とくめい 2019-09-25 09:21:08 |
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→ 日和
だ、だってぇ……君の事考えてたらぽんこつになっちゃう。
( 手の温もりが離れ、忙しなかった胸の高鳴りは徐々に落ち着きを取り戻すものの、同時に寂しさを覚え。矛盾する内心に疑問符を浮かべながら彼と繋がっていた手をぼんやりと眺めるが、拗ねた口調で頬を抓られるとはっと視線を彼に向け。話題が逸れているという指摘に目尻を垂らす。彼との問題をどうにかしなければとは思うも、この歳まで色恋とは縁がなかった身。告白する事すら考えていなかったというのに、彼から返された反応は拒絶とはまた別のもので、混乱するなという方が難しい。とはいえ逃げるのは互いの為にも宜しくない、仕切り直すべきかと離れてしまった彼の手にそっと手を重ねると、一呼吸置いてから改めて言葉を紡ぎ )
──あのね、私は燭台切が好きです。…それで、もう一度君の気持ちを聞かせてほしくて。同情だとか、気遣いは要らないから…本心が知りたいです。
→ 膝丸
主、君は少し気を張り過ぎではないか?頑張るのは良いが、適度に休む事も大事だ。それに──君が無理をすれば、皆も心配するだろう。
( 素直に減らす業務を零していく彼女に一つ一つ相槌を打ち、内容的に体調不良の要因は霊力に関するものなのだろうと大方当たりをつけ。近頃は本丸立て直しの為に奔走していた事から、その疲れが出て来ているのではと内心で纏め。賢明な判断だろうと口元を緩めたところで、不意に言葉が途切れたかと思えば首を横に振る主人の様子に片眉を上げ。心配ないと口にする彼女をこのまま放っておけば倒れてしまう気がする。無論、そのような事にならない為に見張るつもりでいるのだが。本人が気を張ったままでは意味がない。主人の華奢な両肩に手を置き、顔を覗き込むように首を傾けながら視線を合わせると、言い聞かせるように声色を和らげ )
燭台切:
…同情でも、気遣いでもないよ。主人としてだけじゃなく女性として、君のことが好き。
( 小さな手に包まれる己が掌を見遣った後、長い睫毛に縁取られる可愛い瞳を真っ直ぐに見詰め。落ち着いた口調で紡がれる愛にこっそりと胸を温め、暫くその余韻に浸り。再びその細い肢体を腕の中に収めてしまいたいが、一先ずは返事が先か。ぎゅっと手を握り返し、ゆっくりと、しかし力強く、彼女が余計な誤解を受けないようにと答え。手を解くと柳腰を抱き寄せ、小さな頭を自らの胸へと押し付けて。余計に乱してしまわないよう鞣すように柔い髪を撫で、薄く伝わる体温を感じながら笑い声を零し。)
───…なんて、直球過ぎるかな。
霖:
そうだけど、…そうだけど、でも、折角みんな揃ったのに…。
( 両肩に手を置かれ、まるで駄々を捏ねる子供に言い聞かせるかのように諭され、情けなく肩を落として落胆した様子で彼を見詰め。柔らかな声色なのがまた心が痛く、二三度瞬きした後顔を俯かせてしまい。胸の前で手を重ね、小さく呟くように不安を零すと、目縁にじわりと涙が浮かぶのが分かり。折角全振り揃ったというのに、未だ満足に本丸の運営も出来ずに休みを取るだなんて。何もせず霊力が増えるわけでもなし、このままでは昨日のように彼と睦み合うことなどずっとないかもしれない。乾かない視線をちらりと彼に向け、気恥ずかしげに一言を。)
……早く、膝丸といちゃいちゃしたいし…。
→ 日和
──うん、……ふふ、同じだね。嬉しい。
( 散々拗らせてしまったが、本来の性質を無理に抑え込んだのが悪かったのだろう。握り返された手と、不確かでない確実な彼からの好意を示す言葉に胸は熱くなり。先程取り乱してしまった事が嘘のように落ち着いて言葉を咀嚼し。手を離されると残念そうに眉を下げたものの、代わりに彼の腕の中に抱き寄せられては思わずとばかりに笑みを。先は困惑して逃げる事を考えていたが、想い人に包まれる感覚はとても心地良い。髪を撫でる手に緩々と表情を崩しながら胸元に顔を埋めては、反動故か愛情を堪え切れない様子でぽろぽろと短く呟き )
好き、…好き。大好き。
→ 膝丸
なっ、何も泣く事はないだろう?俺はただ、君が心配で──、
( 分かりやすく落胆の色を見せ、俯いてしまった彼女を見詰めたまま頭を悩ませるも、呟かれた不安を聞き入れると一度瞼を落とし。主人の懸念事は分からなくもないが、何もそう性急に事を進めなくとも良いのではないか。焦りを感じる声に疑問を抱き、頭の中で言葉を纏めながらゆっくりと目を開けば、その先に見えた彼女の泣きそうな顔に大きく目を瞬かせ。咄嗟に肩へと置いていた手を離して宥めようと口を開くが、後に付け足された言葉には静かに口を噤み。彼女が己と過ごす為に頑張ろうとしているのは素直に嬉しい。けれど折角ならば元気な彼女と睦み合いたい、そう思うのは我儘だろうか。一先ず無理に休む事を強要はせず、念を押しながら潤んだ目元を親指の腹で柔く撫でやり )
……無茶だけはしないと、約束してくれるか?
