ふれんず 2019-12-13 15:47:39 |
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もぉ、ミキったらヒドい~
(部長さんのことをいい加減というのを聞いて呆れたように苦笑いして)
……分かった
じゃあ、お願いするわね、ミキ
部活かぁ
楽しみだなぁ
(彼女と、彼女の言葉を信じて紹介をしてもらうことを改めてお願いして
マンガや小説でしか知らない部活動に思いを馳せると胸がワクワクしてきて
またミキと同じクラブに所属できるかもしれないと思うとドキドキ興奮もして)
あはは、でも実際信頼のおける人だよ、そうでも無ければミキだってつむぎのお願いだからって安請け合いしないしね
(彼女が本気とわかればその想いを蔑ろにはしないだろうというぐらいには部長を信頼しており、そもそも勝算がないのに口先だけで友人の頼みを引き受けたりはしないと言い切って。すっかり部活のことで頭がいっぱいな様子の彼女へとそう生返事を返しつつお菓子をひょいひょいと口に入れて「うんうん、任せといてよ。それよりつむぎはお菓子食べないの?このままだとミキが全部食べちゃうよー?」そんな風に冗談めかしてニヤリと笑って)
そうなんだ?
ミキがそう言うからにはいい部長さんなのね
え?
ミキの性格だと当たって砕けろ的に見切り発進しそうだけれど
(陸上部の部長さんの人柄については疑う余地はないと思えたけれど、ミキの性格を考えるに例え勝算がなくても友だちのお願いならなんとかしようとするのではないか、とくすくす微笑みながら指摘して)
あ~
もうこんなに無くなってる?!
もぉ、ミキったら一人でたべすぎー
(彼女の言葉にお菓子を入れたお盆を見ると半分くらいなくなっており
目を丸くしながら呆れた様子で相手を非難すると、こちらもお菓子を一つ手に取ってぱくっと口にすると幸せそうな笑顔を浮かべて)
あはは…ミキのことをよくご存知で…でも、本当こういう時はちゃんと考えるよ、ほら、人と約束する時は自分でなんとかできる約束だけにしておいた方が角が立たないでしょ?
(確かに今回の件で彼女の為に少しだけ思考が暴走したのは否めないが、それでもどうにか自分でどうにか出来るキャパは超えてないはずと自負しており、普段からいかに他人との付き合いが打算的なものであるか、その片鱗を言葉の端に覗かせて。言われてようやくお菓子が減っていることに気づいたらしい彼女に向けて全く悪びれもせず「ふふーん、これはほら、据え膳食わぬは男の恥…はちょっと違うか、いや、ミキはそもそも女の子だし。…まあ、それはともかく、そんな感じだからつむぎもどんどん食べないと、ね?」食べ過ぎと言われても全く遠慮するそぶりも見せず、昨日見た限り食の細い彼女にもしっかり食べてもらおうとわざと急かすように言ったのけ)
…たしかに
本人にそのつもりがなくても結局約束を守れなかったらウソをついたって思われるかもしれないものね
(ミキの言葉を聞くと、顎に指を添えて少し考え
相手の言いたいことは理解できると話して)
でも…
あたしは、もしマネージャーになれなくてもミキがいい加減なことを言ったなんて思わないし、適当な気持ちで引き受けてくれたのでないことを知ってるわよ
(マジメな顔で相手をじっと見ながら、自分の気持ちをはっきりと言葉にして)
ぷっ!
なにワケ分かんないこと言ってるのよっ
(ミキの突拍子もない例え話を聞くとおなかを抱えてケラケラと大笑いして)
……あー、もうおなか痛い
あんまり笑わせないでよね~
(涙目を擦りながらようやく笑いが落ち着くとお菓子をひとつ手に取って少しかじり、友だちとおしゃべりをしながらたべるお菓子はこんなにもおいしいものかと幸せそうな笑顔を見せて)
…もう、つむぎは本当にどうしてこんなに可愛くていい子なんだあー
(友達の言うことなら信じる、他人と意図的に壁を作って生きてきた自分には眩しすぎるぐらい純粋な考え方を持つ彼女の頭を胸元に抱え込むように再び抱きしめてしまい、そう声をあげながら頬ずりをして。決してウケ狙いで言った訳ではないにも関わらず大爆笑の彼女を見て「ちょっ、つむぎ笑い過ぎじゃない?いいけどさー…」ムッとして指摘したが、なんだかんだ彼女が笑ってくれたならそれでいいかと思えてこちらもしょうがないなといった風な調子で笑って)
ちょ…ミキ…
(相手に抱きしめられ頬ずりまでされてしまうと、かぁ~っと赤くなって
今度は相手が離れてしまう前に、遠慮がちではあるけれど背中にそっと手を添えて)
あたしが可愛いか、いい子かは分からないけれど
でも、そう思わせてくれたのはミキ自身なのよ?
笑いすぎって言うけれどあなたの言うことがおもしろいからじゃない
こんなに笑ったのなんて生まれて初めてよ
(相手の褒めすぎの言葉には、ミキの言うことだから信頼できるのだということを話し
笑いすぎと言われれば、その原因はミキ自身にあることを指摘して
それにしてもこの子は、関わった時間はまだわずかだというのにどれだけの初めての経験を自分に与えてくれるのかと感謝で胸をいっぱいにして)
んー?つむぎは甘えん坊さんですなー、よしよし
(腕の中で大人しくしていた彼女の腕がそっと背中へと回されたことに気がつくと瞳を細め、にししと笑い背中をトントンとまるで子供をあやすように優しく叩き。正直に言えば自分はそんな風に信頼を寄せてもらえるような出来た人間ではないと思っていたが、そんなネガティブな感情は表にださず「そうなの?特にミキはそんな信頼を勝ち取るようなことってあんまりしてないような気がするけど…いやー、ミキって人たらしの才能でもあるのかなー?」軽いノリでそんな風に冗談めかすと頭を掻くような仕草をして「むむ、どことなくバカにされてるような…。そんな悪い子には…こうだ!」面白いから笑う、彼女の性格上決してこちらをバカにしているようなニュアンスはないだろうが表面上だけ面白くなさそうな顔をして、それからすぐに悪戯っ子のような笑顔になれば相手の脇の下に手を差し込んでくすぐって)
もぉ、からかわないでよぉ
せっかく勇気を振り絞ったのに~
(相手の言葉を聞くと耳まで赤くなりながらも離れようとはせずに、背中を優しく叩かれる感触に安心感を覚えて軽く寄り添っていき
続く相手の言葉と仕草にはくすっと微笑みを浮かべながら目を伏せて呟いて)
ミキにそんな才能があるかどうかも分からないけれど、少なくともあたしはたらされちゃってるわね、すっかり…
って、なに…?
ひっ……ちょ、み、ミキっ?!
こ、こらっ…ふふ…やめっ…くっくっ…くすぐ…うふふ…くすぐったいって!
(相手の手がふいに脇の下に挿し入れられると一瞬きょとんとして
くすぐり始めると身悶えをして、控えめに笑いをこらえながら止めるように訴えて)
あはは、ごめんごめん。つむぎはやっぱり純粋だよね、相手がミキだから良かったけど悪い人に騙されないようにちゃんと気をつけないとダメだからね?
(人の悪意など疑いもしないのだろう、短い付き合いですっかり自分に心を許し切っている様子の彼女へと冗談めかしてそう忠告をして。くすぐりに身悶えしている彼女の顔を見やり「どう?ギブアップ?」なんて少しSっ気のある笑顔で問いかけつつ、脇の下から脇腹へと手を動かしたりしてみて)
うふふ…だ、だれが…くっくっ…ギブアップなんて…くすくす…
するもんですかっ
(涙目で身を捩りながら、ギブアップするかという相手の問いに負けん気を出して拒否すると、こちらも捨て身の攻撃に出て相手の脇腹に両手をやりくすぐり始めて)
えっ、あっ…ちょっと…んっ…あははは!やめっ…ぎ、ギブ、ギブ…
(予想だにしなかった反撃に耐えきれずにゲラゲラ笑ってしまい、くすぐりには相当弱いようで必死で身を捩って逃れようとするが抜け出すことが出来ず、ヒーヒー言いながらあっさりとギブアップを宣言して)
勝利っ!
(相手を先にギブアップに追い込むと、細い腕を折り曲げて精いっぱいのドヤ顔で勝利のポーズを決めてみせて)
あたしはそんなに純粋とかじゃないわ
イラッとすることもあるし、だれかのことを妬んだり疑ったりもする
体が弱いだけの普通の女子よ
(くすぐりに負けてぐったりする彼女に手を差し伸べながら、自分のことを純粋だという相手にそんなことはないと否定して微笑みを浮かべて)
むむっ…悔しい。つまりつむぎは油断ならない子なんだね、ひつじの皮を被った狼だってよーく覚えておくよ
(得意げな相手を横目に悔しそうに軽くふてくされて、彼女に対する認識を改めるべきかと冗談っぽく笑いながら話しをそう飛躍させて)
ふっふっふ~
油断しているとミキのこと、たべちゃうわよ~
(相手の悔しそうな様子に得意げな笑顔を浮かべ
両手を広げると相手を抱きしめてしまうような仕草でパクッとたべてしまうことを表現して)
つむぎ母
「ただいま~
あら、つむぎのお客さん?」
(帰宅すると娘の部屋のドアをノックして、少しびっくりしたように二人を見比べて)
あ、おかえりなさい、お母さん
紹介するね、あたしの友だちの秋月ミキさんだよ
(母の驚いた顔を見るといかにも嬉しそうに、そして自慢げにミキのことを紹介して)
んー、つむぎになら食べられてもいいかも、優しくしてね…なーんて、ミキも大人しくされるがままになるような女ではないのですよ、つむぎこそ気を抜いて足元掬われるなんてことにはならないようにね
(いきいきとした表情でこちらを煽ってくる相手に、しなを作って彼女の発言を容認するような発言をしてみたりしたが、すぐに悪戯っぽい笑顔になって油断大敵とばかりに両手広げた手元に自ら飛び込む形でこちらから背中に腕を回し抱きついてみては、耳元で囁いてみて。そんな風にしてじゃれついたりしてみたところで彼女の母親らしき人物がやってくれば慌てて彼女から身体を離して「あっ、どうも、お邪魔してまーす!」彼女の紹介に続けて元気いっぱいに挨拶をしては人当たりの良い笑顔を彼女の母親へと向けて)
…って、きゃ!
(相手を抱きしめるふりをしたところにカウンターみたいな形でタックルを受けるとふたりでもつれるようにクッションに倒れこんで)
もぉ
ミキったら、なにを言ってるんだか
(顔を見合わせるとふたりでプーッと笑いあって)
つむぎ母
「つむぎがお友だちを家に連れてくるなんて初めてのことだから私も嬉しいわ
ゆっくりしていってね
それにしても…
つむぎったら、今朝熱が出て学校に行けないって分かったらね…」
お、お母さん!
もーいーでしょ、出てって!
(母がニンマリ悪い笑顔で今朝のことをミキに話そうとしていることに感づくと、かぁっと顔を赤くして慌てて母の背中を押して部屋を追い出して)
おやおやー?つむぎのお母さんはさっき何を言いかけたのかなー?熱で学校行けないとわかったらミキに会えないのが寂しくてわがままでも言っちゃった?…なーんてね
(意味深な言葉を残して半ば彼女に追い出される形で部屋を出て行った母親を見送り、その時の彼女の慌てように少しだけ悪戯心がもたげて、思い上がりかもしれないが自分はそれなりに彼女に大事に思われてると自負しており、もしかしたらという思いを抱きつつそう問いかけ、最後に悪戯っぽくそう笑って見せて)
んな…?!
な…そ、そんなわけ…
(まるで朝のできごとを見ていたかのようにミキにだいたいの事実を言い当てられたことにびっくりして
動揺を隠せずに、また相手の悪戯っぽい笑顔を見るとそれを認めてしまうとなんとなく負けたことになる気がして、慌てて否定しようとして…言葉に詰まり)
…そ、そうよっ
だって…昨日友だちになったばかりで約束を破ったら嫌われちゃうって思ったんだもん!
…わ、悪い?!
(相手にウソをつきとおすことができず、恥ずかしく思いながらも相手の言葉を認め
最後に照れ隠しの捨て台詞を放って)
ふふふ、素直でよろしい。さっきも言ったと思うけどミキはそこまで短気じゃないし、むしろつむぎが体調悪いのに無理して学校に来てそれで悪化したりしたらミキは私のせいだって思っちゃうしそっちの方が嫌かなー
(否定をしかけて結局素直に自分の言う通りであることを認めた相手にヘラリと笑って、改めて相手の心配しているようなことはまずあり得ないことと逆に自分との約束のせいで無理をさせてしまったら何より自分で自分が許せないだろうと言い切って)
…そっか
自分が良かれと思ってすることがかえって人に迷惑をかけたり傷つけたりすることもあるのね
(ミキの言葉を聞いてまるで目から鱗が落ちたように目を大きく開いて
顎に軽く手をあてて俯きかげんに、考えごとをしながらぶつぶつ呟いて)
勉強になったわ
ありがとう、ミキ
あと…
約束のことが気になったのはそうだけど
ミキに会いたかったの
だから
…びっくりしたけど、来てくれて嬉しかった
(顔を上げると彼女のおかげで人の気持ちについて勉強になったことにお礼を言って
それから、ちょっと照れくさそうに口ごもりながら、家に来てくれて嬉しかったことを伝えて)
ミキもそうだよ、つむぎのことが気になって早く会いたくて、そう思ったらいてもたってもいられなくて課題を届ける役目を引き受けてた。だからこうして家にまで招き入れてもらえて嬉しいよ、すごく
(ただ、顔がみたかった、思えば自分の行動もそんな単純な気持ちが原動力だったかもしれないなと彼女の言葉を聞いてそう思って。会えて良かったこと、その上一緒に過ごせて嬉しいことを素直にそのまま彼女へと伝えれば彼女の両手を握ると明るく微笑んで)
…そっか
同じ気持ちで嬉しいわ
(両手を握られると手のひらから伝わる彼女の優しさと温かさに気持ちがほっこりとほころんで
こちらからも相手の両手を握り直すようにきゅっと握って)
ミキともっと話がしたいわ
これからのことや、これまでのこと…
ミキのことをもっと知りたい
(熱っぽい視線を相手に向け
彼女のことをもっと知りたいという気持ちを伝えて)
そんなに情熱的に言われちゃしょうがない、つむぎにはミキの秘密を探る権利を授けよう…そのかわりつむぎの秘密と引き換えだよ、なんてね
(熱量のこもった相手の物言いに少しだけ気負されていたが、すぐに口角を上げて不敵に笑えば冗談とも本気ともつかない口調でそう言っては相手の鼻先を人差し指で軽くツンと突いて)
あたしの秘密なんて、たいしたことはなにもないけれど
そんなことでよければなんでも聞いて?
ミキの秘密、知りたいわ
まずは…そうね…
(前のめりにミキにどんな質問をぶつけようかと頭を巡らせていると再びドアがノックされて)
つむぎ母
「つむぎ~
お友だちが来てくれて嬉しいのは分かるけれど、少しは休まないと
また明日の朝、熱を出して泣かないといけなくなるわよ~」
(ドアのすき間から、いかにもおかしそうに娘の表情をじっと見ながら声をかけて)
わ、分かってるって言ってるでしょ、もぉー!
