ミステリアスで妖艶な雰囲気の美形(探偵) 2019-11-10 16:38:54 |
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…ああ、練習と言うか…この依頼中はそう呼ぶぞっていう通達…だな。校長達が俺達のやり取り見て仲が悪いと思ったのか…仲違いして依頼が達成されない可能性を考えたようだ…お前を名前で呼んだら親睦も深まって万々歳だとごり押しされた。お前が嫌なら元の呼び方に戻すが─ああ、俺は先生付けで構わない。
( 彼を初めて名前で呼んでみたもののどうにもしっくりこない。“相馬”と呼び慣れていたからというわけでもないようにも感じて首を捻るもヘルメットを装着してはエンジンをかけて先に乗った彼の後ろにいつものように跨がり席へと乗って。走り出すバイクにしっかり彼へとしがみついてそのまま学校へと向かって──学校の駐輪場へバイクを停めて二人、バイクから地面へと降りて。ヘルメットを外しては彼からの問いかけにそちらへと視線を向けるとその質問に涼しい顔で答えて。実は依頼を受ける際に校長達の前で自分達の間では普通のいつも通りのやり取りなのだが軽い言い合いをしてしまったこともあり、依頼の受理後の帰り際にひそひそと二人に仲が悪い姿は風紀も乱れるため依頼成功率を高めるためにも名前で呼んで周りに仲良しアピールではないがその方が学校の雰囲気も良くなると言われたこともいきなり名前を呼び出した理由で。しかし彼が不快なら例え依頼主のお願いであっても自分はそれを聞くつもりはない…何故ならそれこそ依頼を失敗しかねないからで。ジッと此方を見つめる視線に本当は名前で呼ばれるのは嫌だったのだろうかと思いつつも彼からの確認にはそれで構わないと頷いて )
本当にそれだけ?…ふーん。…でもあんまり仲良し過ぎても依怙贔屓だってよく思わない生徒もいるだろうしその辺は気を付ける。…別に、あんたの都合がいいように呼べばいいよ。
( 涼しい顔で答える相手に浮かれた気持ちは凪いでいき一人落胆して。別にあの名前呼びに特別な意味などなにもなかった。一人期待した自分が馬鹿みたいで、だとしてもあんな期待させるような呼び方をしなくても従兄弟関係にすると伝える時に言えばよかったじゃないかと自分勝手に相手を責める。でも相手には悪気はなかったのだし仕事上の話だ。それを自分が一人で勝手に舞い上がっただけ。相手を責めるに責められず行き場を失った感情がぐるぐる渦巻いては素っ気ない返事をして相手の胸元にバイクのキーを押し付けると一先ず二人で校長室に挨拶に行くために校舎へと足を進めて )
『ねえねえ、相馬くんって新しく赴任する埜上先生の従兄弟なんでしょ?先生ってどんな人なの?』『さっき別のクラスの子が職員室で見かけたって言ってたけど超イケメンだったらしいじゃん』
( 校長室での挨拶を終えて自分たちは一旦分かれて、自分は今回の依頼で編入することになるクラスに来ていて。既に担任の案内のもと自己紹介済み。ちなみに担任も自分が潜入捜査で来ていることは知らないため、本当に生徒だと思っている。今回の依頼の原因がなにであるか分からない以上、校長と教頭以外の教師たちも調査要員のうちだから。そして今はホームルームを終えた空き時間で生徒達に囲まれ、いち早く相手のことを聞きつけた女子生徒たちに質問攻めにあっていて。中身は23歳なので相手のお墨付きがあったとはいえ正直不安はあったが誰も自分が成人男性だと疑う生徒いなくて。騙しているようで気負いはあったが仕事と割り切っては質問してきた女子生徒に笑顔を向けて「そうだなぁ、とにかく頭が良くて切れ者…あとはこのあとの授業で見た方が早いかも。」と相手が性格も変えて変装してくるかもしれないため当たり障りなく答えて。そのあとも会話を続けるうちに例の夜な夜な聞こえてくる謎の声の話題になって、その声は昨日も聞こえたらしく。生徒たちの話に耳を傾けつつ時折相槌を打ったり質問したりして話を合わせて情報を聞き出してはチラリと時計を見て。そろそろ始業時間。仕事とはいえ相手の教師姿はひそかに楽しみにしていて学校から借りた教科書やノートを取り出しながら生徒達と会話して )
ああ…ってか何で怒ってるんだ…?
