とくめい 2019-09-25 09:21:08 |
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歌仙:
───…うん、良いんじゃないか。彼によく似合う意匠だと思うよ。
( 己の呟きに反応してか、ふらりと彼女が立ち寄った店は扇子や櫛など、男女両用の品が並べられている。一つ一つをじっくりと眺める彼女に柔く笑みを浮かべつつ、自身も品物を物色し。そういえば新しい扇子が欲しかったところだ、近侍殿については彼女に任せ、買う気はなくともその装を観賞して。ふと声色を随分と明るくした主人に振り向くと、掌にあるのは上品ながらも煌びやかな黒曜の櫛。確かに彼を思わせる趣きがある。安易ともいえるが、変に奇をてらわない良い選択なのではないだろうか。ふとした思いつきで品物を再び見遣り、同じ意匠の赤を基調とした色違いの櫛を手に取ると、穏やかに笑みを浮かべ。)
それじゃあ、これは僕からきみに贈らせてもらおうかな。…おや、偶然彼と揃いになってしまうね。
霖:
あのね、膝丸に褒めてもらいたくて、いーっぱい頑張ったよ。
( 腕を引いて抱き留められ、背中へと腕が回る。先程と同じ、否、先程よりもずっと心地良く感じ、再び瞼を下ろし。好いた相手の腕の中に収められ微睡む午後、なんと幸せなんだろうか。気怠い身体を彼へと預け、肩口に顔を埋め。放っておくと力が抜けてしまいそうな腕に鞭を打ち、此方からも彼の身体を弱く抱き締め。依然幼さに引っ張られた口調で告げ、満悦の様子で頬を緩め。きっとこれで、祖父もやっと安心出来るだろう。兄弟や友をずっと待たせてしまった刀には申し訳ないことをしてしまった。しかしこれからは更に──、そこまで考えて、段々と理性を取り戻し始めた思考回路が現状に疑問を抱き始め。意識は明瞭になるまで後どれほどか、無意識に身体を押し付けて甘え。)
→ 日和
わ、私に?
( 緊張を含んだ面持ちで彼からの返答を聞けば、ほっと肩の力を抜き。普段からシンプルを好む傾向にある為、少し地味だろうかと懸念していたが、彼が良いと言うのなら大丈夫だろう。安心した様に店主へと品物を渡し、早速お会計をと財布に視線を落としたのも束の間、一つの櫛を手に取った彼を見遣ると不思議げに瞬きを。しかし、己が手にした櫛と色違いのそれに視線を定めては、驚いた様に自身を指差し。櫛自体は色も意匠も己好みなのだが、近侍と揃いの物を持つとなると少々気恥ずかしい。そう一人で狼狽えつつも、彼が己の為に選んでくれたのなら嬉しいもので。気を紛らわせるべく店主へとお金を手渡しながら、素直に感謝する事にし )
…その、ありがとう。本当に貰っていいの?
→ 膝丸
…そうか。よく頑張ったのだな、偉いぞ。
( 微睡む様子からまだ眠いのだろう事が推測され、だらりと力の入っていない彼女の身体を腕の中で大事に抱え。昔は腕に丸く収まる程に小さかった彼女は、随分と立派に成長したのだなと感慨深くなる。己に身体を預けるその重みに嬉しさを感じながら、弱々しく背に回された腕に表情を綻ばせ。未だ幼さの抜け切らない彼女から漏れる子供の様な台詞には声音を和らげ、背に回していた手で髪をさらりと撫でる。この状態の彼女はとても可愛らしく、暫く見守っていたい気持ちはあるのだが、女性らしい身体をこうも押し付けられては此方が平静を保てない。まだ眠気は抜けないのだろうかと首を傾げては、ゆるりと彼女の顔を覗き込んでみて )
歌仙:
勿論。ここ数週間よく頑張っていたし、ご褒美だとでも思ってほしいな。
( 少しの狼狽と共に満更でもない様子の彼女にくすりと笑うと、会計が終わったのを見計らい自身も店主の元へと。店を通し支払いを済ませ、彼女の背を軽く押しつつ店から出て。先程包んでもらった櫛を彼女の手に握らせると、己の初期刀らしい行動に何処か満足を感じ。恋に悩まされているとはいえ、未だいじらしい距離感の彼らは側から見ていて背を押したくなってしまう。さて、少し寄り道はしてしまったが、そろそろ目的の品へと向かうべきだろう。小さく彼女に声を掛けた後、菓子の材料等が売っている店へと足先を向け。)
霖:
うん、………?
───っあ、あれ、嘘、わたし…!
