ミステリアスで妖艶な雰囲気の美形(探偵) 2019-11-10 16:38:54 |
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……お前は…人に断りもなく…キツいなら無理はするなよ?ああ…気を逸らしてやれば良いのか…。
( 笑いながら大丈夫だと自分から離れた彼。そこに何か引っ掛かりのようなものを感じるもそれを問う間もなく次の指令が寄越されて。指令を読み上げながら自分に断りもなく横抱きする彼をジト目で見つめつつも、暗証番号を二つ目教えて貰えるサービス問題で張り切る彼にキツいならこの指令は捨てても良いと思っているため無理はするなと告げて。しかしながら気を逸らしてやれば20分くらいならいけるだろうかと思いながら横抱きされることに羞恥心はないためそのままだっこされつつ「…相馬、お前…麻婆茄子とか作れるか?まぁ麻婆豆腐でもいいが…俺、好きなんだよ」意識を逸らせようと自分の好きな物を明かしつつ彼に話しかけて。先程、彼は自分とのキスは嫌ではない…そう告げた。では何故涙を流したのか…あの涙は傷ついた涙だった。自分とキスして傷ついたのではないとしたら…キスをした動機…?指令だから…いや、それは流石に自惚れ過ぎか…そう思いつつ、彼が自分との口づけが嫌ではないこともどこか嬉しく感じていて )
おう、大丈夫だ!埜上はもやしだからいける気ィする。…?
( 此方が断りなく横抱きすると少し渋い顔をするも大人しく横抱きされる相手。なんだかんだ無理はするなと此方の心配をしてくれる様子に大丈夫と元気に頷き、全く悪意はないが相手のことを“もやし”とディスっているのは気付かずに得意げに笑って。続く相手の“気を逸らす”というのが相手なりの気遣いだということは気付かずに首を傾げるも、問われた質問には嬉しそうに笑み「もちろん!麻婆豆腐も麻婆茄子もお安い御用!前に買ったカイエンペッパーも残ってるし調味料は揃ってるはずだから家に帰ってすぐ作れるぞ。なが〇にえんには頼らない。そっか、埜上は麻婆が好きなんだな。」相手の好物が知れて嬉しそうにしては某有名メーカーの素には頼らないで一から作ることをやる気満々に宣言して頬を緩ませ。そんな相手の気回しもあり時間は過ぎて残り3分。相手が先程のキスについて考えていることは知らずにペラペラと話していたが流石に腕はパンパン。額から汗がタラリと垂れて手や足が生まれたての小鹿の様にプルプルしだして。それでも此処までやってきて失敗なんて絶対に嫌だと思い、手足に力をいれて踏ん張り。と、──「…ッ、ふはは…ちょッ…また擽ったいの来たんだけど…ヒヒ、…こんなトラップあるなんて聞いてなっ…アハハ…、」急に襲ったのはあの腕から伝わるこそばゆさ。恐らく青年が脆弱な電流をまた流しているのだろうが、体力も気力も限界のときには辛いもので、ケタケタ笑いながら必死に力を入れる。正直、相手の前でこんな至近距離でこんな顔見られるのは恥ずかしい。でも此処で相手を落としたら今までの努力は水の泡。一度歯を食いしばってから精神を集中させて「…下には虫の大群…じゃなくて大量の画鋲…とにかく埜上落としたらヤバイのが落ちてる…だから落としたらだめ…ふは…ヒヒ、…は、埜上、やばい、から、もっとギュッて掴まって。」下には危険物が落ちていると想像することで相手を落としてはいけない気持ちを高めるも笑いは止まらず。これではぎりぎりやばいと思えば息を乱しながら相手にもっと自分の体に掴まるように要求して )
…誰がもやしだって?お前は俺の裸見てるくせにそんな意地悪言うのか…?
