《ヒプマイ》せんせえ、お呼び出し！《オオサカ》

え"…ッ。嘘やん、えっ……うそぉ…（まさかの解答、完全なる自惚れ。ぼそ…と心境溢しつつのそり炬燵から這い出ては、先程まで可愛がっていた小鍋の元へ。中身は味噌汁。お洒落な料理ではないが胃にも優しい、いつ食べても日本人の体に合う、一人でも失敗なく作れる三拍子揃った素敵な料理。この前のロケで一緒になった地下アイドルが熱心に説明してくれた、市販の粒状出汁を使わない出汁の取り方を実践してみた。自分一人であれば絶対に使わないが、相手が愛方ともあれば話は別で）…あー…ただの味噌汁やねんけど。一応米は炊いといたし、焼鮭…あるけど、食う…？（ロケの影響であまり胃に容量が残っていない。彼の分だけささっと、作った…とも言えないようなものを伝えて、カウンター越しに覗いて）ん？土日、…明日昼から東京でロケあるけど一本だけやから、すぐや。

？何驚いてんねんアイツ…俺変なこと言うたか？（きょとり、頭にはてな浮かべつつも自身の発言思い返す程の気力は無い――否、使いたくないらしい。返答自体はしっかりしているが頭はそれほど働いていない様子。キッチンへ向かう彼の背中を目で追えば、此方覗いて投げかけてくるその質問へと半ば食い気味に返答を）え。そりゃ食うやろ、勿論。めっちゃ腹減ったわ……（あかん、嬉しい。アイツの手料理？…待ってくれ、今日頑張ったご褒美か。最高。そんな心の内は声に出ないものの顔色には ぶわわ、喜色が満面に溢れ出る。想像するだけでじわり湧き出る生唾こくり、喉へと流す。なんや感動有り余って涙出て来そうやわ…ほんま好き。眼鏡ずらし熱くなる目頭押さえては）ん、了解。……そんならやりたいことリスト、幾つかせぇへん？

　

あっ、ほんまに。…あ、おう、持ってくわ…ちょお待っといて（帰ってきたばっかりやし疲れてるし、そんな腹減ってないねん。そんな返答が来ても大丈夫なように想定していたが食い気味に帰ってくる言葉に柄にもなく驚きを見せる。ふへ…嬉しい、味噌汁を温め直しながら緩む頬。味噌汁ごとき
(されど味噌汁ではあるが)、余程の料理音痴でなければ失敗するような事もない。上手に出来たやろか…そんな風にしおらしく心配もしないが、何処と無く少しだけ、緊張する）はーい、お待ちどーさん。お残しは許しまへんでぇ！（トレーに手早く白飯、味噌汁、焼鮭。と、冷蔵庫の奥に眠っていた漬物を醤油皿に乗せて炬燵へ）…お前が、お豆腐好き言うてたから。いや、お豆腐だけやのうて、おネギもワカメさんも全部ぶち込んでもうたけど…。口に合うか、わからんけど（よいしょ、と炬燵へ舞い戻り再び食事の邪魔にならないよう少し距離置いて隣へ。柄にもなくそわり、緊張漂わせ視線も彷徨わせつつ天板に乗せた手そわそわと組み合わせて）えっ、するするするする！どれにしよか、何でもええで！盧笙お仕事持ち帰ったんは、大丈夫なん？

うわ、美味そ……料理が輝いて見えるわ。漏れなくお前にも後光差してる気ぃする。残さへんよ、それどころかおかわりするわ。…いただきます（緊張する彼を見たのはこれで何度目だろう、多分まだ片手で数えられるレベルな気がする。知らんけど。…いやいやいや、それよりも何これ。帰って来たら好きな人居って？その上相手が作ってくれたご飯を食える？こんな幸せな光景眩しくて目が潰れる。…いや嘘言うた。目ぇかっぴらいて幸せ味わうわ。勿論そんなこと実際するわけやないで？　頭の中で怒涛の独り言。この間約三秒。いただきます、しっかり手を合わせては箸を取りお味噌汁へと手を伸ばす。椀から伝わる温かさ、彼からの優しさに心は酷く凪いでいる。そ、と口付けゆっくり傾ける。あつ、…美味い。舌の上に広がり鼻をふわり抜ける出汁の香り。沁みるなぁ、なんて思いながら最初に摘む具はお豆腐。その次はワカメ、それからネギ。感想口するのも忘れ夢中で箸を進める。鮭と白米で頬袋膨らませる頃には満面、笑みが浮かんでいて）…ん、んー…とりあえず明日の夕飯にたこ焼きな？そんで一緒に御三家決めよ。仕事はまあ隙間時間使ってぼちぼちやるから気にせんでええよ。……それよりお前との時間のが大事や。

