斎藤 司 2019-10-30 11:40:32 |
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まあとりあえず今度行ってみるよ。( 悪戯に褒められる目にこんな表情もするんだなと思いながら行かないことには病みつきにはなれないため行ってみると頷き。相手も誘おうかと思ったがとりあえず一人で行くことにして一緒に行くのは後日でいいかと一緒に行くことを前提として考えて。悪戯に笑っていた相手だが今は顔を赤面させて頭を下げている。耳まで真っ赤にして初心な反応をみせる相手は一度態とだと言った言葉を直ぐに嘘だと懺悔するが、そのどれもが可愛らしく思う自分にとっては何ひとつ悪い気は起こしていなく。「別に俺は態とでも良かったんだけどな。嫌だなんて思わないしむしろ後から口付けたのはお前なんだし逆に嫌じゃなかったか?」むしろ態とであったほうが嬉しかったかもしれない。自分には不快感はなかったとはっきり告げては、逆にこれが意図せずに起きてしまったのなら嫌なのは相手なのはないかと思い問いかけつつ「顔、赤くなってるぞ」とプリンを握る相手の手に手を重ねて少し首を傾けて顔を覗き込んで )
……はい…病み付きになってきて下さい…。
( 頷いてくれる彼に是非病み付きになって下さいと口にする。まさか自分が誘って貰えるなんてことは微塵も思っておらず、ただ彼の行き付けの店が増えれば良いなと思っていて。そんな彼の心はどこまで広いのか。浅はかで許しがたい自分の言葉に此方を責めることはなく受け入れてくれ此方を気遣いしてくれる彼に「……嫌じゃない…です…嫌なら口もつけません…!…、」そう答えるのがやっとで。ドキドキ煩い鼓動を持て余しつつ彼の手が重なり、顔を覗き込まれる際に近づく距離。赤くなってるぞと彼から告げられ更に自分の手に彼の手が触れてきては「…っ…」ドクンッと鼓動が跳ねた。その瞬間だけ何かに引かれるように更に彼に顔を近づけ…。触れあってしまった唇。ハッと我に返っては「…す…みません…!…先生…ほんとにすみません…!」何をしてるんだど自分を叱咤してはプリンを掻き込んで消費して慌てて席を立ってはそのままコップを直しに返却口へと向かいきちんと棚に皿などを直してはそのまま食堂から出ていって )
…っ、おい斎藤!( 相手の顔が近づいてきて一瞬何をされるのか脳裏を過るもまさかと思った時には柔らかな熱が触れ合っていて。小さく目を見開き思考が停止するも相手が謝ったことで我に返って引き留めようと声を掛けるが相手はコップなどを返却してから食堂を出て行ってしまい。「今のはどういう意味なんだ…」ポツリと呟いてはまだ微かに感触が残っている気がする唇に指を触れさせてから自分の胸に手を当てる。鼓動が早い。それに顔が酷く熱い気がして。「……斎藤、」また思考が停止していたことに気付くと相手の名前を呟き、空になったプリンの容器を返却して食堂を出て。出入り口を出て辺りを見回すも当然だが相手の姿はない。やや眉を潜めては少し考えたあと食堂の前から移動をして )
…はぁはぁ…どうしよう…俺…なんであんなこと…っ…、
