No title（〆）

ちょっと前まではあーんなに憎まれ口叩いてたクセになぁ…悪い気はしねぇけどさ。…ハッ、末っ子気質だなぁ。あー、面倒見良さそうな人多いもんな、みんな何だかんだでテキパキやってくれそうだわ。…スカートめくりするガキなんざぜってぇ生意気っしょ。確かになぁ…もーちょい足速けりゃガキん時からモテたかなぁ。(大人しく引き下がる相手に僅かに虚を衝かれたものの、緩く口角を上げてその頭を撫でてからベランダへと出て。ジッポでタバコに火を点けては鼻腔を擽る慣れた匂いを深く吸い込んで目を瞑りながら吐き出せば昂りごと煙に変わって行く様で)…お、えらい。浩二クン今余裕無いんでなぁ。すぐ戻るわ。

別に今でも生意気を捨てた訳じゃねーっすよ。只、多少甘く溶かされてるだけで。…ネ。悠晴さんとか浅木さんとか遊佐さんなら絶対やってくれますよ。ははっ、確かに。お察しの通りやんちゃな生意気坊主でしたわな。つか浩二さんはガキの頃はモテなかったんすか？（キッチンへと辿り着くと蛇口を捻り、水で汚れを流し。手元が冷やされれば熱が徐々に冷める様で、短く嘆息を溢すと食洗スポンジに洗剤を付け丁寧に洗い始めて。手際良く濯ぎまでの工程を全て終えると、手をタオルで拭い寝室へと向かいキャラクターの柄が入ったルームウェアへと着替えて寝具へと横たえ。うつらうつらとし始めるも、恋人が来るのを待つべくスマホを弄り堪えつつ）

時々マジで俺より全然甘ったるい事言ってくるから心臓に悪いんだよなぁ…。…ハハ、前の2人は分かるけど遊佐さんがBBQっつーのはあんま想像できねぇや…似合わねぇ。…んー、小学校ん時とかは色恋沙汰に興味なかったしなぁ。中高くらいで一気にモテ始めた気ぃするわ。(数口タバコを吸っては次第に落ち着きを取り戻し、先程まで気にならなかった外気の冷たさに小さく身震いして長さの残るタバコを灰皿で押し消すと室内へと戻り、人気の無いキッチンを一瞥してから寝室へと足を進め。ベッドの膨らみと漏れるスマホの明かりを横目にTシャツとスウェットに着替えてはそっと布団に潜り込み背後から相手の肩口に腕を回し)…お待たせ。洗い物あんがとな。

これでも随分と甘い事言ってないつもりなんすよ。浩二さんが胸焼けしない様に。…あっは、遊佐さんは優しいんできっと来てくれますよー。クールな気性ですけど、あれで人間好きですしね。…ほえー、意外っすね。でもやっぱ中高じゃモテたんすか。あれだ、今度卒アル見せてくださいよ。ヤンキーが写ってそうっすけど。（寝具が揺れ背に人肌の温もりを感じれば、スマホの画面を消し手近な場所へと置き、緩慢に寝返りを打ち相手と対面して。胸元に収まりつつ安心した様に瞼を下ろし独り言の様にぽつりぽつりと言葉を溢しては、間も無くして規則的な寝息を立て始め）いーえ、とんでもないです。…浩二さん、好き過ぎてヤバいです。キスするだけで気持ちがおかしくなるなんて…自分でも笑っちゃいますよ。…さーて、今寝たら夢で良い事出来そう…じゃねーや、良い夢見れそう。遅くまでありがとうございます。おやすみなさい、大好きですよ。浩二さんも蹴って寝ちゃってくださいね。

(着慣れないブラックスーツに身を包み結婚式会場から披露宴会場への合間、友人らと一服している合間に徐にスマホを取り出しては揶揄する様な友人の句を軽く手で払いつつ『悪ぃ、言い忘れてた。今日ダチの結婚式だから帰り遅いわ。日付変わる前には帰る。』と恋人に連絡を入れ)

