高校 図書室にて、図書委員は在る。

「そうですね…それが問題です。違う世界線の私が既にいるとわかっているから遠くから見守るだけにしておこうと思っていたのですが…でも、パパには結局見つけられてしまいました…私はどうすればいいのでしょうか…とりあえずこのままでは良くないのは確かです、どちらか、もしくは両方を元のあるべき場所に返さなければきっと近いうちに私という存在が世界から異物とみなされ何かしらの悪影響が出てくると思います」

わーっ！う、嘘です、今のはやっぱ無しです！三郎さんにはちょこの無償の愛情をこれからもたっぷりあげます、だからそんなこと言わないでください…(相手に抱きついたまま顔を胸元に埋めてすりすりすれば最後は悲しげに呟き)

ふむ……断る。大事な娘をもう一度離すほど俺は阿呆じゃない。（相手の元の場所へ返すと言う発言に傲慢極まりない発言をしつつ，その声には決意とかつて離してしまった後悔がこもっていて）

当たり前だろ？俺はお前に無償で無限の愛を注ぎ，逆もまた然り，言わずとも，だ。（胸元にすり寄る子供のような彼女を見ると，相手の柔らかな髪に指を通し，愛しそうにそう言い）

「…それなら、どうするというんですか？まさか私とあの小さな私をここに共存させる方法を探すとでも言うつもりですか？」(相手のめちゃくちゃな言い分に少しだけ呆れたようにそう質問を投げかけては首を小さく傾げて)

うー…三郎さんはズルイです、そんなこと言われたらちょこはもう怒れなくなっちゃいますし、嬉しさのあまりニヤケちゃいます…でも、三郎さんと一緒に居られるなら単純でちょろい子でもいいかなって、そんな風に思えちゃうから不思議ですね(不満そうに口にしながらも、表情はどことなく嬉しそうで顔を上げればキスをせがむように目を閉じて)

探す，見つける，そして実現させる，そして全員まとめてハッピーエンド，それが俺の目指す未来だ。
協力、してくれるな？（ぐっと拳を握りしめ，空に向かって突き上げると自信満々な笑みをニヤリと見せ，突き上げた手を相手の方へ差し出してそう聞き）

あー……そうだな。
確かに、そうだ。
……（何処か虚に相手に同意したのち、キス待ちのような顔をする相手の手を引き，人通りの少ないところまで連れてくるとようやくキスをして）

「全く、相変わらずですね…わかりました、娘離れ出来ない可哀想なパパのために私も一肌脱ぎましょう」(表向きはやれやれといった風な体で、それでもどこか嬉しそうに控えめに拳をコツンとぶつけ合わせ)

ん…えへへ、三郎さんのキスはとても優しくて、ふわふわーっとして幸せな気持ちになれるから好きです(暫しの間の口づけ、少ししてどちらからともなく顔を離せば頬を上気させて微笑み)『らぶらぶ…ですか？』(当然詩歌も二人の後についてきていて、空気を読んで黙って見守っていたようでようやくそこで口を開き)

もうそれでもいい，事実を突きつけられた生き物は意外と脆いしな。（ぶつけ合った拳をすぐ様ポケットに突っ込むと，ニカッと笑ってそう言い）

アバウトだなおい……
っと詩歌，居たのか。（相手の擬音表現に苦笑いしながらそう返し，居たことに気づかず，放置していた娘の方を向いてそう言い）

「パパがそんな殊勝な態度をとるなんて、明日は大雪でも降りそうですね」(思いの外素直な相手の答えに目を丸くして、そう小生意気な軽口を叩いて)

いいんですー、ちょこは三郎さんのように言葉を扱うお仕事は専門じゃないので、こういう時の素敵表現は三郎さんにお任せしちゃいます。それに…いちいち言葉にしてしまうことで語るに落ちること、無粋なことってあると思いませんか？…って、詩歌！？い、いつのまに！？(相手の苦笑に対して自分なりに考えてそう言葉を返し、こんなやりとりが娘に見られていたと思うと思いっきり赤面してしまって)『ずっといました…はぐれないようにパパの裾、ずっと握ってましたから』(人通りの少ない場所だからか呼び方が戻っていて、今に至るまでずっと空気を読んで黙っていたようで)