( 今までこんなに走ったことはない。食堂から出てはそのままダッシュで自分の教室まで駆け抜け…ようとしたがそこまでの体力はなく階段を上がりきる前に足は走ることを止めてゆっくりとした足取りで階段を上りきっては壁に手をつき止まることはなく教室へと足を向けつつ肩で息をしながら切なげに言葉を漏らして。嫌われてしまっただろうか…流石に気持ち悪いと思われてしまっただろうか…。ツンっと鼻の奥が痛み目頭が熱くなってくる。彼に嫌われてしまうと考えただけで胸が抉られるように痛み反対側の手で胸元をぎゅっと握り。どうしてあんなことをしてしまったのだろう。キスしたいと頭で思うより先に心が思ったのか体が勝手に動いてしまった。同性からのキスなんて普通なら嫌悪するだろう…やっぱりちゃんと謝った方がと思うものの彼から近づくなと決定的な言葉を言われてしまったらと自分の足は戻ることを良しとせずに辿り着いた教室の前、浮かぶ涙を袖で拭いスンッと鼻を啜り中へと入っては教室の中は人も疎ら。鞄を机の上に置き忘れたまま果たし状の主に会いに行っていたのでぽつんと鞄は机の上にいて。自分の席に近づいてはそっと鞄を手に持ちクラスメートに挨拶してから廊下へと出て )
サイトウ?…知るかよ。そんなことどうでもいいんだ。今はそれよりも…( 今居るのは学校の昇降口、相手の姿を見失って始めは今まで生きてきた中でないくらいに焦ったが冷静になれと気持ちと落ち着かせ。学校内は広い。相手をやみくもに探すよりもとりあえず相手が学校から出ることを考えて必ず通過しなければならない昇降口で相手の姿を待ってみることにして。しかし相手より先に姿を現したのは、この赴任先で偶々一緒になった幼馴染。赴任早々、幼馴染がこの学校の体育教師だと知って偶に話はしていたものの昔からそりが合わないためあまり関わらないようにしていた。が、今相手を探し出して話さなければならない大事な時にこの幼馴染は暇なのか昇降口に居た自分を見つけて絡んできて『お、なんだなんだ誰か待ってるのか?昔は下駄箱で好きな奴待って告白なんてしたよな。懐かしい。あ、…サイトウって覚えてるか?』と。そして冒頭の自分の台詞に至るのだが、サイトウと言うのは相手の事ではなくサイトウ違いで、高校時代のクラスメートで自分に告白してきた男子のこと。昔の話のため殆ど記憶が薄れていたし今は本当にそれどころではなかった故に煙たそうにして相手の姿を探し周りを見回して。それでも幼馴染はしつこく話掛けてきて『とか言ってサイトウのこと好きだったんじゃないのか?』「好きな訳ないだろう。」『ははッ、そりゃそうだ。男となんて出来ねェよな。キスだって気持ち悪くて出来ないよ。な?』「……今忙しいんだ。悪いけどまたにしてくれないか。」『へいへい、わぁーたよ。ンじゃまたなァ』手をヒラヒラして去っていく幼馴染に疲労感が増して溜息を吐くもこうはしていられないと再び相手が姿を現さないか見回し。この時、先程の幼馴染の最後の問いかけに、自分はスルーしたつもりなのだが見る角度によっては小さく頷いているように見えることには気付いていなくて )
…っ…先生…ごめ…なさ…い…。お…れ…もう…二度と…あんなこと…しません…すみませんでした…っ…!
