No title（〆）

まあ社内では禁止なんすけど、お客さんからはNGじゃないんで来年は高いの貰える様にファン作り頑張りますわ。あははっ、俺帰り遅いんでゆっくり帰って来てくださいよ。浩二さんも繁忙期らしいですし。…あー、手作りで嫌な思い出ってクッソ面白そうな予感がしますね。髪の毛だの爪だの入れられたとか？（端に追い遣られた品々を気にする様に目で追うも言葉を飲み下し、紙袋の中を覗いては表情を輝かせて。有名ブランドの箱を取り出しては早速開封し、包みを開けて口に放り込み目を閉じて味わって）出たゴディバ。昨年のバレンタインは死ぬ程貰いましたわ。いっただっきまーす。…うんまっ。

うわー…客とか1番怖ぇじゃんか。んじゃ来年のバレンタイン前は見える所にでも痕付けといてやろうかねぇ…勘違いさんじゃねぇぞって釘刺しておかねぇと。あー、今週は色々重なって忙しかっただけで来月入るまではちょっと余裕ある筈だからさぁ。寂しい思いさせたくねぇし。…いやー、食った時は全然気付かなかったんだけど、後でSNSにそいつが上げてた製造過程がなぁ…。レーティング入りそうな流血シーンだったもんで。(学生時代の苦々しい思い出に苦笑すれば相手の視線を窺ってそれを遮るように顎に手を伸ばして自分の方へと向けさせ。チョコレートを咀嚼する相手に倣うように手を伸ばそうとするも手を止めては、悪戯っぽい笑みを浮かべてから小さく動く口に口付けて舌を捻じ込み)ゴディバ、ジャンポール・エヴァン、ピエール・マルコリーニ辺りはド定番だよなぁ。俺も一個…と思ったけど、良いのがコッチにあんじゃん。

それが全然怖くないんすよ。皆差し入れ感覚で持って来てくれるんで。あははっ、嫉妬してくれます？でも大丈夫っすよ、バーと違って恋人居る事隠すつもりねーんで。純粋なファンだけ集めて出世目指します。…成る程ねぇ。少し休めそうなら何よりっすわ。俺も月末とか来月あたりは甘やさないぞって店長に脅されてるんで、バイト入りそうなんすよ。忙しい仲間っす。……うわーっ、ぞっとしますね。SNSに載せるのがもうねぇ。そら手作り嫌いになりますわ。因みに俺は痛いの嫌いなんで血混ぜたりはないんで、ご安心くださーい。…ほっ、ゴデバしか知らんすわ。チョコはロッテ、明治、森永。以上。（導かれる儘に顔を相手の方へと向け、次ぐ台詞に続く行為を察すれば慌ててチョコレートを嚥下し口内へと侵入する舌を受け入れて。想定外の口付けに些か混乱しぎこちなく舌を絡めては、相手の服の布地を握り短く息を溢して）……ふ、

マジか。そりゃすげぇな…悠チャンの人懐っこさが為せる技かねぇ。俺は独占欲強いっぽいからなぁ…まぁでも、純粋に悠チャンのセンスと人柄のファンならなんも言わねぇし、応援してるわ。…あー、そうかー。まぁ疲れておねむになんならあんまり夜更かししねぇようにしてやんなきゃなぁ。店舗は疲れるだろうし無理すんなよ。…まぁ、色々やらかしてた代償だわなぁ。他のモンならまだしもチョコの手作りは未だに結構キツい。ハッ、悠チャンがそんな事するとは微塵も思ってねぇよ、だからなんでも食うわ。…あー、デパ地下ブランド。旨いよ、食う？(相手がチョコレートを嚥下する音を捉えては些か不満気に眉を寄せるも構わず口内に残る甘味を味わうかの様に目を瞑り舌を絡ませ。いつになく大人しい態度に口角を吊り上げては態とらしくゆっくりと歯列をなぞってから音を立てて唇を離し、自身の唇を舐め上げながらニヤニヤと厭らしい笑みを浮かべて)ごちそーさん。流石ゴディバ、旨かったわぁ。

