No title（〆）

（寝具に微かな振動を感じて目を覚ませば、恋人の腕に包まれていて思わず表情は緩み。胸に抱いた枕を隅にやり更に身体を密着させ背中に腕を回せば、既に夢の中であろう相手を起こさない様囁き口調で）…おかえりなさい。さっきはすんませんでした。まだ察してない方も居るかなってしらばっくれたんすけど、アレは上手くなかったっすわ。正味所構わず寄り添って自慢したいですよ。俺には勿体ないくらいの彼氏だって。大人だからぜってーしないけど。…明日から香水借りますね。…好きですよ、おやすみなさい。（酔いに任せ饒舌に胸中を吐露しては、間も無くして意識は遠退き深い眠りへと）

(雨上がりの空気の冷たさを誤魔化すようにイヤホンから流れる音楽を最大にして帰路に就けば革靴が濡れる億劫さも些かマシになり、ふとニコチンを摂取したくなるも思い直し緩慢な足取りで玄関先へ。鍵を取り出し扉を開ければスルリと隙間から出ようとする愛猫を抱き上げて)ただいまぁ、ココ。(軽く頬擦りをしながら人影のない事を察しながら片手で器用に靴を脱げばスーツの儘にソファーへ身を投じ愛猫を膝へと下ろして撫でやりつつ、然程興味のないテレビを見つめ)…折角のガン定時だし、のんびり待つかぁ。

（冷たい夜風は僅かな酔いを醒ますのに丁度良く、バイト先での嫌な記憶を吹っ切る様に闊歩で往来を進みながら嘆息を溢して。間も無く恋人の自宅と言う地点に差し掛かったところで無断で拝借した彼の香水を振り掛け気持ちを入れ替えては、至極愉しく酔った様子で解錠し玄関へと足を踏み入れ）ただいまでーす。えへへ、3日連続で来ちゃいました。ココちゃんおいでー。

(いつの間にかその目蓋は落ちて部屋の中にはテレビの音と自分の寝息だけが響いていた中、耳馴染みの良い相手の声に肩を揺らせば頭を覚醒させるのに然程時間は要らなくて。腰を上げれば膝から降りた愛猫と一緒に玄関へと向かい、その人影に寝起きのその眦を更に細めて)おかえり、悠チャン。

わ、お迎えありがとです。ココちゃんも来てくれたのー。（恋人と猫のお迎えに嬉しげに表情を緩ませるも、いかにも寝起きと言った眼に小さく吹き出しては、先に猫を一撫でした後に緩慢に歩み寄って抱擁。直ぐに離れ相手の腕に自身のそれを絡めては、早々にリビングへと足を運び）つか寝てました？週末に差し掛かるとやっぱりお疲れモードっすよね。今日は早く寝ておきます？

ん。……あれ。…悠チャン、香水俺の使った？(相手と愛猫の微笑ましいやり取りを満足気に見ていれば近寄ってくる相手を両手広げて胸元に迎え入れ。感じた小さな違和感に暫し思案し、離れてから漸くその正体に思い当たると嬉しさを隠さない儘尋ねて。リビングに足を踏み入れればまだ温もりの残るソファーへと再び収まり緩く手招きしながら、へらりと笑みを浮かべ)久々にこんな時間に寝てたけど、悠チャン帰って来たからへーき。寧ろ可愛い恋人の顔見て目ぇ醒めたわ。

うん、勝手に盗んでました。同じ匂いがするの何かセクシーじゃないです？今度から俺もこれにしようと思って。明日浩二さんの店に売り上げ貢献に行きますー。（悪怯れる様子無く寧ろ得意げに告げては、相手の隣に腰を下ろして脚を組み寛ぎの体勢へと。続く言葉に一笑しては、僅か逡巡するも穏やかな表情のまま横目で視線を注ぎ問いを投げ）ウケる、甘いっすね。…正味、浩二さんは良い彼氏っすよ。ねぇ、そろそろお片付けして来た例の事について駄弁りません？必要なら酒も用意して。

ハハ…うん、似合ってるわ。嗅覚って五感の中で1番記憶に刻み込まれるらしいから…悠チャンがいつでも俺の事思い出してくれんじゃん。(隣に座った相手の首筋に顔を寄せると確かめる様に匂いを嗅いでから姿勢を戻して照れ臭そうな笑みを浮かべつつ。相手からの言及には思わず苦笑しながら、それでも何処か吹っ切れた様な表情をすれば緩く頷き)いい彼氏ぶってるだけだよ、勘違いすんな。…あー。…うん、良いよ。っつてもマジであんまり面白い話じゃねぇけど。…何から聞きたい？