( 大丈夫だと元気よく告げた彼。しかし次の瞬間に此方をもやしだて口にされればピキリと微笑みに青筋を立てて敢えての穏やかな口調で問いかけて。と言っても本気で怒っているわけではない。彼は自分の入浴を手伝ってくれた際に上半身ではあるが見ているのにと告げて。帰ったら作ってやると笑顔を浮かべた彼に釣られて微笑んでは「ああ、楽しみだな」と言葉を返し。何だかんだで残り3分。彼は限界が来ているようで汗も額から流れている。腕だってパンパンなのにここまで来て失敗は嫌なようで自分を抱え直す。自分に出来ることは何だろうかと考えようとしては再び彼は笑い出して。また電流が流れているのだと彼の説明で理解しては自分にしがみつくように要求してくる。色々限界な彼にこれは酷だなと思いつつ漸く彼の首に両腕を回して更にぐっと体を密着させて。目の前には彼の首筋。汗ばんだ首を見ていては顔を近づけかぶりとかじりついて。擽ったさを上回る痛みを与えればどうだろうと思ってのことで )
あはは、冗談だって。まあ細いとは思ったけど女ってもやしって言ったほうが喜ぶじゃん?なんてなァ
( 青筋を立てる相手に無意識だったとはいえ自分の失言に気付き一瞬ヤバとなるも相手が本気ではないことが何となく分かれば未だに相手が女である可能性を引きずりつつ冗談まじりに笑って。料理を楽しみにしてくれている様子も嬉しく頬が緩むが今はそんな余裕は微塵もない。体力も気力も限界なところに擽り攻撃。泣き顔も見られて奇怪な笑い顔も見られて恥晒しもいいとこだが、今は耐えるしかないと気合を入れ直す。相手が首に両腕を回してくれたことで大分楽になりホッとしたのも束の間、首筋に走った痛みにビクンと体が揺れて「──ひぎッ…な、何するだよ!埜上は俺の味方じゃ…あはは…、」首筋の痛みのおかげか少しの間擽ったさを忘れるも、危うく落とすところだったので何をするんだと少し顔を赤くしながら抗議して。しかしまた襲ってくる擽ったさに笑いを零し、何だか自分が壊れたオモチャにでもなった気分だと思ったところで、ピピピピとタイマーが鳴る。時計はなかったが感覚的には20分、それにこの状況だからそのタイマーは当然20分の終わりを告げる合図だと思って。しかし実際は19分50秒を告げるタイマー。多少の違和感はあったが限界の限界を超えていた自分はそれが青年の罠だと気付かずに20分経ったと思って相手を下ろそうとして )
……教えといてやる。女でももやしって言われても喜ばないぞ。
( 笑って冗談だと告げる彼に微笑んだまま、女でももやしと言われても喜ばないことを教えてやって。そんな彼の限界が訪れそうになりしかもあの擽ったいと言っていた電流が流れるというピンチに自分が出来ることして。首筋に噛みついたのだが赤い顔をしながら味方じゃないのかと言われるも自分は協力のつもりで行ったこと。何とか踏み止まるも突如鳴り始めたタイマーの音。普通なら20分経ったことを知らせる音だと錯覚するだろう。お誂え向きにこの場所には時計はない。しかし自分の考え正しければまだ20分は経っていないはずで。勘違いした彼が自分を下ろそうとすれば更にぎゅっとしがみついて「馬鹿、下ろすな…まだ20分経ってない。お前は俺に麻婆を食わせない気か?…もう少しだ…頑張ってくれ、相馬。早く帰れるかは今、お前に掛かっているんだ…俺も協力する」それを制止する言葉をかける。大体後10分くらいなはずだが敢えて数字は言わない。今の彼にしたら10分ですらキツいはずだ。そんな彼に頑張れとは言いたくなかったが“頑張れ”は頑張っている人を更に高みへ導く言葉でもあって。自分も協力すると伝えては顔を首に近づけぺろりと舌を這わせるように舐め上げては再びがぶりと歯を立てて。これが例え一過性のものであっても一時的に擽ったさが抑えられ痛みにより体は強張ることもあり身が引き締まるのではないかと考えていて )
え!そうなのか?女は細いって言うと喜ぶやつ多いから俺は『もうもやしって何よ!』って言いながら照れてるのかと思った…。