( 背中へと回っていた手が髪を撫で、望んでいた言葉と共に幸福感をひしひしと感じさせ。正に夢見心地に酔いしれ、更に彼から与えられる甘さを求め始めたところ、僅かに身体を離されたことに疑問を感じ。自分で身体を支えて薄眼を開けると、目に入るのは此方を覗き込む金色の瞳。かちりと至近距離で視線が合い、途端にふわふわとした夢の中から引きずり出される。反射的に彼から身体を離し、今までの行為が全て現実だったことを知ると、自身を顧み羞恥心が込み上げ。暑い頬を隠すように掌で挟み、視線は畳の目をなぞり。)
ごめん、ね。えっと、何か用事だった?
→ 日和
うん、ありがとう……ふふ。
( 互いに会計を済ませ、彼に背を押されながら店を後にし。早速手に握らされた彼からの贈り物と、近侍に贈る分の包みを両手に持つと嬉しそうに笑みを。己と揃いの櫛をあげて、彼は喜んでくれるだろうかと期待に胸は膨らむばかりだが、勝手にお揃いにした事を気味悪がられる可能性もある。一抹の不安を抱えながらも、今は初期刀からの贈り物を素直に喜ぶ事にして。菓子の材料を売る店へと向かう彼にほくほくとした気分で着いて行き。進む先に見えた店に視線を向けると、あそこが目的の場所だろうかと彼を見上げ )
→ 膝丸
ああ。いや、共に休憩でもどうかと思ってな。──だが、疲れているようであればもう一眠りすると良い。布団を用意しよう。
( 寝惚け眼でぼんやりとしている彼女の表情を眺めていたが、視線が絡まった途端に正気を取り戻したらしい主人に一つ笑みを。彼女の温もりが離れてしまった事には少々名残惜しく感じるものの、懐かしい彼女の姿を見られた事で心満たされたまま変わる事はなく。自分の行為を思い出しているのか、恥ずかしそうに赤い頬を掌で挟む様子を静かに見詰めて。彼女の言葉についつい乗っかってしまったが、程々にしておくべきだったか。彼女は子供扱いを嫌がっていたし、機嫌を損ねてしまっては申し訳ない。内心で反省を行いながら姿勢を整えては、卓上の盆に目を向けつつ用件を伝え )
歌仙:
さて、…ちゃんと買う物は決めているんだろうね?既に予定外の出費もあったわけだし、無駄遣いは厳禁だよ。
( 随分と浮かれている様子の主人を傍目に、一応と忠告を告げ。浮かれさせたのはある意味で己なのだが、それでも矢張り初期刀としれ一言釘を刺しておかなければ。冷静に声掛けをする反面、余り作り慣れない洋菓子に興味を唆られ。どちらかといえば洋菓子は伊達の彼の領分だ。細腕を引いて店内へと入り、自然と彼女の背後へと回って何を買うのかと様子を窺い。今日は既に財布の紐が緩んでしまったため我慢する他ないが、今度は彼から手解きを受けて洋菓子にも着手してみるのも良いかもしれない。並べられた外つ国の豆を固めた甘味を眺め、ふむ、と一人考えを巡らせ。)
霖:
ううん、大丈夫。書類も纏め終わったし、お付き合いさせてもらおうかな。
( 今の今まであんなにも身体を密着させていたというのに、そう動揺も見受けられない彼に内心唇を尖らせ。異性として意識している、とは言われたが、こういった反応をされると疑わざるを得ない。それとも自身が多少のことで慌てすぎているのだろうか。蟠りを表には出さずに彼の視線を追い、卓上の盆へと気付くと表情を緩め。彼の気遣いに胸を暖め、勿論と頷きを。誇らしげに書類の束へと目を向け、嬉々とした笑みが零れ。初めて彼と顔を合わせた時よりは、幾らか主らしく振る舞えているだろうか。未だ怠さの抜けない身体を一度伸ばし、改めて彼へと向き合って。姿勢を正し、真っ直ぐに彼を見詰め、何処か照れ臭そうに肩を竦め。)
───取り敢えず、当初の目標は終わりました。不甲斐ない主でごめんね。大変だった?
→ 日和
もう、ちゃんとメモして来たから大丈夫だよ。歌仙って本当にお母さんみたい。
( 浮かれた気分で店前まで来た所で、頭上から釘を刺されると片眉をぴくりとさせ。近侍の彼もそうだが、彼らは主人である己の事を子供扱いし過ぎではないだろうか。小さく頬を膨らませて呟く様に文句垂らせば、腕を引かれながら店内へと足を踏み入れ。一先ず財布に入れていたメモを取り出しては、不貞腐れかけた思考を振り払ってメモに目を通し。早速必要な物を探しに行こうと手近にあったカゴを持つも、彼が一点を見詰めて何やら考え込んでいるのを見遣ればくすりと笑みを浮かべ。和菓子作りが得意な彼にとって洋菓子は物珍しいのだろう。ぽん、と肩を軽く叩いて声を掛ければ、己の用事が済むまでの時間は別行動にしようかと提案を )
歌仙、気になるなら色々見ておいでよ。後で呼びに来るから、ね?