そうそう、正にソレ狙いっすわ。後は一緒に出掛けた時とかも、俺はこの人のモンでこの人は俺のモンだっつー無言の圧力を周りに掛けてやろうと思って。…案外独占欲強いでしょ？（恥じらい気も無く事実を告げ、自嘲する様に鼻を鳴らし）ははっ、本当にぶってるだけなら俺には易々と明かさないでしょう。…ま、面白くなくても良いっすわ。これでも何でも受け容れる懐だけはある自負はあるんすわ。男の子ですから。何からって、じゃあ最初から。全部聴きましょうか。（組んだばかりの脚を崩し緩慢に姿勢を正しては、確りと相手に体を向け話を促す様僅かに口角を上げ）

…そーゆーの照れ臭いんだと思ってたわ。でも上等。俺も最近自分の独占欲の強さ自覚したんでなぁ。(意外な答えに呆けた声色になるも直ぐににやりと笑って返せば緩く相手に体重を預け)…そーだなぁ。ま、強烈なのくれたのは元カノなんだわ。新卒ホヤホヤの時に半年くらい付き合ってた。…けど俺が本気になれなくて遊び歩いてたし、正直他の奴と寝たりもしてて。だから別れたんだけど、その後に『身体の関係だけでも良いから』って言われて。……クズな話だけど、愛情は無かったのに相性だけは良くてなぁ。(思い返すようにポツリポツリと話し始めれば手癖の様にタバコを取り出して火を付けようとするも、愛猫の存在を思い出しジッポを仕舞えば後悔と口寂しさを紛らわすように咥えたままで)

言葉に出すのはキツいっすわ。だから無言で圧力掛けるんすよ。…まあ、浩二さんが独占欲強い分には都合が良い。俺をフラフラさせねー様に縛り付けといて下さいよ。（自身に傾く肩に腕を回し、その手を頬に滑らせ感触を楽しんでは上等とばかりに目を細め）ははっ、良く聞くクズ話だ。揶揄しながら何ですけど、大人の自己責任なら後悔する程の事でもねえっすわ。本当にピュアな人だなぁ。（相手の所作を眺めその胸中を察すれば、煙草を抜き取り顎へと指先を添え親指で整った形の唇をなぞり）他にクズエピソードはあります？話す機会がなくなる前にどうぞ。

あー、まぁ分からなくもない。俺は悠チャンがピアス付けるならきっと直ぐにでも今つけてるやつ片方取ってお前の耳に付けて周りに知らしめてやりてぇし。(擽ったさに小さく肩を揺らしながら笑えば横目で相手の耳を見遣り徐に首を動かして甘噛みし)2年間他人の好意を食い潰したっつーのはさ、自分が人を好きになった後だと結構キッツイもんよ。若い女の2年なんか短くもねぇしなぁ。…んで、こんな話をしながらアイツの心配よりもお前に軽蔑されねぇか心配してる自分にも嫌になる訳。(唇を這う指をその儘に弱々しく自嘲気味に笑みを浮かべながら今隣に居る相手の瞳を見据え)…あとは、結構笑い飛ばせんだけどなぁ。ダチと穴兄弟になったとか、乱行パーティーしたとか。

勿論構わないっすよ。今着けてんのドンキの奴だし。…あーでも、やっぱ外出の口実に今度揃いのモンを買い行きましょって誘っときます。（耳に走る淡い感覚を目を細め享受しては、相手の髪を梳く様に撫で）言うてその提案をしたのが女側なら自己責任っすわ。軽蔑するに及ばない。そらみろ、俺のがよっぽど貞操観念やら倫理観やら狂ってますわ。…ははっ、ジョイスティックがお元気な事で。その辺は詳しくは聞かないでおきますか。良くぞ聞かせてくれましたわ、どうもです。（珍しくも相手の弱々しい姿を見ては嗜虐心煽られ喉仏を上下させるも、辛うじて感情を堪えては優しく諸手を頸へと回して口唇啄み）

…お前ドンキ好きなぁ。ハッんな可愛い誘い断れる訳ねぇなぁ。楽しみにしとくわ。(手の動きの心地よさに目を細めつつ相手から貰ったジッポを思い出せば思わず漏れた言葉は揶揄うような音で彩られ)…本当男前だなぁ。悠チャンのそーゆー考え方居心地良くて俺好きだわ。きっと逆だったら似たような事言うだろうしなぁ。…ま、まだまだ若いんで。んじゃ、俺も悠チャンに聞きたかった事聞いていい？(目蓋を閉じて小さく安堵の域を漏らしつつ呟けば、唇への緩い刺激に気を取り直したようにニヤリと笑みを広げて)

だって俺ドンキ似合いません？…よっし、じゃあ近々デート行きましょうね。どこに行こうかしらー。（揶揄う様な口調に便乗し冗談口調で問うては、乱した髪の毛を整えつつ宙に視線遣り空想を広げ）あーうん、俺男前なオカマなんで。…それに、浩二さんは精算して来てくれた訳ですし。何があっても咎める必要も無い、過去の話っすわ。（口付けを更に深めようと角度を変えようとするも、表情読み取り中断しては不燃焼な感じを残しつつ上腿を元に戻し尊大に脚を組んで）次は俺の番っすか。何でも聞いてください、都合悪けりゃ濁すんで。

