No title（〆）

(相手の顎を掴む指で軽く頬を撫でつつ最後に一際奥歯に力を込めてから顔を上げて出来栄えを確認する様に空いた手で並ぶ2つの歯形をなぞれば、白い肌と赤い痕のコントラストに思わず舌舐めずりをして。手から相手の顎が微かに動く感触が伝わればそちらに目を向けては、赤さの滲む唇に眉根を寄せて、自分の行為は棚に上げるような発言を)…ンッ……、いーねぇ。……あ、お前下唇噛んだだろ。あー、あー、血ぃ出てんじゃん。(ぺろりと血を舐めとればティッシュを手に取るべく、顎から離した手を相手の肩に軽く置き押し除けようと)

…はぁッ…、（仕上げとばかに強く歯が食い込めば、喉を逸らし切ない声を溢して。痛みから解放されると力が抜けるのを感じ、肩で息をしながら朦朧とした意識で傷口に注がれる視線を享受。熱を孕みじんじんと痛むそこを掌で覆っては満足げに薄く笑むも、相手の言葉で漸く唇が切れている確信を持てば、自身でティッシュに手を伸ばし患部を拭き取り緩慢に立ち上がり。色めいた視線を投げ指をひらつかせた後に寝室へと向かうと、寝具へと倒れて瞼を下ろし）…あら不思議。こっちは全然痛くなかったですわ。さーて、俺のおねだり聞いてくださってありがとうございました。今寝たら良い夢見れそうなんで、先にベッド行っちゃいますね。浩二さんも蹴って寝ちゃってください。…遅くまでありがとうございました。おやすみなさい。

ん、おやすみ。………はー…。(ティッシュへと伸ばしかけた手を大人しく下ろせば、寝室へと向かう恋人をソファーに腰掛けた儘見送り、視界からその姿が消えてから脳裏に焼き付いた艶めかしい表情と熱っぽい声色に大きく息を吐き。昂りを鎮めようとタバコを片手にベランダへと出て、ジッポで火を灯せばしん、とした夜明けの空気の冷たさに体の内の熱は次第に収まり。フィルターギリギリまで喫煙してからベッドに潜り込んで穏やかな寝息を立てる恋人を抱き寄せては目を閉じて)

（複数の袋を両手に掲げ満足げな面持ちで帰宅を果たせば、真っ先に猫に歩み寄り抱き上げて頬擦りし）ただいまーココちゃーん、良い子で待ってたねー。よしよしよし。（満足いくまで愛でたところで丁寧に床へ下ろすと、空調を点けソファーに横たえ、スマホゲームをしつつ恋人の帰宅を待ち）

…此処で吸ったらココちゃんに悪いし…一丁出掛けるか。（無性に煙草を吸いたい衝動に駆られると、スマホを取り出し『少し一服に行ってきまーす。』と絵文字を盛り込んで恋人に送信し、猫を一撫でした後に足早に部屋を後にして）

…ココちゃんただいまー。（落ちそうになる瞼を顔の筋肉で吊り上げつつ猫を撫でた後に寝室へと戻ると、寝支度を済ませて寝具に横たえ。恋人に触れる機会がなかった事に物足りなさを覚え身を丸めると、うつらうつらと微睡み瞼を閉じて）

ただいまぁ、ココ。(玄関の扉を開け靴を脱げば、愛猫の元へと歩み寄りゆっくりと抱き上げてその小さな額に口づけを落とし。次いで寝室へと向かえば恋人の規則正しい寝息が耳に届き、思わず顔を綻ばせながら起こさない様にそっとその頬を手の甲で軽く撫ぜてからスーツを着替え、相手の体温で温まったベッドに身を滑らせて後ろから抱き締める様に腕を回して、目を閉じ)おやすみ、悠チャン。

(馴染みの喫煙所の前でやや迷いつつスマホを取り出し『帰る前にちと一服だけしてくるわ、今日はすぐ帰る』と送信してから扉開けて)

（連絡を確認すれば微笑を溢し。『了解でーす。じゃあ俺もちと風邪気味かもなんで自宅に戻るんで、ゆっくりして来てくださいね。おやすみなさいでーす。』と簡素な連絡を残すと、猫の世話をした後に恋人の家を出て自宅へと向かい）

…マジかよ。(喫煙所に腰を下ろした儘恋人からの連絡を確認すれば眉根を寄せて小さく零し『マジか、大丈夫？水分ちゃんと摂ってゆっくり寝るんだぞ。もし必要なら住所送ってな、看病しに行くから。』片手で手早く送信して。連絡が来た時直ぐに気付ける様にと天板の上にスマホを置いて)

（薬の副作用で意識朦朧と帰宅を果たし、辛うじて寝具へと横たえては眠りに就くも暫しの事。夜も深まれば自ずと覚醒し、寝就こうとするも寝就けず。暇を持て余しスマホを手に取れば恋人からの連絡があり、その口調を想像しては思わず笑みを溢して。『そんな酷くないっすよ。でも空気感染したら申し訳ないから来ないで下さい。代わりに夜のお散歩でもいかがです？』と手早く送り、睡眠を完全に諦め大きく伸びをし）