→ 膝丸
…不甲斐ない、という事はないぞ。君はこうして結果を出したのだからな。
( もし睡眠を取るのであればと腰を少し浮かせていたが、共に休憩する事を選んだ彼女にゆっくりと腰を落ち着かせ。そのまま卓上の盆に手を伸ばせば、茶を湯呑みに注いで彼女の前に置き、先程兄刀と話していた時に譲り受けた芋羊羹の乗った皿も寄せて。準備を終えるなり再び向き直ると、一先ずの目標を達成出来た事が相当嬉しかったのだろう、誇らしげな様子で己を見詰める瞳と視線を交え。最初の頃と比べて随分と成長した彼女に内心感極まりながら、変な所は見せられまいと穏やかに言葉を返し。今度は現在の彼女を褒めるべくそっと柔らかな髪を撫でやり )
大変であったのは俺ではなく、君の方だろう?……主、よく頑張ったな。
歌仙:
全く、子供のように扱わないでもらいたいな。そう言うのなら早く済ませて帰ろうか。
( 頭の隅で洋菓子の濃い味付けを思い出し、矢張り自分には和菓子が合っていると確認したところ、小さな手が肩に乗り。振り返ると何処か愉しげな主人の表情と物言いに、まるで自分が店に浮き足立つ幼子のような扱いだと感じ、むっと眉を寄せ。落ち着きなく指に紫苑の髪を巻き付け、溜息交じりに断じ。飽く迄今日は彼女の相談相手兼荷物持ちだ。内心で自分に言い聞かせると、手の中にあったメモをひょいと取り必要な物へ目を通し。辺りを軽く見回し、目当ての材料がある方へと目処を付ければゆるりとそちらへ向かって歩き始め。肩を並べている最中、一つの溜息と共に半ば呟くように零し。)
…余り一緒にいると、彼にも悪いしね。
霖:
……うん。大変だったけど、…膝丸がいたから。
( 急須から注がれる茶の流れを目で追い、茶器を掌で包み。じわりと伝わる温かさが心地良く、彼の労りを感じるようで。髪を撫でる手と共に優しい言葉を送られ、途端に気分が高揚するのが手に取るように分かった。必死に頬を緩めないようにと気張っているが、余り長くは持つまい。自身が犬ならば尻尾が左右に揺れ、刀剣男士ならば桜が舞っているところだ。たまには子供扱いも悪くない。身体の揺れに合わせて水面を乱す茶の動きへと目を落としていたが、矢張り興奮冷めやらずちらりと彼へ視線を向け。控えめに小さく頷き、様々な意味を込めて彼へと告げ。願わくばこれを機に余裕が出、更に彼との距離が縮まり懇ろな距離感になれれば良いのだが、それは流石に妄言か。気恥ずかしげに身を捩り、照れ笑いを一つ。)
→ 日和
ふふ、歌仙にそれ言われたくないなぁ。…ん、そうだね。早く帰って作らなきゃ。
( 子供扱いだと思って眉を寄せた彼を可愛らしく感じ、控えめに肩を震わせながら笑みを零す。普段己を子供扱いする事に対し、ちょっとしたお返しが出来たような気分で髪を弄る彼を盗み見。満足そうに声色を明るくしながらも、不意にメモを抜き取られると小首を傾げ。その後、メモに目を通して周りを見回すなり歩き出した様子に一つ瞬けば、置いて行かれないよう慌てて隣へ並び立ち。先は別行動の提案をしたが、正直店内の配置などさっぱり分からない。流石に店内で迷子、という事にはならないだろうが、彼が居なければ欲しい商品を探すのに手間取っていただろう。隣からの呟きに不思議そうな視線を向けつつ、視界の端に欲している商品が映ると、小さく声を漏らして其方の棚に歩み寄り )
──あ、
→ 膝丸
君の支えになれていたのなら安心だな。──…今後とも、よろしく頼むぞ。
( 心なしか嬉しそうに身体が揺れている彼女の頭を軽く一撫でしてから手をゆっくりと下ろせば、思いを込めて告げられた言葉に目尻を和らげ。いくら近侍として彼女の為に励んでいても、真面目な主人は一人で抱え込んでしまう部分が多く。自分で思っているよりも彼女の事を支えられていないのでは、と頭を悩ませる事も良くあった。だからこそ今の言葉には胸をぐっと締め付けられてしまい、何処か喜びを堪えた表情で返答し。しかし、本丸立て直しにはまだ足りていない。寧ろこれからが本番だろうと深呼吸して気持ちを落ち着かせれば、いつまでも彼女の側で助力していきたいという想いを込めて瞼を伏せ )
歌仙:
…なまくりいむ、…は、向こうかな。…ところで、どういった洋菓子を?