(慌ててドアをぱたんと閉めるとふぅ~っと息をついて)
…ゴメンなさい、ミキ
ホントはもっともっと話したいけれど明日は絶対に学校に行きたいから…
(戻ってミキに向き合うとがっくりと肩を落として申し訳なさそうに話して)
あは、優しくてていいお母さんじゃん。ミキもちょっと長居し過ぎたしそろそろ帰るよ
(親子仲の良さを感じられる二人のやり取りを少し眩しげに見やり、彼女からすれば少し過保護なくらいかもしれないが、それでも娘の体調を何より心配して学校へ行きたいという気持ちも尊重してくれている気持ちは裏切ってはいけないと彼女の肩をポンと叩き。正直なところ名残惜しい気持ちを少なからず胸の内に抱きながらも申し訳なさを感じる必要はないと言わんばかりにヘラッと笑い、鞄を手に立ち上がって「じゃ、また明日学校でねー」そう屈託もなく笑い手をひらひら振って部屋を出て玄関へ向かい)
あたしのことを気遣ってくれているのはもちろん分かっているんだけれど
ちょっとデリカシーが足りないのよね
(ミキに母のことを褒められると嬉しいのを隠すようにぷんぷんと不満を口にして
帰ると言いながら部屋を出る彼女のあとについて玄関までやってきて)
あたしのほうこそ、ミキも忙しいのに引き止めてゴメンね?
それに…
さっきも言ったけれど来てくれてスゴく嬉しかった…
よかったらまたいつでも遊びにきてね
(玄関先で靴をはこうとする彼女の背中に、顔を紅くして照れながらお願いするように声をかけて)
当たり前じゃん!…あ、そうだ、ねえ、明日少しだけ早く家出て来れるかな?部長に早めにつむぎを紹介しときたいし
(帰り際にかけられた言葉に対し、髪を翻しくるりと振り返り満面の笑顔で頷いて、それから思い出したように彼女たっての希望である陸上部のマネージャーの件について話しを進める為に部活の時間に合わせて家を出て来れるかを問いかけ「もし大丈夫なら朝の6時につむぎの家の近くの分かれ道のところで待ってるよ。あ、無理なら放課後でもいいよ」時間とあわせて、それぞれの道が自分の家と彼女の家、学校へ続くT字路を待ち合わせ場所として指定をするが、急な話しであり彼女の体調面も考慮するともしかしたら難しいかもしれないと思い放課後という別の選択肢も同時に掲示して)
(また遊びに来てほしいという言葉に対してあたりまえと言われると嬉しそうににっこり笑顔を浮かべ、振り向いた彼女の笑顔を見るとなぜだかドキッとして少し顔を赤くして)
6時…早いのね?
でも大丈夫
あたし、早起きは苦手じゃないの
(時間を聞くとずいぶん早くから練習していることに驚いて
でもふだんから規則正しい生活をしているので早起きは苦痛ではなく、それよりも少しでも早く部長と引き合わせようとしてくれるミキの気持ちに応えなければと気合いが入って)
おっ、やる気だね!じゃあ明日の朝待ってるからね
(無理を言ったかもしれないと不安もあったが、本人はすっかりやる気のようなので、それならばと改めて待ち合わせの約束をし今度こそ帰路について。そして次の日の朝、自らの指定した待ち合わせ場所へと15分前ぐらいに着くように少しだけ早足で向かい、自分がこんな風に自らの意思で友達と呼べる相手と待ち合わせをして一緒に学校へ登校する日が来るなんて思わなかったなと、そんな風に考えながらしばらくして目的地へと着いて)
ええ、分かったわ
今日はありがとう
また明日ね、バイバイ…
(待ち合わせの時間を決めると玄関の外まで彼女を見送って小さく手を振り
その後ろ姿が曲がり角で見えなくなるまでじっと視線を注いで)
(その日は母に、朝が早いのでお弁当は必要ないことを告げるとニンマリ意味深な笑みを浮かべる相手を無視するように背を向けて早めに床について
でもミキのことや初めてのクラブ活動のことを考えると悶々としてなかなか寝つけずに
──翌朝
4時半にセットしたアラームでなんとか目を覚ますとまだ暗い中、眠い目をこすりながら身だしなみを整えて
朝食はとらずに出かけるつもりだったけれど、食卓の上にお弁当といっしょにヨーグルトだけでもたべていくようにとの母からの伝言を見るとしかたなくそれに従い
心の中でお弁当のお礼を言うと、まだ肌寒い空気の中家を出てミキとの待ち合わせの場所に向かい
早歩きするとすぐに息が切れてしまうので、逸る気持ちをおさえながらゆっくりと歩いて
待ち合わせの場所が見えてきたとき、ちょうど反対側の道から栗色のポニーテールを揺らして律動的な歩みでやってくるミキの姿が見えて)
ミキ、おはよーっ
(彼女の姿を見ると心が嬉しい気持ちで満たされて
手を振りながら、周囲に民家は少ないけれど早朝のため声量を控えめにして呼びかけて)
おー、ちゃんと寝坊せずに来たね!やる気がある証だね感心感心。もし来なかったらつむぎの家の前まで行って大声で呼び出しちゃってたところだよ
(少し離れた位置から呼びかける彼女へと手を振り返し、そばまでやってきた相手の頭にポンと手を乗せると実際にそんなことをしたら近所迷惑極まりないようなことを半ば本気でしでかそうとでもしていたかのようにニシシと悪戯っぽい笑みを浮かべ肩を竦めおどけてみせて。そんなゆるい笑みを崩さず手にした鞄を肩に担ぎ「さてと…それじゃ、行きますかー」先立って一歩踏み出し、横目で彼女へとそう促して)
もぉ、子ども扱いして~
あたし、朝は大丈夫って言ったでしょ?
(顔を合わすなり少し上の目線から頭に手を乗せて寝坊を心配する言葉をかけられると、こちらを子ども扱いする相手の言動に頬を膨らませてぷんぷん言い返して
でも彼女の屈託のない笑顔を見るとすぐに機嫌も直り)
…うん
(先に歩き出す彼女の横に並び、その笑顔を眩しそうに眺めながらこちらも歩き出して)
あはは、軽い冗談だからそんな怒らないでよー。それで、どう今日の調子は?緊張してたりする?
(ぷんすか怒る相手をあまり悪びれた風ではない笑顔で手をヒラヒラ振り宥めて。隣を歩く彼女の今の体調とこれから部長に初顔合わせということで緊張をしていないかを問いかけ)
しかたないわね
今回は許してあげる
(ぜんぜん怒ってないけどつーんと横を向いて恩着せがましく返事をして)
今朝はおかげさまで体調は大丈夫よ
でも、やっぱり緊張はしてる
(続けられた言葉には少しこわばった表情を俯かせ、ドキドキし始めている胸を軽くおさえながら決して平常心ではないと答えて)
えー、本当に怒ってないならこっち向いてよ。ねえってば、つむぎー?
(なんとなく本気で怒っていた訳ではないことは察しがつくものの、それでもそっぽを向く相手に対し茶化すように呼びかけながら身を寄せて肩と肩を軽くぶつけ合わせてはその顔を覗き込もうと上体を屈めて「そっか、まあ無理もないかな。でも大丈夫、ミキがついてるから」これまで部活などに所属した経験のない彼女にとって今日という日はそれだけ特別な想いで臨む日なのだと納得すれば、少しでも自分がその緊張を緩和できるようにと、そう微笑んで胸をドンと叩き)
…分かったってば
(冗談めかした口調で許しを乞う相手の言葉にしかたないと言わんばかりに振り向こうとして下から覗きこむ彼女と目が合って)
ぷっ…
ミキったら!
(予期しなかった相手の動きに思わず吹きだして笑ってしまい
相手の頼もしげな言葉には、笑わされたこともあり少し緊張も緩和されて嬉しそうに頷いて)
ええ
ミキのこと頼りにしているわよ
あっ、やっと笑った。やっぱつむぎには笑顔が一番似合うね
(こちらと目が合い、吹き出した相手にこちらもつられて笑顔を咲かせて彼女の笑顔はやっぱり最高だと率直に思ったまま偽りなくそう口にして。本人の口からハッキリと頼りにしていると告げられると俄然気合が入って、なんとしても彼女の入部を勝ち取らなければと、そんな風に考えているうちに学校に着いてそのままの足でグラウンドへ向かい「えーと、部長は…あっ、いたいた!つむぎに会ってくれるように話してくるからちょっとここで待ってて」まばらに集まり始めている部員たちの中から部長を見つけ出せばそう言うと返事を待たずに駆け出して)
もぉ、なにソレ
キザなセリフ…
(笑顔が似合うなど、小説に出てくる王子さまのような歯が浮きそうなセリフを浴びせられると照れてかぁっと顔を紅くして俯いてしまって
やがて学校に到着するとグラウンドに数人の部員が集まってきているのが目に入り
上級生も混じった見知らぬ生徒たちを目の当たりにするとやはり緊張して胸がドキドキするのを感じて)
えっ、み、ミキ?!
(胸に手をあてて心の準備をしようとすると、こちらのペースなどお構いなしにミキが駆けだしてしまい
止める間もなく部長らしき人物のもとにたどり着くとなにやらこちらを向いて話していて
少し息苦しさを感じながらも少しでも気持ちを落ち着けようとゆっくり深く呼吸をして)
おーい、つむぎー!部長がつむぎと話したいってー
(少しして手をぶんぶん振って彼女の名前を呼びながら真っ直ぐに駆けてくるその後ろを長身でショートボブの落ち着いた雰囲気の女性がゆっくり歩いて追従してきて。そして、その女性はミキの隣に立ち、彼女を腕組みをしながら正面から見やり、やや掠れたようなハスキーな声で口を開き)
『貴女がこの部のマネージャーを希望している白雪つむぎね?私は部長の水城舞菜佳よ…なるほど、面構えは悪くないわね。ミキの推薦みたいだし…いいわ、採用』
(話がしたいということでやってきた舞菜佳だったが彼女のことを少しだけ観察し、言いたいことを一方的にいうだけ言って何のやり取りもしないままマネージャーとして彼女を採用すると告げて)
(ミキが部長らしき人物を連れてこちらにやってくるのが見えるといよいよ覚悟を決めて
第一印象が大切だと思い元気よく挨拶しようとして)
…あ、あ、あのっ
(するとこちらが挨拶をする前に相手のほうから自己紹介をされて
なんだかよく分からない理由で採用になってしまって)
…へ?
あ、あの…えっと
入部を認めていただける、ということですか?
(展開についていけずにおろおろと助けを求めるようにミキを見て、続いて水城と名乗った部長をおどおどとした態度で見ながら確認をして)
うんうん、そういうことだよ、よかったねつむぎ!だから言ったでしょ、いい加減な人だからきっと大丈夫だよって
(あまりにもとんとん拍子に、さまざまな過程を吹き飛ばして進む話に困惑している様子が見て取れる相手の両肩へと手を置き、部長本人がいる前にも関わらず軽い調子でそんなことを平然と言ってのけて)
『思ってても本人の前で言うものではないと思うのだけど…まあそれはいいわ、とにかく貴女も今日から陸上部の一員よ、マネージャーとしてどんな事をしてもらうかはこれから考えるけれど入部については決定事項だから早速今日の放課後からこのグラウンドに来てちょうだい』
(ミキの発言を軽く咎めながらもすぐにあっさりと流して、適当という評価もある意味納得のアバウトな発言で部活に今日から参加するように告げて)
ちょ、ちょっとミキ?!
(彼女の口からいつもの軽い口調で部長の悪口とも取れる言葉が出るとぎょっとして
慌てて相手の口を手のひらでふさぐと怒られると思い、ドキドキしながら部長を見て
すると別段怒った様子もなく
さっそく今日から部活に参加するように言われて)
あ…は、はい
ありがとうございます
あ、あの
よろしくお願いします!
(少なくとも表面上は怒った様子を見せない部長に戸惑いを感じながらも、はっと我に返ると慌てて頭を下げてお礼と挨拶をして)
『はいはい、よろしく…後、ミキは準備運動が済んだら朝練終了時間までグラウンド周回ね』
(そういう堅苦しいのはいらないとばかりに舞菜佳は手をヒラヒラ振って適当な感じで彼女の挨拶をあしらって、そのままミキへ向き直ると先程の罰とばかりに無慈悲な宣告を下すと「げっ、嘘でしょ!?うぅ…あんまりだー…じゃあね、つむぎ…ミキが生きて帰れたらまた後で…」ミキは先程までの元気はどこへやら死にそうな顔になって、彼女へとそう言い残してフラフラと準備運動をしている他の生徒たちへと合流していき)
あははー
が、がんばってね?
(グランドの周回がどれほど過酷なものなのか、50メートルを全力で走ったことすらない自分には想像がつかないけれどミキの様子からさぞやたいへんなことなんだろうと察し、気の毒に思いつつも身から出た錆とも言えるだけに苦笑いを浮かべつつ軽く手を振って彼女の健闘を祈って)
あ、あの部長
邪魔にならないようにするので練習、見させてもらっていいですか?
(ミキのあとを追って立ち去ろうとする部長の背中に向かって練習を見ていてもよいかたずねて)
『ええ、好きにするといいわ…それならついでにこのストップウォッチでミキの一周ごとのタイムを記録しておいてちょうだい。もしあの子が手を抜いて明らかにペースを落とすようなことがあったら私に報告…出来るかしら?』
(相手の問いかけに静かに頷くと、見学ついでにとストップウォッチを手渡し部員としての初仕事を任せることにして)
…あ、えっと
タイムを計ることはできますけど…ミキ…秋月さんのことを言いつけるようなことはできません
(言葉とともに、思っていたよりもずっしりと手ごたえのあるストップウォッチを手渡されると少し口ごもりながらも友だちのことを、いくらサボることが悪いこととはいえ言いつけるようなことはできないと言い切って)
それに…
秋月さんは与えられた課題をサボるようなことはしないと思います
(まったく迷いのない表情でミキがいいかげんなことをする子ではないときっぱりと話し
言ってから、いきなり先輩に生意気な口を聞いて叱責されるのではないかと不安を感じてドキドキして)
『そう…じゃあ貴女が責任持ってミキを叱咤してあげて、あの子持久走だと序盤に走りすぎるきらいがあるから後半はどうしてもバテてしまうの、勿論完璧なペース配分が出来る様になればそれが一番だけど、それ以前の問題としてそこからもう一踏ん張り本当の限界まで自分を追い込めてないのが今のミキの課題なのよ』
(彼女にお願いしたことは決してミキに対する意地悪などではなく部長として成長途上の部員のためを思ってのものであることを説明し、それを知った上で友達としてミキの尻を叩いてくれるというのなら彼女にこの場は任せると言って)
(部長の言葉を理解すると恥ずかしさで、かぁっと耳まで真っ赤になり深々と頭を下げて)
ごめんなさいっ
なにも知らないのに偉そうなことを言って
これがミキのためになるなら、あたし心を鬼にしてタイムを計ります!
(顔を上げると両手をぐっと握りしめて、気合いの入った表情でタイムを計測することを誓って)
あれ?つむぎ、どうしたの?部活への参加は午後からって言われてたからもう教室行ったのかと思った
(舞菜佳は相手の返事を聞くと無言で満足げに頷いて他の部員たちの元へと向かい、一方その頃罰として耐久マラソンを強いられることになったミキはストップウォッチ片手にグラウンド脇に立つ相手の存在に気づき近くを通りかかるとペースを落として足だけは止めずに何をしているのかを問い)
わあああ!?待たせてごめんね、飽きたとか調子が悪いとかそういうんじゃなくて上がってたのを見落としてただけなんだ…だから改めて上げてくれてすっごく助かったよー、本当にごめん、今度は気をつけるから愛想尽かさないでくれたら嬉しいなぁ…
部長にお願いしてミキのタイムを計る大役を任せてもらったの
(鼻息荒く、誇らしげにストップウォッチを見せつけると簡単に経緯を説明して)
ほら、ミキ
のんびりしている場合じゃないわよ
前の周に比べてタイムが落ちてきているわ
気合い入れなさい!