( 相手から言われた衝撃の事実にびっくりして目を見開いては今度から気を付けよう…なんてブツブツ言いながら相手を横抱きすることに専念して。そんな横抱きも漸く終わり。まさかタイマーが19分50秒で鳴っているとは思わずに漸くこの苦しみから解放されるとホッとして相手を下ろそうとするもギリギリのところで相手から待ったが掛かり、下す寸でのところで体勢を立て直して「──何?まだなのか?…埜上が言うならそうなんだよな。…よし、頑張る。…ッてまた…、」もう終わりだと思ったところからの気持ちの切り替えはかなり酷。正直限界突破していたのでもう無理かと思ったが相手の“頑張れ”“協力する”の言葉にグッと背中を押されて踏みとどまり。ただ気力だけでどうにかなるものでもなく、歯を食いしばって。そこでまた首筋を這う生暖かい熱とピリッとした痛み。ビクッと体が震えるも反射的に力が入れば体勢を保つことが出来て。そして地獄の10秒。たった10秒だったが酷く長く感じた時間はようやく終わりを告げて、ピピピと正規のタイマーが鳴り響き『流石埜上さま、時間のトラップには引っかかりませんでしたね。まあ助手さんは少し見苦しい一面がありましたが…及第点でしょう。指令はクリアですので暗証番号をお教えします。暗証番号は“7と4”です。』プツンとまた一方的に通信が切られて、擽ったさもなくなり指令はクリアとなったのだが、変に緊張してしまい体に力が入って相手を抱えたまま動けずにいて )
(もやしと言われて喜ぶ女性がいるならよほど辛い環境下にいたかもやし好きの変わり者のくらい。やはり彼は女性の扱いには慣れていないよう。驚きつつも自分の言葉を聞き入れている様子に口角は上がって。それは馬鹿にした笑いではなく微笑ましさからきたもので。続いても自分の言葉を受け入れて体勢を立て直した彼に協力しながら10分経過するのを待って。ピクリと反応を見せつつも自分を下ろすことなく正規のタイマーの音が響く。彼の首筋から顔を離せば聞こえてきた青年の声、此方が口を挟む隙を与えずに話続け暗証番号を二つ告げると共にまた通話は切れて。すぐに自分を下ろすと思っていた彼。腕も体もとうに限界を迎えているだろうに一向に下ろす素振りを見せないその原因にも気づいては再び首筋に顔を寄せ先程まで噛んでいた箇所をペロリと舐めてツツー…と舌を這わせる。「お疲れさん、下ろして良いぞ?それとも俺はそんなに抱き心地が良いか?なんだったらずっとこうしてても良いんだぞ…?」耳元にも顔を寄せて囁くようにそう意地悪く口にしてはフーッと息を吹き掛けて )
…ッ、…そんなこと言われたらずっとこうしてなきゃいけなくなるんだけど…
( 相手を下ろそうとしても身体の強張りが解けずに動けずにいると首筋を伝う生温かい感触。そのねっとりとした感触にビクッと肩を揺らして、続く相手の囁きと耳に掛かる息に意識が相手へと向いて。もし腕がパンパンでなければ相手の身体を横抱きし続けたい。ただそれは体力的にも無理な話でぼそっと切羽詰まった声で呟いたあと、身体の強張りも抜けて手足が動くようになればギリギリの中でも決して雑に下したりせずに足から丁寧に床にゆっくりと下して。「…は…終わったぁ…。俺頑張ったよな?……てか、埜上…指令クリアのためとはいえ噛んだり舐めたりはやめろよ。…汗臭いし汚いだろ…」相手を床に下したところで漸く本当の意味で緊張が解ければフラフラと後ろにしりもちをつく形で床に腰を下ろして手をだらんとさせ天井を仰ぎながら息を吐き出し。しばらく息を整えたあと、チラリと相手を見遣り達成感から零れる笑みを向けるも、どうしても首筋を噛まれたり舐められたりしたのが気になって眉を顰め。ただされるのも恥ずかしいのに自分は汗を掻いている。普通は嫌悪感を抱くものなんじゃないかと思いながら首筋に手を宛がおうとするもすでに限界を迎えた手は上げられずにだらんとなったまま小さく震えていて。「…情けな…」ぼそっと呟いては羞恥やら諸々落ちるかせるため相手から視線を逸らし小さく溜息を吐いて )
…お疲れさん…よくやったな。
( 自分の冗談に戸惑う彼はとうに腕も体も限界なのに自分の足から丁寧に下ろしてくれる様に目を細めて柔らかく微笑めばお疲れさんと労い、付け加えるように褒めてやって。息を吐いて笑み浮かべる彼の髪を軽くポンポンして。体を休めながら眉潜め此方に首を舐めたり噛んだりしたこと汚いだろと嗜めてくる彼に「…なんだ、助けてやったのに随分な言い草だな…。汚いと思ってるなら俺は最初からしない」助けてやったのにと口にしながらも自分は神経質な性格。汚いと感じたものに近づくなど最初からしないと告げて。情けないと呟きが聞こえてくれば「……お前が居てくれたらから達成出来た指令だ。…相馬、お前が居てくれてよかったよ」素直に感謝の気持ちを伝えて。