( 楽しげに買出しに励む彼女の姿を視界の隅に捉えつつ、手の中の小さな書き留めに目を細め。既に己が顕現してから時間は経っているが、それでも未だ横文字は書くのも読むのも、口に出すことも慣れない。辿々しく読み上げ、微かな記憶を手繰り寄せ乳製品であると当たりを付けると、陳列棚へと視線を遣り。彼に贈る菓子だというのならば、きっとそれなりに小洒落た物なのだろう。料理を嗜む者として気になるというのもあるが、彼女が厨に立つことが久しいということもあり、少しばかり心配で。もし余りに手が込んだ物を作ろうとしているのならば、興味半分に手伝うことも視野に入れ。)
霖:
……あ、あのね。ご褒美にひとつ、お願いがあって…。
( 何処と無く落ち着かないままに幾度か彼の表情を盗み見、その度嬉しげに身動ぎをして。場を繋ぐために茶器へと唇をつけ、落ち着いた渋みを喉奥へと流し込み。心も身体も内からぽかぽかと温まり、一度器を盆へと置き。所在無げに視線をうろつかせ、結局彼の手元へと。先程は夢うつつのままに抱き締めてしまったが、自身が浅ましくも望んでしまうのは、もっと懇ろな恋仲同士のような雰囲気で。薄く頬に茜を差しながら彼を見遣り、歯切れ悪く願望を零し。既に口を開いてしまった故後戻りは出来ないというのに、それでも矢張り躊躇ってしまう。煩く鳴り始める鼓動を必死に宥め、再び視線も落ち着かないままに再び声を上げ。)
膝丸から、ぎゅうってしてほしい……とか、思ったり…。
→ 日和
うん?ああ、えっと、ティラミスだよ。──あとね、皆の分にクッキーも焼こうと思ってます。
( 値段と量を比べながらグラニュー糖の袋をカゴに入れては、辿々しく横文字を口に出した彼に顔を上げ、当たりを付けたらしい方向へと同じ様に視線を移動させ。あの辺りか、なんて頭の片隅に場所を記憶しながら彼からの質問に答えると、そういえばと思い出した様に洋菓子をもう一種口にして。全員分となるとそこそこの量が必要だろう、厨に置いてあった分の砂糖やバターでは足りない可能性がある。その洋菓子分に少し買い足しておかなければと思考しては、近辺にあった砂糖の袋を手に取りながら、薄力粉等も必要だろうと周りを見回し )
→ 膝丸
抱擁を?──…承知した。
( 先程から妙に落ち着かない様子の主人を横目に茶器を手に取れば、歯切れ悪く告げられる褒美が欲しいという旨に首を傾け。彼女が望むのであれば断る事はない。遠慮せずに何でも強請ってくれれば良いとは思うのだが、何処か言い淀んでいる彼女を急かすわけにもいかず、続く言葉を静かに待つ事にし。ゆっくりと茶器に口を付け、渋く温かい茶を流し込み。暫くの葛藤を得て、視線は定まらないまま声を上げた彼女に視線を戻しては、何とも可愛らしい要望にほんの少し呆気に取られ。しかし茶器を卓に置いてあっさりと承諾すると、徐々に距離を詰めていき、改めての抱擁に少々緊張を伴いながら彼女の小さな身体を両腕で包み込み )
歌仙:
てぃらみす…は、聞き慣れないな。きみ一人で作れる品かい?特に予定もないし、難しそうなら僕も手伝おうか。