……きっと、降るだろう。（意味深にそう呟き，そのまま軽口を叩く詩歌を現代の詩歌と智代子のところまで連れてきて）

……言われてようやく思い出したんだが，俺作家だった。
（ハッと智代子の言葉を受けてそう言い，逆に言えば彼女の言葉に対する反応はそれ一つであり，適当で）

あー確かに，裾が重かった気がする，気のせいだと思ってたんだが、お前か。（赤面する智代子を他所に，偉いぞー，とまたもや詩歌の頭を撫でてやり）

……あーあと，さっき会った旧詩歌，たぶんお前達には身に覚えがないと思う。（物陰からぐいぐいと旧詩歌を引っ張り出すと，そう言って）

三郎さん！そこ、大事なところです！三郎さんの作品にちょこは読書の楽しさを教えて貰ったと言っても過言じゃないんですから、言うなれば三郎さんの作品の大ファンなんですからねー！(適当な感じの反応に身振り手振りを大きくしてそう主張して)

『ん…ちょっと足疲れました…』(相手のペースに合わせて黙ってついてきたためか小さく息を吐くが、頭を撫でられるとすぐに幸せそうに瞳細め)

「ええと…お姉ちゃん？…って、言ってももう覚えて…」
わわっ、詩歌！詩歌じゃないですかー！私の妹だった詩歌ですよね！また会えて嬉しいですよう！(久しぶりの再会で、妹詩歌のことをあっさり思い出して思いっきりハグをして)
『ん…私…？二人います…』(娘詩歌だけがこの事態に混乱している様子で)

じゃあ新作買って売り上げに貢献してくれると助かるわ。（そんな心にもないことをテキトーに意地悪に言って）
んー………NICE（グッ，と抱き合う妹詩歌と智代子を写真に収め，ナイス，と言うとそばにいた娘詩歌をそっと抱き寄せて）

実はかくかくしかじかメブキジカ（まぁ案の定，説明するのが面倒くさいからかテレパシー的なアレで全て済ませ，言葉では表さず）

そこは抜かりありませんよ！ちゃんと、読む用と保管用と布教用にバッチリ買い揃えるつもりです！(意地悪を意地悪とは思わず本気でそんなことを言っていて)
詩歌詩歌詩歌詩歌ー！もう、どこへ行っていたんですかー！？(すりすりと詩歌に頬擦りしていて)
「ちょ、お姉ちゃ…苦し…」(思いっきり顔を抱えこまれて息苦しさに手足バタつかせ)
『ん…詩歌…私？』(相手に抱きしめられながら智代子の声に律儀に反応していて)

ふむふむ、なるほどー…って、もう！詩歌ってば、そういうことならもっと早く私たちに相談しなきゃダメじゃないですかー！私たちにはどっちの詩歌も大切なんですからね！(事情を理解すれば妹詩歌の肩をがっしり掴んで)
「お姉ちゃん…全く、二人とも揃いも揃ってお人好しの似た者夫婦ですね…でも、私のこと家族としてまた受け入れてくれてありがとうございます」(眦に涙を浮かべながら幸せそうに微笑み)

お，おう……そうしてくれ。
（ガチ過ぎる相手に少し引きつつ，引きつった笑みを返して）

なんか俺もお人好しになってるんだがなー（相手の言葉を少し聞き取ると，そう苦く言葉を返して）

ちょっとー！どうしてそこで引くんですかー！？(流石に相手の反応を看過できなくなってそう突っ込んで)「二人の夫婦漫才も相変わらずですね…」

「その点に関してだけ言えば反論の余地はないと思いますが…そもそも、こんな複雑極まりない我が家の事情に首突っ込んで一つの家族束ねあげようとしているあなたがそれを言いますか…」(お人好しという点に物申したい様子の相手にピシャリとそう言ってのけ)ふふふ、そこが三郎さんの素敵なところですからー
『パパはとても優しい人…』

急にガチられるとふっつーにビビるっつーの！お前はお前らしく在れ！（むにむにと相手の?を両手で潰すと，引っ張ったりもしてそう叫んで）

娘ほっとけねーじゃん？俺こう言う案件には慣れてるし。
（あはは，とだいぶ軽いノリでそう言い，サラリと何処かおかしいところを口にするものの，彼自身は普通と感じているらしく）