( 彼の内情までは分からないことから突如素っ気なくなった様子に瞳をぱちくり不思議そうな表情を浮かべつつもそのまま彼と校長室へと共に向かって。彼は一足先に教室へと向かっては校長からくれぐれも彼と喧嘩をしないようにと釘を刺されつつお願いしますねと年を押されて。一番目は科学の授業が彼のいるクラスでの授業を行わなければいけない。失礼しますと口にしては校長室から出て彼のいるクラスへ向かいガラガラと扉を開けて。教室の中に入れば先程の校長室の後に言われた台詞にちらりと彼に目配せして。そして教卓へと移動してきてチョークを手に持ち、黒板へカッカッと音を響かせ自分の名前を書きチョークを置いて手を叩きくるりと生徒達へ向き直り「おはようございます。俺はご病気の磯田先生の代わりに今日赴任してきた埜上 狼苑です。よろしくお願いします。…堅苦しい挨拶はこのくらいにしておいて…俺から言うことは一つだけだ。俺の授業を真面目に受ける意思がない者は出て行ってくれて構わない。聞く意思がない奴に俺も教える気はないからな。……誰も出ていかないのか?……よろしい。では授業を始める。教科書120ページを開いて」爽やかな笑みを浮かべて挨拶を紡ぐも、それも長くは続かずに表情は穏やかながらもぴしゃりとそう生徒達に言ってのけて。ぽかんと生徒一同しつつも誰も出ていくことはなく、満足げに口角上げては自らも教科書を開いて授業を開始させて。分かりやすく的確にがモットー。小難しいことを言っても生徒達は理解が出来ないだろうと要点を黒板へと書き出し、補足の説明やユーモアを交えた解説を行っては独自スタイルの授業を展開させていき )
( 相手の授業の掴みは完璧。相手の見た目もあって教室の中がはじめは色めき立っていたが授業が始まれば、生徒達はどんどん相手の授業に引き込まれていって。魅力的な声に底知れない知識を生かしたたぐいまれない授業は確かに分かりやすく、おそらくこのクラスの中で一番馬鹿な自分でも何となくは理解できて。相手の授業をもっと聞いていたい気持ちはあったがあくまでこれは依頼である。自分は良い成績を取りに来たわけでも楽しいスクールライフを送りにきたわけでもない。自分の席は校長の計らいで一番後ろの角の席だったので後ろから教室全体が見渡せる。ちなみに夜な夜な聞こえる謎の声は主にこの教室あたりから聞こえるとのこと。しかもその声は日によって男だったり女だったりするとか。さらに言えば謎の声の原因を突き止めようと教師たちが夜に見張りに来たこともあったらしいがその日に限って謎の声は聞こえなかったらしく。兎にも角にも聞こえる場所が此処ということでこのクラスに編入になったわけだが、流石に授業中に怪しい動きをするものはいなくて。そんな時に隣の女子生徒からトントンと机を叩かれて一枚のノートの切れ端を渡される。何かと思ったが女子生徒は既に黒板を向いていて相手の授業を楽しそうに聞いていて。ノートの切れ端を開いてみると“お昼休みに埜上先生と屋上に来て”と書いてあり。何故相手と…と思ったがとりあえずは相手の授業に耳を傾けて。相手の授業は分かりやすい。が、今まで勉強をしてこなかった自分にとっては意味の分からない言葉が何度も出てきて頭の中に入ってこない。そうなると襲うのは睡魔。相手の声が好きで落ち着くということもあって段々瞼が重たくなってくればこくりこくりと船をこぎ始める。これは依頼だから起きねばという気持ちに反して相手の声は心地よい微睡みへと誘い、そういえば高校時代は眠たくなる時に限って授業中に当てられてたっけなんて思い出しながらカクンと頭を下に向けて居眠りを始めて )
…俺の授業で居眠りとはいい度胸だな?従兄弟じゃなかったらつまみ出してたぞ…次寝たら…キス…するからな?