( 鞄を持ち上履きを履き替えに昇降口へ向かう。自分の靴箱へと足を進めて靴を履き替えて扉を閉めた際に聞こえてきた見知った声にビクッと肩を跳ねさせる。視線を向けると出入り口のところに見えたのは彼の姿…と体育担当の教師で。二人に気づかれない位置へと咄嗟に身を隠しては耳に入ってくる言葉の数々に胸は無数の針で刺されるかのように痛む。サイトウ違いなんて自分にはわかるはずもない。“好きな訳ないだろ”と彼の口から発せられる。男同士のキスだって気持ち悪いだろ?と問われた彼。止せば良いのに伺うようにそっと隠れた壁際から覗き見た姿は言葉こそ発せられなかったがそれは小さく頷いているようにも見えて。すぐにまた身を隠しぎゅっと胸元を握る手を強め。体育教師はどこかへと姿を消したが自分は彼のいる場所を通らないと外には行けない。苦しい…痛い…痛い…皺になりそうなくらいに胸元を握りしめたまま隠れていた場所から姿を見せては震える声で自ら声をかけて。堰を切るように溢れたのは謝罪だけでなくその瞳からは大粒の涙が流れ落ち──勢いよく頭を下げてから彼が口を開く前にその脇を走り抜けようとして )
斎藤!?…おい、ちょっと待て。( 体育教師が去り相手が来るのを待っていれば割とすぐに彼は姿を現して。今の話を聞かれているのは知らずに謝罪をして涙を流す相手に瞠目して。相手にとって食堂でのキスがそこまでショックな出来事だったのか。だが何やら勘違いしている様子に走り抜けようとした腕を掴んで引き留め「ちょっと来い。」とここでは人目もあり邪魔になるので昇降口を出て横に逸れた人目のない少し開けた場所まで引っ張って来て手を離し。「謝り逃げは駄目だってお前のじいさんも言ってなかったか?…あーもうほら泣くな。…なんで斎藤は謝ってるだ?俺にキスしたからか?」身を少し屈めては少しぶっきらぼうながら優しい声色で離し掛け、相手の瞳から零れる涙を指先で掬いとるように拭ってやり。そして少し間を空けてから問いかけては急かすことなく相手が話し始めるのを待って )
っ…?!……言ってました…。はい…先生…今…体育の先生と…男同士のキスは気持ち悪いって…話してました…よね…?…先生…頷いてたから…俺…ごめんなさい…。
( 気持ち悪い自分はすぐに退散しなければと思っていたため腕を彼に捕まれると驚いたように目を見開き。“ちょっと来い”そんな言葉を自分に投げ掛ける彼に訳が分からないながらも他ならぬ彼からの言葉に素直に着いていき。人目のつかない場所へ誘われ手を離され彼の言葉にこくりと頷き。彼のぶっきらぼうながらも優しい問いかけに今しがた彼と今はいない体育教師が話していたことを口にしつつせっかく拭ってくれた涙だが話しているうちにまた流れ出して。此方を急かすことなく待ってくれている彼にごめんなさいと謝罪して。嫌われているのかいないのか定かではないが不安そうに彼を見つめて )
なんの話……まさかさっきの話聞いてたのか?( また涙を流し始める相手に胸がツキリと痛むのを感じながらその話を聞き逃さないように耳を傾ける。始めは何のことを言っているのか分からなかったが次第に理解しはじめて。相手は勘違いをしていると思っていたがどうやら自分が思っている以上に更に勘違いをしてしまっているようで。潤む瞳に見詰められてまた胸が痛むも再び相手の目元に手を伸ばすとその涙をぬぐってやり。「…俺は男同士だとか同性だとかそういう偏見はないよ。まあ好きでもないやつにされるのは御免だけどな。頷いてたってのは…見てたのか?もしそう見えたなら多分見間違いだよ。俺はあの時頷いてなかった。…あと、お前にキスされても別に嫌だとは思わなかったよ。」相手の不安を感じ取ればそれを少しでも減らしたくて誤解をとくように優しく話して。ただ最後は少し気恥ずかしさもあって声を小さくすれば自分の後ろ髪を掻き少し視線を逸らして )
……俺の…見間違い…?…よかった…です…俺…先生に…嫌われたと…思って…、