暗証番号も彼のおげで二つもわかった。次の指令や謎解きはと思っていればヒラヒラ紙がまた落ちてきて。それをキャッチするとそこにはこう書かれていた。【二つにひとつ。どちらか選択し、述べよ。一つは汝の知られざる隠したい過去。もう一つは○○嫌い】「………女嫌いだが…何か文句あるのか…?」自分にしてみたら一つに一つ。片方に比べたらどうってことはないもの。少しの間の後にぽつりと伝えて。その瞬間にガガッとノイズの音がして『…文句などありませんとも。女性は分かりづらく面倒なもの…埜上様も女性嫌いなのですね…素晴らしい。合格です。最後の番号をお教えします…最後の番号は…“1”です。…埜上様のことを色々知られて嬉しかったです…もう少し長く楽しんで頂きたかったですが…仕方ありませんね…ごきげんよう…埜上様…」そしてまた声は聞こえなくなり。番号をダイアル式の鍵に回して合わせていく。最後の1をセットし終えたら鍵は開いて。「ようやくか…行くぞ」これで終れば良いが…と思いつつ開かれた扉から彼と共に出て )
別に…あんたが軽かったから出来たんだよ。…それに励ましてくれたし…、
( よくやったと言われるとじわりと胸が熱くなり頬が熱くなるのが分かればスッと顔をそらしてボソボソといつものように素直じゃない言葉を零し。相手のしたことは一歩間違えば逆効果だった可能性があるため多少の不満はあるが、結果オーライ。指令はクリアできたので何の問題もないし、頑張れと励ましてくれたのは力になったため小さな声で「ありがと…」と付け足し。そして最後の指令。青年とのやりとりを聞き、相手は女嫌いなのだと認識しつつ暗証番号が無事に分かれば扉を開けることも出来て。これで漸く外に出られると思い相手のあとをついていく。あの青年のこと、まだ何かあるかもしれないと用心して足を進めていたが、相手が先に部屋の外へ出て自分も外へ続こうとした瞬間自分の目の間で扉がバタンと勢いよく閉じてしまい。「はっ?……何だよ。俺だけ出ちゃいけないってか?って…埜上大丈夫かー?…あー聞こえてないかもな。」ムッと眉を寄せるも一番に考えたのは自分だけ閉じ込められたという心配ではなく相手の安否で。扉をどんどん叩いて相手の反応を窺おうとするもこの重厚な扉では声は届いてないだろうと小さく溜息を吐いて。とその時またジジとスピーカーが音を立てて『すみませんが助手さんは出せません。最初に言いましたよね。すべて解けば“埜上さま”はその部屋から出られます。と。ちなみにこの声は屋敷全体に聞こえていますのでお二人に聞こえています。埜上さま、助手の代えなんていくらでもありますよね。彼のことはこのあとこちらで手厚く奉仕致しますのでご心配なく。彼にとって今より良い環境と給料を与えるつもりでいます。きっと彼もそのほうが喜ぶでしょう。ですから埜上さまは安心してお帰りください。』と告げて )
……そうだな、その方があいつも喜ぶ─なんて…俺が言うと思ったのか?仮にそうでもあいつから直接言われたわけじゃない。重要なのはあいつがどうしたいか…。少なくとも自分に危害を加える奴の下で働きたいとは思わないだろ。
( 彼と共に出ようとしていた扉が自分が出た瞬間に閉まってはそう言えば最初に“自分だけが出られる”と言われていたなと思い出して。その時また青年の声が聞こえてきては彼を置いて帰れと言うもの。彼には今以上の生活と給料を与えると好条件を引き合いに出して。何やらこれはこの青年が単独で行っているわけではないと直感がして。自分が考えている通りならこの青年のバックにいるのはあの人だ─だとするなら彼の身の保証はどこにもない。伏せ目がちに納得したように口を開くもすぐに顔をあげてはそれは彼が決めることだと告げて。彼の口から直接そう言われたのならまだしもそうではないのなら自分一人で帰るという選択肢はなくて。「…生憎、代えは今のところ利かないんでね…あいつも連れ帰りたいんだが…?交渉の余地はないのか?俺はお前に言ってるんだ」はっきり言えば代えはいない。しかしながらそう口にするのも返って危険。青年に交渉をしてみることにして。『……埜上様のお願いなら…。ただし彼をあそこから出したいなら僕の言うことを聞いて貰います…宜しいですね?』返ってきた声はどこか高揚の色さえ滲む。「…さっさとしろ。……」一言だけ言葉を紡げば『分かりました…では迎えの者をそちらに行かせますので少々お待ちを…」至極穏やかな声は聞こえなくなり静寂が辺りを包む。