燭台切:
うん、僕も一緒だよ。それにしても、……ふふ、可愛いなぁ。
( 大人しく腕に抱かれ、胸に顔を埋める小さな娘を壊さないよう優しく包み、鼻先を髪に埋めて甘い香りを堪能し。小さく聞こえる好意の言葉に表情を緩ませ、暫しその時間に浸り。こんなにも身体は密着しているというのに、心は更に懇ろな距離を求める。強欲な己に呆れつつ、逆らいきれない煩悩に内心で溜息を。強く抱き締めたままゆっくりと背後へと寝転がり、全身で細い肢体を甘く抱き締め。額へや鼻筋、頬へと軽く口付けを落とし、溢れんばかりの幸福に酔いながら笑みを零して。)
…ね、光忠、って呼んでよ。
霖:
…ごめんなさい、ちょっと突っ走り過ぎてた…。
( 滲んだ涙に気付いたのか、触れられていた手が離れると少々寂しげに顔を上げ。途中で切れてしまった言葉を甘く咀嚼し、彼の心配に肩を竦めて唇を尖らせ、バツの悪そうな表情で目を伏せて。彼はただ隊長の優れない主人に気遣いを見せているだけだ。そも、こんな状態で効率良く物が進むはずもない。指が目元を拭うようにぐっと撫でり、瞳を細めて彼を見上げ。優しいその手を両手でそっと握り、叱られた子供のように背を丸めて小さく謝罪を。矢張り数日の間、少なくとも今日は様子を見るべきだろう。昨日今日と職務を全うしないのは気が引けるが、こうして気を遣わせる方が申し訳ない。眉尻を下げたまま、ぽつぽつと言い訳を零し。)
その、今までよりずーっと、膝丸のことが頭から離れなくて。主失格かもしれない…。
→ 日和
ん、みっちゃん…──光忠。
( 一度言ってしまうと何度も口に出したくなる己が性を止められず、更に溢れそうな想いをぐっと呑み。彼に抱かれた状態のまま身体が傾くと軽く服を掴むも、大した衝撃もなく手を緩めれば、完全に体重を預けている状況に重くないだろうかと身を捩り。額から順に口付けられるのを恥ずかしそうに受け。続いた彼からのお強請りと、向けられた笑みには呼び慣れた渾名をぽつり呟き。その後そっと顔の横に手をついて身を乗り出し、彼の片目を隠す眼帯に唇を押し当てて顔を離せば、薄くはにかみながら要望に応え。まるで彼を押し倒しているかのような体勢に小さく肩を揺らすと、短刀達を相手にする時のような感覚で下にいる彼の頬を撫で )
ふふ、なんか照れちゃう。……かわいいね。
→ 膝丸
それは俺とて同じこと。何度律しようが、気付けば君の事ばかりを考えている。──…俺こそ、近侍失格なのだろうな。
( 泣かせるつもりも、謝らせるつもりも無かったのだが、どうにも上手く伝えられない。彼女の両手に包まれた手へと視線を落とし、白く小さな指先を弱い力で握り返しつつ、途切れ途切れに零されていく言葉をしっかりと耳に入れ。半ば衝動的に丸まった肩を片腕で優しく抱き寄せては、愛しい娘の頭の中を己が独占しているという事に静かな喜びを噛み締める。とはいえ、困っている主人を前に不謹慎にも舞い上がってしまうのは如何なものか。更に言うなれば、ただの近侍に戻ると気を引き締めた直後から、懲りもせず思うままに触れてしまっている。これでは示しがつかないだろう。溜息交じりに口を開き、肩に回した腕をするりと解けば、何とも言い難い距離感に苦笑を浮かべて )
…儘ならないものだな。
燭台切:
子供扱いかな?それなら───…もう少しおねだりしても、許してもらえる?