あー…多分服飾が特殊なんすかね。結構オキニの店員に差し入れ贈る人居るんすよ。現に女スタッフが女性客からすげーチョコ貰ってましたし。…でも浩二さんが独占欲強いのは意外だなー。最初はそんなんでもでしたよね？…あははー、まあ体育会系のバイトなんでね。無理はしないんで大丈夫っすよ、馬鹿なんで退勤した瞬間に全部忘れますし。…つかウケる、なにやらかしたらそんなん仕込まれるんです？出たデパ地下。しばらくチョコはいらねーくらい誰かさんが稼いで来てくれたんでー、じゃあチョコ買わない代わりにお出掛けでもしましょ。（歯列をなぞる焦ったい舌使いに肌を粟立たせ、些か高揚して来たところで唇を解放されると不完全燃焼とばかりに不服げに細めた目で相手を見据え。再度同じブランドの箱から小ぶりなチョコレートを取り出すと、自身の舌に載せ目を閉じ相手の首裏へと諸手を回して）…もぅ、急なんで吃驚しましたよー。俺は御馳走様してないんで、このチョコ全部溶かして下さい。

はー、なるほど。まぁ特定の顧客が付いてるスタッフとかはそうなのかもなぁ…俺ぁ基本店舗で接客しねぇからあんま分かんねぇけど。…そうかぁ？俺悠チャンが俺のモンになってからはバリバリ独占欲出してるつもりだったけど。それに、言ったろ？俺のモンでもねぇ時にだって嫉妬してイライラはしてたよ。…ハッまぁなんか堪える事があったとしてもココと浩二クンが家で待っててやるからさぁ、存分に癒されりゃいいよ。……あー、学生ん頃は多分メンヘラメーカーだったんだよな、俺。テキトーに甘い事言って相手がその気になったら邪険にする…みてぇな事をしてたからさぁ。向こうも気ぃ引きたかったんだろうなぁ。お、デートのお誘い？つっても来週とかになっちまうけど、いーよ。どこがいい？(相手の視線をしたり顔で躱せば宙を見ながら微かに内に籠った熱を吐き出す様に息を吐くも、相手の舌の上でその体温に次第に溶けていくチョコレートを見てしまえば無駄で。挑発されるが儘相手の後頭部に片手を回しチョコレートを舌先で押し潰すように絡めるとねっとりとしたその口当たりに強く目を閉じては喉を鳴らして)…ハッ、えっろ。…ン、

あははっ、そう言えばそうでした。俺が浩二さんを諦めようとしてフラフラしてた時期だ。たった1ヶ月前くらいの事なのになぁ…なんか懐かしいっすねー。…堪える事かー…そっすね、じゃあ仮にそんな事があれば即辞めて来るんで、その時は完全なヒモとしてココちゃんと纏めてお世話ヨロです。…うーわっ、学生でそれやるってスゲーっすね。やりたくても周りの目が気になってできねーっすよ普通。学校の女達にヒソヒソされそうっすもん。んー、デートっつーか、ふらっと出掛けるくらいで満足っすわ。じゃあ来週以降に浩二さんの会社の最寄駅に迎えに行くんで、なんかして帰りましょー。（思惑通りに事が運べば自ずと口角が上がるも束の間、深く絡まるザラついた感触に息を詰めては、チョコレートを溶かす様に自らも舌先で擦り付けて。シチュエーションも相まって早々に皮膚が火照るのを自覚しては流れに乗じて角度を変え夢中で口付けに興じるも、小さくなったところで唇を離すと手の甲で口元を拭いながら態とらしく喉仏を上下させ飲み下し、薄く笑んで見せ）…ごちそーさまです。旨かったっすわ。これくれた人と、あと手作りくれた人にお礼言っといてください。

(昼前に店舗からの電話で呼び出され一日中クレーム対応に追われ、夜になってから漸く目処が立ち。沸かない気力を補う様に道すがら買ったエナジードリンクを口にしつつ足早に帰宅し玄関の扉を開ければそのまま空き缶をテーブルに置いてはソファーへと雪崩れ込み深く嘆息して)あー……つっかれた…。

（キッチンに立ち食事の仕込みをしている最中、リビングから物音がすれば手を洗い其方へと。珍しくも疲弊した様子の恋人の姿を見れば湧き上がる心配を堪えて笑みを湛え隣に着座し、優しく抱き締め頬へと口付けを贈り明るい声色にて）おかえりなさいでーす。今日はお疲れモードっすね。ヒーロータイムだったんすか？