( いびきこそ聞こえてはこなかったが彼が居眠りをしていることにいち早く気づいてはジト目で見ては教卓から彼の席へと徐に近づいていき手に持っている教科書を丸めて額辺りをパコンッと軽く叩いてから流れるように丸めるのを解いてその背を教科書の角辺りでツツーっとなぞるように這わせてからだめ押しに耳元で囁いて。一番最後の部分は彼にしか聞こえないような声量で告げ教卓へと戻っていっては授業を再開させて。人前だろうが自分には関係ない。やろうと思えば出来るため時折ちらりと彼を確認するように視線を向けて授業を進めていって )
あたッ……んなこと言ったって先生の声が子守歌に聞こえるから…っ、
( 額の衝撃に痛くはなかったが小さく声を上げては額を摩りながら少し気だるげに相手を見上げて抗議するも、背中に当たる教科書の硬い感触にゾクゾクとしてピンと背筋が伸びて。加えて聞こえてきた囁きにバッと片耳を塞いでは顔を赤くして恨みがましげに相手を見据えるも、特に本当に嫌と思っている訳ではなく内心では起こしてくれたことに感謝していて頬杖をつくと再開される授業を聞いて。それにしてもキスするとは本気で言ったのだろうか。いや揶揄いに決まってるだろと起きてはいるが授業とは全く関係ないことを考えていると隣から視線を感じて、ちらりと横を見ると先程ノートの切れ端を渡してきた女子生徒が何やら目を輝かせて此方を見ていて。「…?」なんだと思うも軽く愛想笑いをしては相手が授業をする様子をぼんやり眺めていて。そして授業終わり。相手と話したかったが既に相手の周りには人だかりが。『先生の授業すごく分かりやすかったです。ここも分からないんですけど教えていただけませんか?』『あ、ずるい!俺も教えて欲しいです。』『それより先生って何歳なんですか?彼女さんいます?』と大人気も大人気。思春期には相手の大人の魅力が堪らないんだろうなぁと考えながら、話し掛けられないのなら仕方ないとこの高校は休み時間ならスマホを触ってもいいのでスマホを取り出すと“俺の隣の女子、早川さんが昼休みに俺とあんたで屋上に来てほしいってさ。俺は今から他の生徒とテキトーに話して情報集められそうなら集めとくよ”と駐輪場での出来事は気にしていない素振りのメッセージを送ってスマホをポケットにしまうと話し掛けてくれた男子生徒に笑顔を向けて、生徒たちに囲まれる相手を気にしつつも会話を始めて )
…お前ら…俺の貴重な休み時間が…ああ…わかった…教えれば良いんだろ…ここは、こうで…お前はどこが分からないんだ…?…勉強のこと以外には答えないからな…はい、次…ないな?よし…じゃあ…解散。
( 彼は結局眠ることはなくきちんと起きていて。チャイムが鳴れば授業は終了。さて、さっさと教室から出るかと思えばそんな自分の心情知らずに男女問わずで生徒たちが周りにわらわら集まり始めて。色々な質問をしてくる生徒たちにぽつりと本音溢しつつも一人一人質問に答えていって。普段はあまり吸うことはないのだがストレスを特に感じた際などは煙草を吸いたくなる。彼が来てからはそれがめっきり減っていたが今はまさにその状態で。あまり人に囲まれることは得意ではない。仕事ならと割りきれるが体は正直で。全員の質問に応えてはそれ以上の質問はないことからささっと教室から出ていって。