(音量は小さいけれどよく通る高い声でペースを上げるよう相手を叱咤激励して)
愛想を尽かすなんてあるわけないよ!
そもそもわたしのレスのペースが遅いから見落としたんだと思うし…
こっちもこんなにソッコーで上がってるって思わなかったから見落としてたし
とにかくなんともなくてよかった
気にしないで、こちらこそこれからもよろしくね?
おぉー、記念すべき初仕事だね。うぅー…正直しんどいけどつむぎには情けないところは見せられないね!ミキのカッコイイ走りをよーく見ててよ
(仕事を任せてもらえたという彼女に自分のことのように嬉しそうにして、ペースが遅れていると的確に指摘されると例の如く序盤から飛ばし過ぎて体力的に厳しくなってきていることもあって渋い顔をしたが彼女を前に弱音を吐いたり情けないところは見せたくないと意気込み力を振り絞ってペースをどうにか戻して)
(言われなくてもストップウォッチを握ってグラウンドに立ったときからずっとミキの一挙手一投足を目を皿にして追っている
周回のたびに少しずつ走るフォームが違うのも分かってきたしペースにムラがあるのも分かってきた)
ミキー
さっきより3秒遅れているわ!
それに歩幅も狭くなってるわよ!
もう少しで終わりだから、がんばって!
(彼女がトラックを周回して戻ってくるたびにタイムと気づいたことを自分としては大声で伝え、励ましの言葉をかけて)
いきなり厳しい…!部長と同じぐらいかそれ以上だって、これ…
(既に体力の限界を迎えており、自分でも最初よりもペースが明らかに落ちてるのは承知していたが、ここからペースを再び上げるのは至難の業で、かといって彼女に対してかっこいい走りを見ててなどと偉そうなことを言った手前みっともない姿は見せられず力を振り絞り。友人としての贔屓や忖度などは無しに自らの仕事をこなす姿に、部長との今日までの練習が思い出され、よろよろとよろめきどうにかゴールをして「はぁ…もう、無理ー…」とそれだけ吐いてその場に座り込んで呼吸を整えるので精一杯で)
(ミキがゴールをしてグラウンドに座りこんでしまうと、部で用意しているドリンクを断りもせずに紙コップに注いで、急いで彼女のもとに駆け寄って
ほんの10mたらず駆けただけで息を切らせながらポケットからハンカチを取り出して彼女の額を滴る汗を拭って紙コップを差し出して)
……
お疲れさま、ミキ
はい、ドリンク
がんばったわね
最後の1周、あたしが計ったなかで、いちばん速かったわよ!
(呼吸を整えながら、我がことのように嬉しそうにストップウォッチのタイムを見せながら興奮ぎみに話しかけて)
ありがとー…ふぅ、生き返るー。それにしても、新記録かぁ、つむぎが励ましてくれたおかげかも
(彼女が持ってきてくれたドリンクを受け取り一気に飲み干して深く息を吐き、興奮気味に見せつけられたストップウォッチに表示されたタイムは何気にこれまでの自分のベストタイムを更新しており、驚きや喜びよりも自分がここまで頑張れたのはきっと相手が自分の走りを見ていてくれたからだろうなと、そんな風に考えてニッコリ微笑んで)
んーん
ミキががんばったからよ
それに
一生懸命に走るミキ
すごくカッコよかったわ…
(おかげ、などと言われるとそれを否定して
相手のがんばりを讃えつつもそんなふうに人から感謝をされるのは生まれて初めての経験で
味わったことのない高揚感を感じつつ、汗を光らせてひたむきに走る彼女の姿をカッコよかったと話しながらもそれだけでは伝えきれない感情を心の奥に感じていて
でもそれがどのような感情なのかうまく表現できないもどかしさを抱えながら、白い頬に薄い紅いチークを乗せたように微かに頬を紅潮させて彼女のことを見つめて)
そう?いやーそれほどでもあるかなー、なんてったってミキはこの陸上部の次期エースですから?
(カッコいいというストレートな褒め言葉に照れ臭そうに頭の後ろを掻きながら笑うが、自分の実力には自信があるようで得意げに髪をかきあげるような仕草をして戯けてみせて「何はともあれ、お疲れ様つむぎ!」初めての仕事を無事にやり遂げた相手をねぎらう言葉を投げかけては拳を握って相手の方へ差し出して)
もぉ、ミキったら
すぐに調子にのるんだから
(相手の言葉を聞くとしかたない、といった様子で肩をすくめて苦笑いをして)
でも次期エースってホントなの?
もしそうならミキって見かけによらずスゴいのね?
(すまし顔でしれっと、冗談っぽい口調で相手の言葉の真偽をたずねて)
あ、ありがと?
(ねぎらいの言葉にお礼を言いつつ、向けられた拳にどういう意味があるのかが理解できずに首を傾げて)
あはは、いいじゃん友達の前でぐらいはカッコつけたい年頃なのだよー
(相手の物言いたげな反応など素知らぬ顔、調子に乗った様子でカッコつけたい年頃などとなんともいい加減な返しをしてニッコリと満面の笑顔を浮かべて「あ、ちなみに次期エースってのは本当だよ、入部の時のテストで部長が一年生の時に出した記録をミキが更新したんだ。ちなみに部長は国体にも出ちゃうぐらい凄い人で、ミキは憧れてるんだ。まあ、ミキがそこまで成長出来るかは今後の努力次第なんだけどね」調子のいいことを言っておちゃらけていた姿から一転、真剣な表情で部長への敬意と自分が名実共に本物のエースになるには現状に満足するわけにはいかないと語り「あっ、もしかしてつむぎわかってない?今のはこうやって拳と拳を突き合わせて仲間と喜びを分かち合うんだよ、こんな風に」そう言って片手で相手の手首を掴み、もう片方の手で握り拳を作り相手の手にコツンと軽く押し当てて)
ミキは黙っていたほうがカッコいいわね
(相手の緩い返しを一言でバッサリと切り捨てて)
…ふぅん
ミキも部長さんもホントにスゴいんだね?
(さっきのおちゃらけた態度とは一変、部長への憧れと目標を本気の表情で語る彼女の様子に胸がキュンとして
その部分に関しては彼女の言葉に偽りが無いことを確信しながら、彼女の本気に自分の存在が少しでも助けになれるのかどうか、漠然とした不安を感じて)
こ、こう?
(彼女に手を取られ、言われるままにきゅっと弱々しく拳を握り
ミキの日に焼けた血色のよい小麦色の拳と、青白く血管が透けて見えそうな自分の小さな拳が軽く、コツンと触れ合って
その瞬間、彼女のがんばりに比べれば自分のしたことなどささやかなことだと思いつつもお互いに喜びを共有できた気がして
少しくすぐったいような感覚とともに笑顔を交わして)
うわ、つむぎって意外に辛辣…!そういうのはミキには向いてないの、やっぱミキは賑やかし担当で元気よくグラウンド走り回ってるぐらいが性に合ってるって
(珍しく少し毒のある返しをしてきた相手に軽く怯みながらも、自分の向き不向きというのは自分が一番わかっていて、黙ってお淑やかになんて柄ではないからと半ば開き直って相手に向かって満面の笑顔向けてピースをして。こちらにされるがままに拳同士をくっつける動作をした相手にコクリと頷き親指を立てて「そうそう、これでミキとつむぎは喜びを分かち合った相棒、同じ部の仲間だよ!」元々相手の入部を喜んでいた自分だが、こうして一緒に一つの目標に向けて活動したことで改めて部の一員として相手を認めると肩を抱いて)
くす
思ったことを言ったまでよ
でも、そうかもしれないわね
明るく元気なミキがきっといちばん輝いて見えるわ
(相手の言葉に、してやったりと少しだけ得意気に笑みを浮かべて
それから、屈託のない笑顔でこちらにピースサインを見せる彼女を眩しそうに見つめ、その自己分析に同意して
心の中で、そんなあなたにあたしは惹かれているの、と呟いて)
ありがとう、ミキ
あたしは跳んだり跳ねたりはできないけれど、あたしにできることで少しでもミキや部員の人たちの助けになれるようがんばるわ
(ミキの相棒、仲間、という言葉になぜか気持ちの高まりを覚えて、さっきの不安を忘れたわけではないけれど精いっぱいかんばろうと気持ちを新たにして
少し照れながら相手より控えめに彼女の肩に手を添えて)
…あはは、輝いてるなんてやめてよー、照れるじゃん
(相手に悪意はないし本心でそう思って言ってくれているであろうことはわかっていて、それでもお調子者を演じている自分自身の偽りの姿を見て輝いてるだなんて眩しいほどに純粋な瞳を向けてくる相手に言わせてしまったことに不意に胸が痛くなってしまい、これまでに多くの人と関わってきて感じたことのなかった感情の正体、それはズバリ罪悪感なのだと察すると表向きはいつも通りの軽い口調でおどけながらも、言葉の最後の方はこちらを真っ直ぐに見つめる相手から無意識に目線を逸らしてしまっていて。物理的にも縮まった距離感に同じ部の一員としてスタートを切った相手との絆の深まりを感じていると舞菜佳からの招集がかかり「あっ、部長が呼んでる。行こ、つむぎ」肩を組んでいた腕を解いて、今度は手を繋ごうと掌を開いて真っ直ぐ相手に差し出して)
あら、人を褒めそやすというのは案外難しいものね?
でもこれ以上ミキを調子に乗らせるわけにはいかないからそろそろやめておくわ
(相手の反応をとても可愛らしいと思いながら、これ以上ミキを調子に乗らせるのもどうかと思いイタズラっぽい口調で相手の希望を叶えてあげることを伝えて
ただ、無意識なのかこちらがこれ以上踏み込むのを拒むように目を逸らした相手の様子が静かな水面にほんの小さな小石を落としたように心の中に微かなざわめきを与えて…)
えっ、う、うんっ
(一瞬の自失後、相手の呼びかけに我に返ると目の前に差し出された彼女の手をまじまじと眺め、キュッと握り返すと一緒に部長の下へと歩み寄って)
ふう、動いた動いたー。…それにしても部員のみんなもつむぎのこと受け入れてくれて良かったね、みんなつむぎのことお人形さんみたいで可愛いって言ってて、ミキは誇らしかったよー
(朝練が終わり教室へ一緒に戻る途中、気持ちよく汗を流せた達成感に満足げにしつつ、あの後の部長から部員たちへの新入部員の紹介という大イベントのことを思い出しながら興奮気味に語って、部員たちの反応だけが心配だったもののマネージャーとしての入部を告げた時の相手の評価は概ね好評で、その中でも最も多かった声を挙げれば友人としてはやはり鼻が高かったと自分のことのように得意げに胸を張って。それだけ語って満足したのか鞄からカロリーメ○トを取り出し封を切って一本口に咥え、食べる?と尋ねるように袋の中から覗くそれを相手の方へ向けて差し出し)
お疲れさま
って、やめてよ、もぉー
みんないい人たちだからいいように言ってくれているだけだから
それにミキが喜ぶことでもないでしょ?
(心地よさげな相手を笑顔で労いつつ、朝からこれだけ動いてちゃんと授業を受けられるのか心配になって
そしてさっきの部員への紹介のときのことを蒸し返されると恥ずかしさがよみがえってきて、白い頬にほんのりと朱が差して
確かにミキと仲の良さそうな部員の子たちが歓迎ムードを作ってくれたおかげで特に反対もなくすんなりと受け入れてもらえて
その上で洗礼とばかりに可愛い可愛いともてはやされて危なく勘違いしてしまうところだった
でも、気のせいか自意識過剰かもしれないけれどミキや自分に敵意とまでは言わないけれど不服、不満を持っているような視線を感じたりもしていて…)
…え?
なにコレ?お菓子?
(ミキの、食べる?という声で我に返って
目の前に差し出された棒状のものを物珍しげに眺めながらなんなのかたずねて)
そんなことないって、時代がつむぎの可愛さに追いついたんだよー、間違いない。それにさ、友達が褒められたら自分のことじゃなくても嬉しいものじゃない?
(相手の容姿は十分に可愛らしい、それについては同性の目から見ても確かなことであり、恐らくはこれまで病室での生活がメインだったであろう相手が学校へ通うようになってそれが表立って評価されたまでのことだと自信を持って言い切ってどんな形であれ友人が褒められれば嬉しいと感じるのは当然ではないかと問いかけ、ニコッと屈託のない笑みを向けて。差し出されたそれが何なのか分かっていない様子の相手に、まさかそんな反応が返ってくるとは思わず意外そうな顔をしたがすぐに気を取り直し「まあ、お菓子といえばそうかな。運動とかしてちょっと小腹が空いたなーって時にこれが丁度いいんだよね」と、それがなんであるかを簡潔に説明し、再び「いる?」とゆるりと小首傾げて)
なにソレ、もぉー…
でも…
ミキにそう言ってもらえるのはなんだか嬉しいし、たしかに
ミキがだれかに褒められたり称賛されたりしたらきっとあたしも嬉しいと思う
(時代が…などという相手の大げさな物言いに可笑しみを感じ、彼女にも可愛いと言われると他の人に言われるのとまた違った気恥ずかしさを感じ照れ笑いを浮かべ
そのあとのミキの言葉にも納得して頷いて)
…ビスケット、のようなものかしら?
じゃあ、少し…
(好奇心に輝く目でソレを観察して
再びたべるかとたずねられるとお試しでたべてみたいと思い、こくんと頷くと遠慮がちに手を差し出して)
おー、つむぎもそう思ってくれてるんだ?つまりミキとつむぎは相思相愛ってことだね
(相手も同じようにこちらが褒められれば嬉しく思ってくれるとわかり、お互いに同じように思い合っている関係を相思相愛だなんて揶揄しうれしさのあまりはしゃいで、調子に乗って両手を広げて相手を腕の中に抱きとめて受け入れようとしていて。こちらの説明に興味を持ったらしい相手の手に、小食気味な印象が強い彼女のちょっとだけという言葉を汲んでそれを半分に割って片方を差し出して「はい、どーぞ召し上がれー」にっこり笑顔で勧めて)
そ…?!
(相思相愛、などと言われれば思わずその言葉の響きに恥ずかしくなり、頬を上気させて俯いて。
追い討ちをかけるようにハグされると、ボッと頭から湯気を吹き出してガクンと魂が抜けてしまいそうになり)
…はっ!
あ、ありがとう…
(差し出していた手に、ミキが半分に割ったお菓子(のようなモノ)を手渡されると、ハッと正気に戻って。
彼女がもしゃもしゃとソレを口にしているのを見ると、おそるおそるといった様子で端っこを少しかじって)
…おいしい!
あれれ、なんか顔真っ赤だけど大丈夫?もしかしてちょっと無茶しちゃった?部活への参加も急だったし…
(自分としては同性相手にする分には全く躊躇いもなく意識すらせずにやれてしまうことをしたまでのことで、それで彼女がまさか照れているとは思いもせず顔の赤みを熱でもあるのだろうかと考えて、顔出しだけの筈が結局活動することになってしまったのも影響があるのではないかと心配をして問いかけるが、こちらの心配をよそに受け取ったそれを口へと運ぶのを見て具合が悪く見えるのは気のせいだろうかと考えつつ「美味しい?それなら良かったー、お茶いる?美味しいけど口の中パサパサになるでしょ?」ペットボトルの紅茶を差し出しては軽く首を傾げ)
へ、平気!