皆集合ー！写真撮ろうぜ。彼氏に送るんよ。（写真映えする料理店にて恋人からの連絡を確認すれば、僅かに目を細め周囲にいる友人達に声を掛けて写真を撮り。いかにも服飾系の学生と言った奇抜な男女グループで楽し気な写真が撮れたところで送信すると、『俺も結婚したーい！ぴえん！』、『今日は学校の奴のバースデーです！俺も終電までには帰りますね！』と立て続けに送り、スマホをポケットに仕舞って）

…っんだよ、恋人だよ。文句あんのか……あー！うっぜ！(二次会の喧騒の中、恋人からの返信と写真を確認しつつ眦を下げて居ればいつの間にやら友人らに囲まれて。開き直って送られてきたばかりの写真を見せつければ質問攻めから逃げる様に外へ出てから一息つき再びスマホを見つめ。『新手のプロポーズ？（笑）』と打ち掛けた指を止め『楽しそうで何よりだわ。そろそろ帰りまーす』と送ってから、煌びやかに着飾った人々が入り混じる会場の写真を添えて)

(三次会の誘いを断り駅で友人らと別れれば肩で風を切る様に往来を闊歩して、マンションの自室に電気が点いていない事を遠目で確認しながらも玄関先へ進み、鍵を開け。そのままリビングへと進んで電気を点し、ライトグレーの光沢のあるネクタイを緩めては、ひっきりなしに通知を知らせてくるスマホをソファーへ放りながら愛猫の元へ。)たーだいま、ココ。

ココちゃんただいまー。酔っ払いだよーん。（お開きより先に帰宅を申し出れば友人達から驚愕されるも、酒気もほろ酔い程度に留めて帰宅を果たせば真っ先に猫の元へと歩み寄り、抱え上げて頬擦りをして。次いで恋人からの連絡を確認しては猫にも画面を見せる所作をした後に、洗面台へと赴き身形を直して）見て見て、お兄ちゃんだよー。カッコイイねー。…さーて、折角だから美形でお迎えできる様にしとこーっと。

（物音がすれば慌てて洗面台から飛び出し、飛び付く様にして恋人の肩口に抱き付き。スーツを汚さない様に配慮しつつ、嬉々とした声色にて）おっかえりなさーい。早かったですね。楽しかったですかー？

おっ……と。ただいまぁ、悠チャン。先帰ってたんか。(背後からの緩い衝撃を感じれば微かに前のめりになった反動で振り返り。予想外に恋人の出迎えを受ければ自然と声色も柔らかくなり、そのまま対面すると相手を抱き締めては肩に頭を垂れながら横目でその顔を見遣り)…今日はあんま飲んでねぇの？珍し。

へい。今日は浩二さんも飲むかなーって思ったんで、いざとなったら迎えに行けるように酒は控え目にしておきました。（満足するまで抱擁をすると、緩慢に離れ相手の礼服姿を物珍し気に眺めた後に、ぱっと満面の笑みを浮かべて指でハートを作り。次いで幾度も鳴るスマホに目を向けては心配そうに眉を下げ）…つか、帰って来て大丈夫でした？

おー、おー。可愛い事言うじゃん。でも流石にもう結婚式の二次会で飲んだくれたりしねぇよ、安心して。(まじまじと送られる視線に些か気恥ずかしさを感じては口元を隠しながら喉を鳴らし。続く言葉にスマホへと視線を送り言わんとする事を察しては、態とらしくうんざりした様な顔で片手を左右に振って反対の手で相手の手を取りソファーへと誘いつつ)…平気。どーせ写真か恋人と電話させろっつー連絡かのどっちかだし。

えー、ベロベロに酔っ払った浩二さん介抱するのも楽しそうなんすけどねー。でもそっか、明日月曜日っすね。（然りげ無くエスコートする所作に小さく吹き出し誘導されるままにソファーへと着座すると、スマホを手に取り差し出しつつ声を立て笑い）なんだそりゃー。浩二さんが彼女出来たって言ったらビックリされそうっすね。写真なら今度女装でもして濁せるんすけどねー…電話は流石にボイチェン使っても無理そうだ。