ん、ただいまぁ…悠チャン。そ、ヒーローに休日はねぇんだよ…でもクッソムカつくからぜってぇ来週有給勝ち取る。(常時と変わらぬ恋人の様子につられて頬を緩めれば抱きつく相手の頭を軽く撫でながら宣言して。次いで鼻腔を擽る匂いに昼食を食べる時間が無かった事を思い出しては急激に空腹に襲われ腹の虫が鳴き声を挙げて)…なんかいい匂いすんなぁ、腹減った。

スゲーなぁ。徳を積んでるんで、その内何か良い事あるんじゃないっすかね。宝くじ当たるとか。うんうん、体を休める日を作った方が良いっすよ。24歳なんで。──…おっ、解りました？俺が今週いっぱい掛けて練習したオムライスの成果を見せる日が遂に来ましたよ。卵焼いて載っけたら終わりなんで、ちょっと待ってて下さいね。（口許に手を添えつつ軽口を叩いては、続く言葉に両手の親指を立てて見せた後にソファーから降りてキッチンへと。緊張した面持ちでフライパンを火に掛けては、バターを敷き溶き卵を注いで菜箸を使いドレープ状に巻き。概ね成功したところで火を消し歓喜の声を揚げ）できたー！

ハッ、悠チャンがこうして隣に居てくれるってだけで奇跡的にいい事なんでなぁ…前借りしたツケだな。一言多いんだよなぁ、まだ現役バリバリですー。…マージ？いやー、最高だわ、早速いい事が舞い込んできた。(背凭れに身体を預けながら肩を揺らし冗談を紡いでいれば、相手の返答につい声が弾み。用意してくれてる間に寛げる格好になろうと相手に続き立ち上がれば寝室へと足を進め、スーツから部屋着に着替えリビングへと戻った所で聞こえてきた声に破顔してキッチンを覗き)お、タイミングピッタリ。早く食いてぇ、楽しみだわ。

俺を飼い始めて忙しくなったなら貧乏神っすわ、ウケる。…まあ最近あまり生意気言ってなかったんで、そろそろ浩二さんも物足りなくなってるんじゃないかと思いましてね。思い遣りで余計な一言をおまけしときました。あははっ、食ったら地獄かもしれねーっすよ。いかんせん俺が作る飯なんで。（円形に盛り付けたチキンライスの上に半熟の卵を載せ、縁にデミグラスソースを掛け完成とすれば、皿を諸手で持ち得意げな顔で振り返り相手に見せて）じゃーん、ドレスドオムライスでーす。ユーチューブで死ぬ程研究しましたー。ぱちぱちー。さっ、実食といきましょー。（スプーンを手にするとリビングへと向かい着座し、にこにこと）

フハ、確かに…厄介なモン拾っちまったなぁ。ハッ、労ってんのか貶してんのかわっかんねぇなぁ？まぁもう20代前半も終わりだしなぁ。はー、ヤダヤダ…ピッチピチの21歳には敵わねぇ。いやー、美食家のココが喜んでたし期待大だわ。しかもオムライスときた、いい恋人持ったもんだなぁ。(カウンターに腕を預けながら相手の所作を見ていれば、手元のオムライスの出来栄えに目を見張り。スマホを取り出して恋人の得意気な笑みと料理を写真に収め、満足そうに片側の口角を上げつつソファーへと腰を下ろし)…おっ、すげぇじゃん。店で出てくるやつみてぇ。…うまそー、いただきます。(律儀に手を合わせてからスプーンを手に取り、一口掬い頬張ればニヤける口元を抑えられず)うめぇわ、これ。…いや、どんな出来でも旨いって言うつもりだったけど、マジで旨い。

えへっ、貧乏神なだけにせめてもキュートに過ごしまーす。…あー、そういや今年浩二さんは四捨五入したら30歳っすね。俺は変わらずのピチピチの20歳ー…って言いたいトコっすけど、実はガキな事が俺の悩みっすわ。悲しいなぁ、浩二さんの年齢に追いつきたいよー。（テーブルに皿とスプーンを置き、自身の膝の上で頬杖を突きつつ心配そうに料理を食す相手の反応を窺っては、思わぬ高評価に破顔して嬉々とし腕に抱き付いて）やったー、頑張った甲斐がありましたわぁ。凝り性なんで、実は昼にしこたまオムライス作って練習したんすよ。俺も浩二さんに食べさせたいですー。（そっと相手の手中からスプーンを奪うと一口分掬い、ふーふーと冷ましてからご機嫌に相手の口許に運び）はい、あーん。