設けられている喫煙スペースへと移動してズボンのポケットから煙草を取り出せば一本出して口に咥えては火を付けて。吸い込んで息を吐けば高ぶる気持ちは落ち着いてきて。そして先程生徒たちに囲まれている際にマナーモードにしているスマホが震えたのに気づいており確認しては彼からの報告に“わかった…昼休みに屋上に行く。俺も職員達から聞けることは聞いておく…後でな”と返事を返して。朝の一件には触れてこなかった彼だが気にしていないことはないのだろうとも思いつつ相手が触れないなら自分が触れるのもなとそのままスマホをポケットへ入れて次の授業が始まるギリギリまで一服していて。2時限目は他のクラスでの授業。恙無く終わらせれば3時限目からは受け持ちクラスがないため職員室へ移動して同じく受け持ちのクラスがない職員へ他愛のない話をしながらそれとなく情報を聞き出していて )
あまり有力な情報はなさそうだな……ただ無さすぎるってのもちょっと怪しいけど。
( 今は四限目の授業が終わったところ、二限目からの授業を聞いて尚の事相手の授業が如何に分かりやすいかを実感すれば、依頼とはいえ授業もそつなくこなす相手を尊敬して。そして結局休み時間の間や授業中に保健室に行って話を聞き出したりもしたがこれと言って有力な手掛かりは得られず。謎の声については皆知っているようだが其の正体は分からないようで、噂だけが一人歩きして“昔この学校でいじめを受けていた生徒たちの怨念”だとか“失恋したり受験に失敗したりした生徒たちの生霊”だとかオカルト的な噂が広がっているようで。ただあまりにも現実離れした噂はどうにも真実を隠すために意図的に作られたものにも思えて。ともあれ今は昼休み。お昼を食べがてら情報を引き出そうかと思っていたが大方情報を出そろったように思えば、やはり夜に直接学校を張るのが先決かと思い。となれば女子生徒との約束を果たそうと。屋上に呼び出され何があるのかは分からないが、とりあえず相手と合流してから向かうことにすれば職員室に足を向け。「失礼します。埜上先生いらっしゃいますか。」昔から慣れない職員室。出入口から声を掛けては相手の姿を探すもちょうど他の先生も近くにいなくて声を掛けて貰う手段は使えなさそうで。かと言って生徒が勝手にズカズカ職員室の奥に進むことはできないため「埜上せんせー…」と先程よりも少し大きめの声で声を出してみて )
…何度も呼ばなくても聞こえてる。…では志水先生、俺はこれで…。
( 職員室の奥まった席が己に与えられたデスクスペースで。近くにいた職員に話を聞いてみたが特にこれという決定的な情報は挙がらない。実際夜に校舎探索をした方が確実な気もしてきて。他愛のない話も終える頃、何やら話の方向性が自分の個人的なことへと変わってきては話を終えるタイミングを失っている所にまさに助け船。彼の声が聞こえてきては返事を返そうとするも気づいていない職員によりそれは遮られて。こいつの耳は難聴なのかと思いつつ、少し大きな声で再度彼の呼び声が聞こえてきては席から立ち上がり出入り口付近へ移動して視界に入った彼に言葉を返して後方へ会釈しては彼と共に職員室から廊下へ出て「…大した情報もないくせに…ベラベラと関係ない話をされたり聞かれたり…無駄な時間を過ごした…これもうお前の弁当を食べないと割りに合わないな…お前の方の成果は?ま、どうせなにも出てこないだろ」げんなりしたようにそう言葉を紡いでは彼に成果を問うも聞くまでもなく結果は分かっているとでも言いたげに口角を上げて )
