匿名さん 2019-10-09 22:32:00 |
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…っ新宮……、…ごめん、なさい……
(自分は、他の人よりも素直な性分であるから、言葉には気をつけていたはずなのに。つい感情が高ぶってしまうとありのまま思ったままをぶつけてしまう。憎悪と嫌悪を吐き捨てられれば、よりによってその彼女の姿が過去に自分を否定した母親と被る。彼女を通して母親でも見ているのだろうか、す、と作り物のガラス玉のような瞳で彼女を見つめては静かに謝ったのも数秒のこと、は、とすぐさま我に返れば必死の形相で首をぶんぶんと振り、「死なないでくれ!!」と優しく彼女の肩を掴んで、)
どうせ私が死んだってっ………!!っ…!?
(誰も悲しんでくれない。そう吐き捨てその場から去ってしまいそうになりそうになったとたん彼と目が合いふっと息が詰まる。彼の目に宿った暗い何かは恐怖に怯える少年の様で、彼が計り知れない深淵を抱えているのを感じとり続く言葉を失い一瞬の沈黙が流れる。一瞬のはずだったが妙に長く感じるそれがすぎ、いつの間にか彼はいつも目を取り戻しこちらの肩に手を添えていてくれる…深い深淵へと落ちかけた自分の手を掴んでくれた彼もまた断崖に立っているのが感じられると漠然とした悲哀が沸き上がると同時に不思議と安心感も沸き上がり、胸騒ぎが収まっていく。そっと相手の手の甲にこちらも手を添え、言葉は出ないが何か伝えるように相手を見つめる。)
よかった~っ…! …マジでどうしようかと思ったわ
(そっと添えられた手の温もりを感じれば、ぱっと笑顔になり。このまま、この添えられている手を振り払われたらどうしよう。ふと襲うのは昔の記憶。そう簡単に晴れるものじゃないけれど、さすがにこんな短時間で2度も来られると参ってくる。ゆっくり肩に掛けた手を離し、2、3度頭を振れば今度ははあ、と安堵の息を吐き、)
(/年末年始忙しすぎて来れなくて申し訳ない…!
かなり遅れてしまいましたが、あけましておめでとうございます! こちらこそよろしくお願いします~!!)
違うっ…こんなのっ…
(パッとテレビのチャンネルを変えたかのように明るくなった彼の顔を直視できず歯を食い縛りながら目を背けてしまう。彼の顔はきっとこの顔じゃない…笑顔には不釣り合いな目に宿った黒い影を見れば伝わってくる。それでも彼は自分を抑え寧ろ他人の私に慈悲の目を向けてくれている事実が、ただ逃げて怯えて自分の事しか考えられない自分の不甲斐なさと弱さを正面から叩きつけられるようであり俯きながら小さく呟き、足には涙が染みを作っていく。)
(/お疲れ様です!ごゆっくりそちらのペースでどうぞ~)
っえ…!? なあ、俺がなんかやらかしたか?