なんでもないわ。
(自分がヘンに相手の行動を意識してしまっていることを悟られまいと体調の心配をする言葉を即座に否定して。
それでも頬の熱はすぐには引かず。
もらったお菓子を口の中でもしゃもしゃとはんでいるとたしかに相手の言う通り、口の中の渇きを感じて)
ありがとう、いただくわ。
(相手がペットボトルを差し出してくれると話題を逸らすのにも渡りに船とばかりにありがたく受け取って。
そのまま直接口を着けて一口いただき、お礼を口にしつつペットボトルを返して)
……あ
ミキ、ごめんなさい。
飲み口を拭ってなかったわ。
(ハンカチを出しながら一旦返したペットボトルを取り返そうと手を差し出して)
そう?…確かにそんなに熱くはないから大丈夫だと思うけど…無理はしないでね
(平気だという彼女の言葉に徐に額へと手を伸ばし触れると、確かに手のひらを通して伝わる体温はそれほど熱くなく、顔の赤みには引っかかるものはあるものの食い下がることはせずひとまずはその言葉を信じて大人しく引き下がり。一口だけ控え目に口にして帰ってきたペットボトルを受け取ると飲み口を拭おうという相手の言葉よりも一足早く自身も乾ききった喉を潤すためすぐにペットボトルへ口をつけてお茶を口に含んで「……あー、いいよいいよ、相手がつむぎなら別に気にしないよ?」よくよく考えれば間接キスだが相手とならそれも別に気にしないと平然とした様子で述べれば小さく身を竦めて微笑み)
…心配してくれて、ありがとう。
(体調は決して悪くないし、熱があるときの不快な気だるさも感じられないのになぜだか顔ばかり熱っぽさを感じていて、おでこにあてられたミキの温かそうな手でさえヒヤッと心地よく)
ちょっと、ミキ…?!
きゃあ……っ
(ペットボトルを取り返すより先に自分が口を着けたのと同じように相手も飲み口に口を着けてしまうと、恥ずかしさのあまり小さく悲鳴をあげ両手で顔をおおってしまって)
つむぎってば反応がオーバー過ぎ!女の子同士なんだから間接キスぐらいどうってことないと思うんだけど……これってミキが変なのかな?
(顔を覆って赤面までする彼女に驚いたような表情を浮かべ、自分としてはそれほど重大なことをしてしまったという自覚はなく、むしろそんなリアクションをオーバーだと言ってのけるがあまりにも恥じらう彼女をみているとだんだん此方まで照れ臭いような気になってきてしまい、僅かに朱に染まった頬を指先でポリポリと掻いて自分の考えが間違っているのだろうかと俯いてしまって)
ご、ゴメンなさい!
ミキは悪くないわ。
きっとあたしがヘンなの。
……ちょっと頭冷やしてくる。
(顔を隠した指のすき間からミキが戸惑う様子を見ると罪悪感と、自分の感覚が普通の人と大きくズレているのではという不安が湧きあがって。
頭を振ってミキの言葉を否定すると彼女のそばにいたたまれなくなり、頭を冷やすと話してとにかくこの場から離れようとして)
あっ、つむぎ待って…!……って、何やってんだろ…
(これまでに付き合ってきた人たちとのやり取りでは感じたことのなかった初めての感覚に戸惑うあまり我ながら見苦しい姿を見せてしまったという自覚があって、自分の目の前から離れていこうとする彼女へと伸ばしかけた手をゆっくり下ろして「今更になって友達だなんて調子に乗るから痛い目に遭う…何を期待してたんだろ…私に真っ当な人付き合いなんてできっこないのに…」気づかないうちに彼女に拒絶されるようなことをやらかした、そんな風に思い込みやはり自分には友情だとか情に心を動かされるような人付き合いは向いていないのだと自らを卑下し、こんな欠陥品の心に痛みなんてないと自分自身に言い聞かせながら教室へとゆっくり歩いて戻り)
(ミキのもとを離れるとどこへともあてもなく校舎の廊下を歩いて。
歩きながら、ミキの言うようにたかが間接キス、しかも同性どうしでのことに大げさに騒ぐ自分が間違っている、感覚がおかしいのだろうかと思い返して。
でも…
例え自分がおかしいのだとしてもあのとき感じたドキドキは紛れもなく自分の本心だし、なによりミキのいない学校生活などもはや考えられなくなっていて。
戻ったら彼女に謝って自分がおかしかったと伝えよう。
どんな形であれミキがそばに居てくれさえすればそれでいい、それで充分だと思って)
…あら、ここはどこかしら?
(いつの間にか学校のまだ来たことのない場所に来てしまっていたようで。
どうやら運動部の部室が並んでいる場所のようで、ぎりぎりまで朝練をしていた運動部員らしき生徒が慌てて教室に向かって駆けていくのとすれ違って。
自分も早く教室に戻らないとと思い、踵を返そうとしたそのとき壁の向こう側から聞こえてきた声に足が止まって)
「秋月が連れてきた新しいマネージャー、先輩よりも先に秋月にドリンク渡してましたよね。
礼儀が分かってませんよね」
「あーゆーことを見過ごしたらますます秋月が調子にノるからな、一度部内の上下関係をびしっと分からせてやらないとな」
(壁越しで顔は見えないけれど、どうやら陸上部の部員のようで。
さっきの自分の軽率な行動でミキに迷惑がかかるのではと思うとがくがくと足が震えて息が苦しくなり、逃げ出そうと考えてしまい。
でもミキのことを考えると逃げてはダメだと思い、なけなしの勇気を総動員して壁の向こう側に足を踏み出して)
あ、あの…
立ち聞きしてすみません!
さっきの行動はあたしが勝手にやったことでミキには関係ありません。
今度から気を付けますから、ミキにだけは手を出さないでください。
お願いします!
「あ?
さっきのマネージャーか?
分かってるならいいんだ、今度から気を付けろよ」
(二人がその場を立ち去るとへなへなと腰が抜けてしまい。
でもとりあえずミキに迷惑をかけずに済んだと思うとホッと胸を撫でおろして。
よろける足で立ち上がると始業時間ぎりぎりに教室に戻り、精いっぱい何事もなかったような顔でミキの前の席に座って)
(/長くなってしまってスミマセン。
勝手に話を作ってしまいましたが大丈夫でしょうか?)
……おかえりー、つむぎ"ちゃん"。授業開始ギリギリじゃん、間に合ってよかったね
(裏では完璧に築き上げてきていたはずの人間関係にそんな綻びが生じつつあることなど夢にも思わず、自分よりもかなり遅れて教室に入ってきた彼女の方を見やれば一瞬いつも通りの距離感で接してしまいそうになるが、彼女は友達ではなくクラスメートの1人に過ぎない、深入りするのはもうやめようと自らにそう言い聞かせて普段他のクラスメートや部員に対してするようなよそ行きの笑顔を貼りつけて、呼び方も元に戻して今までで一番壁を感じさせるような口調でそう声をかけるとウインクをして。仕草こそフレンドリーではあるものの、今日までの付き合いからすれば彼女が違和感を覚えるには十分過ぎるほどの変化ともいえて)
(/大丈夫ですよー!ただ、ミキは基本的につむぎ以外の他人とは当たり障りのない関係を築くのがとても上手いという設定で先輩に対しては特にそういうのを気にして接してきているかと思うので生意気だなんて裏で言われるのには少しだけ違和感が…なので、つむぎと出会って関わるようになってそれでミキが少しずつ外面のいい自分を演じることが出来なくなりつつある変化の兆しという形で補完させていただきますが構わないでしょうか?)
(背中から声をかけられるとその違和感に思わず後ろを振り向いて。
今朝と変わらないように見える笑顔が、まるで作られた仮面であるような錯覚を抱いて一瞬茫然とミキの顔を見つめて)
……う、うん
あ、あのねっ……
(さっきのことを謝ろうと口を開きかけると教師が入室してきて起立のかけ声がかけられ)
……またあとでね。
(開きかけた口をつぐむと前を向いて席を立って。
――いま、つむぎちゃんって言った?
やっぱりヘンな態度をとってしまったから嫌われちゃったのかしら……
イヤ……そんなの、絶対イヤ……
席に着いて、授業が始まっても上の空で。
ミキの空虚に響く声だけが何度も何度も頭の中でリフレインしてイヤな考えばかりが心に広がってしまい)
(/違和感を感じさせてしまってすみません。
そして優しいフォロー、ありがとうございます。
そうですね、ミキの内部的な変化とつむぎの少し常識や人の感情の機微に疎い行動で彼女の人間関係にひずみができてしまったということで大丈夫でしょうか?
あと、先輩はモブなのであまり深い掘り下げは必要ないと思いますが設定としては1年時は期待の新入生としてもてはやされていたけれど進級してから記録が伸び悩み、追い打ちをかけるようにミキの存在で立場が危うくなっている、ミキへの不満というより自分への苛立ちを転嫁しているということでご理解いただけますでしょうか?)
……
(背中越しに見てもどことなくソワソワして見える彼女の後ろ姿、その原因はやはり先程の自分の態度にあるのかもしれないと、そんな思考が頭をよぎり罪悪感を覚えるがすぐに頭からそんな考えを振り払い、午前の授業が終わりお昼休みになればそんな彼女から逃げるように我先にと席を立ち上がり教室を出ていこうとして)
(/委細承知しました!こちらの意見を聞き入れてご理解いただき感謝いたします!)
ま、待って、ミキ……きゃっ?!
(午前中の休み時間はミキがすぐにいなくなってしまったり、他のクラスメイトと話したりしていてこちらから声をかけることができず。
昼休みこそお昼ごはんを一緒にしながら話をしようと思っていて。
授業が終わりすぐに後ろを振り返ると彼女がすでに教室を出て行こうとするのが見えて。
慌てて立ち上がり彼女の後を追おうとすると気持ちに体の動きがついていかず、イスに足を引っかけて転んでしまい)
(/こちらこそ、ありがとうございます。
これからもよろしくお願いします)
つむぎ…!大丈夫!?怪我はない?
(己の名前を呼ぶ声、聞こえなかったフリをして通り過ぎようとしたが、椅子に躓いたのだろうガタンと大きな物音をたてて倒れ伏してしまった彼女を見れば自身の中の変な意地はすっかり消え失せて、教室内の他のどの生徒よりも早く慌ててそばに駆け寄れば心配してそう呼びかけて)
……つっ
少し打っちゃったみたい。
(長めのスカートをたくしあげると、膝と白いソックスのちょうどまん中あたりが青く内出血していて)
こ、こんなの平気!
それよりミキ、話があるのっ
(スカートの裾を戻すと、また逃げられてはたいへんとばかりに彼女の手をとって懸命な様子で話したいことがあると訴えて。
周りのクラスメイトたちも心配そうにお昼ごはんの手を止めて二人の様子を見ていて)
そ、それよりって…えっとどうしたの?
(色白な肌が一部分だけ内出血している様は妙に痛々しく映って、そんな状況をそれよりの一言で片付けてしまった彼女に困惑しながらもそれを咎める資格は今の自分にはないと冷静に考え直し、出来るだけ感情を抑えながらそれでいて周りから見てあまり素っ気なく思われないようにとそんなことを考えてしまう自分自身に我ながらこの期に及んでみっともないなとそんなことを考えながらも、今更これまでの生き方を変えることなど出来ず相手の話を聞く態勢になって)
あ、あのね、ミキ
あたし……
(ヘンなことで騒いでゴメン。
自分がどうかしていた。
だからこれからも友だちでいてね。
口許まで出かかった言葉が音になるまえにぐっと飲みこんで。
彼女の顔をじっと見つめ、心を決めたようにもう一度口を開いて)
あのね……
あたし、ミキのことを友だちよりも大切な存在だって感じているの。
だから、さっきもあんなに動揺してドキドキしちゃったの……
もしかしたら気持ち悪いヤツって思われるかもしれない、嫌われちゃうかもしれない。
ミキに嫌われて見捨てられちゃうのは絶対にイヤ。
だけど……でも、自分のミキを大切に思う気持ちを誤魔化すのもイヤなの……
(心から溢れ出すミキへの思いを一息に口にして。
息継ぎを忘れてしまうほど強く思いを伝えたので息が切れてしまい、胸に手をあてて懸命に呼吸を整えて)
……こんなあたしでも今まで通り……
んーん、今まで以上に仲良くしてくれる?
(心配そうな、不安そうな色を湛えた目でじっと大切なひとを見つめて)
バカ…つむぎは本当に大バカだよ…場所考えてよね…こんな人の沢山いる場所でさ、そんな大胆な…すっごく困るし迷惑なはずなのに…なのに嬉しいんだよ…っ、ミキだって本当はこれからもつむぎと仲良くしたいよ!だってつむぎはもうミキの中で特別なんだから!
(開口一番、バカと漏らし周りのクラスメートが見ている中での大胆告白に勘弁してといったスタンスながらも彼女の想いが嬉しくて、自分一人で彼女に引かれた、嫌われたなんて考えていたのがバカバカしくなるような真っ直ぐな想いに自分も周りの視線など気にもせず、彼女が自分の中でどれだけ大きな存在となっているかを大きな声で告げて)
(息を飲んでミキの返事を待っていると、いきなり発せられた2回のバカ──しかも2回目は大が付いて──にびっくりしてきょとんと目を丸くして。
でも彼女の言葉を聞くうちにその想いが、渇いた砂に水が沁みこむように心に沁み渡り潤い満たされていくのを感じて)
……それは
こんなあたしでも受け入れてくれる……
これからもいっしょにいてくれる、って思っていいのよね?
(その言葉で彼女の想いは十分に受け取ったつもりだったけれど、あまりに自分に都合の良すぎる展開にこれは夢なのでは、などと思い。
また半ば無意識に、嬉しい言葉をリピートして聞きたいという願望が発露して。
微かに震える声でミキの意思をもう一度確認してしまい)
うん…一度はつむぎを遠ざけようとして傷つけたこんなミキでもいいのならずっと一緒にいて欲しいよ…つむぎはミキの大事な人だって胸を張って言いたいよ
(念を押すようなこちらの気持ちを確かめる言葉、それに対する己の中の溢れんばかりの気持ちを真っ直ぐに、そして一度は思い込みのせいで彼女を傷つけた自分の罪が許されるというのなら、今度こそは自分の気持ちに正直に二度と間違いのないように彼女のことを何より大事にしたいと自らの意思を力強い口調で告げて)
ありがとう!
……嬉しいわ
(ミキの口から聞きたかった言葉が出ると感極まってしまい、彼女の首根っこに両腕を絡ませるようにしがみつくと双眸から涙がこぼれ落ちて。
すると、それまでことの成り行きを固唾を飲んで見守っていたクラスメイトから、おぉーっと感嘆のどよめきが起き、続いて冷やかし半分の温かい拍手が鳴り響いて)
つむぎ……って、ちょ、ちょっと待って!みんな思いっきり見てるから!ね?
(気持ちが通じ合った嬉しさに愛おしそうに名前を呼んで彼女を抱き締め返そうとしたところで、周りのどよめくような声や拍手にハッとして、ここが教室の中であったことを思い出し、ここまでの告白のくだりを見られていたと言うだけでも恥ずかしいのにこれ以上の痴態を晒すわけにはいかないと相手から一旦距離を離そうとしたが、かといって力ずくで引き離すことも出来ず口でそう言うのみで)
ん、ん…
そうね、ずいぶんお騒がせしてしまったわね。
(ミキの言葉を聞くとさすがに恥ずかしそうに、でも未練を残した様子で彼女を解放して)
あたしたちもお昼にしよ?
ミキもお弁当?