──と思っていたが察知した気配に反応し、直ぐ様体を構えるも『埜上様、抵抗なさいませんよう…我が主の元へお連れするだけです。貴方に本気に抵抗されては敵う者などここにはおりません…ですので、どうか…』間近に聞こえた丁寧な物言いの男の声。構えを解けば背後から鼻から口元にかけてハンカチが当てられる。「……っ…、」息を止めようにもふわりと香った甘い匂いに強烈な眠気が襲って。『…驚いた…この香りに抗う方がいるなんて…。強烈な眠気に気絶するように眠りにつく者が大半なのに…でも貴方が抗えば彼はあそこから出られませんよ…』体から力が抜けていくもそれに抗うように口元に当てられるハンカチを掴む手を掴んで爪を立てて。驚いた声が背後から聞こえるも自分が抗えば捕らえられた彼は出られないと聞けば立てていた爪を離すのを最後にだらりと手は落ちて。意識も薄れていきこの男に横抱きされ運ばれていることには気づかずに。先程の彼の照れた顔が浮かんでは意識は途絶えて )
…は?何言ってるんだよ。当然だろ。
( スピーカーから聞こえてきた音声に対して迷いなく頷くもそれは相手に聞こえていた音声とは違うものに対して。実は先程の青年の声は途中から自分のだけ録音に切り替わっていて、相手とは別の音声が聞こえていた。その内容は要約すると、相手は自分のような低能を認めることはない。いつかは捨てられるし、自分は相手の重荷になって迷惑をかけるだけ。それでも傍に居続けるのかということ。正直胸にグサリと来る言葉もあったが、たった数か月ではあるが自分の胸には相手に言われてきた言葉や頭を撫でてくれた感触がしっかり残っている。相手は『お前がいたいなら居て良い』と言ってくれた。自分に自信があるわけではないがスピーカーを見据えて迷いなく傍にいると頷いて。それから暫く、部屋の重厚な扉が開く。部屋の外には相手の姿はなく誰の姿もない。先ほど青年に『埜上様はあなたを認めない。迷惑と思っている』と言われた言葉が脳裏を過るも、相手が先に自分をおいて帰るなんて考えられなくて、だとすれば相手の身に何かあったのだと思い。「おい、埜上をどこへやった。俺は埜上と一緒じゃないとここから出ないからな。こそこそせこい真似してないで出て来いよ。」と青年がこの声を聞いているのは分かっていたため誰も居ない部屋に低声で呼びかけて )
『ジジ…それは残念ながら出来ません。今はお楽しみの最中です…。おや…流石、埜上様。もう目覚められたのですか?一二を争う強い眠り薬も貴方様には聞きませんか…最低でも一時間は眠っていて下さるかと…』
…最悪だ…眠り薬以外にも何か使ったな…体が鉛のように重い…それに何種類か使われた薬の副作用か死ぬほど体が怠い…。
( 徐々に覚醒し瞳を開けるとそこには微笑む青年の顔と見知らぬ天井が視界に映る。視線を動かす気にもならないほどの体の怠さに重さを感じ最悪だと漏らして。彼の声は聞こえないものの青年の近くにいるせいか此方の声は彼に聞こえる状態のようで。彼に自分の声が聞こえているとは思っていないため体の怠さや重さを和らげるように深く息を吐いて。意識がクリアになってきては「……俺のシャツはどこに家出した…?…お前は俺を動けなくしてまで何がしたいんだ…ああ…怠い…」自分がさっきまで来ていたシャツや上着諸とも脱がされたのか半裸状態でベッドへ横たわらせられていて。上体を起こそうにも睡眠薬以外の薬の作用か体に力が入らない。嫌になるくらいの体の怠さに吐き捨てるようにそう口にして。『ふふ…貴方に使った薬は三種類です。眠り薬、鎮痛剤…そして…興奮剤…』…紡がれる言葉を聞けばおのずと目の前の青年が自分にやろうとしていることが何か分かって。怠さも相まって素直に嫌なのが顔に出てしまって )
……、
( 青年にばっさり切り捨てられるも先程とは違い怒りをあらわにすることはなく静かに部屋を見回して。相手の声が聞こえてくれば決して安全とはいえない状況なのを悟り奥歯をギリと噛み締める。自分がもっとしっかりしていれば相手に迷惑を掛けることはなかったかもしれない。また自分のせいで相手を傷つけてしまったことを酷く責めるも今はその時ではないのは重々承知しており。時間からして相手は屋敷の外へは連れ出されていないはず。地下室はあの部屋しかなかったし相手が連れ込まれたとすればこの屋敷内の地下室以外のどこか。地下室があるくらいだから隠し部屋くらいあるかもしれないと思って、部屋の中の探索をしようとしたときバチッと腕に衝撃が走り。「──ッ、…下手な真似はするなってか?…上等じゃないか。痛みなんてこっちは慣れっこなんだよ。」腕から感じた電流。それはさっきまでの脆弱な擽ったさとは比にならない強いもの。恐らくこれは脅しだろうがそんなものに屈するつもりはなく相手のいる部屋を探して )