( 彼の言葉にこくりと頷く。見ていたし聞いてもいた、それを彼に隠すつもりはない。涙浮かぶ目元に彼の指が触れそっとまた拭ってくれる。きゅっと胸が切なくなっては彼の紡ぐ言葉を聞き、己が色々と勘違いや見間違いをしていたのだと知り…パチパチ瞳を瞬かせて。キスも嫌ではなかったと言って貰えてホッと胸を撫で下ろす。優しい彼の口調は怒っているようにも此方を嫌っているようにも感じずに本当によかったと彼に嫌われたと思った…そう語尾を震わせながら告げて。「…でも…なんで…俺…先生にキス…したんでしょうか…なんか…先生の顔が…すごく…近くにあって…ドキドキして…気づいたら…俺…」安心したら安心したで沸いてくる疑問。そもそもこんなことになった原因である自分の行動。ポツポツとまた赤裸々に口に出しつつ首を傾げて )
それは、俺にも分からない。…でも嫌ってはないよ。( 首を傾げる相手を見て先程の行動は無意識だと知れば流石に自分にもその理由が分かるはずもなく。やや目を伏せては自分にも分からないと告げてとにかく嫌ではなかったことを伝えて。そして相手を見ては徐に顔を近づけて「斎藤、じゃあ今こうしてみてどうだ?…なんでか分かりそうか?」先程何故キスをしたくなったのか分からないと言っていたため、似た状況を作れば何かしら分かるだろうかと思えば相手の背丈に合わせて少し身を屈めて顔を覗き込むようにしては顔を近づけて原因が分かりそうか少しゆっくりとした口調で尋ねて )
……そう…ですよね…すみません…はい…。
( 自分が分からないのに彼がわかるはずもなくて。眉を下げてしょぼんとなるも彼から嫌ではないと改めて言って貰えては気分は少し浮上してきつつこくりと頷いて。ふと彼の顔が近づいてくるのに気づいては瞳は見開かれまた心臓が煩くなり僅かに頬まで赤く染まる。ゆっくりした問いかけにきゅっと胸元を掴み戸惑いつつも口を開いて「…っ…やっぱり…ドキドキ…します…先生に…触りたくて…触っても欲しくて…なんか…これって………」自分の今の状態を言葉にしていき、どうして彼にキスをしてしまったのかを己自身で探る。思ったことを挙げていけば一つの答えが導き出され。自分はもしかして彼が…暫くフリーズしていたが結論に辿り着けば戸惑いは消えていく。忙しなくドキドキはするものの冷静になっていき。「…わかりました……俺…先生が…好き…です…好きなんです…」原因が分かればすっきりしたのかそう真っ直ぐに彼を見つめ柔らかに微笑んで言葉を紡いで )
……好き…って…斎藤…キスしたくなるほどの好きがどういう意味か分かってるか?( 悄々としてしまう相手を見てはもう少し言い方を変えたほうが良かったかと悔いつつ、反して自分が顔を近づけたことで白い肌を赤くするのに可愛らしく思って。相手が導き出す答えを焦らすことなく待ち、その答えを聞いてはあまりのも純粋すぎる眩しい答えに鼓動が打ち跳ねて。そのすっきりとした柔らかな微笑みにどんな意味があるのか、少し期待していた気持ちをざわめかせながらも慎重になり、顔を近づけた状態のまま相手の頬へと壊れ物を扱う如く指先を触れさせて眉を下げ問いかけて )
…っ…貴方に会えない時は…会いたいなって…授業とかなくても…会いたくなって…会えて顔を見られたらドキドキして…嬉しくて…言葉を交わせたなら…触れて貰えたなら…もっとドキドキして…胸がきゅっと切なくなって…でもとても幸せで…。
( そっと頬に触れる彼の手にピクッと僅かに体を反応させながらもその手におずおずと遠慮がちにだが自分の手を重ねて。眉を下げて神妙な表情で彼に問われればポツリポツリと自分の気持ちを言葉にしていく。言葉紡ぐ度にドキドキと心音は速まりつつもこの不整脈の理由が分かれば不安や戸惑いは嘘のように消えて柔らかく目元を細めて彼の手に頬を擦り寄せ「…これは…恋…です。…俺は貴方に恋をしています……宮本 仁…さん…俺は貴方が…大好きです…」これは──恋なのだと自分の気持ちを改めてそう彼に“大好き”だとはっきりと伝えて )
……──( 重ねられる手と擦り寄る頬に微かに指先を震わせながら相手の言葉を聞いて。真っすぐで曇りのない柔らかな感情、甘い綿菓子が溶け出して胸に流れ込んでくる感覚に微かに息を飲み。湧き上がる久しい感情に鼓動を早めながらも相手の言葉にはすぐ答えずに「…ちょっと来い」と先ほども掛けた言葉を口にすると手を返して相手の手を掴んでそのまま少し強引に引っ張る形で歩を進めては、体育倉庫の裏、まず人が来ることがない場所まで連れて来ると唐突に相手の背に痛みがないよう体育倉庫の壁に押し付けて。そしてそのまま片手も壁に縫い付けると唇を塞いですぐに離し「……どうだ、これでもさっきと同じこと言えるか?」と強い視線を向けて )
…?…っ…先生…?