(急に声のトーンを落として、彼女の耳許で囁き声でたずねて)
う、うん…とにかくこの状況じゃ落ち着いて食事出来ないから移動するよ…二人っきりになれる場所に、ね
(耳許囁かれる声にくすぐったそうにしながら彼女の問いかけに頷き、鞄から弁当の入った包みを取り出すとこんな場所で二人顔を突き合わせて食事を始めては余計に目立つ上に公開処刑待ったなしだと移動しようとこちらも小声で提案をしては、最後の方で僅かに頬赤らめながら二人きりになりたいという意思を示すようにそう言葉を付け加えて)
その意見に同意よ。
とにかく一旦教室を出ましょ。
(ふたりっきり、という言葉に胸を高鳴らせながら、こちらもいそいそとランチバッグと水筒を手にして。
教室を出るときに振り返ってクラスメイトたちにペコリと頭を下げて)
騒がせてゴメンなさい。
あたしたちは大丈夫だから。
(なにが大丈夫か分からないけれどとにかく心配の必要がないことを伝えようとして。
すると再び拍手と歓声が沸き起こり、その後はなにごともなかったようにいつもの昼休みの喧騒が教室に戻って)
行きましょ。
(ちょっと恥ずかしそうにはにかむとミキの手をとって教室をあとにして)
あぁ、恥ずかしかったー…あの調子じゃ暫く茶化されるだろうなぁ…その点つむぎは凄いね、こういう時堂々としてるっていうかさ
(教室を出てから廊下を歩きながら他のクラスメートの反応などを思い出して恥ずかしげにしていて、今後のクラス内での自分たちの扱いのことを思うと少しだけ憂鬱な気持ちになるような気がしたが、それほど深刻に捉えてはいなさそうな彼女の反応に大人しそうに見えて実はかなり大胆で肝が座っているんだなと素直に感心していて)
また遅れてごめん!ちょうど忙しい時期が重なっちゃって…またしばらくは早めの返事が出来ると思うから、見捨てないでくれると嬉しいかなーって
ぜんぜん!
あたしだって心臓ドキドキよ。
(ミキの言葉を聞くと自分の胸に手をあててちゃんと緊張と羞恥を感じていることを伝えて)
ただ…
クラスのみんなからイヤな感じは受けなかったし。
コソコソしたら余計に気にさせることになると思ったから。
(自分の感じたことを話しながら手を取り合って、昼休みの喧騒の中廊下を歩き足は自然に校舎の屋上へと向かっていて)
(気にしないで。
こちらこそ催促みたいになってゴメンなさい)
まあ、それはそうだね。実際祝福されてたのは確かだし
(みんな悪意がある訳ではないのは当然こちらもわかっていて、祝福されているのもわかるのだがそれだけに頭を悩ませる部分でもあったりもして、複雑な心境だったものの気にしないようにしようと自分にそう言い聞かせて、そんなことを考えているうちに屋上へと到着し「つむぎ、この上で食べよっか」他の生徒もまあまあ出入りする屋上、出来るだけ2人きりになれる場所として貯水タンクのある上へ登る梯子を指差してにっこり笑って)
大丈夫。
黙っていたらみんなきっと2、3日で飽きるわよ。
(クスッとイタズラっぽい笑顔を浮かべながら校舎の屋上に出て。
今日は天気がいいせいもあって数人の生徒の姿が見えていて。
ミキが貯水タンクの梯子を指差して上に登ろうというのを聞くとちょっとびっくりして)
……あ、あたし、そんな梯子登ったことないわ。
それに……高いところはあまり得意じゃないの……
(ふたりきりにはなりたいけど怖いのはちょっと……と及び腰で答えて)
えー、そっか、あそこからの景色綺麗だし気持ちいいから是非つむぎも一緒にって思ったんだけど苦手なら仕方ないよね、じゃああそこの裏側で食べよ
(教室での人間関係に疲れた時、一人になりたい時に時々お世話になっているあの場所を自分は結構気に入っていて、あの場所からの景色を一緒に見ながらお昼をと思ったのだが苦手なものを無理に強要することはないだろうと考えれば、比較的他から目につきにくい、貯水タンクの置かれた建物の影になっている場所を指差して提案をして)
……ミキが綺麗って思うなら
あたしも見てみたい……
(高いところが苦手なのはホントだし、細い梯子もいかにも頼りなく感じて正直怖い気持ちはあるけれど、それ以上にミキが綺麗と感じるものなら興味があるしそれに彼女と同じ景色を見たいと強く思って。
タンクの裏に回ろうとする彼女の制服の裾を指先で摘まんでひき止めて)
つむぎ…それじゃあ一緒に登ろっか。ミキが手を貸すから
(自分と同じ景色が見たいがために勇気を出した彼女の想いに胸を打たれ、控えめにこちらの裾をつまむ手をそっと握り返して大丈夫だよと言い聞かせるように柔らかく微笑み、まずは自らが先立って梯子を登り始めて)
う、うん。
ミキが手伝ってくれたら、あたしがんばれる。
(彼女に手を握られると少し頬を紅く染めてこくんと頷いて)
気を付けてね?
(彼女が先に梯子を登り始めると心配そうに見つめていたけど、顔の高さより上まで登るとスカートの中が見えそうになり真っ赤になって慌てて下を向いて)
大丈夫だって、よっと…ほら、つむぎ登ってきて
(スカートのことなど本人は全く気にしてない様子で軽快に梯子を登っていき、あっという間に上まで登り切れば手を差し伸べてここまで登ってくるように相手へ呼びかけて)
う、うんっ
(ミキに促されると少しドキドキしながらも、日光にさらされて少し熱を帯びた梯子に手と足を一つずつかけて一段一段、恐る恐る昇っていき。
ちょうど真ん中くらいまで昇ると握力が弱まってきて、スカートはミキのものよりも丈が長く下にだれもいないために見られたりする心配はないけれど気になって、明らかに昇るペースが遅くなって)
頑張ってつむぎ、もうちょっと…
(体力的にやはり少し厳しいのか目に見えて登るペースが落ち込んだ相手へと精一杯元気づけるべく声をかけ続けて、もう少し登れば手が届きそうというところまでくれば軽く身を乗り出し両手を差し伸べて)
……ん、ミキ…………ッ
(もう一段、もう一段と懸命に手足を動かして。
ミキが差し伸べた手が近づいてきて、こちらからも目一杯手を伸ばす。
震える指先が一瞬触れ合って、それから弱々しい力で彼女の手のひらをきゅっと握る)
よいしょっと…お疲れ様つむぎ、やったね
(手が届き握られればゆっくりと相手を上へと引き上げて、ようやく登り切ることが出来れば自分のことのように嬉しそうに声を弾ませて微笑み、そしてそこから見える景色を見渡してから彼女の方へと向き直り微笑みかけて)
(最後はほとんど腕力も握力も残っていなくて。
なんとかミキに引っ張り上げてもらうと貯水タンクの天井に両手両ひざをついて肩で呼吸を整えて)
……はぁ、はぁ
ありがとう…ミキ…
あー、怖かったぁ。
(ようやく少し落ち着くと額にうっすらと汗を浮かばせた顔をあげて彼女と顔を見合わせ。
ホッとした表情で苦笑いをみせて)
大丈夫?少し休もうか。…ていうかもしかしてつむぎって高いところ苦手だった?
(呼吸を乱し、景色を楽しむどころでは無さそうな相手の背中を軽くさすってやりつつ、そもそもの問題として高いところが苦手だっただろうかと今更ながらに心配するように問いかけて)
うん、少し休めば大丈夫だよ。
最初に高いところは得意じゃない、って言ったよ?
もぉ~
(ミキの心配そうな様子に頷きながら答えて。
今さらの問いに人の話を聞いていないことにぷくっと頬を膨らませて)
…わぁ、スゴい……
(ぷいと顔を逸らした拍子に眼下に広がる街並みの景色が目に入り、思わず感嘆の声を上げて。
その景色はどこまでも続いていて遠くには都心のビル群、さらにそのもっと向こうには高い山々のシルエットが微かに浮かんでいて、その光景に目を奪われて)
ごめんごめん、そうだった…苦手なのにこんなに頑張ったつむぎはえらい
(相手の指摘にテヘッと小さく舌を出して謝罪をし、自分の失態を誤魔化すように頭を優しく撫でて「でも、少しでも景色を楽しむ余裕があるみたいで良かった、とりあえず座ろっか」高いところは苦手だという相手だが景色を見て感動するぐらいの余裕はあるようで、もしかしたら下を少し見ただけで怖すぎて無理だとかそういうこともあり得ると思っていたためそこだけは安心して)
……がんばったでしょ?
褒めてくれたから、許す!
(頭を撫でられると嬉しそうにふにゃりと相好を崩して)
怖いわよ?
でも、学校でこんなに綺麗な景色を見れるならがんばったかいがあるわ。
(座ろうかという彼女の言葉に頷いて。
立ち上がることまではできないため、腰の引けた膝立ちの状態で体勢を整えて、給水塔の屋根に広げたハンカチを敷くとその上に、よいしょ、と腰を落として)
ミキのお気に入りだっていう訳わかったでしょ?こうして誰かと一緒にこの景色見るなんて思わなかったなあ
(すっかりここからの景色がお気に召した様子の彼女へと自分がこの場所を気に入ってる理由が十分にわかったことだろうと問いかけ、同時に独白のように呟いた言葉はこれまでの自分には考えもつかなかった自らのこの状況に対する心境と、この場所へ誰かを連れて来たのは相手が初めてだという事実を内包していて)
ええ…
あたしが知らないだけで、世界はこんなに広くて美しいのね…
(まだ景色に見とれながらミキの言葉に頷いて)
…だれかとこうやって景色を眺めるのって、あたしが初めてなの?
(彼女の独り言のようなセリフを聞くとはなしに耳にすると、彼女がお気に入りだという場所に連れてくる初めてに自分を選んでくれたのかと驚いてたずねて)
あ、うん、そうだね。ここはミキが一人になりたい気分の時とかに来る場所だから他の人は誘ったことなかったかな
(何の気無しに呟いたセリフに対して投げかけられた問いに一つ頷き、周りを気にして外面よく振る舞う自分にとっては学校で一人になって落ち着ける数少ない特別な場所で、そんな場所だからこそ他の人を誘うということはまずなく「これからもつむぎと一緒に色んな景色とか見れたらいいね」自身も彼女の横に腰を下ろして、そんな願望を交えつつ口にして微笑みかけると鞄から弁当箱を取り出して)
……
ん、そうね。
あたし、知らないことばかりだから。
ミキと一緒にいろんなことを知っていきたいわ。
(彼女の言葉を聞き、その笑顔に触れると急に胸が絞めつけられるように苦しくなりドキドキして。
体が苦しいのではなく、心が切ない気持ちに満たされて溢れだしそうになり。
時を忘れ、彼女の横顔を見つめていて)
良かった、つむぎも同じ気持ちで
(こちらの願いに賛同するような彼女の言葉に嬉しそうに微笑み浮かべながら手元の弁当箱の蓋を開けて、それから手元の弁当箱から相手の顔へ視線を移し「つむぎはお昼食べないの?それとも…もしかしてミキの横顔に見惚れちゃってた?」お昼の用意をする様子が見られない隣の相手に疑問抱き、体調でも悪いのだろうかと少し心配そうに顔を覗き込みながら、それとも…と少し茶化すように問いかけてみて)
…ば、バカっ
た、たべるわよ!
(いきなり図星をつかれてしまうと赤い顔で照れ隠しに半ギレしながらも否定はせずに。
ランチバッグからお弁当箱を取り出してたべようとして)
ミキ、よかったら少したべてもらえないかしら?
(小さいお弁当箱の中にはおむすび、卵焼き、ウインナー、チーズちくわ、ブロッコリーなどが詰められていて。
中身を見せながら遠慮がちにお願いして)
……おおー、今日も彩り豊かなお弁当ですなー。つむぎのお母さんは本当料理上手だねー、確かつむぎは殆ど料理しないって言ってたけど何か手伝ったりとかもしないの?
(バカとは言いつつも否定はしない辺りわかりやすいなあ、なんて何も言わずにニヤニヤ笑いながら彼女を見やり。そんな彼女が此方にも少し食べてと取り出した弁当の中身を見れば相変わらず自分の黄色と茶色だけの質素な弁当に比べて彩りがよく、この間少し分けてもらった弁当同様彼女の母親のお手製だろうと見た目から判断して凄いなあと感心していて。殆どキッチンに立ったことがないと言っていた彼女の話しを思い出しながらそう何気なく問いかけて)
き、今日のお弁当はちくわにチーズを詰めるお手伝いをしたわ。
(ちょっと恥ずかしそうに照れながら、なにもしていないわけではないことをアピールして)
……ミキ、あ、あーん。
(ハート形の卵焼きをおはしで半分に割ると、さらに顔を赤くしながら彼女の口許にそれを差し出して)
本当に?あは、じゃあ愛情たっぷりだね
(どんな些細なことでも手伝いをしたという事は事実、彼女が工程に少しでも関わっているならそれはもう彼女の想いが入っているのと同義だなんてちょっとだけ気恥しくなるような台詞を口にしつつ、差し出された玉子焼きに口を大きく開けて受け入れ、モグモグと咀嚼すると口の中に仄かな甘みと玉子の香りが広がって「ありがとつむぎ、美味しいよ。次はつむぎが作ったチーズちくわちょうだい」屈託もなく笑って感想とお礼を述べては、こちらからそう催促をして)
(卵焼きを美味しそうにたべるミキを見ているとこちらまで幸せな気分になって)
作ったって…
スティックチーズを挿して輪切りにしただけよ…?
(それを作った、などと言うのはおこがましく感じて目を伏せて。
でも、それをちょうだいと言われると嬉しくなって。
二つ詰めてあった一つをおはしでつまみ、どうぞ?と、何故だか少し緊張しながら差し出して)
それでもつむぎが手間をかけた訳でしょ?手で作る、これぞ読んで文字のごとく手作りというものだよー
(工程が工程だけにあまり調理をした実感が湧きにくいと考える彼女の気持ちは十分に理解出来るが、それでも彼女が手を加えたのならそれは手作りと呼んで差し支えないと断言すればウインクをして。少しの躊躇いと共に差し出されたそれを勢いよく口に含んで「うん、普通に美味しいチーズちくわだ。つむぎの愛情感じちゃうねーなんて」変に褒めちぎったりはせず素直にごくありふれたチーズちくわだと感想を言いつつ、愛情はしっかり感じるなんて戯けてみせて)
…ミキは優しいわね。
ありがと、そう言ってもらえると嬉しいわ!
(彼女の屈託のない言葉と表情に、こちらもにっこり笑顔を向けて)
あたしにも、ミキのお弁当。
分けてほしいわ?
(少し照れを感じながらも相手にお返しをおねだりしてみて)
え、うん、いいけど前のと何も変わらないよ?
(お返しを要求されれば手元の弁当箱へと視線を落とし、最低限お腹さえ満たされればそれでいいと簡単なおかずだけ詰めたいつも代わり映えのしない玉子焼きとウインナーのお弁当。当然味に変化をつけたりなんてそんな工夫なども凝らしているはずもなく、相手に一度食べてもらったものと中身は同じだと念押ししてから焼き色のついたふんわりからは程遠い堅めの玉子焼きを箸で摘んで差し出して。もしもこんな日々が続くなら少しぐらいなら料理の勉強でもしようかな、なんて考えていて)
変わらないからいいんじゃない。
ミキの言葉を借りると、ミキが手間をかけて作ったわけでしょ?
それが欲しいの。
(ミキらしくなく逡巡している様子を見ると少し可笑しそうに、さっき彼女に言われた同じような言葉を返して催促をして。
ようやく差し出された卵焼きを嬉しそうに小さな口を開いてパクリと口にするとゆっくり味わってたべて)
おいしいよ、ミキ。
こうやってお日さまの下で友だちとお弁当を分け合うなんて格別ね!