んじゃ今度ベロベロに酔っ払うまで晩酌付き合って貰わねぇとなぁ。…俺外でそんなんしたら何すっか分かったもんじゃねぇし。(相手が腰を下ろしたのを見てからネクタイを首元から抜き取りジャケットをソファーの背凭れへと掛けてから隣に座れば冗談めかした口調で。差し出されたスマホを手に取れば通知の山を流し見し、相手の断り無く写真を見せた事をふと思い返せば苦い顔をしつつ)……あー…悪ぃ。写真は送ってくれたの見せちった。今まで恋人居ても遊んでたからか、今日大人しくしてたせいで追及がヤバくてさぁ。

何するか解かんねーってウケますね。暴力沙汰なのかスケベ方面なのか。何にせよ泥酔状態も俺が独占しときたいんで、了解でーす。（放たれた冗句にくすくすと俯き加減で笑うも、続く言葉には相手の表情とは対極的に照れた様に唇を結んだ後に、押し倒しそうな勢いで肩口へと抱き付き）えー、俺男なのに皆さんに紹介してくれたんですかー？！やったー、それってマジで本気で付き合ってるって事で良いですよね？えへへへっ、なら電話もバッチコイだー。

なんだかんだ家じゃあ大人しく飲んでるしなぁ…ま、恋人っぽくてそれはそれで良いけどさ。今度酒買い込んで限界まで飲んでみっか。(“恋人っぽくて”と口にした後でその違和感に1人眉を上げては『実際、恋人なんだけど』と付け足せば歯痒さに笑みを浮かべ。不意に勢いよく抱きつかれれば肩手を突いて相手の体重ごと体を支えては空いた手を緩く背中に回して宥める様に軽くポンポンと叩いて)紹介っつーか…自慢した。でも電話はダーメ。高校時代のダチなんかと話させたらアイツらに何吹き込まれるか分かんねぇし。

ねー、ホントっすよー。最近あんまり煙草も吸ってないし酒も抑え気味だしで、ヘルシー極まりないっすわ。あははっ、いっすねー。じゃあ近々恋人になる前を思い出す感じで、しこたま飲みましょうか。（宥める手にもお構いなく笑みを深め頬擦りして懐いては、ふと閃いた様に見開き上腿の位置を戻しポケットから自身のスマホを取り出し、ちゃっかりとした笑みを浮かべて）もー、俺なんて自慢できる事何1つないっすわー。言うて俺も学校の奴には歳上の彼氏が居る事は隠してないんですけどー。えへへっ、そう言えば浩二さんとの写真まだないっすね。今日キメキメなんで、撮りません？

さみぃけどベランダなら好きに吸って良いからなぁ…っつっても俺も仕事中以外のタバコ減ったなぁ。それこそイェーガーとかコカレロでも買って来るかな、約束してたろ？(愛らしいその所作に思わず口元がニヤけるのも隠さずに軽く頬擦りを返して居れば、ふと軽くなった身体を起こしては相手の取り出したスマホとその言葉に些か面食らいつつも、満更でもない表情で)若くてかっこいいって女友達から好評だったわ…ま、俺のだって言っといたけど。…へぇ？悠チャンがどんな顔してそんな事言ってんのか見てみてぇわ。ハッ、良いよ。イケメンに撮れよなぁ。

まあ正味吸わなくても良くなって来たっつーのもあるんすよ。理由は言わずもがな。いつ死んでも良いやくらいの心持ちだったのが、今じゃ健康でいたくなりましたしね。うわーい、買いましょー。折角なんで煙草蒸しながら飲みたいですねー。ココちゃんには申し訳ないですけど、寝室にいて貰ったら大丈夫ですかね？…あははっ、お姉様方から褒められてたと思うと興奮しますわ。俺はこんな顔でー、イケメンで背が高くて優しくてバリバリ働いてるハイスペックな彼氏が出来たよーって話してますよん。目敏い女子にはハイネックしか着てないのを指摘されましたー。（頬に片手を添え目を糸の様に細めつつ柔らかな口調で惚気の再現を。次いで写真の了承を得れば嬉々とした声を揚げ、写真アプリを開きフィルターを設定しスマホを高く掲げながら相手に密着し、幾度も撮影ボタンを押しながら笑んだりウィンクしたり表情をころころと動かして）わーい、撮りましょー。連続でいきますねー、そーれ。