( 彼は此方の言葉に何も返してくれない。自分の気持ちは伝わらなかったのだろうか…そんな風に思っていては重ねている手を返して掴まれ少し強引に引かれる手。そしてこの場所に来るまでにも言われた言葉を再び受けてハテナマークを飛ばしながらも彼に引っ張られるままに着いていき。連れられ来たのは体育館裏。人気は全くなくそこに呼び出される理由はカツアゲか愛の告白。なんてそんなことを一瞬でも考えてしまえば壁に押し付けられる自分の躯。引かれていた手も壁へと同時に押し付けられそのまま塞がれる唇。ピクッと反応するもすぐに離れた柔い感覚…告げられた言葉に強い意思の感じる瞳…僅かにまた頬は赤く染まりながらも「……言えます…俺は…貴方が好きです…」ドキドキ速まる鼓動、揺れる瞳で彼を上目で見つめて“貴方が好き”そう伝えて )
……そうか…、……( 此方から口付けても嫌悪感を示さない相手はそれどころから再び迷いのない瞳でまっすぐに気持ちを伝えてくれて。相手の混ざりけのない純真な言葉がトスンと胸に刺されば、相手を掴んでいた手を離して少したじろぐように半歩距離と取って薄く染まる頬を隠すようにくしゃりと前髪を抑えて俯き。こんなにも感情が溢れ出して表情を隠しきれないことは今までにあっただろうか。だがトクトクと早鐘と打つ鼓動に反して理性も働いており少しの沈黙のあと前髪を抑えていた手を下ろすと相手の目を見て「……斎藤、お前の気持ちは嬉しい。……だが答えをだすのにもう少しだけ時間をくれないか。気持ちの整理がまだついていないんだ。勝手ですまない。」相手と自分は生徒と教師、好意的感情で自由に動ける関係ではなく、しがらみがありすぎる。相手を傷つけ困難を強いる可能性もあって。もちろんすぐに答えを出さないことも相手を傷つける要因にもなるが、相手が大事だからこそ誠意を持って返事がしたくて。まあ一番の要因は自分が神経質なだけではあるが。「…年下のお前にここまで言わせて情けないとは思ってる。でも少しだけ一人で考える時間が欲しい。」真摯な瞳で相手を捉えてはいち生徒ではなく一人の人間として向き合い頭を下げて )
……はい…良いですよ。でも俺のアプローチは…今後も受けて下さいね…?