うーん、美味しい…かなあ?つむぎって結構物好きだよねー。…でも、それは同意!大好きな相手なら尚更ね
(相変わらず自分ではお世辞にも美味しいとは思えない玉子焼きを嬉しそうに美味しいと言って食べる相手を見て頭に疑問符を浮かべて。とはいえ、こうして一緒にお弁当を分け合って一緒に笑えるこの時間がかけがえのない特別なものであることだけは間違いなく、同意をして大きく頷くと敢えてこちらは友達では大好きな相手と強調するように言ってのけ)
あたしみたいにメンドーなヤツの友だちをすすんでしてくれるミキに言われなくないわ。
大好きって…もぉ…
あ、あたしも、ミキのこと…
大好き…だからねっ
(物好きなどと言われてしまうと、ミキも人のことは言えないと思いイタズラっぽい笑顔を浮かべてお互いさまだと話して。
続く言葉で、今度は大好きだと言われてしまうと、ボッと顔を真っ赤にして俯き、一瞬言葉をなくしてしまい。
嬉しい気持ちはもちろん大きいものの、彼女の『大好き』は文字通り友だちとしての大好きだろうと思い。
直後に自分も同じ気持ちであることを伝えたものの、ホントに自分の『大好き』はミキと同じだろうかと心の中で自問して)
面倒なんて思ったことないよ、ちょっと目が離せないっていうか心配ではあるけどねー
(自分自身を面倒だと卑下する相手に、自分はそんな風に思ったことは一度もないと断言した上で、気がかりな存在であることは否定はせず。彼女の方からも大好きという言質を得られれば軽く横にズレて肩をくっつけて「つむぎ、今の聞いたよ?撤回は出来ないからね?」なんて嬉しげに口にしながらニヤリと悪戯っぽく微笑んで)
これからもいろいろ心配かけると思うけれどよろしくお願いします。
(ミキの優しい言葉を聞くと嬉しい気持ちで胸がいっぱいになって。
思わずうるっとなりそうなのをごまかすように少しおどけた口調で話しながら頭をぺこりと下げて)
武士に二言はないわ。
武士じゃないけれど。
(肩を押され、大好きの返品は不可だと言われると、こちらからも軽く彼女の肩を押し返し。
発言の撤回は決してしないことをきっぱりと伝えて)
あはは、つむぎの本気と覚悟はしっかり伝わったよ。私もこの先ずっとつむぎのこと大好きでいる!男に二言はない。男じゃないけど…なんてね
(肩を寄せ合い、まるで冗談めかしてそんなことを言う彼女のその言葉の裏側の本気を悟って嬉しげに微笑み、こちらも彼女の先程の発言を真似して肩を竦めおどけるが、そんな軽いノリとは裏腹にやはりこちらも同じように相手を想う気持ちに偽りはなく、普段と違って不思議と美味しく感じるお弁当を食べ進めていき)
ミキが男子だったら、きっとスゴくモテるでしょうね。
あ、今でもモテてるわね。
(彼女の、こちらの冗談めかした言葉に対する返答を聞くと、ミキが男子だったらさぞかし女子人気が出るだろうと予想し、言ったあとで現状でも同性からも人気があることを思い出すとヤキモチ交じりにそのことを指摘しつつ。
気持ちのよい街の遠景を眺めながらゆっくり少しずつお弁当を口にして)
…遠くに行ってみたいな。
(1/3くらいを残しておはしを置くと、街の遥か向こうに霞んで見える山並み、あるいは目に見えないもっと向こうの景色に意識を向けながら独り言のようにポツリと呟いて)
もー、やめてよつむぎー。ミキなんて全然だよ?
(モテるだなんて言われると自分自身友人が多いことは自覚しているがそのこととモテることはまた別の問題であり、揶揄われていると思い苦笑混じりに顔の前で手をぶんぶん振って全然そんなことないと否定をして。ゆっくり食事をする彼女とは対照的にテンポ良くおかずを口へと運びあっという間に完食してしまい空になった弁当箱を片付けていると、どこか切実な響きを孕んだ呟きが聞こえ「つむぎってさ、やっぱあまり遠出したりするのって難しいの?」実際のところ彼女の病状について詳しいことは何も知らず、デリケート問題だけにそれを聞くのも憚られてきたのだが、今までよりはずっと親しくなれたはずで、もう一歩踏み込んでみてもいいはずだと考え、神妙な表情でそう尋ねて)
またまた、ご謙遜をー。
(苦笑いを浮かべて否定するミキの表情を見ながら、いつも周囲に人の絶えない彼女のどこが全然なのかとその鈍さに少しムッとしつつも表情には出さず。
肘で彼女の腕を突きながら冗談ぽく笑って)
あ、口に出ちゃってたね?
(無意識の呟きを聞かれてしまった気恥ずかしさを感じ、今度はこちらが苦笑いを浮かべて)
うーん…
お医者さまからはゆっくりできることを増やしていくように、って言われているの。
慌てたらダメだ、って。
今まで病院を出たことすらないあたしがいきなり遠くに行くのはやっぱりハードルが高いのかなって。
(呟きについてたずねられると医者から注意されていることを話し、実際問題として難しいことを説明して)
そっかー、いつかは自由に好きなところに行けるようになるといいよね
(なんとなくこれまでの彼女の様子からきっと難しいだろうと予想はしていたのだが、本人の口からはっきりとそう語られるとやはりそうなのかと頷いて見せ。それでもいつかは彼女のそんなささやかな願いが叶えばいいなと心の底からそう思えば純粋な気持ちでそう口にして「その時はミキのこと誘ってくれたら嬉しいなー、なんてね」彼女の想いが成就した時、自分がその近くにいられたら嬉しいなんて今までの自分では考えられないような気持ちが湧き上がってくれば、らしくないことを言っている自分自身に苦笑しながら冗談めかしてそう言ってのけ)
ええ。
今はまだできることは限られているけれど、いつか、みんなと同じようになんだってできるようになってみせるわ。
(ミキの言葉にこちらも頷いて。
いずれはそうなってみせる、と決意を表して)
…そのときまで。
ミキに隣にいてほしい。
(冗談めかした彼女の言葉に、こちらはマジメな様子でそちらに体を向ければお互いの手と手が触れ合って、彼女の手の甲に手のひらが重なって)
その時までなんてケチなこと言わないで、その先もずっと一緒に居るよ
(お互いに相手を大事に想い合う特別な間柄であることは疑いようのない事実で、それが友情なのかはたまたそれ以外の感情なのか、まだハッキリしない部分はあるが、それでも期間限定などではなくいつまでも一緒に隣で笑い合える仲でいられればという想いに偽りはなく、そうありたいという願いを込めてそう言い切っては触れ合った手を裏返して優しく握って)
(/今年はこれで最後になりそうだから挨拶しておくね。今年も1年間ありがとう、時々返事が遅れたりとか心配をかけたりもしたけど、見限らずに一緒に居てくれて嬉しかったよ!また来年もよろしく!)
…うん、ありがとう、ミキ。
スゴく嬉しい。
(握られた手から、彼女の気持ちが伝わってくる気がして。
こちらからも指を絡めるようにそっと握り返し、様々な感情を胸に秘めながらしばらく無言で見つめて)
……お昼休み、終わるね。
行かなくちゃ。
(このまま時が止まればいいのに、と思いつつも時間は無情にもいつも通りに過ぎていき。
教室に戻ろうと切り出して)
(/遅くなったけれど明けましておめでとう。
こちらこそ、これからもお相手をよろしくお願いします!)
あっ…うん、そうだね。なんだかなー、どうして楽しい時間ってあっという間に過ぎちゃうんだろうね
(永遠にも思える時間もやがて終わりが訪れ、無情にも鳴り響く予鈴の音に残念そうな声を漏らしながらもゆっくり立ち上がり、スカートを軽く手でパンパンと払って彼女の方を振り返れば名残惜しいがあまり寂しさを表に出して困らせないように眉尻を下げながらもヘラッと笑って小さく肩を竦めてみせてから下へ降りる梯子に足をかけて「つむぎ、降りる時も気をつけてね。とりあえず下は見ない方がいいかも」下手をすれば登る時よりも怖いかもしれないと考えれば一応そう忠告をしつつ自身は軽快に下まで降りていって)
また次が楽しみになるように、物足りなく感じるくらいがちょうどいいのよ。
(離れてしまった手に寂しさを感じながら、努めて明るくミキの言葉に答え。
お弁当箱を片づけ、彼女に続いて腰を上げると下りるときのアドバイスをうんうん、と頷きながら聞き。
ミキがおサルさんのような身軽さであっという間に下まで下りてしまうのを曲芸でも見るように目を丸くして見送って。
いよいよ自分も下りようと梯子に手と足をかけて一段ずつ下りていこうとするとそよ風が舞い、スカートの裾がはためくと急に怖くなって。
手足がすくんで動けなくなってしまい)
…ミキ、怖いっ!
つむぎ、頑張って!もうちょっと降りてきたら手が届くから…そしたらミキが受け止めてあげる!
(本気で怖がっている様子が声から伝わってくるが、この状況で自分が出来ることといえば彼女を励まして降りてくるのを待つことだけで、せめてもう少し下、手さえ届く位置まで来てくれれば後はどうにか受け止めてやれるのにと考えては必死でそう励ましながら両手を広げて)
(足を一段下ろしたら手を一つ下ろす、ただそれを繰り返すだけだと頭では分かっているのに体が動かない。
もうすぐ授業開始のチャイムが鳴ってしまうと思うと焦ってますます体が固まってしまう。
思わず下にいるミキに助けを求めると大きな声で励ましの言葉が返ってきて。
…そうだ、下にはミキがいてくれる。
そう思うとほんの少し勇気が湧いてきて。
梯子に張りついていた手が開くと一つ下の梯子を掴んで、足を一段下ろす。
そしてまた一段…
気がつくとあと少しで屋上の床に足が届くところまで下りてきて)
つむぎー!良かった…頑張ったね
(万が一の場合は自分が身を挺してでも彼女を受け止めなければと気が気ではない様子でハラハラしながら見上げていたが、どうにか最悪の事態は免れそうな高さまで降りてきて、地面に足がつけばようやく安心する事ができ、彼女の元へと両手広げて駆け寄ればたまらずハグをして労いの言葉をかけて)
(屋上に足が着くとホッとする間もなくミキに抱きしめられ、こちらからも彼女の背中に手を回して)
怖かったよぉ…
でもね、ミキが励ましてくれたから。
勇気が湧いてがんばれたの。
ありがとう、ミキ。
(半べそをかきながら笑顔を浮かべて、彼女のおかげで無事に下りられたと感謝の気持ちを伝えて)
そんなお礼なんて…頑張ったのはつむぎだよ。つむぎは偉い!
(自分が励ましてくれたからなんて、少し大袈裟にも思える感謝の言葉に少し照れ臭そうに笑いながら改めて彼女の頑張りを労えば少しだけ抱きしめる腕に力を込めて。そんな風に再び時間も忘れて戯れていたが、おっかなびっくりゆっくりと梯子を降りて時間をロスしていたこともあって、少しして授業の開始を告げる本鈴が鳴り響き、それが耳に届けば彼女と顔を見合わせ「えっと…もしかして午後の授業始まっちゃった感じ…?」さっき聞いたのが予鈴だったから…なんて冷静になって考えれば軽く冷や汗かきつつ、そもそも今の自分達のやり取りはどう見ても大袈裟だし側から見れば結構恥ずかしいものなのではないかと考えれば頭を抱えたくなって)
んーん。
今のことだけじゃなくミキにはいろんなことで感謝しているの。
(謙遜する彼女の言葉に対してやんわりとかぶりを振り、改めて感謝の気持ちを伝えて。
そうこうしていると授業開始のベルが鳴ってしまい、思わず二人で顔を見合わせて)
授業、始まっちゃったわね。
ミキ一人なら走れば先生が来るのに間に合うかもしれないわ。
あたしに構わず行って。
(少し焦っている様子の彼女の肩を押して、走って教室に戻るようにと伝えて)
いやいや、そんなこと出来るわけないじゃん
…つむぎ、授業サボっちゃおっか?
(確か次の授業は割と時間にルーズな教師が担当する授業だったはずで、確かに走れば間に合うかもと彼女の言葉も現実味を帯びるが仮に間に合うとしても一人見殺しにするようなことは出来るはずないと背中を押す手から逃れるようにして彼女の方へ向き直り、とはいえどうしたものかと暫し考えた後で悪戯っぽく微笑みながらそんな提案をして)
いい考えだと思ったのに、バカね、ミキは。
(授業に間に合うチャンスをみすみす放棄した彼女のことをバカだと言いながらも内心ではそういうところが好きなんだと嬉しく思い)
サボるのはいけないことだと思う…
(じとーっと彼女のことを見ながら)
…でも。
ミキと一緒なら、一度くらいはいいかしら。
(ペロッと小さく舌を見せて、ミキと共犯になることに仄かな喜びとドキドキを感じていて)
バカで結構、つむぎを見捨ててまで守るほどの体裁なんてないし
(人に良く見られたい、敵を作らない、これまでそんな風に生きてきた自分らしくない言葉だが、彼女を前にすると素直で純粋な気持ちで口にすることが出来て、悪戯っ子のような表情を見せる彼女へ向けにししと笑ってみせて「怒られるのも一緒なら怖くないしね。とりあえずこっそり学校抜けだそっか」なんて悪びれた様子もなく口にしては、校内をうろついて教師に見つかっても厄介だと考えては口元に人差し指立てつつ授業が終わるまで外で時間を潰すことを提案して)
ありがとう、ミキ。
(彼女の言葉を聞くと骨ばった白い手で相手の手をキュッと握って。
もう一度、思いのこもったお礼を告げて)
見つからずに学校を抜け出したりできるかしら?
あたし、足手まといだし…
(学校を抜け出すと聞くとワクワクした気持ちと同時に見つかったらダメだと思うドキドキも加わって少し不安そうな表情を浮かべ)
大丈夫、とにかく静かに慎重に行くよ
まあ、見つかったら見つかったでその時はその時ってことで
(どちらかといえばいかに慎重に物音を立てずに行動出来るかが重要で相手が足手纏いだとかそんなことは全く関係がなく、見つからないかどうかは正直運の要素も大きいと考えておりダメだったとしてもそれはそれだなんて楽観的に構えていて)
呆れた。
行き当たりばったりというヤツね。
(ミキの言葉を聞くと大げさに目を大きく見開いてびっくりした表情を見せて)
でもミキらしいわ。
分かった、静かにするのは得意よ。
(それからクスッと楽しそうな笑顔を浮かべ、コクリと頷いて)
ミキらしい、ね…それは褒め言葉として受け取っとこうかな
(なんとも受け取り方に困る相手の表現を自分に都合のいい方向に受け止めて解釈をすればニッコリ満面の笑みを浮かべてから小さく肩を竦めてみせ、それからこっちこっちと手と視線で合図しながらそろりそろりと出来るだけ教師などと鉢合わせしなさそうなルートを選んで下駄箱へと向かい)
らしいあなたの方がらしくないよりよほど魅力的だとあたしは思うわ。
(こちらの思いがちゃんと伝わっていないと感じると、少し分かりやすいように言い直し澄ました笑顔を返して。
それから彼女の後について、普段とはうって変わってしーんと静まり返った廊下をドキドキしながら歩いて。
誰もいないのを確認しながら階段を下り、無事下足室が見えるところまでやってくると少しホッとして気が弛んでしまい、何もないところで足がもつれて転びそうになって)
ん、ありがとつむぎ。つまりありのままのミキが一番ってことでしょ?