『…天才の貴方様は僕が何をしたいかなんて…わかっているでしょう…?それを言葉にさせたいだなんて…意地悪な人だ…もちろん、そこも素晴らしく素敵ですが…』
…分かりたくもなかったけどな…てかこれはやるなって言われてたんじゃないのか?あの人に。
( うっとりと此方を見つめる彼に溜め息混じりに告げるも笑み浮かべ言葉を続ける。電流を流すボタンを操作していた青年だったが“あの人”と言葉を出せばその手はボタンから離れて。「お前は俺とあいつを引き離すように頼まれた…俺には手を出さないようにすることを前提に。俺から交渉を持ち掛けられたとしても応じるのも構わない。ただ最終的なジャッジはあの人が下すから余計なことをするなとも言われていたはずだ。これでお前の身の保証もなくなったわけだ…ざまーみろ」『…あの方は僕を庇護して下さるはずです…言うことを聞けば埜上様とずっと一緒に居させて下さると約束したのです…』口角を上げるも青年の表情は変わらない。どんな言葉すら恍惚とした様子で聞いており穏やかに言葉を返す。「それを本当に信用してるのがすごいな…だから教えてやるよ。あの人は平気で嘘をつく。お前がたとえ成功しようがしまいが何だかんだ理由をつけてお前の望みを叶える事はない。俺が絡んでいるなら尚更な」はっきりそう告げてやって。この会話、青年がまだ回線を切っていなかったこともあり今此方に向かいつつある彼に筒抜けで。『……たとえそうでも…こんなチャンスはもう二度とない…どうせ叶わぬ願いなら…せめて…』達観したように青年はそう口にするとそこでブツリと回線は切れてしまい )
──ッ、
( 一度は止まった電流だが自分が移動する分だけまた電気の波が強くなり表情を歪める。それでも気にせずに相手のいる部屋を探し、その間声は聞こえていたが必死だったためあまり理解は出来ておらず、屋敷の中を駆け回って──。プツンと回線が途絶ええところで一つの部屋の前に見張りなのか大柄な男が立っているのを見つけ。恐らくは最初に自分を担いで運んだ男。一度上がった息を落ち着かせては電流が流れるのを気にせずにそちらに近づいていき。「この中に埜上がいるのか?……まあだんまりだよな。俺暴力は嫌いなんだ。だから──、」そう言って口角を上げてはポケットの中に忍ばせていたあるものを取り出して──。数秒後、地に伏した大柄の男を見下しては小さく息を吐き出し、扉に手をかけてゆっくり開いて )
( 中に入ると青年が今まさに相手に触れようとするところ、頭の中は煮えくりかえるように熱かったがいやに冷静で。青年はよっぽど相手に意識が向いているのか此方に気付いていない。それを良いことに背後から近づいていくと青年が相手に触れる前にその首根っこを掴んで引き剥がして「はい、そこまで。…あー、電流流しても意味ないぞ。俺いま無敵チートモードだから。」と意味の分からない発言を笑顔を張り付けて述べては青年が何か言う前に先程と同じものをポケットから取り出して青年に嗅がせて。瞬く間に青年の身体は力を失い傾く身体を支えては意識がないのを確認して床に横たわらせ。「…はぁ、やっと電流治まった。…埜上、大丈夫か?って…あんま大丈夫じゃなさそうだな。…ここの屋敷、多分他に人がいる。早く出た方がいいかも。」ベッドに横たわる相手を見てはやや眉を下げるもいつものように騒ぎ立てたりせずに静かに言葉を紡ぎ。そして自分の着ていたコートを脱ぐと相手の上半を優しく起こして身体を支えてやりながら自分のコートを羽織らせて。さっきの指令で腕は疲れ切っていたがそれを感じさせない素振りで相手を横抱きすると床に横たわる青年には見向きもせずに部屋を出て、部屋の外に転がる男を跨ぎ多分まだ何かあるんだろうなぁと漠然と思いつつ出口へ続く廊下を進んで )
……俺は薬の副作用で怠くて体に力が入らないだけだ…お前こそ大丈夫じゃないだろ。…自分で歩くから下ろせ…こう言う場合は…痛みを与えて一時的に脳を覚醒させれば…どうとでもなる。