はは、でも良く言うだろ。無駄だと思う時間でも捉えようによっては意味のあるものになるって。どうでもいい無駄話でもその耐えてる時間が自分の為になったり後々ひょんなことで繋がりがあったりな。…ま、師範の受け売りだけどなー。
( 此方に気付いて近付いてきてくれる相手にホッとしつつ相手と共に職員室を出ては、相手の様子に小さく喉を鳴らして。生徒でもあれほど人気だったのだから歳の近い教師や、年配の教師からもきっと注目を浴びて、さぞどうでもいい世間話やら身の上話をされたり聞かれたりしたんだろうと同情しつつ軽い物言いでへらりと笑って。この時既に自分の中で駐輪場でのことはやや薄れており、続く言葉に首を縦に振って。「何もってことはないけど…目ぼしいものはないな。ただそれが逆に怪しいんだよ。多分一部の生徒同士でなにか隠し合ってる。で、わざとオカルト的な噂を流してる。そんな感じがした。……あー弁当か。そう言えばまだ食べてないな。…約束の時間までまだ少しあるし一緒に食べるか?」現時点での自分の考えを述べては弁当の言葉にまだ食べてなかったことを思い出し。実はお弁当は朝に相手に作って持たせた。自分の分も今持っている学生鞄に入っていて。スマホで時間を確認すればまだ女子生徒との約束の時間まで少しありそうなので場所を見つけて一緒に食べるかと相手を見遣り )
……そうだと良いんだかな…。
( 彼の口から出た師範の受け売りの精神論にぽつりと言葉を返す。あの無駄な時間が何かに繋がる気はしなかったが彼がそう言うのならば悲観的に捉えるより良い気がして。彼の聴き込みも成果はなかったよう。ただお互いに成果がないのは彼が言う通り何かを隠したいのか知らしめたいのか何者かにより意図的に流されている噂であるのは間違いないだろう。「……情報が少なすぎるな…引き続き、頼むぞ─ああ、目的地は一緒なんだから分かれて食べる必要もないだろ。明日以降はどうなるかわからないが、無理して俺と一緒に取ろうとしなくていいからな。…お前がどうしても俺と食べたいって言うなら…食べても良いけど?」正直情報が少なすぎる。生徒から聞き出すのは彼に任せた方が良さそうだと判断すれば頼むぞと告げて。彼から昼飯を一緒食べるかと問われれば断る理由もないし何よりこれから同じ場所に行かなければならない。離れて食事をするのは非効率で。それだけの理由と言うわけでもないが“いつも一緒に食べているからいないと落ち着かない”なんてわざわざ口にするのもなと思っていて。しかし明日以降は別々でも仕方ないと口にして此方のことを気にしなくていいと伝えて。彼自身もクラスメートと食べたりするかもしれない。そうは思うも彼が自分と食べたいと言うならその願いは聞いてやらなきゃなと揶揄するように笑いながらそう続けて。実は職員室を出る際に弁当箱の入った袋は持って来ており、どこで食べるかなと考えて)
……?よく分かんないけど、…どこで食べる?空き教室はあったと思うけど人目つくところだとあんたのところに寄ってきて食事どころじゃなくなりそうだし…。あ、化学実験室は?あそこなら普段鍵かかってるから生徒寄り付かないだろ?