( 外つ国の言葉はどうも発音がし辛い。無意識に表情を歪めながら今しがた彼女の発した単語を復唱し、心配そうに表情を覗き込み。くっきー、とやらは流石に知っている。単純な製法だが、だからこそ美味しくもあった。しかし聞き慣れない主役の前者の菓子は全くの未知数。経験はあるとは言えど厨に立つことは久々であろう彼女に熟せるのかと疑念が渦巻き。籠へと放り込まれる材料を目で追いながら、買物に精を出す主人と肩を並べ。それに、と一つ前置きをすると、暫く口を結んで。商品を眺める体を装い棚へと目を向け、落ち着かずに紫の髪を指へと巻き付け。曲線を描いて癖に戻るその様を見つつ、不貞腐れた子のように小さく呟き。)
…僕も少し、興味がある。
霖:
…ん、…ありがとう。膝丸に触れられると安心するの。
( 此方が考えていたよりもずっと容易に返ってきた承諾の意に目を丸くし、当然のように近付いてくる彼に思わず小さく後退りを。軈てその腕の中に収められると身を縮めるが、此方から求めるのみでない彼からの抱擁にゆっくりと身体を解されていく。優しく絆された身をそっと寄せ、ゆるりと彼に凭れ掛かり。想いを寄せた相手の体温というのは、どうしてこうも心地が良いのだろうか。離れ難いが、折角なのだから可愛らしい彼も見たいところ。薄ら顔を覗かせる睡魔に目を逸らし、背へと回る腕を取ると、そのまま彼ごと背後へと身体を倒し。畳に体重を預け影の差す金色を見上げ、くすくすと愉しげに笑い声を零し。視界が想い人と天井で埋まる様は非常に気分が良く、腕を伸ばしその頬をさらりと撫で。)
……こんな姿、誰にも見せられないね。
→ 日和
どうかな…そんなに難しくはなかったと思うけど。──っふ、…可愛いなぁ。
( 横文字に弱く、言い辛そうに表情を歪める彼から顔を覗かれ、掛けられた心配には緩く首を傾げる。審神者となる前、数回だけ携帯片手にティラミスを作った事はあったが、覚えている限り特に難しい工程は無かった筈。基本的には一人でも大丈夫だろう。以前の記憶を頼りに一つ頷き、彼からの手伝いの申し出をどうしようかと思考し。しかし、大方材料を取り揃えたところで、彼が前置きを残して黙り込んでしまうと不思議げに隣へ視線を遣り。落ち着かないのか、先程同様に髪を指に巻き付ける仕草を眺めては、幼子の様に不貞腐れた声を聞き入れ。瞬間、思わずといった様子で小さく笑みを吹き出すと、切り替えるよう一つ咳払いして彼の柔髪へと掌を滑らせ )
いいよ、一緒に作ろうか。クッキーもたくさん作らなきゃいけないから、手伝って貰えるとありがたいな。
→ 膝丸
…主?──っ、何を、しているのだ…?
( 望まれての行為の筈が、ほんの少し退いて腕の中で身を縮こませる彼女に眉を上げ。もしや冗談で口にした事を、本気で実行に移されて戸惑っているのかも知れない。頭を過る憶測に、若干身体を強張らせたのも束の間、此方へと委ねる様に身を寄せて来た様子に安堵の息を零し。徐々に幸福感で満たされていく心地良さにゆったりと浸っていき。自分だけが彼女を安心させる事が出来ると、勘違いしそうになるのはこの距離感のせいか。頭を軽く振って自身を律しては、突然腕を取った彼女の行動に口を開きつつも、彼女と共に身体が倒れていくと咄嗟に頭部へと手を移動させ。まるで彼女を押し倒した様な体勢に、意図が掴めず狼狽え気味に瞳を揺らし。だが目前で愉しげに笑う主人に僅かに眉を寄せては、頬に触れる手を軽く掴みながらやんわりと注意を )
……何度も言うようだが、君は危機感がなさ過ぎるぞ。
歌仙:
っな、…だから、僕は別にきみの子供でも何でも…!