( 頭を下げる彼の言葉に穏やかな笑み浮かべたまま頷く。きっと慎重で優しい彼は即決はしないだろう…そんな風に直感で思ったこともあり。悪戯に目を細めて彼が離れた距離を自分から一歩詰めては緩く首を傾げながらもそう口にして。彼が彼の良いときに返事はくれたらいい。でもそんな返事待ち期間ですら自分にとって…自分の彼への気持ちに気づいた今では彼へのアプローチ期間でもあって。彼が自分の気持ちを嫌でも迷惑でもなく嬉しいと言ってくれたことも原因の一つ。「…先生…顔…上げて下さい…ん…」顔を上げてと彼に告げると徐に上がった彼の顔…露になった唇にまた顔を寄せてチュッと触れるだけの口づけをしてすぐにそっと離れて。「……俺…先生に恋人になって貰うために…色々…勉強してきます…では…また明日…」恋愛経験ゼロに等しい自分は此方方面は知らないことが多すぎる。彼に恋人になって貰うために色々勉強すると伝えてはぺこりと頭を下げて背を向けて歩いていき )
……情けないな…( 相手が去ってから暫くふらりと体育倉庫の壁に凭れては夕暮れ時の空を仰ぎ見て苦笑を零して。ほわほわと可愛いばかりの相手だと思ったが完全にリードされていて、触れ合った唇に指先を触れさせてはまた火照りだす頬に顔を俯かせて。アプローチについては了承した。だが今の自分の心境で果たして許容できるものなのか。キャパオーバーになる気しかしないが、相手に『恋人になって貰うために勉強してくる』とまで言わせたのだから自分も誠心誠意応えなければならないと思い。だが先程は相手からの口付けに動揺していたこともあって、気をつけて帰れよとくらいしか返せなくて。本当に情けない。経験はそれなりにあるはずなのに、年下の生徒にこんなにも心をかき乱されるなんて。小さく息を吐き出して保たれていた背を起こし喫煙スペースへ足を向けかけるも思い直して一度職員室へ戻るため昇降口へと踵を返して )
…俺は雑用係じゃないってのに…( 相手からの告白を受けてからもはや一週間、相手とは授業で顔を合わせる程度でしっかりとは話していない。と言うよりかは自分が未だ答えを出せずに悩みあぐねていて意図的に避けている部分が少しあって、無視をすることは決してないが授業が終わったらすぐに教室から出るようにしており。今学校はテスト週間。午前中には生徒は帰宅して、今自分は屋上にて礼の幼馴染の体育教師に押し付けられた雑用である運動部の学内合宿で使う布団のシーツを干しているところで。何十枚もあるシーツを一人で干すのは骨が折れたがそれも漸く残すところ一枚。カゴに残るシーツに手を伸ばした時、丁度突風が吹けば軽く目を瞑って )
……先生、見つけました…。
( 彼に告白し勉強すると言ったあの日から一瞬間が過ぎて。あれから携帯で色々検索してその知識は結構凄いことになっていて。しかし他の誰かに試して完成度を上げる…ようなことはせずに有りのままの自分で彼にぶつかろうとその機会を伺っていたが一向にそんな日は訪れず一週間が経ってしまい。その原因の一つは彼にある。無視されるようなことはないながらも意図的に二人きりにならないようにされている気はしていて。そして今はタイミングが悪くテスト週間。普段から勉強は欠かさないようにしているため成績を下げるようなことはないが教師である彼がこの期間、採点やら補習生徒への問題作成等、忙しいことは何となく知っていて。邪魔をしたくないこともあり不用意な接触は敢えて避けていたがでもそれも今日はもう限界。テストをきちんと終えた放課後。彼の姿を探して教室を出る。見つけたと思ったら彼はあの体育教師とまた話している。もやもやとした感情が自分に沸き上がり少し戸惑って。こんな気持ちになったのは生まれて初めてで。二人の会話をまた盗み聞き彼はどうやらこの後、シーツを干すため屋にいることは分かって。彼の居場所はわかった。今すぐに駆け寄り彼の手伝いをしたかったがこのもやもやを無くしてから彼に会いたいと思えば一旦トイレの水洗い場に移動し蛇口を捻ってパシャパシャと水で顔を洗いハンカチで拭って。冷たい水が肌に触れ頭がすっきりとしてきては蛇口を捻って水を止めてハンカチをポケットへ仕舞い。ペチペチと更に気合いを入れるように自らの頬を叩いてはその足は屋上へと向かい。ガチャリと開けた屋上の扉。そこには風に揺れるシーツと彼の姿。トクンッと鼓動は跳ねるも彼が最後の一枚だろうか…シーツへ手を伸ばした矢先にビュオッと強い風が吹いて──その瞬間、反射的に駆け出し一気に彼との距離を詰めてはその体目掛けて勢いのままに抱きついてポツリとそう呟き柔らかく笑みを浮かべて )
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