( 軽く聞いた質問は何だか難しく返答されて首を傾げる。とくに考えもなく聞いたため、どうしても一緒に食べたいかと言われると正直よく分からず、そんなことを聞いてくるということは相手も別に自分とは一緒には食べたくないだろうかと相手の心情は知らないためそう思って。だが考えるうちにまどろっこしくなってくれば、自分の中で一緒に食べるという選択を決めて何処で食べるか問い。そこで相手が理科の教師として赴任されたことを思い出せば、それなら実験室の鍵も使えるだろうと相手を見て )
……ああ、そうするか。鍵ならここにある。中を見に行って拝借した時に返すの忘れてた…行くぞ光輝。
( 少々難しく言ってしまったようで彼の表情を見れば自分の言いたいことは伝わっていないことは分かって。しかし彼が自分と昼食を取ると決めたのか食べる場所の提案をしてくれればそれ以上その話を続けようとせず、誰にも邪魔されずに食事を取れる場所はそこしかないかと納得しては頷いて。徐に弁当袋を持たない反対の手で思い出したように白衣のポケットから実験室と書かれた鍵を取り出して悪戯に笑ってヒラヒラ揺らせて見せて。実は情報収集する傍らでいずれやる実験の授業で使う化学実験室をチェックもしていて。ちょうどその時に借りた鍵がそのまま返されることなくポケットに入っていた模様。要は返し忘れていただけだがそのことを素直に溢しながら職員室へ取りに行く手間が省けたこともあり鍵を一旦ポケットへ仕舞うと彼に声をかけそのまま化学実験室へ向かって。とにはかくにも腹拵え。辿り着いた教室の前でポケットから鍵を取り出せばガチャリと扉を開いて。中は何てことはないどこにでもあるような実験室。横に長い机に丸い椅子。フラスコやらビーカーやらの器具が棚の中に綺麗に整頓されていて。適当な椅子へと腰を下ろすと机に弁当袋を置いて紐を解き、弁当箱と箸を取り出して )
へぇ、用意周到じゃん。にしても学校でお昼なんて久しぶりで変な感じする。
( 鍵を返し忘れていたという相手に対して冗談半分に用意周到だと笑うと、相手ならたとえ本当に鍵を返却し忘れていたのだとしても、現状を予測して態と忘れたか、はたまた天が味方したかなんてのもありそうだなと思って。相手と共に実験室に向かいつつあまり良いとは言えない高校時代を思い返すも不思議と相手となら負の感情は沸かずに久しぶりだと楽しげに零して。実験室について相手に施錠して貰っては、実験室特有の薬品混じりの湿気を帯びた匂いが鼻腔を擽り。「俺、原理とか難しい言葉は良く分かってなかったけど実験だけは好きだったんだよな。ま、成績は最低だったけどな。」肩を竦めて軽い口調で言えば相手の向かいの席の丸椅子を引いて座り自分も弁当を広げ始め。弁当のおかずはド定番のアスパラと人参の肉巻きとから揚げ、甘さ控えめの卵焼きにほうれん草と油揚げのお浸し。どれも代わり映えのないものだが冷凍食品は一切使わずに朝から作ったもの。弁当を作るのは久しぶりだったのと、学校という人に囲まれる仕事のため人混みが苦手な相手の精神を少しでも癒せるようにと気持ちを込めたので、ついつい没頭してしまって。「…今更だけど勝手に弁当用意したのはこっちだし、もし食堂が良かったらそっちでもいいからな。…今更だけど。」急に弁当を押し付けてしまったのではと不安になっては、今更だけどと二回ボソボソ言ってチラリと相手の反応を窺って )
俺もだよ…ま、お前となら悪くない。