( 聞こえる返された言葉に内心で肩を落とし。そもそも近侍の彼へと贈る物なのだから、関係のない自分が間に入っては余り良くもないだろう。ならばと遠慮の言葉を口にしようとしたところで、後方から聞こえる笑い声にぴたりと動きを止めて彼女へと振り返り。しかし此方へと伸びる白い手に髪を撫でられ、毒気を抜かれると深く深く、半ば態とらしく溜息を。今世にあった時間は己の方がずっと長いというのに、こうも言う事を聞かない稚児を嗜めるように語られるとは。しかし先程の懸念もまた事実。手伝うのはくっきーのみにしようかと考えたところ、籠の中の材料が随分と増えているのを見、仕切り直すように咳払いを一つ。)
さて、そろそろ帰ろうか。会計を済ませておいで。
霖:
だって、膝丸からは何もしてくれないから。
( 瞳から伝わる狼狽に更に笑声を愉しげなものにすると、いつも通り眉を寄せる彼にゆっくりと気を落ち着かせ。咎める為に掴まれたであろう手も、体勢のせいか触れ合いを楽しむために重ねられたように見える。ゆっくりと双眸を細めて穏やかに笑み、彼から与えられた注意にさらりと答え。堅実なところは紛れもなく彼の美点だが、想いを寄せる身としては少々不満もある。何かするのはいつも此方、清々しい程の片恋が最早心地いい。だというのに、女性として意識しているだの、好きな人がいるのは面白くないだの、半端に希望を持たせるのだから性質が悪い。寝転がると途端に気怠さが目立ち、上げていた腕をだらりと垂らして。普段ならばここで誤魔化しの言葉を加えていただろうが、その気も失せてしまう。薄く笑みを湛えたまま、覆い被さる彼を見詰め。)
→ 日和
はーい。……よし。すぐ買って来るから、外で待っててね。
( 文句を垂らしながら振り返った彼が、頭を撫でられるなり深く溜息を吐くと、堪えきれずにくすりと笑み零し。普段此方が世話になっているとはいえ、どちらかと言えば己も世話を焼きたい方なのだ。つい子供相手の対応になってしまうのも仕方ない。なんて、あまり反省の色もなくのほほんと視線を合わせるも、仕切り直した彼からの言葉に籠へと視線を落とせば、足りない物はないかと確認しながら返事を。次いで特に忘れ物もないと確認を終えると、何度か軽く頷いて彼に緩く手を振り、会計するべく店内を進んでいき。その後、無事会計を済ませて店を出れば、少々重みのある袋を持ち直しながら彼の姿を目で探し )
→ 膝丸
ならば一度、襲ってしまえば良いと?──…何かされてからでは遅いのだぞ。
( どうやら主人は、此方からの注意を軽く受け止めているらしい。彼女が何を考えて、己を煽るような真似をするのかなど分かる筈もなく、さらりと返された言葉には更に眉間へと皺を刻み。その言い方ではまるで、彼女が己に何かをして欲しいと思っているように聞こえる。刀とはいえ、この身は男。愛しい異性から煽られれば、どうしようもなく胸は高鳴ってしまうもの。己の下で見上げて来る彼女が愛らしく見えつつも、平気で心を乱す蠱惑的な態度は憎たらしくも感じ。掴んだままの彼女の手をそっと顔の横で押さえ付けては、自身の片手をその反対側に置いて囲い込み。突き放す事も、手を出す事さえも出来ない曖昧な距離に、どうしたものかとゆっくりと溜息を吐き出し )
…俺は、君を傷つけたくはないのだ。
歌仙:
───…ほら。早く帰ろうか。
( 会計を通すために暫し離れてから一時。店外にて手持ち無沙汰に待っていると、重たげに袋を持ち直しながら店内から出て来る彼女の姿を捉え。粉類も多かったため女人には少々堪えるのだろう、己を探しているのか視線を右往左往させる彼女に近付くと、その手から袋を預かり。元より彼女から相談を聞くという目的もあったが、荷物持ちも一つの役目。子扱いをされてしまった後なのが締まらないが、主人を助けるのが初期刀としての務めなのだから。片手で袋を持ち直し、ちらと彼女を一瞥した後そそくさと歩みを進め始め。先程も言ったが、余り遅くなってしまっては伊達の彼にも悪い。妙な誤解を招かねばいいが、少し懸念しつつ。)
霖:
それは、───…貴方が優しいから、迷惑だって言えないだけ?