そこまで褒められるとなんかなぁ……悪い気は……
いや，するわ，悍しいニオイだ。（連続して褒めてくる2人に苦笑を返しつつ，そのまま冗談を繋げようとすると，ニオイを嗅いでその瞬間に竹刀を手にとり，いつもの彼とは全く違う，冷徹な目つきと異様な竹刀の構えをして）

私は私、ちょこですよう！いいじゃないですかー、三郎さんの作品が世間に受け入れられて嬉しくてハシャいじゃうのも無理ないと思うんですよー(頬をもみくちゃされながらぶーぶーと文句を垂れて)

「そう言ってもらえるのは嬉しいですけど…全く、パパは相変わらず秘密が多いですね」(相手の物言いにジトっと物言いたげな目を向けて)『ミステリアス…？』

『ぐるるるっ…』(隠していた尻尾を思いっきり逆立て唸り声をあげて)えっ、えっ…何がどうなってるんですか！？(突然の出来事に思考が追いつかず困惑してあたふたしていて)
「面倒ごとです…わからないならお姉ちゃんは余計なことはしないでそこにいてください」(未来の相手が手にしていたであろう竹刀、それを手に寸分の狂いもなく相手と同じ構えをとり智代子の護るように立ちはだかり)

娘の力なんて借りないからお前らも下がってろ。

______薬丸自顕流・一・ニ・三
『抜き・掛かり・続け打ちッ！』（言葉に対する返答が軒並みゼロになり，2人の詩歌の前にさらに立ちはだかると，ゆっくりと竹刀を左右に立ち揺らすと腰にぴったり付けて構え、そのまま冷徹な声で抜き放つと智代子の瞬きの間に姿がかき消え、そのまま何処からか現れたぬえのような生物の脳天を叩き，連続してそのまま貫いて）

…とまぁ，今のが私の使う剣術なワケです。
今のは西洋のキメラだな、まーたぶん逃げたんだろう、人の目に着く前に始末できてよかった。（丁寧に説明をしながらハンカチで竹刀についた青黒い血を丁寧に拭き取り，ぴっと振って血を払い，3人の方へ返り血のべったりついた顔を向けて）

わあ…見事です。瞬きする間の早技とは正にこのことですねー(何が起こったかわからなかったが、意外にもすんなり事態を受け入れればパチパチと拍手をして)
「どうにか目で追うのがやっとでした…やっぱり本家の技は凄い、ですね」(構えを解いて一つ大きなため息をついて)
『パパ…顔、拭いてあげます』(ハンカチを手に背伸びをして顔に手を伸ばそうとしていて)

そこまでじゃねぇ，頑張れば誰でも見れる。
（ぱちぱちと拍手する相手に笑いながらそう言う，彼の言う頑張ればのの範囲が理解出来ないが）

…そっか，お前知ってんのか，知っちゃってるのか。
（目を細めて詩歌妹を見て，竹刀を長い袋に収めるとそう言い）

自分でふくよ，ありがとな。（にっこり笑ってハンカチを手に取ると，自分で拭いて）

そうですかね…ちょこはちょっと運動とか苦手なので正直荷が重いと思いますよ？(相手の言葉に、うーん…と小さく唸り)

「これでもパパっ子ですから…盗み見ていただけで直接教えてもらった訳じゃないですが」(そう言って再び構えだけを真似てみて)

『ん…帰ったらお風呂一緒に入る…？』(顔を拭いてもやはりべっとりとくっついた血は拭いきれず、じいっと見上げて小首傾げ)

______いつまでも無力だったら，おまえ，消えるぞ。
（相手の謙虚で弱気な態度に対し，何故かしら目つきを鋭くして低い声でそう忠告して）

似てるな，決して完璧じゃないが，見てただけで出来るとは到底思えない。（さっぱり切り替えると，相手の背中に回り，のしっと後ろから体を預ける形になり，間違った構えを直すように相手の手に手を重ねて支持し）

いや，いい，1人で入れる。（色々気まずいからか，流石に断って）