さぁて…と。(喫煙所から出てから、手にしたスマホで『マジで無理すんなよー、俺のうつったんじゃねぇの？ま、ちゃんとあったかくして来るなら良いけど。迎え要る？』何度か悩みつつメッセージを打っては消して。漸く出来上がったそれを送信すれば、相手の返信を待とうと外の壁に寄り掛かり)

（チェスターコートの上にスヌードを巻き防寒し、黒のマスクを着け夜道を颯爽と歩く最中、連絡を受け取れば僅かに目を細め返信する事なくスマホをポケットへと仕舞い。間も無くして目的地である喫煙所の前へと赴き恋人の姿を見付ければ、指を鳴らし軟派な声を掛けつつ距離を詰め）そこのお兄さん、ちょっと俺とデートしない？

……フハ、いーねぇ。かわい子ちゃんからの誘いなら断れねぇわ。(手慰みにポケットの中のジッポの蓋を開閉しつつ恋人からの連絡を待っていれば、不意に聞こえた指の音と声に思わず表情を緩めてそちらを見遣り。確認する様に相手の頭から爪先まで視線を送ってからその頭を撫でて)ちゃぁんとあったかくしてきたなぁ。えらい、えらい。

いやぁ、今のはイケメン気取ってやったんですけどイマイチでしたかね。防寒はバッチリっすよ。今暖めたら菌殺せそうなんで。…あ、つか浩二さんの風邪が感染ったんじゃなくて、俺の知能が上がっただけなんでそこんとこ。（思わぬコメントに鼻腔で一笑しては、頭部を撫でる手を享受。相手の腕に自身のそれを絡め、足の行く先を向けるは彼の自宅の方角で）帰りましょ。やっぱ寂しいや。

ハハ、カッコいい、カッコいい。…風邪ひいて知能上がったとか言ってんのが最高にバカっぽいよなぁ。(愉快気に喉を鳴らすもいつもと変わらぬ軽口を叩きつつ。伸びてきた腕を慣れた様に受け入れるも、聞こえた言葉には心臓が跳ねるのを感じては反対の手で口元を隠しつつ視線を泳がせながら歩みを進め)……俺ぁ、結構我慢してんだけど。そーゆー可愛い事を急に言われっとさぁ…どーにも落ち着かないっつーか…。

ね、俺の評判は専らカッコイイが標準っすから。可愛いなんて言うの浩二さんくらいっすもん。…え、ディスですか？病人だけど喧嘩します？（空の手を幾度か宙に突き出しジャブするも、続く反応を横目で捉えては揶揄する様に目を細め、態とらしく前のめりで顔を覗き込み甘い声遣いで）え、今のグッと来ました？狙ってねーし俺にはイマイチ解んねーっすけど。…でも、浩二さんが居ないから寝付けなかったですよ。寂しかったです。

だぁーって、他の奴とおんなじ事言ってもつまんねぇじゃん。俺捻くれてんの、そーゆー所。…ハハ、冗談。ちゃんとポケットん中突っ込んでなさい。(口角を上げて軽く制してから、揶揄いの色を帯びた視線から逃げる様に顔を背けては不満気に相手を横目で見遣りつつ、言い訳めいて)…悠チャン基本的に寂しいとかそーゆーの言わないっしょ。俺に気ぃ遣いすぎなんだよなぁ。だから、素直にそーゆー事言われっとオニーサン嬉しい訳ですよ。

まあ捻くれてんのは部分的にじゃないと思いますけど。…んー、捻くれっつーのは語弊があるか。個性が強い。（一度口にした言葉を眉間に皺寄せ反芻し訂正しては、言われる儘に手をポケットへと仕舞い僅かに口唇を立てて）あー、別に気を遣って言ってない訳じゃねーっすよ。だって毎日顔合わせてるし。寂しがる暇がないくらい満たされてるんすわ。…でも、素直な言葉を言われると嬉しいっつーのは同意です。じゃあ折角だから大サービスで他にも素直に何か言おうか…何だろ…あっ、じゃあ風邪っぴきなんで、デレッデレに甘やかしてください。あっは。（悪戯な声色で告げウィンクを１つすれば、無性に気恥ずかしくなり腕を組んでいた手を解き逃げる様に駆け出して）

…そうかぁ？個性云々を悠チャンから言われるとは思って無かったけど。(何とは無しにポツリと呟けば、仕舞われた手を見て満足気に頷き)んー…なら良いけど。でもそれこそ今日とかはさぁ、『風邪だから早く帰ってきて欲しい』って言われたら俺飛んで帰るよ。……おー、おー。言ったな？(駆け出した相手の背中をしたり顔で見遣れば、ニヤリと口角を歪めてから追いかけて手を引くと、その前横抱きで抱え上げて)よ…っと。生憎俺はデレッデレに甘やかすなんざ不慣れなもんで。悠チャンのお眼鏡に叶うかどーか。