( 自身がこういった行動を取る度、彼は表情を険しくする。片手を畳へと縫い付けられ、本当に組み敷かれてしまったというのにも関わらず、余り胸中は晴れやかでない。優しく煮え切らないその言葉に一度睫毛を伏せ、密かに内頬を噛み。傷付けたくない、という一言に宿るのはどのような意図か。少なくとも、此方の好意に余り良い印象を得ていないのだろう。何も気付かず、若い主人が自分を揶揄して遊んでいるだけと捉えている可能性も無くはないが、希望的観測をするには勇気が足りなかった。暫く思考に耽った後に薄く溜息を吐き、静かに視線を上げ。極めて平衡な口調で問うと、押さえ付けられた手を無意識に弱く握っていたことに気付いて力を抜き、彼を安堵させるように瞳を細め。)
別に傷付いたりしないから。言ってくれれば、もうしないよ。
→ 日和
ひ、──…な、なんだ、びっくりしたなぁ…。
( 気付かぬ内に近付いて来ていたらしく、不意に袋を取られると肩を跳ね、突然重みが消えた事で小さく悲鳴を。しかし咄嗟に振り返るなり相手の姿を視認しては、盗人の類ではなかったようだと安堵の息を吐いて、変に強張った身体を解しながら肩を落とす。少し考えれば相手が誰かなど分かった筈だが、どうにも急な事には対応出来ない性質で。何とも情けない。気を取り直すべく一つ咳払いしては、先を行く彼に合わせて歩みを開始し。帰路を辿りながら彼の手に持たれた袋を見遣れば、その腕元を指先で柔く突いて )
ねぇ歌仙。それ重いでしょ?疲れたら言ってね、私が持つから。
→ 膝丸
違う、……そうではないのだ。迷惑であれば始めから言っている。
( ここ最近主人が気になるのは、頑張り過ぎていないかの心配から来るものだと懸命に偽って来たが、誤魔化す事すら不可能な程に膨れてしまったらしい。悶々と渦巻く感情はそう簡単に片付けられるものではなく、どうにもままならない。思考に耽った後、落ち着いた声で問いを掛けられると一言、直ぐに否定の言葉を発し。嫌に気分は高揚しても、彼女の行為を迷惑だと感じた事はないし、何より彼女とは更に距離を縮めたいと思っている。だが、煽られるままに主従関係を壊す事も、ましてや彼女の気持ちを無視する事も出来ず。数秒間真っ直ぐに視線を交わらせた後、ゆっくりと彼女の上から退いて隣に移動すれば、暗に好意を寄せている事を含ませて言葉を紡ぎ。気持ち悪いと拒絶されてしまうだろうかと、無意識に膝の上で拳を握り )
──俺が、君を意識してしまうのだ。…気持ちを押し付けるような真似は、したくない。
歌仙:
心配御無用。女人に重い荷物を持たせておく程慮外ではないからね。
( まるで子猫のように身体を跳ねさせて驚きを表現する彼女に小さく笑みを零し。無論、その後の安堵の溜息も合わせて、だが。小さな歩幅で隣並んで歩く彼女に歩調を合わせると、着物の裾を幼子の悪戯のように小突く彼女に対し一瞥を向け。疲れたら交代をしてくれるとのことだが、生憎それでは自身の沽券に関わる。ふっと息を吐き心なしか胸を張って答えると、緩く口許に笑みを浮かべ。女性ということもあるが、相手は己が主人でもある。代わりに荷物を持つ程度、当然のことだろう。然程重くないことの証明の為に何かないかと考え、ふと何処か自慢げに顎を上げ。)
きみは知らないかもしれないけど、打刀は太刀より重いんだ。これくらい平気だよ。
霖:
気持ちを、押し付ける…?気持ちって────…え、あれ?
( 途端に返される否定に無意識に表情を和らげ、ほっと胸を撫で下ろし。だとすれば一体何故こうも拒絶されてしまうのか、金の瞳を見上げながら、不安げに肩を竦め。暫くして彼が上から退くと、自身もゆっくりと身体を起こし。畳へと腰を落ち着け、何処か緊張したような面持ちの彼を訝しげに見詰め。やっと紡がれるその理由に耳を傾けるが、どうも腑に落ちない。女性として意識していることは先に告げられているし、此方としてもそうしてもらう為に動いているわけで。しかし、気持ちを押し付けるとは。ゆっくりと復唱し、首を捻って考え込む。彼が私に押し付ける気持ちとは何だろう。一度状況を客観視して俯瞰してみようか。暫し眉を寄せて考え込むと、ふとその言葉の裏の仄かな好意を感じ。これは己の自意識過剰なのだろうか、じわじわと薄く頬を染めながら彼を見遣り。)
な、なんで…?だってそんな素振り、全く…。
→ 日和
太刀より……じゃ、じゃあ、歌仙は力持ちってこと?
( 彼と己では力の差がある事は理解しているが、だからと平気で甘える事も出来ない。それこそ主人として恥じない程度には、威厳も持っておきたいところで。無用な心配である事は重々承知の上、しかし気遣うくらいなら良いだろうと彼を窺い見れば、胸を張る様に告げられた言葉に表情を和らげ。続く自慢げに零された内容には目を丸くし。あまりじっくり触れた事はないが、確か打刀より太刀の方が長さはあった筈。まさか長さに反して打刀の方が太刀よりも重量があるとは初耳で。じっと彼を見上げて口を開くものの、見た目よりも彼は筋肉質なのだろうかと、あまり回っていない頭で考え巡らせ )
…想像出来ない。
→ 膝丸
──当たり前であろう。俺は主に仕える身、本来このような想いを抱くべきではないのだからな。
( 変に誤解を与え続けて困らせるよりはと、己の想いを遠回しながらに伝えてはみたが、時期尚早だっただろうか。考え込む彼女を黙って見詰めながら小さく息を吐き出し。これから妙に距離を置かれたりするのかも知れないし、徹底的に避けられる可能性だってある。己らしからぬ慎重さに欠けた発言を撤回するにはもう遅く、仕方ないと腹を括って姿勢を伸ばし、ただただ彼女からの言葉を待つ事にし。緊張感漂う空間に居心地の悪さを感じる事暫く、徐々に頬を紅潮させていく様子を目にすると、想像していたものとはまた違った反応に緩く瞬きを。そう照れた反応をされては勘違いしてしまう。自惚れてしまわぬよう一度きつく唇を結んでから開けば、今更訂正した所で意味は成さないだろうと判断し、何処か開き直った様子で )
だから、煽るなと言ったのだ…。何度も忠告したはずだぞ、困るのは君だと。
歌仙:
太刀は本来馬上用、片手で振るうものだからね。馬の上から使うために長さが要るんだ。初耳かい?
