! 2019-11-01 16:11:42 |
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(泣くつもりは無かったのに、瞳から涙がゆっくり落ちてしまったのが分かった。僕は恥ずかしくなったけれど、君に顔を背けたくなくて、目一杯の見栄を張って彼に微笑んだ。出来る限り、優しく。僕の体中は悲鳴を上げ、絞り出したその声も震えていた。きっと君にも伝わってしまっただろう。それでも、言いたかった。これで完成。君への嫌がらせは完成。僕の事が嫌いな癖に、死んで欲しくないなんて、生ぬるいことを言った君が本当に大嫌いだった。だから、僕が死ぬのを目の前で見て、僕の事をずっと覚えていればいいと本気で思った。君が叫ぶ。そんなに僕の名前を呼んで、必死に手を伸ばして。ああ、僕は最後の最後に、恋が叶ったんだ。こんなの卑怯だよね。自分の命をチラつかせて迫るなんて。でも、死んでしまうのは本当だった。生まれながらにして僕は不良品で、心臓に欠陥があり、この歳まで生きていけたのも奇跡だった。 死んでしまうなら君に僕を遺したい、なんて。完全に僕のエゴ。ふふ、断っても良かったのに。ああ、本当に君は優しいんだから。君の泣いた顔。絶望した顔。僕だけに見せる、僕だけの君。これが愛。僕はこんな愛しか出来なかった。)
「ごめんね」
(本当は、ちゃんとした愛し方をしたかったな)
「ありがとう」
(本当はね、ずっと××だったよ)
枝の様に細く、雪よりも白い素肌。今にも消えてしまいそうな少年は、屋上から飛び降りた。薄いブルーとホワイトの入院着がふわっと膨らみ、少年の柔らかい金髪が広がる。少年は両腕を広げ、天使が飛んでいる様。少年は、長く輝く睫毛を下ろし満足した笑みを浮かべ、落ちていく。屋上に残された彼は、血が滲むほどフェンスを握り、美しい顔が崩れる程泣き叫んでいた。 グチャッ
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