　

褒め過ぎやアホ、いい歳の男が味噌汁くらい作れんでどないすんねん。……っふは、まだあるからたんと食べ（彼が自分を見るフィルターはかなり分厚いらしい。気恥ずかしくて視線彷徨わせたまま指先組んだり解いたりを繰り返したものの、箸を取る音が聞こえればそっと彼を盗み見てそのままぺたり頬を天板にくっ付けて盧笙観察。…さすがにエスパーやないから何考えてるかはわからんけど、盧笙のこの顔は何度も見たことがある。外に出さない独り言を心の中だけで乱射している時。何考えてんのやろ、不味いような顔はしていない…安堵。ひたすら無言で掻き込む所を見ると、余程腹が減っていたのか…口に合ったのか、何にせよ素で食事しながら自然に笑顔を浮かべる人を初めて見た気がする。嬉しさと可愛らしさに笑みが伝染、にへ、と破顔しては作った甲斐あったわぁ…と染み染み喜びを噛み締めつつ控えめに口を開いて）…な、ろしょ。うまい？
よっしゃ！たこ焼き久々や、嬉しいわーっ。デザートもあんねんな？おう！やっと相棒と冒険の旅に出れるで、決めたらロショウって名前付けたろかな（ひひ、）…っ…アホ、もう……無料だけはせんでな。片手間でええから（ふ、）

おはよぉ、…昨日なんやえらい眠気が酷おてな…返信もやっとこ目ぇ開けて打って返して、風呂入ってんけど。最近あかんな、眠いまま文字打つと誤字のオンパレードやわ…許してなぁ…（目ごしごし、眠た気にふふ…）
ろしょ……いっぱい寝るんやで…。起きたら起こして…（再び布団へぼふっ。沈み込み、すや…）

簓、俺も昨日はごめんなぁ、返事書きながらすとんと寝落ちてしもて……（しょも、）でも昼過ぎまでしっかり眠ってちゃんと休めました。些か寝過ぎたくらいや（ふふ、）さて。仕事してたらこんな時間になってもうたし、お前が大丈夫やったらやりたいことリスト、しよ？

　

ふは…ッ。やばい、相変わらずタイミングええな、もう怖いわぁ…ただいま、俺も今色々終わらせて戻ったわ！（ひひ、）気にせんでええ、寧ろちゃんと寝落ちてくれて安心したわ。お仕事、今日もお疲れさんやで（ふふ、髪ぽふり）せや！そう言うと思ってぇー…買い出し！一緒行こか思たけど、盧笙仕事やなんやで疲れてるやろうし、帰りの次いでに足りないもん買うてきたわ！（ガサリ、音を立てて程良くパンパンの買い物袋床へ。タコ、たこ焼き粉、青のりやその他諸々たこ焼きを作る上での必需品が覗く中、底の方には缶ビール、チューハイ等の酒類。プリンは冷蔵庫にあったし…ほんならメロンシロップ、炭酸水、バニラアイス…とさくらんぼの缶詰。しっかり漏れなく自分用のデザートセットも買い込んだ、アイスとさくらんぼは盧笙のプリンにも絶対に乗せたるからなぁ…袋から取り出すだけでにこにこと口元が緩む。アイスと酒は一旦冷蔵庫に避難か、いっぺんに両腕に抱えキッチン向かいつつ明るい声で彼に声を掛けて）ろしょーっ、たこ焼き機出しといて！

