! 2019-11-01 16:11:42 |
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____ ごめんね。……ありがとう。
(時刻は二時丁度。時計の針がぴったりと重なった瞬間を見た、雨の日の午後。地面に落とした傘には重く鈍い雨音が落ち続け、本来ならば濡れないはずの髪の毛を雨が濡らしていく。顔が冷たい、肩が冷たい、否、それ以上に心が。最早音を立てることがなくなったスマホの画面、つい先程まで愛しかった彼女の音声が流れていたその端末を握りしめる。ごめんね、と彼女が言った。感情のない無機質な泣き声が何度も頭の中を響き渡る。それはまるで青色の消えた世界に頭を垂れるような、或いは絶滅危惧種の最後の一匹を見送るかのような虚無感だけが僕の心を支配した。彼女の声に感情が感じられなかったのは、僕が麻痺しているからかもしれない。それでも鈍麻した思考でもしかしたら、を何度も考える。どうにもならなかったのか。どうにかなるものだったのか。どうしてこうなってしまったのか。こうならずに済んだのか。愛があったが故に、気持ちがそこにあったばかりに、感情的に声を荒らげた頭はもう冷えているにもかかわらず、その思考は一向にまとまりを見せない。何がいけなかったのか、自分のせいだったのか。どう足掻いても答えの帰ってくることの無い問いかけだけが頭を巡り、痛みへと変わっていく。涙は出ない。きっと空が泣いているから。僕は役割を果たせなくなってしまった傘を天に向けて、ぴしゃりと音を立てて地面を踏み締めた。ありがとうと彼女は言った。ありがとう、と僕も言った。それが最後だった。たったその二言だけで奇跡的に繋がった温もりはいとも簡単に途切れてしまうのだ。運命の赤い糸なんて、嘘だ。世界にはあまりにも虚構に、汚濁に、利己主義に、現実主義に溢れている。目尻から流れる一粒が、傘のせいで冷たくなることも無いままに、ただ、ただ足を前に進めていて)
(/ 素敵な場所をありがとうございます! ジャンルとしては長文ロルか小説ロルになるのでしょうか……短いですし。
テーマは失恋。失恋という言葉を使わずに表現したかった……。
一応勧誘歓迎とします。駄文故に誘っていただけるか謎ですが……よろしくお願いします)
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