まぁなぁ、つーか……折角だし言っとくかぁ。浩二クンもう25歳でーす。変えるタイミング分かんなくて放置してたけど。ハハッ良いじゃんか、若くって。早く年食っても損しかねぇぞ。(向けられる視線に照れ臭そうな笑みを浮かべつつも空腹に染み渡る様なその味に手は止まらずに次々口へと運び)マジ？そんな可愛い事してたのかよ。別に失敗したって食うのにさぁ…でもあんがと。めちゃくちゃ嬉しいわ。…ん。(差し出されたスプーンを口内へと収めると咀嚼しながら破顔し相手の額と自分の額をくっつけては嚥下して)…はー、サービスまで良いのかよ。マジで最高、明日からも頑張れるわ。

…へっ、いつ25歳になったんすか…？知らぬ内に4歳差…？えっ…、プレゼント渡せてないっすよ。（狼狽しわなわなと震えつつ問いを投げ）だって浩二さんオムライス好きらしいですし。ならやっぱりこれだけは上手く作れる様になりたいじゃないっすか。次はラーメンをスープから仕込みますー。嘘だけど。（自身の手から食す相手を嬉しげに眺め、スプーンを皿の上に載せて。額が重なれば僅か恥じらいげに瞼を伏せくすくすと笑い、悪戯に頬へと口付けた後に最後の一口も食べて貰うべく皿を手に取りスプーンで掬い差し出して）流石、うちの彼氏は褒め上手っすわ。浩二さんが疲れた時は何でもしますよん。はい、最後の一口。あーん。

1月になぁ。タイミングがタイミングだったし自分から言う事でもねぇしでもそれにちゃーんと勝手に最高のプレゼント貰ってるからいーの。(大した事でもないと言いたげに片手を軽く左右に振っては1人頷き)フハ、こーんな愛情込もったオムライス作られちゃあ店で食えなくなっちまうわ。ちゃんと責任とってくれよ？ハハ、ラーメンは匂いやばそうだわ(額を離し頬への口付けを甘受すれば満足気に小さく息を吐いて。次いで差し出されたスプーンの中身を再び口にすると名残惜しさを感じつつ咀嚼してから余韻に浸る様に目を瞑りソファーに凭れ)…はー、マジでまた作って。いつでも食いたいわ、最高。

えっ、先月っすか？タイミングがタイミングって…まさか、21日っすか？（告げられた言葉を反芻し、心当たりのある日付をおずおずと口にしては頭を傾けて）残念ながら店の飯には敵わなねーっすよ。それでも…えへっ、ニヤけちゃいますね。…ははっ、確かに。くっせー匂い出しちゃったらココちゃんに迷惑掛けそうなんで、自粛しときます。（空になった皿を満足げに見下ろしては、テーブルへと載せ寛ぐ相手の膝元に跨り。緩く首を抱きつつ相手の頭上から視線を注げば、頬を指で撫でつつ静かな声色にて）勿論、いつでも作りますよん。じゃあ頑張った俺にご褒美をください。でもって疲れた浩二さんを癒すのに俺を使ってください。イチャイチャしましょ。

ご名答、だから別に言わなくて良いかなぁって思ってたんだよな。誕生日より全然良い日になったし。…んで？悠チャンの誕生日は？(こちらを窺い見る様な相手の様にくつくつと笑いながらわしゃわしゃとその頭を撫でつつ、揶揄し相手真似て首を傾げ)俺の満足度が段違いなんだわ、恋人の飯が1番。(こちらを見下ろす相手にニヤリと笑みを向ければ腹部に手を回し軽く引き寄せつつ、頬への刺激を擽ったそうに片目だけ細めては先日の会話を脳裏で反芻して)やーっぱ心配掛けてた？…それにしても悠チャン結構イチャイチャすんの好きだよな。勿論、喜んでお受けしますけど…今日はどっちが良いんかねぇ。