、浩二さん。今日もお疲れ様でした。寂しかったのはまあまあ本気っすけど、やっぱ俺は駄々捏ねるより帰って来た時にうんと甘える方が性に合ってますわ。



すんません、反応しちゃいますね。ぜーんぜん。やる事休む事優先して貰った方が俺としても助かるんで、気にしないでくださいねん。しんどい時期とかは置きとかでも大丈夫なんで、遠慮なく言ってください。じゃあ、こっちは蹴りでお願いしまーす。

……は？お前…性格悪ぃぞ、コラ。…まぁでも、こんなんで泣かせたら堪んねぇからさぁ。良かったわ。(笑みを浮かべる相手の顔を添えた手指で軽く摘んで、相対するように今度は自分が拗ねた表情をするも反射的に安堵のため息が溢れ出し、苦笑に塗り替えられては相手の肩口に項垂れて。軽い頬擦りをしながら手を頬から頭へと動かしサラリとした髪を撫で梳いて、つられるように声色を穏やかなものに変えると頬に唇を触れさせ)ただいま、悠チャン。…ふ、まぁ俺が悪いのは事実だしなぁ。そうでなくともいくらでも甘えさせてやるけど。

あははっ、俺の性格が素晴らしいのを知ってて付き合ってる癖に。つか野郎なんでちょっとやそっとじゃ泣かねえっすよ。括弧、ベッド以外では。（頬を摘まれれば擽ったそうに笑みを深め、楽しげに軽口の応酬を。猫が膝下から飛び降りたのを横目に肩口に預けられた頭部を撫でては、次ぐ慈しまれる様な一連の所作を心地良さそうに甘受。突如として相手の身体を巻き込み自身の背面に向かって倒れては、誘い掛ける様に薄い笑みを刻み）浩二さんが悪いだなんて思ってませんよ。…でも、良い子で待ってた割にはご褒美が少な過ぎますわ。ちゃんとキスしてください。