(にこにこと明るい笑みを浮かべていたのも、彼女の足元にぽたりぽたりと涙で染みが作られるのを見つけては、焦ったように眉を下げておろおろし始め。自分がなにか余計なことを言っただろうか頭で考えるも、何も思い当たる節が無く、彼女本人に聞くしかないと、戸惑いを含む声色で問いかける、)
(/ありがとうございます…お待たせして申し訳ございません…)
…はっ…ご、ごめん…なさい私…
(しばらくの沈黙の後、彼が狼狽えている声と姿で我に帰り、相変わらずこちらばかり気にかける相手が心配そうに覗きこむ。相手の疑問に答えなければ、というよりこれ以上心配をかけたくない思いで、あなたのせいじゃない、そこまでは口にできたが続きの言葉が出てこず何か言おうとした口のまま固まってしまう。自分の感情がわからない…悔しい様な哀しい様な、そして何よりわからないのは目の前の彼。時折見せるあの目、それを思い出すたびに何故かこちらまで苦しくなり、今までの彼の印象が崩れていく。彼の事を知りたい、そんな思いが芽生えるのを何かが押さえ付ける。その思い、その何かのこともわからないがとにかく妙に悲哀に感じられ、八つ当たりのように小さく呟く。)
違う…あなたのせい…あなたがっ…私なんかに構うせい…
…俺がいたら、迷惑か
(どんな人物像を描いても、自分は誰の助けにもなれないのだろうか。そしてまた、要らないのだと言われるのだろうか。一度そんな風に考えてしまうと、堂々巡りになって埒が明かない。彼女をただ真っ直ぐ見つめ、自分が迷惑か、迷惑ではないかを問いかける。じ、と見つめる瞳は幾分か不安で揺れていて、)
っ…違う…!違うの…!違うの…
(首を横にふり震える声で否定するもまた彼の瞳が目に入りたじろぎながら小さく呟く。迷惑であるわけがない、だが彼のこの瞳や言葉は何度も自分を惑わし見失わせてくる、そもそも今まで心を閉ざし続けて誰も受け入れず拒絶し続ける努力をしてきたはずであるのに、目の前の彼はなんの支障も無いように私の、自分の心に触れてきた。人と心を通わす幸福などとうに忘れているため、今の彼は迷惑ではなく恐怖だということに気付き隠すことはせず逃げ出したい思いを殺しながら吐き捨てる。だが最後の一言だけは喉元に止まり唇を噛み締める。)
怖いのっ…!あなたと話していると私の何かが変になってしまう気がして…怖くて怖くてっ…!だからっ………
………ごめんな、俺馬鹿だからさ
(自分の何かが変になる気がして怖い、そんな風に思われているとは知らなかった。しかし迷惑に思われていないだけ安心する。「教えてくれてありがとうな」なんて、慰める言葉が思いつかなくてただ思いを教えてくれた彼女に感謝を述べる。これは自分も、話すべきなんじゃないだろうか。でも、それで嫌われたら、そう一人で柄にも無く考えこんでしまっては奇妙な沈黙が流れ、)
………もう…帰りません…か…
(少し喋りすぎた…というより人と関わりすぎた。心の内を打ち明けることへの恐怖を彼は理解してくれた、だが混沌とした心の1片を吐き出した所で気が紛れるわけでもなく、時折流れる沈黙と彼の曇った表情がそれを複雑にし続ける。自分と関わることは人を不幸にする、自分は彼なんかと関わってはいけない、暗い思いは一瞬拭えてもすぐに心の扉に鍵をかける。もっと彼を知りたい、彼の背負う物を私も一緒に背負ってあげたい──好きになってしまいたい──そんな思いを閉じ込め立ち上がる。まだ体に痛みが残っているがそれ以上に彼と話していると苦しくてたまらない、涙ぐんだ目で問いかける。)
…、足は、本当に大丈夫だよな?
(もう帰ろう。そう言って立ち上がった彼女に頷きかけたが、涙ぐんでいる彼女の表情を見てしまえば焦ったように眉を下げ、じっと彼女の足を心配そうに見つめる。これ以上引き留めては申し訳ないし、きっと彼女も帰りたいだろう。しかし涙ぐんでいる彼女が心配で、なかなかその場から歩き出せずに、)
っ…う、うん、大丈夫!
(これ以上彼に迷惑はかけられない、もう十分に心配をかけている事は承知だが心配そうにこちらを見つめる彼にぎこちない作り物の笑みを向け、震えを押さえつけ少しだけ声を張る。足を引きずって帰るのも別に珍しいことではない、今から彼と別れれたらまたいつも通りのこんなに苦しいことはない、虚無感に満ちた日常に戻そう…また明日、という挨拶も振り替えることもせずに軋むように重い体を引きずりながら随分と長く感じられる廊下を歩く。彼はついてきているのだろうか…そんな風に考える自分を押し殺していると廊下にすすり泣く声が虚しく響く、先ほどの笑顔を保っていたはずなのに、悲しいという感情も押さえているはずなのに無理やり引き上げられた口角に涙が落ちる。)
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