おかえり。簓こそ仕事に買い出しお疲れさん、ありがとおな。いやぁ……大して動きもしてへんけどお腹空いたわ（書き終えた書類が4割。炬燵の天板上を占めるそれら紙類をそそくさとまとめては一旦仕事用ファイルへ仕舞い込み、それ自体も鞄へ仕舞い込む。彼が食料品抱えてキッチンへ向かうのを見ては後追うようにキッチンへ。たこ焼き器は箱になおして食器棚の上に置いてある、はず。…あ、良かった、あった。ぐ、と手を伸ばしてはそろり棚から下ろす。掃除はマメにしていたから埃は被っていない様子、一安心。そのまま彼が冷蔵庫の中整理するのをちらりと見ては）他に何か手伝うことあるか？

　

なぁなぁ見て！これ、最後に乗せるやつ！盧笙の分も買うてんけど…ちょっとリッチなやつぅ（ひひひ、と歯を見せて笑いながらキッチンへ来た彼にアイスのパッケージを嬉々として突き出して見せる。そう、このアイスはいつも買う100円ちょっとのアイスが2.5個買えてしまうのだ。スーパーでの買い出し中、盧笙とタコパや！と思ったら止まらないワクワク、一人楽しくなって奮発してしまった。酒と一緒に冷蔵庫に入れ掛けて、ちゃうちゃうコッチやったらでろんでろんになってまうなぁ、と独り言。喧しいくらいの独り言はいつもの事ではあるが、今日は特別声音に嬉しさが乗ってしまう。彼の声にパッと振り返ってはうーん、と小さく唸りつつ冷蔵庫の扉を閉めながら彼の方に向き直りじっと顔を見つめて）んー…あっ、せや。帰って来たからまだいっこも触ってへんかったわ…改めまして、ただいまぁ（むぎゅう、と正面から柔く抱き着いて彼の肩口にすり…と額を寄せる。だらしなくふへへ、と気の抜けた笑み溢しながら）ほんなら、俺たこ焼き液作ってくから、タコとか皿とか用意してくれる？…っふふ、なんや……一緒に飯の準備て、…なんでやろ。なんか照れるなぁ（ふふ、）

お、やった、奮発したな？（アイス見せてくる彼にふふっと笑いが零れる。…ほんま楽しそうにしてるなぁこいつ。いや、楽しみにしとったんは俺もやけど。独り言を聞いていると自然頬が緩むものだ。ふと思い付いたように抱き着いてきた彼両手広げ受け止めては此方からもぎゅう、と抱き締め背中とんとん、）はいはい、おかえり簓。　……ほら、すること決まったんやったらはよ用意しよ。腹減って待ちきれんよ、俺。…一緒に準備すんのは何もこれ一回とちゃうやろ。これからもしていくし、早めに慣れといて（照れると言いつつ笑いを見せる彼に返す言葉、言い終わる頃には此方こそ照れたようにもごもごと小声になってしまう。昨日のように作ってもらうのもいい、今日のようにこうやって一緒に作るのもいい。お礼にまた今度、こいつにも何か作ってやろう。…するりと彼から離れればタコが入ったパックを手に取る。立派なタコ足やなぁ…そんな独り言零しつつまな板やら包丁やらを取り出せばざっくり一口大に切り始め）

　