( 表情を和らげたと思えば、加えた此方の言葉に目を丸くする彼女に対し思わず小首を傾げ。刀剣である自らには当然のことだったが、人の子の主人には余り信じられないらしい。思っていたよりも大きな反応に苦笑を零し、分かり易いよう補足を。彼女の視線が己の身体に向かっていることに気付くと居心地の悪さに眉を寄せ、落ち着かずに袋を持つ手を変えて。ぽつりと零された呟きに対しても少々不満が。余りこの身体が細いと思ったことは少ないが、女性の目から見るとまた違うのだろうか。確かに身長は高い方ではないかもしれない。少し迷った後、言い訳も少し混じった説明を。)
……まあ、僕は脇差と扱われることもあるから。
霖:
それは、…その、ごめんなさい。取り乱してくれる膝丸が可愛くて…。
( 先程の言葉を疑ってしまう程に淡々とした様子で返され、未だに状況の整理が追い付かず、頬は熱く火照るのみ。彼が己を想ってくれていたと知るや否や、今までの自分の言動全てが余りにも恥ずかしい。情けない姿を見せないよう顔を俯け、尚も視線は迷い畳の目を数え。その想いは一方的なものではないと伝えたら、彼はどう思うのだろうか。近侍が主人に懸想することに対しては抵抗があるようだが、ではその逆は。落ち着かない様子で身動ぎし、おずおずと上目で彼の様子を窺い。この先、先程のように抱擁を強請ることも、一つの寝具で共寝することも、何ならその頬を撫でることも出来ないかもしれない。ああして組み敷かれるのなんて以ての外。耳まで真っ赤に染め上げると、再び視線を下げ。)
→ 日和
…ふむ、全くの初耳ですね。君達の事はそれなりに分かってるつもりだけど、刀の違いとか…その辺は曖昧かなぁ。
( 刀の見た目だけで単純に重さを判断していたが、彼の補足を聞くにちゃんと理由あっての事だと理解しては、納得した様に頷き。彼らの性質についてならばこの数年でなんとなく掴めていると思うが、刀本体の事には疎い。基本的に接して情報を取り入れる方が得意という事も理由にあるものの、主人でありながら彼らの本体について詳しく知らないのは如何なものか。流石にこれはダメだろうと思考しては、今度から業務の合間に少しずつ知識を身に付けようと一人ぐっと気持ちを引き締め。不満そうに説明を口にする彼に小首を傾げつつも、ふと自分の失言に気付けば慌てて手を振り )
あっ、細いって言ってるわけじゃなくてね…!あの、蜻蛉切とか、あの辺の子達が浮かんじゃって…えっと、ごめんね?
→ 膝丸
…何故、そのような顔をするのだ。
( 己が彼女に対して好意を抱いていた事を、きっと想像すらもしていなかったのだろう。狼狽えた様に視線も何処か落ち着かない彼女の様子を静かに見守るも、先程から鼓動は忙しなく脈打つばかりで。やはり彼女は此方の反応を見て楽しんでいただけなのだろうか。まだ一言も拒絶の言葉を聞いていないが、そろそろ気持ちを受け取れないと突き放されるのだろうと、その瞬間を今か今かと待っており。主人が今の関係を壊さずにいきたいと言うのならば、この気持ちには蓋をし、望むままの関係を築くのみ。しかし、暫く待てど覚悟した言葉を聞く事は出来ず、代わりに林檎のように顔を真っ赤に染め上げる様を目にしては、困った様に呟きを零し。噛み付いてしまいたい程の衝動を無理矢理に抑え込んで深く呼吸をすると、彼女の肩にそっと片手を乗せ )
──主。君が望むのであれば、今まで通りに接するつもりだ。…もし近侍を外すというのなら、それに従おう。遠慮は無用だ。
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