(今度こそ相手の言葉の意図をしっかりと理解すればその中でも最上級にポジティブな解釈をしてはお調子者っぽく親指グッと立ててサムズアップをして。そこからなんとか教師などと出くわすこともなく、無事に下駄箱へとやってきて喜びを分かち合おうと相手を振り返ろうとすれば足をもつれさせて体勢を崩した彼女の姿が見えて、転ぶよりもギリギリ早く正面から抱き止めるように受け止め「ふう…危なかった…大丈夫つむぎ?」と顔を見やり問いかけて)
(悲鳴をあげるのだけはなんとかガマンしつつも、地面がスローモーションのように近づいてくるのが見えて。
顔から転ぶのだけは防ごうと、頭が手を前に出すように命令するけれど体は言うことを聞かず。
倒れる!と思わず目を閉じると予想された衝撃はやって来ず、代わりに誰かに抱き止められた柔らかい感触がして。
もちろん、誰かとは目を開かなくても分かっていて)
…うん。
ミキのおかげで大丈夫、ありがとう…
(目を開けて彼女の心配そうな顔を見ると苦笑いを浮かべながらお礼を言って。
彼女の首に巻きつけた腕に非力な力をこめ、きゅっとしがみつき。
耳許でぽそっと囁いて)
…さっきの答え。
あたしにとってはどんなミキだっていちばんよ。
そっか、それなら良かった…つむぎってば本当危なっかしいんだから……って、もう、やめてよ、そんな風に言われたら照れるじゃん
(ホッと安堵して、あまり心配かけないでと少し恨み言でも言ってやろうと思ったが、耳元で囁かれた言葉にこれ以上何も言えなくなってしまい、顔を赤くしてそっぽ向けば「ほら、早く行こ」なんて少しだけ早口にそう捲し立てるように口にして靴を履き替え始めて)
ふふ、照れたミキ。
とても可愛いわよ。
(そっぽを向いた彼女のほっぺを、目を細め表情を緩ませながら指先でつんつんとつついて)
うん。
(照れ隠しなのか、早くと急かせる彼女に小さく頷いて返事をして。
下駄箱からローファーを取り出すと並んで靴を履き替えて)
ここまで来れば大丈夫かしら?
今日のつむぎやけにグイグイくるなー…とりあえずせっかく外に出たんだしどこか行ってみたいところとかやってみたいこととかない?あんまり遠くだったり時間がかかることは無理だけどつむぎにとってはこういう時間って貴重でしょ?
(可愛いなんて言葉で更なる追い討ちをかける相手にタジタジになるも、どうにか気を取り直し小さく咳払いをしてはとりあえず学校の敷地を離れて、ここなら教師などに見つかったり咎められたりという可能性もないだろうという場所まで来れば改めてこの後のことについてまずは相手に希望はないのか問いかけて)
ちょっとはしゃぎすぎかしら?
でも楽しいんだもの。
それにホントのことよ?
(相手の言葉を聞くと小さく舌を出して悪戯っぽい笑顔を見せ、彼女を可愛く思うのはウソ偽りでなく事実だと話し)
この格好だものね。
そうね…
行ってみたいところはたくさんあるけれど。
それはちゃんとしたお休みの日にミキにお願いするとして。
近くにお散歩できるような公園はあるかしら?
ミキと歩いてみたいわ。
(どこか行きたい場所を聞かれるとお互いの制服姿を見比べて苦笑いを浮かべ。
行きたいところはいくらでも思い浮かんだけれど現実的な場所と考えたときに天気もいいし公園と答えて)
公園でいいの?つむぎってば真面目だよねー。じゃああそこかな…ここからならすぐだし
(制服姿だからと無難な場所を選んだ相手に、この格好でもカフェでお茶をするぐらいならいいか、なんてことも考えていたため、思っていた以上に真面目な返答を聞けばクスッと悪戯っぽく笑って。ここからすぐのところにある程々に広い公園を目的地として定めれば歩き出して)
マジメな子は授業をサボって学校の外を出歩くなんてイケナイことはしないわ。
(至ってマジメな顔で答えながら、ならマジメじゃない場所ってどんなところだろう?と考えても思いつかず。
ミキと並んで目立たないように学校の裏門から出て人通りの少ない道を歩いて)
でも公園ってデートの定番スポットのひとつでしょ?
ならちょうどいいじゃない。
あたし、ミキとデートしてみたかったの。
(相手との距離を詰めると腕を組んでぴっとりくっついて)
あーあー聞こえなーい
(ぐうの音も出ないほどのもっとも過ぎる正論に両耳を塞いでオーバーアクションで聞こえないフリをして。そんなやり取りをしながら公園へと向かう道すがら、デートなんて言葉を冗談か本気か用いた相手が身を寄せてくれば一瞬驚いたような表情でビクッとしたが、すぐに状況に適応して首を軽く傾け顔を寄せて「可愛いこと言ってくれるねーつむぎは。いいよ、デートしよっか?」なんて口にしては不敵に笑って)
ええ。
エスコート、よろしくお願いするわね。
(ミキの承諾の言葉を聞けばにっこり嬉しそうに笑顔を浮かべて、胸に抱きしめるように彼女の腕にしがみついて)
あたし、公園も病院の敷地内にある小さなものしか知らないの。
だからどんなところなのか楽しみ!
噴水とか、芝生広場とかあるのかしら。
(テレビやマンガで見た公園を思い起こし、ワクワクと期待に小さな胸を膨らませていて)
どっちもあるよー、春だったら公園の中の並木道の桜も綺麗なんだけどね
(これから向かう公園が正に彼女の思う公園像そのもので、残念ながら時期は外れているがそんな補足情報を付け足しながら歩みを進めて、そうして少し歩いて目的地へと到着すれば公園の敷地内へと入って一旦足を止めると開放感に軽く伸びをして「大丈夫?ここまで歩いてきたけど疲れてない?少し座って休もっか」噴水のそばに設置されたベンチを視界の端に捉えながら、それほど長い距離では無かったが一応ここまでずっと歩き通しだったため相手を気遣うように声をかけて)
そうなのね?
桜だけは病院にもあったけれど、また春にも来てみたいわね。
(さすがに腕を組んだままでは歩きづらいので手をつなぎ、彼女の話に耳を傾け頷きながらこちらのペースに合わせてくれているのかゆっくりとした足取りで公園までの道のりを歩き。
そんな他愛のない短い時間のなんとウキウキと心の踊ることだろう。
ツラいことのほうが多かった14年の人生だけどミキと会い、楽しい時間を過ごすための準備期間だったと思えばなんということもなかった気がしてくる。
口にはしないけれど、そんな思いのこもった笑顔で彼女を見ていて。
やがていつの間にか目的の公園にたどり着くと、ミキに休憩するかたずねられて初めて疲労を感じ)
ありがとう。
そうね、少し休ませてもらおうかしら。
ちょっとはしゃぎすぎちゃったみたい。
つむぎってば、あんまり無理しないでよ?ミキと一緒にいて楽しいって感じてくれているのは嬉しいけどさ
(ベンチへと一緒に腰を下ろし、僅かに息を弾ませ肩を上下させている相手の顔を覗き込むようにしながら、疲れも忘れるぐらい自分といて楽しいと感じてくれていることを嬉しく思いつつもやはり何より彼女には自分の身を大事にして欲しいし仮にこれで体調を崩しまた学校に来れなくなり彼女に会えないなんてなったら寂しいと思うと同時に、きっと無理をさせてしまった自分自身が許せなくなりそうで。こんなにも彼女は自分にとってかけがえのない存在になってしまっているんだなと思うと誰かのことをこんなにも心から思いやる気持ちがまだ自分にも残っていたんだなと内心苦笑浮かべ「それにしても、いい天気だね。ちょっと暑いぐらい」雲一つなく遮るもののない初夏の太陽を見上げてしみじみ口にして)
ええ、分かっているわ。
(ベンチに並んで腰を下ろすと胸に手を置いて少し乱れた呼吸を整えるようにゆっくり深呼吸をして。
間もなく呼吸も胸の動悸も落ち着くとミキに顔を向け苦笑いを浮かべ)
でもミキといるとやっぱり楽しいからつい調子に乗って忘れてしまうのよね。
気をつけないとダメね
(悪戯っぽく片目をつむって小さく舌を出して。
あまり反省していない様子で反省の弁を述べて)
そうね。
心地よい天気ね。
でもこれから暑くなっていくのよね。
(同じように空を見上げると眩しい太陽に目を細めて、これから来る季節を待ち遠しく感じて)
(/レス遅れてゴメンなさい!)
本当だよー。だけどさ…忘れられるなんて気休めじゃなくてミキと一緒にいる事でつむぎの身体に良い影響を与えられてたらいいのになー…なんて
(気をつけないとダメだと改めて相手の言葉に便乗しつつも、自分と過ごしている時間は病気のことを忘れてはしゃいでしまうなんて月並みではあるが、やはり嬉しくなることを言ってくれる彼女に対しそれが単なる精神的なものではなく、実際に身体にとって良影響を及ぼしていればいいのになんて現実離れした魔法のようなことを冗談めかして口にしてしまって。こんな感傷的になるなんてらしくないなと首を横に振れば、天候と季節についての話題に頭を切り替え「そうそう、暑くてイベント盛り沢山な季節!つむぎは夏は苦手?」視線を空から隣の彼女へと移し、ゆるりと首を傾げながら相手の暑くなっていくということばがプラスの意味なのかマイナスの意味なのか真意を確かめるように質問を投げかけて)
(/大丈夫大丈夫、気にしないで)
ほら、病は気から、なんて言うじゃない?
(ミキの言葉を聞くと青い空に視線をやって)
あたしね。
こんな体だけど自分のことを不幸だなんてあんまり思ったことないの。
お母さんもお父さんも優しいし、病院に友だちもいなかったわけじゃないから。
でもね、せっかく仲良くなった子が退院したり、遠くへ旅立ってしまったりするたびに心のどこかで羨んだり怯えたりしていたと思うの。
だからこうやって学校に通えるようになるまですごく時間かかっちゃったけど、でも今はミキが傍にいてくれて、毎日楽しくて。
きっとこれからはどんどん元気になっていけると思うわ!
(語り終えると彼女に向き直り、笑顔で頷きその言葉を肯定して)
暑すぎるのは苦手かしら。
でもこれまであまり季節を感じる生活をしてこなかったから楽しみなことばかりよ。
(これまで空調の効いた室内で過ごすことが多かったことを苦笑いを浮かべながら答え、イベントが盛りだくさんと聞けばそれだけでテンションが上がってくるのを感じて)
つむぎは強いね……うん、きっとこれからはどんどん良くなる、だからこれまで出来なかったこととか色々一緒にしよう?
(傍から見れば大変で、ともすれば不幸とすら言える人生を送ってきた事がわかる彼女の意外とも思える発言に驚くと同時に自らの生まれを嘆き、ロクでもない人生だなんてそんな風にやさぐれた考えで生きてきた自分自身を恥じて。本当に良くなっていくなんて保証はどこにもなくても、彼女がそう信じている以上は自分もそれを信じるべきだと改めて未来を見据えて一緒に歩いていきたいと意思を伝えれば隣の相手の手を握って。そうと決まればと夏のイベントについて考えを巡らせつつも、あんまり暑いのは苦手だという相手のことも考えた上で「つむぎは肌白いもんねー、夏の日差しとかもあんまり浴びすぎたら赤くなって大変そう。その点、花火大会とかなら夜だし少しは涼しいかな?何より夏といえば花火だしね」と、定番中の定番のイベントをまず1番に挙げて)
あはは、ぜんぜん強くなんてないわ。
でもそう言ってくれるなら、その強さをくれたのはミキだから。
ええ、いろいろ教えてね。
(強いなどと言われると自分ではまったくそうは思わないために苦笑いを浮かべ否定して。
転入初日に彼女のおかげでクラスになんとか馴染むことができたのを思い起こしながら、今日の自分があるのはミキのおかげだと話して。
手を握られると頷きこちらからも握り返して)
毎日日焼け止めを塗るのがたいへんなのよ。
花火!
いいわよね!
病院からは見えなくて、毎年音だけ聞こえてくるのがもどかしくてお布団の中で耳を塞いでいたの。
絶対、ミキと一緒に見たいわ!
(花火と聞くと一気に興奮が募り。
両手で彼女の手を握りしめるとキラキラと目を輝かせて一緒に花火を見たいと迫って)
おっ、つむぎってば乗り気だねー、じゃあ約束!…てことは、つむぎって縁日の屋台とかも始めてだったりする?
(想像していた以上に乗り気な様子に、こんなにも喜んで貰えるならば誘ってよかったなと思えて嬉しくなり、絶対一緒に行こうと親指を立てて見せて。それからふと、体調の関係で色々と我慢してきたであろう彼女にとっては花火大会のみならずそういったお祭りにつきものの縁日の屋台なんかも未体験だったりするのだろうかと疑問を投げかけ)
ええ!
約束、絶対よ!
(身を乗り出して、もし約束を違えたら絶対に許さないくらいの勢いで念押しをして)
屋台!
知ってるわ!
たこ焼き、りんご飴、金魚すくいよね?
病院でも年に一度、職員さんやボランティアさんが模擬店をいくつか出してくれていたんだけれど中等部に上がってからは小さい子に混ざるのが恥ずかしくて行けなくなっていたの。
もちろん、本物は行ったことないわ。
(さっきからミキの口から出る言葉はどれも魅力に溢れていて、興奮を抑えきれず自然と声のトーンが上がり饒舌になって)
そうそう、本物は他にも色々あるよ。それこそつむぎが知らないようなものとか沢山ね
(目に見えてテンションの上がる彼女にクスッと小さく笑いながら挙げられた有名どころ以外にも本物の縁日には色々な屋台が出ると教えてやり。相手が本気で楽しみにしているのが伝わってくればこちらまでワクワクしてきて、来たる夏の花火大会の日に心躍らせながら軽く跳ねるようにして立ち上がり「ちょっと歩こうか?」話をしているうちに随分と相手の呼吸も落ち着いているように見えて、ここへ来た本題である散歩を少ししようかと提案をして)
…ええ、そうしましょ。
(ミキがベンチから立ち上がる躍動感に思わず目を奪われて、少し間を置いて返事をすると休憩をしたのですっかり体調も回復し、こちらもベンチから腰を上げて。
彼女に並ぶと公園の中心と思われる方向に歩き始めて)
海とかプールとかも、全部というのは無理かもしれないけれど行ってみたいわ。
でも、あたしにとって大切なのはどこでとか、何をじゃなく、だれと、だから。
(見るものすべてが新鮮で公園の何気ない風景にも興味深く視線をやりながら、自分にとっていちばん大切なことはなにかということを話し、ミキのことをチラッと見て)
おお…!?言ってくれるねー、つむぎって時々そういうキザっぽいこと言うよね。だけど…うん、確かにそうかも、ミキもつむぎとだからこんな風に一緒にどこへ行こうとか何をしようとか考えるんだろうなって思うし
(自分に追従するようにして立ち上がった彼女のさりげなさの中に飾らない本音の見え隠れするセリフに一瞬だけ目を丸くしたがすぐに表情を綻ばせ、思えば他の人とどこかへ出かけたりするとなった時にこんな風にして自分が主体となって色々と考えたことなんてなかったなと思い、それはつまり彼女と一緒に何かしたりどこかへ出かけたりといったことを自分で思っているよりも楽しみにしているということなのだろうなとそんな風に考えて、なんだかいつもより積極的な気持ちになれれば自然と彼女の手を握り身を寄せて)
キザ、っていうのかしら?
思ったことを口にしているだけなのだけど、思えばこんなふうに自分の気持ちを素直に話せるのはミキだけよ。
(二人並んで公園の遊歩道を歩き、彼女のほうから手を握ってくると嬉しくなりこちらからもキュッと握り返して。
病院の窓から眺める木々の色はいつも灰色にくすんで見えたけれど、彼女と並んで歩きながら見る公園の新緑は不思議とキラキラと輝きに彩られて見えて)
ミキも同じ気持ちでいてくれるなら嬉しいわ。
あっ、噴水が見えたわ!
いってみましょ!