( 彼は電流が収まったと言った。それは今しがたまで体に電流が流れていたということ。自分を気遣いコートを羽織らせてくれ横抱きしてくれている彼の方が大丈夫ではないだろと口にして。横抱き出来る腕ではないはず。先程の指令でとうに限界がきているだろう。ただでさえ薬のせいで体に力が入らないから自分の全体重が彼の腕にかかることになる。それは避けたくゆっくりと片腕を上げ懐から取り出したのはサバイバルナイフ。キンと刃を出してそのままグッと持ち手を握るとじんわりと腕に嫌な痺れが起こる。プルプル手が震える感覚も感じながらも勢いよく自らの膝から少し下の太もも辺りにサバイバルナイフを突き立てて。突き立てた所からは血が湯水のようにドクドク流れ落ち「…ぐ…っ…ああ…っ…これで動く…下ろせ相馬。歩ける」痛みに声を上げるも鈍くしか動かせなかった手や足の感覚が痛みのおかげで戻ってはこんな中でも口角は上がり再度彼に下ろせと告げて。「……早く出るぞ…」半ば無理矢理下ろさせれば刺さったままのサバイバルナイフを真っ直ぐに引き抜いて。そのまま何事もなかったように足早に歩く。その度に血が太ももを伝い足首に流れ廊下を汚すも構わずに歩いて。出口の扉を押して外へ出る。するとそこには複数のパトカーが停まっていて。その中の一つのドアが開き中から一人の男が出てきて。それはあのいけすかない警部ではなくその姿に目を見開いて。『狼苑…無事か?ああ…またお前はそんな無茶をして…こっちに来なさい。すぐに手当てをさせよう』穏やかな口調で自分の名を呼び柔和に微笑む男は此方に近づき伸びた手は慈しむように髪を撫でてくる。その手をパシッと反射的に払いのけ「……結構です…貴方の手は借りない。というか何をしにここへ…いえ…答えなくていい…失礼します…」浮かんでいた笑みは消えその表情は消える。これ以上顔も見たくなく口さえ聞きたくなくてどうしてここへ来たのかとついて出た問いすら飲み込んでその脇を逃げるように足早に歩いて。─が、その瞬間ガッと腕を掴まれ再び目は見開かれどこまでも穏やかに微笑む顔を視界へと入れ『愚問だな…愛しい息子がピンチなら駆けつけるのが父親だろう…?ああ…今は…もう少しだけ遊ばせてやろう…、しかし狼苑…いずれお前は私の元に帰ってくるよ…必ずな…。総員、我が愛しい息子を危険な目に遭わせた不届き者を一人も逃がすな!突入!』呪いのような言葉はその口元から紡がれては掴まれていた手は離れて。そうこの男は自分の父親。そして警視庁のトップに君臨する。何も言葉を発することはなく部下へ指示をする声を背にその場を後にして )
…埜上。
( 目まぐるしく目の前で起こる光景を目にしつつやはり何処か冷静。でも頭は酷く痛い。頭は沸騰しそうなほど熱く酷く胃がムカムカした。だから冷静と言うよりは胸の底が酷く冷え冷えとしている感覚に近い。その場を後にする相手の後についていき低声で呼び止めてはその腕を掴むと無理やりこちらに振り向かせた瞬間、その頬を平手でパシンと打ち付けて。「…無茶はすんなって言っただろ。あんたのそういう勝手なところ嫌いだ。でも俺はあんたの助手で離れないって決めてるからあんたのやり方に従う。」鋭い目つきで怒りとは違う激情を向けてはその場で自分のシャツを引き裂いてしゃがむと血が流れる下肢部分を止血するため血管を圧迫するようにシャツで太腿を締め上げて。それから相手の持っていたサバイバルナイフを手にすると軽く血を拭ってから迷いなく自分の腕を切り裂いて「あんたの理論ならこういうことだろ?…滅茶苦茶やってるって少しは自覚しろよ。」青年の話、相手の家柄や素性…どうでもいいと言ったら嘘になるが、今自分は相手のした行いのほうが重要で。自分も人のことを言えたものではない。寧ろ自分の方が感情に流されて滅茶苦茶やっている自覚がある。相手も自分の腕の限界を思ってしてくれた行動なのも理解はしていて。相手を鋭く見据えながらもその表情の奥は何処か泣きそうで。「…こっからならあの警部呼ぶよりもあんたを病院に運んだほうが早いから。次は大人しくしてろよ。」腕から流れ落ちる赤い鮮血。相手の太腿の怪我に比べれば全く大したことはなくて。そしてこの場所からならこんな怪我をしていても何かと“融通の利く”病院が近くにある。有無を言わさず“勝手に”相手を軽々と横抱きしては先程見た相手の父親らしき人のことは特に何も問いかけることなく病院へと足を進めて )
…いってえ……はは…お前…最高にイカれてんなぁ…ああ…俺も…になるのか?