( 絹の肌へと落とされる軽い口付けに対し、少女のように身を捩って恥ずかしがる彼女が可愛くて仕方がない。恋慕に頭の中を支配されたまま抱き込んでしまおうかと考えたところ、ふと彼女が身体を起こして此方を見下ろしてくる。不思議そうに手を伸ばしかけ、眼帯越しに瞼へと口付けを落とされ、何とも愛らしい笑みと共に懇ろな呼び名で改められ。何処か胸の内が疼き、転がる笑い声に口角を上げ、呑気に頬を撫でるその手を取り指を立てさせ。ゆっくりと細い指を己が唇へと押し当て、再び意地悪に笑みを浮かべ。)
キスなら、此処が良いな。
霖:
……ふふ、お互いだめだめだね。一緒にお祖父ちゃんに怒られちゃう。
( 唐突に肩へと腕が回り、抱き寄せられ数歩彼の方へと寄り。きっと主人が気を落としているのを見て、気を回してくれたのだろう。向けられた言葉も相俟って一層彼への想いを募らせ、浮かべられた苦笑に対して柔らかく表情の糸を弛ませ。腕を解かれ、自分から彼の胸へと顔を埋めて身を寄せ、心地いい心臓の鼓動を聞き。彼の側にいると怠さも頭痛も和らぐのは気の持ちようなのだろうか。きっとこれを言えばまた困ったように苦笑するのだろう、それを思って言葉を呑み込み、現状を僅かに憂いて。亡き祖父に叱られる、というのは冗談のつもりだったが、あながち笑えもしないかもしれない。辛いがお互いのため、近侍を変えることも考慮に入れるべきだろうか。)
→ 日和
うん?……こ、子供はそんなおねだりしない…。
( 元より愛情は剥き出しのまま可愛がりたい体質。普段見下ろされている時のような圧を感じない彼の頬を撫でながら、新鮮な目線で彼への気持ちを増幅させていたが、ふと手を取られると小首を傾げ。じっと指先を目で追い掛けるものの、辿り着いた柔らかな唇と、彼から追加されたお強請りに瞳を揺らし。本気か冗談かの判断も出来ずにじわりと頬に熱を持ち、目前の意地悪そうな笑みを見詰める。してしまって良いのだろうか。暫し気恥ずかしげに悶々と思考を巡らせるも、一つ身動いで瞼を下ろすと徐に顔を近づけていき。ちょん、とほんの一瞬唇が触れ合ったところで顔を引けば、無言のまま彼の肩口に額を押し付け )
→ 膝丸
…怒られついでに、牽制までされそうだな。
( 腕を解いても尚、離れるどころか彼女の方から距離を縮められては一つ瞬き。狼狽え気味に行き場の無い手を彷徨わせるものの、胸元に顔を埋める彼女の様子に肩の力は抜け。今だけだと自分に言い聞かせながら再度柔らかく肩を抱けば、頭痛が悪化しないようにと出来る限り優しく、ゆっくりと意識して頭を撫で。前任の事が話題に上がると罰が悪そうに眉を顰めながら天を仰ぐ。彼が今この場にいれば、はっきり咎めはしなくとも視線で制していただろう。それに、間違いなく己は彼女に触れる事すら出来なかった筈だ。彼は己達にとって良いストッパーであり、越えなければならない存在。複雑な心境で視線を彼女に落とせば、とんとんと肩を指先で叩き、改めて確認を取り )
──さて、本日の業務はどうするのだ?