(彼女も、自分と行動を共にすることを楽しく感じてくれている様子に喜びの気持ちを伝えて。
やがて遊歩道の先に想像していたよりかは少しこぢんまりとした噴水が見えてくると気分が高揚して、相手の手を引くように歩みを早めて)
そ、そうなんだ、ふーん…でもそれはたまたまミキが最初に声をかけたからとかじゃなくて?クラス委員だから何かと相談事とかするにも都合が良いからとか……なんて、そんな訳ないよね、つむぎの顔を見てればそんなはずないって嫌でもわかっちゃう
(あまりにもストレートな好意を向けられなんだか照れ臭くなってしまえば別にきっかけさえあれば自分でなくても…なんて意地悪を言ってしまうが、返事を聞くよりも先にこちらが申し訳ない気持ちになってしまい、彼女の好意を手放しで信頼していると言い直し、苦笑混じりに肩を竦め。噴水を見て瞳を輝かせて少し歩調を早め、こちらの手を引く彼女に「つむぎってば、慌てないで。テンション上がってるみたいだから一応言っとくけど水遊びとかそういうノリは無しだからね?授業戻れなくなっちゃうし」目の前にある噴水は夏場なんかは子供などが水遊びなどをしているのをちょくちょく見かけるスポットでこのままのテンションで行ったら初夏の暖かな気候も手伝って、ちょっと足を入れてみようから始まってそういう流れにならないとも言い切れないため、念の為自分たちが着ているのは制服でありこの後学校へ戻るんだからと予め釘を刺しておき)
ええ、違うわ。
きっとミキはあたしの運命のひとなのよ。
(彼女の言葉を聞くとくすっと小さく笑い、自信満々に頷いて。
ミキは覚えていないだろうけれど、初めて登校したあの日。
緊張で呼吸が苦しくなり立っているのも辛く感じたのに彼女と一瞬だけど目が合った瞬間、緊張が解けて無事に自己紹介を済ませることができた。
思えばあのときから既に、あたしはミキに惹かれていたのだと思う)
い、いくらはしゃいでいるからといって、あたしもそこまで子供じゃないわ。
(噴水に近づきながらミキに水遊びはダメだと釘を刺されるとギクッとして。
そんなつもりはないと強がりを言いながらも少し残念に感じていて。
円形の池の真ん中に放射状に水を噴き上げる噴水が設置されてあり、池の縁に立つと風に舞った水しぶきが微かに二人の髪や頬を湿らせて。
初夏の日射しが水面で反射してキラキラと揺れる様子を飽きることなくじっと見つめ)
……綺麗ね。
運命って…もう、つむぎは油断するとすぐそういう恥ずかしい事言うよね。…でも、まあこんな運命ならミキも大歓迎かな
(自分に誰かにとっての特別なんて似合わないと、そんな自虐的な感情を抱く一方でそんな繋がりもいいと思える相手がこの世に存在するとするならきっとそれは彼女のことなのだろうと確信し、それを運命と呼ぶならつまりそういうことなのだろうとガラにもないことを考えながらはにかんだように笑って。こちらの追及に対して一瞬の間があったことは見逃さず「んー?怪しいですなー。つむぎは基本的には大人びて見えるけど、案外欲望には忠実だったりするしなー」ニヤニヤ笑いを浮かべながら彼女に対する追及の手を緩めず、暫く茶化してみたりもしたが噴水を眺めて儚げに佇む様子を見ればハッと息を呑み「つむぎの方が綺麗だよ……な、なーんて、つむぎの真似してちょっとキザな事言ってみましたー…!」何気ない口調で思わず本音を零してしまうが、散々彼女をキザだとか恥ずかしいだとか言っておいてこれはないと内心頭を抱えれば、これはあくまでも意趣返しなのだとヘラリと笑って)
うふふ。
油断するミキが悪いのよ?
あたしは本気でそう思っているけれど、こんな痛いって思われてもしかたのない発言を受け入れてもらえてよかったわ。
(相手の言葉を聞くと悪戯っぽい笑顔を浮かべつつ、確かに少し恥ずかしい内容の発言にも関わらず肯定してくれるミキに感謝して)
…あう
し、しかたないじゃない!
だって水遊び、楽しそうなんだものっ
(こちらの心の中を見透かしているかのような相手の鋭いツッコミに言葉を詰まらせてしまい。
これ以上誤魔化しきれないと悟ると頬をぷくっと膨らませ、半ば開き直るように彼女の指摘の正しさを認めて)
あら、ありがとう。
でもそういうセリフは照れずに言ったほうがカッコいいわよ?
はい、やり直し。
(こちらの半ば独り言のような言葉に反応して綺麗だなどと褒められれば素直にお礼を言いつつ、澄ました顔で照れ隠しは必要ないと指摘し、その上リテイクまで要求して)
多分少し前の私なら何言ってるの?って鼻で笑っていたかも…つむぎに毒されたのかもね
(人間関係が壊れる様をまざまざと見せつけられて育ってきた身だけに尚更永遠の友情だとか運命の出会いだとかそういったものには懐疑的で冷めた目で見てしまったかもしれないと正直に話した上で相手との出会いがそんな考えを変えたのだとも伝えて。まるで開き直るように水遊びが楽しそうだからと口にした相手に、こちらもそれについては否定はせずに「そうだね、今は無理だけど本格的に夏になったらそういうのもアリかも」と悪戯っぽく笑って暖かくなったら相手の望みも叶えてあげたいという意思を示して。よもや自身の発言に対してダメ出しをされるとは思ってもみず、驚きながらも改めて言い直すのも恥ずかしく「やり直しとかそういうのはないの。言いたいと思った瞬間が言い時で旬ってものがあるんだから」とそれらしい言葉を並べ立てて)
あら、毒されたなんて失礼ね?
なら解毒剤は必要かしら?
(毒された、などと言われると目を丸く開いてびっくりしたような表情を見せ。
ミキをジィッと見つめ素面に戻りたいか尋ねて)
またしたいことが増えちゃったわ。
リストを作らないといけないわね!
(夏になったら、という彼女の言葉を聞くと表情を崩しイベントが多過ぎて覚えきれないと嬉しそうな笑顔を見せ)
やっぱりあたしが綺麗だなんて、口から出任せだったのね?
(相手のうやむやにして誤魔化してしまおうという態度を見ると悪戯心が湧き上がり、ヨヨヨとわざとらしい泣き真似を見せて困らせてやろうとして)
ごめんごめん、でもそんな風につむぎに影響されて自分が変わっていくことが不思議と心地よくもあるんだよね
(こちらの言い草があんまりだという相手の反応に苦笑混じりに謝罪を述べ、確かに言い方は少し良くなかったかもしれないがそれはどちらかといえば照れ隠しに戯けたようなもので、実際は悪感情は一切なくむしろ相手に引っ張られるようにして変わっていくことを嬉しく思っている自分もいて。どんなに些細な提案も全部が全部特別なイベントであるかのようにはしゃぐ相手を見ていると、こんななんでもないことも全部我慢して生きてきたんだなと実感させられて、だからこそこの夏は改めて彼女にとって初めてだらけの盛り沢山の季節にしようと胸に誓って。泣き真似なのはぱっと見で察しがついてしまったが、こちらの本音があたかも嘘であるかのような発言には我慢ならず「そんな訳ないじゃん、つむぎは綺麗だよ。透き通るような白い肌も長くて綺麗な黒髪も全部、初めて会った瞬間から目を惹かれてた」なんて恥もなにもなく胸の内に秘めた感情をストレートに押し出して想いを告げて)
冗談よ。
でも、ミキにそんなふうに思われているなんて、少しこそばゆいわね…
(自分にとってはミキこそが憧れの存在であり、自分が彼女に影響を受けることがあってもその逆があるとは考えもしなかったので戸惑いと照れくささを感じ、青白い頬に微かに朱が差し、顔の横の髪の一房を指先で摘まみ弄りながら俯いて)
み、ミキ?!
(ほんの悪戯心からだったとはいえ自分からもう一度聞きたいと言った言葉が相手の口からほぼ望み通り、いや、それ以上の形で発せられるとその想いの強さに驚き言葉を失って)
…茶化すようなことを言ってゴメンなさい。
ホントにそんなふうに思ってもらえてるなんて、夢にも思わなかったから…
(改めて思い出すとなんだか告白されたような気持ちになり。
申し訳ないやら恥ずかしいやら嬉しいやら、気持ちの整理がつかずにさらに深く俯くと耳許から長い髪が落ちて赤い顔を隠して)
あー、つむぎってばもしかしなくても照れてますなー?
(目に見えて照れているとわかる相手のリアクションが可愛らしく、そんな姿を見るとふつふつと意地悪な感情が湧き上がってきてしまうと俯きがちな彼女の顔を下から覗き込むようにしてにやにやと笑顔を浮かべ茶化して。本音を包み隠さず言った結果、先程までとは打って変わってしおらしくなってしまった彼女を見ればなんだか言ったこちらまで恥ずかしくなってきてしまい「や、そこはあれでしょ…やり過ぎだって突っ込むとこでしょ。急にそんな真剣な感じで返されると恥ずかしいんだけど…」と、相手を直視出来ずやり場のない視線を泳がせ、そっぽ向きながら頬を指先でポリポリ掻いて)
み、ミキだって、照れてるじゃない…?
(俯くこちらの顔を覗きこもうとする相手の方こそ、いつになく可愛い仕草で照れているのがまる分かりで。
視線を逸らしながらも否定はせず。
代わりに相手も同じであることを指摘して。
お昼を過ぎたばかりの時間帯の公園で制服の女子高生どうしが顔を紅くしながら顔を見合わせている姿は端から見ればさぞ奇妙に見えることだろうけれど、幸か不幸か周囲に他の通行人の姿はなく)
…あたしは。
自分では不健康な真っ白な肌も飾り気のない黒い髪もあんまり好きじゃなかった。
でも。
ミキがそう思ってくれているなら、これからは少し好きになれそう…
(俯き、目線を逸らしたままモジモジと両手の人差し指どうしを擦り合わせ、ポツリと自分の身体的な特徴が今までは好きでなかったことを告白して。
でも彼女の言葉で少し気持ちが前向きになれたことを控えめな視線を送りながら嬉しそうに伝えて)
な、何言ってるの!?ミキは別に照れてなんか……って、こんなふうに言い訳ばっかり重ねるのはなんか子供じみてるね。だけどしょうがないよね、つむぎがそれだけミキの心の中で大きな存在になってるってことだから…なんてね、もう少し見て歩こっか
(投げかけた言葉をそのままこちらへと投げ返され、答えに窮した挙句に苦しい言い訳をしようとしたが、流石にそれはあまりにも惨めでみっともない姿だと考え直せばこちらも否定をするのではなく、それを認めた上で開き直って自身の心情を口にしてはニッコリ笑いクルリと背中を向けて、再びゆっくり歩みを進めていき。これまで知り得なかった彼女の本音を聞きくと、そんなことまで話してくれるのはやはり信頼があってこそだろうなと感じて嬉しくなり「そっか…うん、それなら良かったかな。ミキがきっかけでもなんでもミキが大好きなつむぎのことをつむぎ自身が好きって言えるのって本当に素敵なことだなって思うからさ」彼女がコンプレックスを感じている部分、それらをも全て受け入れるように彼女への愛着を口にしては、少しばかりくさい台詞が自然と漏れて)
そう、なんだ…
スゴく嬉しいわ…
(さっきからミキが恥ずかしいことばかり話すから頭に血が昇りっぱなしで熱が出そう…などと思いながら彼女が噴水の前を離れて歩き出すとこちらも慌ててあとを追い並んで歩いて)
大好きだなんて…
ミキったら、もぉ…
(鮮やかな新緑に囲まれた遊歩道を二人で寄り添いながら歩いていると相手の口からさらっと出た言葉に追い討ちをかけられるように照れくささと喜びを感じて。
そんなことを自然と口にするミキの顔を目を丸くして見て、すぐに堪えきれず真っ赤な顔を伏せ視線を足元に落としながら彼女の少し後ろをついて歩いて)
(/お久しぶりです…体調を崩してしまったり私生活のトラブルが重なったりで長らく顔を出せない期間が続いてしまいました、申し訳ありません…
まだいらっしゃるでしょうか?もしも可能でしたらまたお相手をしていただければと思うのですが…お返事をお待ちしています)
(/おかえりなさい…でいいのかしら?まさか戻ってきてくれるなんて思っていなかったから油断して気付くのが遅れちゃったわ。いろいろあったのね。大丈夫?レスペはゆっくりでいいので、また相手をしてもらえるならこんなに嬉しいことはないわ。改めてお願い、できるかしら…?)
…あっ、ねえ、あれ見て。あそこのアイスクリーム屋さん、気まぐれの店主がたまにしか出店しないけどクラスの子たちの中でも美味しいって評判のお店だよ
(目に見えてわかりやすいぐらいに照れた様子で言葉を失い、顔を伏せた彼女に小さく肩を竦めクスッと笑い、進行方向へと目を向けると少し離れた場所に一台の移動販売車を見つけ。自分では一度も立ち寄ったことはなかったがクラスメイトたちの中でも話題になっている噂の店と外見の特徴が一致していることを、そちらを指差し彼女へとそう説明を交えながら語りかけ「せっかくだしちょっと寄ってみる?」特段アイスクリームが食べたい訳でも好きな訳でもなく、普段他のクラスの友人たちと一緒にいる時ならば敢えて自らこんな話を切り出す事はなかっただろうが、彼女と一緒になら良い思い出になるだろうと考えている自分がいて)
(/ただいま…!正直さ、間が空きすぎだし、半ば諦めてたからつむぎとまた会えて嬉しいよ。設定とかもちょっと曖昧だったから過去のやり取り読み返したりしながら少しずつ思い出しながら返事書いてみたけど、どうかな?違和感とかあったら遠慮なく言ってね、じゃあ改めてまた宜しくね!)
へぇ、そうなのね?じゃあ、あたしたちは運がいいのかもしれないわね。
えぇ、是非…!
(彼女が指差す方向を見ると確かにアイスクリームと書かれたのぼりを立てた移動販売の車が止まっており。平日の昼間にも関わらず数人の列ができていて盛況ぶりを窺わせていて、ミキのクラスメイトから聞いた話に信憑性を持たせて。病院に入院していた頃は刺激のある食べ物は制限されていて、アイスクリームも滅多に食べることができずもし食べれたとしてもほんの小量で、憧れの食べ物の一つであり、ミキの提案を受けると目を輝かせて賛同の意思を示して)
(/ミキとまたやり取りを交わせるだけで嬉しいから。これからまた改めて二人の話を進めていけたらいいなって思うから。あまり気にせずに進めていきましょ。えぇ、よろしくね?)
オッケー、今日はミキが奢ってあげるね
(自分の説明を聞いた彼女がアイスに興味を示してくれたのがわかると、胸をドンと叩いて気前良くそう言って片目閉じて。二人で並んで店の前に行き、列の後ろにつけばそこから店頭に置かれたメニューの書かれた看板を見るが思ったより値が張ることに気づき脳内で所持金を計算し、待ち合わせがギリギリ二人分に足りないことに気づき彼女の方を苦笑い浮かばながら振り返り「あー…一つを二人で分けるのでもいい?今月ちょっとお小遣いピンチなんだ」自分がお金を出すなんてカッコつけた手前言い出しにくかったが無い袖は振れないため、そう問いかけ頬を指先でポリポリ掻いて)
(/ありがと、そう言ってもらえると助かるよ。それじゃ、また何かあれば遠慮なく声かけてねー)
つむぎ、久しぶりだね…今になってふと、この場所のことを思い出して読み返してたよ
つむぎはきっともうここには居ないよね、どこかで元気にしてるといいな。本当に今更だけど間が空いちゃったり心配かけてばかりでごめんね、こんなミキと友達になってくれてありがとう!
もう会えないかもしれなくても…さようならは言いたくないから…だから、またねバイバイ
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