ん…はい、慣れまぁす（へへ、）よっしゃ、ごっつ美味いたこ焼き作ったるでー！（暫し彼の温もりを冷えた体に充電して。待ちきれんという声にからり笑顔浮かべ、そやな、はよ準備しよか！と聞き分けよく離れれば各々準備へ。たこ焼き粉をボウルへ移しチラリと袋の裏面の作り方へ目を通すのもそこそこに、身に染み付いた、少し自己流の入った手順で手際良くテキパキと材料を合わせていく。ちらりとタコの準備をお願いした彼を盗み見て、キッチンに立つ姿もええな…なんて見惚れつつ。出来上がった液にとぷん、とお玉を差し込んでボウルを抱え、空いた手でソースやマヨネーズを鷲掴んで炬燵へ運ぶ。パタパタと忙しくキッチンとリビングを往復して油やら鰹節やらを天板の上に揃えて行き、最後の往復で缶ビールを２本既に運びながら、盧笙ビールでええ？と一応声を掛ける）っへへ、オコタで焼いてええなんて贅沢やわぁ。わぁ、たこ焼き機さんご無沙汰しとりますわぁ、自分で焼くなんて何年振りやろ？もう随分やってないわ、腕鈍っとるかも知れん…オカンにどつかれるなぁ。もう油引いたろ。油をー、白膠木が塗るでーっつって！（彼が引っ張り出してくれたたこ焼き機、箱から出し早々にプラグを差し込んでスイッチオン。彼が戻ってくる頃には焼き始められるように、楽しさ故普段より気持ち良く口を回しながら油も塗ったくる。そわそわと彼を待ちながら、先どっち焼く？と心の中で。俺が先、盧笙にお手本見したるか？それともお手並み拝見と行くか…。二人でたこ焼きを焼くのが初めてではないが、こういう些細な部分もタコパの醍醐味であって、炬燵に正座で膝を突っ込みながらくふふ、と笑みを零して）

おー、最初はビールでええよ（最初は、と言うのも2本目以降は度数の低いチューハイに切り替えなければ直ぐに酔ってしまうのだ。酒に弱い、というわけではないがビールにはとことん弱い体質で、気持ち良く酔うなら断然チューハイを選ぶのが自分流の決まり事だった。彼が準備を進める音聞きながらとんとん、まな板と包丁が調子よくリズムを刻む。変な所で大雑把なのが災いしてか大きさにはまあまあなばらつきがあった。が、まあどうせ数はある。小さいやつは2個入れればええやろ、なんて適当で雑な判断。器へ切ったタコ移せば取り敢えず言われた通りに二人分の取り皿取り出し、それを持ってあまり待たせてはいけないといそいそ炬燵へ。此方の方が焼きやすいだろうと今日は隣ではなく向かい合う場所へ腰を下ろした。油引く彼のしょうもないダジャレに呆れた溜め息ひとつ。けれども口元には隠し切れない笑み）はー…アホくさ。もっとおもろいこと言うてくれるか、塗るでさん？（くく、）

　

おーっタコさんが来たでー！盧笙おおきにな！やっぱ乾杯はビールやろ、他も買ってきてるから二本目からは好きなの選び（彼が来たら其処へ置くつもりで自身の側に置いたままだった缶ビールを向かいの彼に渡しつつ、待ち侘びた相方とタコの登場にパチパチと小さく手を叩いて歓迎。ニコニコと顔終始綻ばせつつ早速ボウル手に取ればよいしょ、と腰上げて膝立ちに）…ハァ！？おもろいやろって！躑躅森さん相変わらず厳しいわぁ、…っしゃ、ほな焼いてこーっ。盧笙サポート頼むで！（お決まりの返事をしつつ、十分に温まったプレートへ液を流し込む。ジュワワ…と良い音を多少の湯気が上がって、うおーコレコレ…コレやんなぁ…と小さな歓喜の声が漏れる。丸い窪みに丁寧に流すのではなく、プレートの隅々まで一杯にたぷたぷで液を入れるのが、後に上手く丸めるコツだ。流しながら具材になるタコや揚げ玉、小葱等が彼の側に置いてあるのに気付いてはサポート要請。ボウルを置いて座り直し、その合間に準備してもらった取り皿を分け置いて）