フハ、いや…うん、似合うわ。どこでも連れてってやるよ。あったかくなってきたらツーリングもしてぇなぁ。(想像しては思わず吹き出しながら答えれば、妙に気恥ずかしい単語に片眉上げるも満更でもない笑みを浮かべて)…ん、あんがと。まぁ、過去は変えらんねぇけど、未来についてはちゃんと変えてくつもり。(相手の所作にかさ小さく笑いを零せば素知らぬ顔で受け流そうとするも、可愛らしさに我慢できずその顔に手を伸ばして無理矢理こちらを向かせてからそのままの手で唇を摘み)俺悠チャンがいつ俺の事好きになってくれたのかまだ聞いてないんだわ。つーか、なんで？

あのギラギラした感じ好きなんすよ。でもウケますよね、浩二さんが未だに俺の安物のジッポを使ってくれてるの。（くすくすと満更でも無い様子で笑い、続く言葉には手を挙げ喜ぶ仕草をし）やったー、じゃあ色んなトコ行きましょ。ツーリングは俺が運転出来ないんで、サイクリングが精一杯ですけどー。…うんうん、どーもです。正味なんで浩二さんは俺にこんなにしてくれるんだろうって不思議ではありますけど、その辺は追い追い聞きましょうか。…んーっ、んー！（突如として口唇摘まれれば表情歪め暫し戯れるも、するりと逃れ指で摩り）…あー…その質問には記憶にないとしか言えねえっすわ。気付いたら目で追ってたんすよ。駄弁ってて楽しくてもっと居たいとか、触ってみてーとかも意図せず考えてたし、これと言って落ちたポイントがないんすわ。俺から言わせりゃ理想的な惚れ方だと思うんすけど。…で、何でかって？これも解らねえっす。正味俺のタイプは中性的な美人ですし、真逆なんすよ。やっぱ波長が合ったんじゃないです？…後はまあ雑なコメントっすけど、誰でも浩二さんと絡んでりゃ惚れますよ。只々お兄さんがモテ気質、こんなんで良いですかね？

そりゃ、まぁ曲がりなりにも貰ったもんだしなぁ。…最初は火ぃねぇし百均ライター好きじゃねぇからだったけど、今は大事にしてるわ。(ジッポを取り出せばカチャリと音を立てて蓋を開閉させ、あどけない仕草の相手の頭を撫でながら)悠チャン出かけんの好きそうだしなぁ。…あぁ、別にタンデムでいーよ。悠チャン用のヘルメット用意しなきゃなぁ。……は？そりゃ好きだからだろ。他に理由いるか？…ハッかわいーなぁ？(至極当然とでも言うように簡素な言葉でまとめ上げれば、満足気にニヤニヤとした笑みを隠すように口元を抑え)…俺は悠チャンの可愛い反応を期待したのに。…ま、でも悪くねぇわ。俺も似たようなもんだし。悠チャンの口から聞くのは気持ちいーわ。(したり顔でそう言えば緩りと立ち上がり相手の前に対面で立つと背もたれに手をついて。覆い被さるように背中を丸めながら柔くその唇に口付けして)

こんな大事に使ってくれんなら、今度良いジッポ差し上げますわ。社会人なら良い物持ってた方がいいでしょうし。（僅かはにかむ様に表情を綻ばせては、撫で受けつつ呟く様に）お出掛けは夜なら好きっす。昼間はしんどいっすけど、デートなら話は別。わーい、俺どんどん浩二さんに貢がれてく。…はっ、好きで纏めやがったこの人。許す。生憎俺に可愛い反応を期待しても返せませんよって。…ああでも俺としても満足のいく答えを出せた訳じゃねぇし、もうちょい考えときますわ。（迫られる様な感覚に心臓が僅か高鳴るのを自覚しては、静かに睫毛を伏せ口付けを享受。余韻を残した儘、二の腕に手を掛けると脚をばたつかせ、戯れる様に甘える様な声色を出し）浩二さん眠ーいー。でも動くの面倒いっすわー。

…要らねぇ。俺はコレがいーの。つか、時計やら名刺入れならまだしもジッポなんざビジネスに関係ないしいいんだよ。(手を左右に振って断れば破顔して手の内のジッポを緩く握ってから見せつけるように掲げ)あー、でも俺も夜のが好きだわ。昼間はこの季節はまだ良いけど夏とかキッツイ。…ま、悠チャンとならどこでも楽しいだろうけど。…貢いでるつもりねぇんだけどな。必要経費だろ。自覚ねぇだけで結構可愛い反応してるだろ。…おー、楽しみにしてるわ。とびっきりのやつで。(戯れついてくる相手に毒気を抜かれれば愛おし気に目を細めて、求められるが儘相手の腕を掴み自分の頸元に回させると脇の下に手を差し入れて一気に持ち上げ。)…ちゃんと掴まってろよなぁ。(一声掛ければ肩で支えるように軽く背中を逸らせて両手を相手の臀部の下へと回してから姿勢を直せば寝室へと歩みを進め)