( 彼の言葉は此方を気遣うものなのか本心なのかそれでも悪い気はしないため口元を緩める。向かいの席についた彼の何気ない言葉にはなんだか染々と久々だと同意を示すように言葉を紡ぐ。彼の学生時代の話が聞ければ笑み浮かべ伏せ目がちに「…ま、原理がわかってないと成績には繋がらないからな…でも、そうか…好きか…だったら俺の授業も楽しめるかもな…どうせこの依頼を達成すれば学校に来ることもなくなる…どうせなら楽しんだ方がいい…俺も…お前もな…」自分が教師で彼が生徒…しかも従兄弟。こんな関係も依頼を終えればそこでその関係も終わる。永遠に続かないのならその一時くらい楽しんだもん勝ちだと思って。弁当箱を開けるとそこには弁当の定番のおかずが並ぶ。どれも口にしたことがあるものだがどれもが彼の手作り。便利な冷凍食品はない。自分より早く起きて彼が気持ちを込めて作ってくれたのだと思えば“いただきます”と手を合わせて。今更だと溢しては不安げな視線を此方へ向ける彼。箸を持ちアスパラと人参の肉巻きを掴んではぱくりと口に運んで。もぐもぐ咀嚼してごくんと飲み込めば「……お前の弁当が良い…好みの味を一から探すのは面倒だ…それに俺は…お前の作る料理が…好きなんだよ…気に入ってる…また頼むな…?」彼の方は見もしないで穏やかな口調でそう口にしてはふっくら綺麗な形をしている卵焼きを箸で一口大に切って掴み口へと入れて )
そ、でもテストはちゃんと受けてたんだぜ。順位は下から数えた方が早かったけどな。でも順位確認するだけまだ偉くね?なんて。埜上…先生は一番取ってそう。…先生の実験なら尚の事楽しそうだな。確か明日も俺のクラス、化学の授業あったし楽しみにしてるよ。
( 普段もこんな感じで話すこともあるが今は特に生徒という設定もあっていつもより明るい声色で饒舌に話せば、自分の欠点も隠すことなくおちゃらけて話し。相手の学生時代については聞いたことないが、以前見た警視庁のお偉いさんが父親なら教育も厳しそうだなと思い。でなくても相手は自ら努力して勉強しそうなので、きっと学生時代も優秀な成績を収めていたのではないかと思い一番を取ってそうだと小さく零して。続く相手の言葉には自分も同意見で、どうせなら楽しむつもり。相手の授業を受けるのもこの機会しかないため、明日からの授業も期待していると笑みを向けて。そしてお弁当はどうやら此処で食べる模様。手を合わせる相手にそれだけで嬉しくなって不安が薄らいでいけば、アスパラと人参の肉巻きを食べる相手を緊張の面持ちで見守り。次いで相手から零れる言葉。ほんの少しだけ遠回りしているが直接的な誉め言葉に小さく目を見開いて。目は合わないがそれが本心なのだと分かると分かりやすく頬がゆるゆると緩んでいき。「おう、この依頼中は毎日作るつもりだし、頼まれればいつでも作る。……ってもしかして埜上せんせー照れてるの?」意気込みたっぷりに嬉しそうに頷くも、上機嫌になると悪い癖ですぐ調子に乗ってしまう。触れなければいいものをつい少し揶揄いたくなってしまえば、卵焼きを口にする相手をじっと見遣って悪戯に口端を上げて)
ま、テストの順位だけが全てじゃないからな。何だかんだ最後はその生活が良かったと思えるなら…それで良いんだと俺は思う…。テスト勉強をひいひい言いながらしている奴が少し羨ましかったな…俺には簡単過ぎてつまらない時間だったから…。…ああ、退屈はさせない。期待して良いぞ。
( 彼の学生時代がまた知ることが出来た。予測は立つが彼の口から聞けるのはまた違った感覚で。おどける彼に微笑み染々と自分が良かったと思える学園生活を送れたならそれでいいと言葉紡いで。自分の学生時代は…試験勉強せずともテストは常に一位。授業は出ているだけで他の勉強をしていて。友達もいないし告白等はされたが付き合うこともしなかった。自分のやりたいようにやっていたと思っていたが…それは全て幻想で。今の自分は確かに自分なのだ。懐かしくも忌々しい記憶を思い出しながら自分の学生時代を少しだけ垣間見せて。しかしすぐに口を閉ざすと彼の自分の授業を楽しみにしていると言って貰えては落ちた陰りは払拭されていき柔らかく微笑んでは期待して良いぞと告げて。どこか嬉しそうな彼の口調を聞きなから揶揄されては「…お前は面白い事言うな?俺は料理を味わってるんだ…お前が作ってくれた、この料理を…明日も食えるのか…楽しみだな」照れてはいなかったこともあり自分さ今彼の作ってくれた弁当の中身に意識を集中していることもありそのことを伝えては楽しみだなと伝えてはほうれん草と油揚げのお浸しを口にして )