はいよ、任されました（上がった湯気にほんのり曇る眼鏡を厄介に思うが、この感覚に何となく冬が来たなぁという実感が湧く。簓のサポートならお手の物だ。具材手に取ればおおよそ均等になるように揚げ玉や小葱、紅しょうが等入れ、続いて主役のタコを1つずつ投下。小さいやつは相手にバレぬようこっそり2個入れして食べる時のお楽しみに。こういうシンプルなんもええけど、後でウインナーとかチーズとか入れんのもええよな…なんてまだ食べてもいないのに思考は先へ先へと進んでゆく。彼と一緒だと未来のことを考えるのが怖くなくて、寧ろ嬉しくて楽しい。生地の焼ける音にワクワク感一層高まり、そっと膝が進む。…と、不意に喋りたいことがひとつ出てくる。オチも何もないねんけど、と前置きしつつ）俺な、解散した後、採用試験受かった後な、一人でタコパしてん。良かったって安心したんと受かって嬉しいのと、それでも一人で寂しく何してんのやろって急に虚しなってな？　肝心のたこ焼き、作んのめっちゃ失敗したわ。ぐじゅぐじゅやわ焦がすわでクソ不味い！　ほんま、人生で一番の悲劇やで……オオサカ人がたこ焼き失敗するて誰にも言えん話やろ（肩竦め苦笑、）

　

一人でタコパ…、っふふ、それタコ‘パ’ちゃうやん！ほんでも珍しいな、盧笙の失敗たこ焼きなんて俺かて見た事ないのに。オオサカ人にとっちゃどえらい悲劇や……でも大分レアやん…（筋張った綺麗な男らしい手が手際良く具材を振り入れて行く、はよ焼けへんかなぁ…ぽやり眺めていたものの彼が話し出せばパッと顔を上げなになに？と膝を進める。盧笙の話は纏まっていて、初め、中、終わり、としっかり構成が組んであるので聞きやすい。それでいて本人は自負していないとは思うがヤマもオチもなくても、雰囲気が聞いていて楽しい。おもろい。トークが上手いのだ。彼らしからぬ失敗談に突っ込みを少々、浮かんでくる寂しい情景に眉下げ声を落とし感情移入しつつ、…でもちょっと見てみたかった。くすくすと肩を竦めて少しの興味と、オオサカ人として誰にも言えない可愛い秘密を共有できた少しの嬉しさに、控えめに笑いながら、その失敗たこ焼き俺は見れへんのやろうなぁ…と柔く笑み浮かべる。揶揄いや突っ込みのそれではない、優しい眼差しを送りつつ）…今はもう虚しくないもんな。盧笙が作ってくれるたこ焼き、アレ、どこのたこ焼きよりもめーっちゃ美味いねん。また食わせてや。…採用試験合格タコパのリベンジしよか！クソ不味いたこ焼きはマジ無し、やで（いつか二人で作って食べたたこ焼きを思い出しつつ、にひひと茶目っ気たっぷりに笑って見せる。そろそろプレートの上のそれも返して良い頃。笑える失敗談へ、たこ焼きと一緒にひっくり返すのも今が良い頃合いではないか。ピックを差し出してそっとお強請り、）

そうやな…。オカン直伝一から十までメイドイン俺のほっぺた落っこちるぐらい美味いたこ焼き、またいつか作ったるわ。……ってそのフレーズ、あの弁護士さんか？知らんとこでこないにいじられてもうてお気の毒やなぁ（ふは、と軽い調子で笑う。彼の返しに楽しくなったのと…多分、自分の話で笑ってくれたことに対する安心から。…以前のとある曲の件があってからというもの、自身の失敗や悲しみ、辛さというものを上手く出せるようになった気がする。それらを昇華する術はいつだって簓が教えてくれた。溜め込むな、と何度も気を使ってくれる彼にはまだまだこれからも甘えてしまうのだろう。これからの俺が返せるモンなんてそんなん、これからの俺自身しかあらへんな、ほんまに。…目の前、茶目っ気振り撒き笑う簓を見ながら思う。それこそ最期まで一緒ってやつや。差し出されたピック恭しく受け取れば態とらしく決めポーズ、しゅぴーんっ／）ご注文入りましたーってなわけで…早速行くで！（よう見てろよ？とにんまり笑顔で言外に告げては下積みアルバイト時代に会得した返し技術披露。外にはみ出た生地を切りつつたこ焼きの中へ巻き込みひょいっ、くるっ。タイミング逃して焦げ付かないよう端から順番に素早く返す。綺麗な丸、花丸やな、自身で採点。良い焼き色なのを確認してはちらり、相手の反応見遣り）