( 無理矢理掴まれたのは彼だと分かっているため振り払うことなく振り向かされた途端に自分の頬で響く音。ジンジンと痛む頬に平手打ちを食らったのだと分かればいてえと声を上げて。彼が自分のサバイバルナイフを取り上げ自らの腕を切りつける様に先程の父親とのやり取りが彼のことで塗り替えられていくような気がして何だか笑ってしまって。しかし彼の泣きそうな表情を見てしまえば今度は勝手にされる横抱きに抵抗はせずに大人しくして「……悪かった…お前まで怪我するなよ…」ぽつりと呟けば辿り着いた病院。当たり前だが直ぐ様、二人とも緊急治療室行き。各々隣り合う形で手当てを受けて『これで刺したんですか…?出来れば抜かないで来てほしかったな…幸運にも神経は傷ついていませんので歩けなくなったりマヒしたり等、後遺症も出ないでしょう。ただ少し縫いましたから今日明日くらあはあまり動かさないように。貴方の腕の切り傷も神経は傷つけていませんし傷が塞がるまでは消毒をして下さいね』自分が縫ったのは2針程度。彼は結構な出血があったが幸い縫うことはなくて。内心良かったなと思いつつ彼を気遣う余り今日は少々やり過ぎたか…なんて言葉にすることはないが反省していて )
そうそう、イカれてるやつにはイカれてるが付くもんなの。
( 謝る相手にはとりあえず首を横に振っておき、病院に付いて医師からの注意を受けては、今は二人の診療と治療を終えた待合い室で二人並んで座るところ。治療の間に随分気持ちも落ち着いたこともありイカれてるとの言葉に頷くと手をヒラヒラさせてはいつもの調子で返して。それでも負い目はある。今はズボンの下で見えないが相手の太腿には痛々しい包帯が巻かれており、それを思うと眉が下がって。ちなみに今はタクシー待ち。あの松間とかいう警部は忙しいらしく迎えには来られないと言われたので代わりに“融通のきく”タクシーを頼んでくれた。来るのには15分ほどかかるとのことで。「埜上、数日は絶対安静だからな。移動のときは俺が運ぶから。……てか御免。俺が一番最初アイツに眠らされなきゃこんなことにはなってなかった。まあそれはいいや。それよりなんか色々いっぺんに起こりすぎて良くわかんねェけど、あんた足以外もやばいんじゃないのか?あ、頭がイカれてるって話じゃないからな。色々薬かまされたんだろ?ほんとは座ってんのも辛いんじゃないの?」他にも気になることは諸々あったが、生憎自分の頭は同時に複数のことを考えられるように出来ていない。一番の最優先事項は相手の安否。故に頭の中を必死に整理してスピーカーから聞こえてきた事を思い返しては、相手が太腿にナイフを刺すに至った要因を導き出して。刺傷による突発的痛みによる誤魔化しが失われた今、相手の身体はナイフを刺す前よりも辛いはずで。ジッと隣の相手を見遣れば少し軽口を混じえつつ荒っぽい口調ながら心配の目を向けては怪我をしていない方の腕で相手の肩に手を回して自分のほうへ引き寄せて肩に凭れ掛からせて「こっちのがちょっとはマシだろ?」とすましたふうに述べて )
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