俺もそう思う。結局順位は唯のお飾り。他人と比べるよりも自分の中でどう取り込むかが重要なんだよ。ま、学歴社会でそうも言ってられないし馬鹿な俺が偉そうにいうことでもないんだけどな。
( 結果的に学生生活が良かったかは置いておき、いつもの明るい調子で肩を竦めて、相手の学生時代の話を聞けたことを嬉しそうに聞きながらやはり相手は天才なんだなと尊敬するのと同時に天才ならではの悩みもあるのだろうなと思って。僅かに相手の表情に陰がさしたのに気にはなったが、話題が次に移ったのでそちらにシフトして「…そう言って貰えると作り甲斐がある。リクエストがあればキャラ弁でも何でも作るぞ。これでも弁当は作り慣れてるし、旨い弁当で活力つけないと。」弁当を味わって食べてくれるのが嬉しくて頬を緩めながら自分も弁当を食べ進めて、どうせなら相手の好きなものを食べて貰って英気を養ってほしいと思い、冗談を織り混ぜつつリクエストを聞くと笑って頷き )
それが分かってるならいい…学歴が高くても馬鹿な奴もいる。ただ単に学歴が高いだけの奴を俺は傍に置くつもりはない。
( 彼の言葉に口の中のものがなくなってから言葉を返し。馬鹿な俺がと口にする彼にただ学歴が良いだけの奴は自分の傍には置かないときっぱり口にする。自分のことを考えて作られる料理は有り難いし格別美味しく感じる。自分だけに作られたのだと付加価値がつくからか…否作り手の真心を感じられるからか…。でも決して誰でも良いと言うわけではない。彼からリクエストがあれば何でも作る…そんな言葉が紡がれればパクリとからあげを齧ってはもぐもぐしながら考え「……弁当らしい弁当なら何でもいい…お前に任せる」これがいいあれがいいと言えるのは母親に弁当を作って貰ったことがある奴か、作る立場にある奴くらい。これといったものは思い浮かばずに今日のようないかにも弁当らしいものが良いと口の中に入っているものが無くなってから告げて。自分が学生時代に食べていたのは有名料理人の作った料理。学校へわざわざ料理人が出向いて料理を作る。周りからは羨まれていたがその実自分は弁当こそ羨ましくて。味もだが一番は愛情がある料理を食べたい。彼の作る料理はそんな自分の心を唯一満たしてくれて )
弁当らしい弁当か……分かった。明日からも楽しみにしといて。
( 相手らしい言葉に耳を傾けつつ当然自分は馬鹿というか学歴も良くないため、そんな自分を認めて貰えているようで嬉しくて目を細め。弁当を任せられれば今日作った弁当の様に基礎的なことは知っているものの、自分のイメージする弁当は一般的な物と少し違っていて。しかし弁当らしい弁当には変わりなく、任せると言われたので嬉しそうに頬を緩めてはやる気満々に頷いて少しだけ口端を上げて。そのあと弁当を食べ終えては丁度女子生徒と待ち合わせた約束の時間になったため、弁当箱を鞄にしまい席を立って廊下に出る。相手に実験室の鍵を閉めて貰っていざ屋上へ足を進めようとしたとき、なぜか廊下の向こうからあの女子生徒が急いだ様子で近づいてきて『よ、よかった。此処に居た。まだ連絡先交換してなかったから…。ごめん、この後の約束だけどキャンセルで。別クラスにネタになりそうなもの見つけたの。あ、でも話は明日するからよろしくね。先生もごめんなさい。相馬くんにはいちおう連作先渡しておくわ。』女子生徒は上がった息を整えながら早口にのべると連絡先が書かれた紙を押し付けて来て、また慌ただしくその場を離れていき。「…何なんだ…予定なくなったな。…授業でももう情報はなさそうだし捜査するなら夜かな。」眉を寄せて女子生徒が去った方見遣って連絡先が書かれた紙に視線を落とすも、今は謎の声の操作が先。紙をポケットにしまっては今回の調査は夜がメインになりそうだと口にして少し浮かない表情をして )
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