　

やった！じゃあ今回のは？五が俺で、五が盧笙。…うわっ愛の共同作業たこ焼きやーん！素敵！マジあり！（わはは、）よっしゃ待ってましたッ！キャーッ盧笙かっこええー！（盧笙と交わす未来の約束、笑った顔、戯けた声、全てが自分を笑顔にする要因。舞台用のそれや、愛想のために振り撒くものとは別物で、心から湧き上がってくるゾワゾワとした興奮に近い楽しさや嬉しさ。堪え切れずに溢れる笑み。これを俺から引き出すのはいつだって盧笙だけだった。突如やってきた辛い出来事も今はもう、思い出してもあまりつらくなくなった。隣に居ってくれてありがとう、…そんな湿っぽい言葉が口をついて出掛けるのを飲み込んで、手を胸の前できゅっと握って身体をクネクネ、戯けて誤魔化した。彼のちょっとダサい決めポーズに乗っかって囃し立て、プレート覗き込んでは予想の斜め上を行く彼の手際の良さに、ほお…と感嘆の溜息が零れる）前から上手いとは思ってたけど、やっぱ上手いわ…。自分、センスあんねん…！うっわ、テンション上がってきた！ホイッ、大将！（変なマルチマーケティングに手ぇ出すより、顔もええし話も上手いんやからその辺にたこ焼きの露店出した方が稼げるで。…真面目な突っ込みは心に閉まっておく。キラキラとまん丸に焼き上がるたこ焼きに、オオサカ人たる者胸が踊らないはずがない。彼の取り皿と自分のを両手に持ってサッと差し出し、盛り付けは任せろ！と言わんばかりにたこ焼き受け止める大勢を整え）

へい、お待ち！…ってだけが大将や！（相手の反応見れば満足気にくふりと笑う。バイト先の店の片隅で淡々と散々に鍛えた腕前が今この時役に立って嬉しい。二人でしたいことが出来て此方もテンションが上がっているのか上機嫌でノリツッコミかまし、差し出された皿にたこ焼きを調子良く乗せていく。ほかほかと湯気立てるそれ。表面はカリッと焼けているが中は上手く出来ているだろうか。今更ながら少しだけ心配。何せ久し振りのたこ焼きだ。先程の返しも以前に比べると多少はスピードが落ちていた。…とはいえ、自分にしかわからぬ程度の差かもしれないが。皿いっぱいに乗せ終えてはピックをわかりやすい所に置き、それから仕上げの盛り付けを自身の腹さすりそわそわしながら待ち）ほな、最後はお前の出番やな。俺のは青のり多めで頼むで？

　

うはーっ！うまそ！盧笙っ、ほんま、ほんま好き！惚れ直した！（ノリ突っ込みにへへへッと楽しげに笑い声を上げて、ほかほかと湯気を立ててコロン、と皿に乗るたこ焼きに思わず歓声を上げた。たこ焼きへの欲求と彼への尊敬をぶつけつつ手早く手際良く、先ずはソース。ハケを用意するほど本格派ではないがここまでに完成されたたこ焼きさんには、　ソースもハケで塗ってやらな失礼やんな…と、いつかソース用のハケを買う事を盧笙に相談する、と決意）ハイハイ青のり多めな…まみれさしたるわ。じゃりじゃりのパサパサやでぇ…（おふざけを口にしつつ次はマヨネーズ、斜線を描くように手慣れた手付きで掛けてやる。そしたら青のり、盧笙の皿のは多めに、口にしたようなえげつない量ではなく適量を。最後に鰹節をふんわりと乗せる。ほやほやと鰹節が踊ればそれを見つめる糸目の瞳はキラキラと輝いてしまう。ほい、と盧笙の皿を渡して座り直し。ぽんぽん、と炬燵布団を整えてはお待たせしました…！とビールを手に思い切り良くプシュッと音を立てて缶を開ける。相手の方に突き出して軽く飲み口傾けて）よっしゃー！乾杯しよか！盧笙！