燭台切:
───っあはは、可愛い。子供なのは主の方だったね。
( 白い肌を朱に染める初心な彼女にまた意地悪に笑い、狼狽の末を見守り。気の小ささから考えて、断られてしまっても何ら違和感はないが、昂ぶっているのならば可能性はあるだろうか。長い睫毛が瞳に影を落として下がるのを見ると、一瞬目を丸くした後に此方も瞼を閉じ、甘美な感触を待ち。…ふにり、触れたかどうかという程度何かが唇に触れ、胸に小さな頭を押し付けられてから視界を開き。思わず笑いが溢れ、愛し子を強く抱き締め。今すぐに口付けの手解きでもしてやりたいが、この不慣れな様子をもう少し楽しむのも悪くない。笑い声が収まらないままに髪へと口付けを落とし、散らない欲を抑え。)
霖:
えっと、…お休みしようかなって。それと、…。
( 少しの間の後、再び柔く抱き締められ安堵に息を吐き。きっと気は咎めているのだろう、余り甘えないようにと念頭に置き、指で肩を叩かれると顔を上げ、その問いに苦笑を返し。未だ少しだけ迷う様子を見せ、おずおずと控えめに返事を。出陣も遠征も控え、男士の皆にも英気を養ってもらおう。他の時代ならば不安も残るが、街へ出かける程度ならば霊力も安定するだろう。自身への肯定にこくこくと頷きいてから、改めて近侍を見詰め、口をもごつかせ。互いのため一度離れるべきなのは分かるが、それでも名残惜しい。身体を離し、気まずげに視線を畳の目へと落とし、酷く遠回しに呟くように告げ。)
……膝丸にも、少しお休みをあげたいなーって…。
→ 日和
うう、いまの忘れてほしい…。
( 浮かれついでに少し調子に乗っていたらしい。たった一瞬触れた程度の感触に反応し、咄嗟に逃げてしまった自分が情けない。これでは彼の言う通り、子供なのは己の方。頭上から聞こえる笑い声に居た堪れなくなり、軽く耳を塞ぎながら無かった事に出来ないだろうかと声を絞り出し。今度初期刀に心構えやら何やらを学びに行くべきかと思案するも、主人という立場上こればかりは気が引けてしまう。気軽に教えを請う事も出来ない立場にふと息を吐き、未だ赤みの滲む顔を上げてちらりと彼を窺い見。もぞもぞと腕の中で動きつつ、気を取り直すよう先刻贈り物として購入した包みを手に話題転換を )
──そ、それよりね、君に渡したい物があって……これ、受け取ってもらえるかな?
→ 膝丸
休み?……休みなど、俺には必要ないが──、
( 迷う素振りを見せつつ、最終的に休息を取ると決めた主人にほっと表情を和らげたも、口をもごつかせる様子に気付くと不思議そうに首を傾げ。静かに続けられる言葉を待つものの、己の腕から身体を離し、視線を畳へと落とした彼女には僅かに眉を顰める。一体どうしたというのか、明らかに様子の可笑しい主人に訝しげな視線を向け、それを問う為に口を開きかけたところで、呟く様な声で休みを告げられると呆けた様に首を横に倒し。即座に言葉の意図を考え始め。ただ休めと言うだけであれば、こうも意味深な言動を取る事はないだろう。別の意味が含まれている事は考えなくとも分かる。しかし、それが何を思って伝えられた事なのか判断は出来ない。交わる事のない視線を彼女に向けたまま、口を噤んで目を細め )
燭台切:
僕に?───…ありがとう、開けても良いかな。
( 余程恥ずかしかったのだろう、絞り出すようなか弱い声で無理な願いを告げる可愛い娘にまた笑い声を。落ち着かず小さく動く彼女に腕を緩め、包装された小さな箱を差し出されればきょとんと表情を崩し。体勢が崩れないよう彼女を抱きながら身体を起こして小箱を受け取り。一つ断りを入れてから中を開くと、目に入る黒い光沢の櫛に目を瞬かせ。金の装飾が光に反射し鈍く輝き、好みの意匠に表情を緩ませ。しかしいつ買ったのだろうか。直近で思い当たるとすれば初期刀と買い出しに行った際だが、それを思うと悋気を起こしていた己が増して不恰好。苦笑を抑えて彼女へ視線を向け。)
主が買ったの?…嬉しいけど、高くなかった?
霖:
そ、そうかな?じゃあ────…っいやいや、だめ。しっかりしなきゃ…。
( 遠回しが故に上手く意図が伝わらなかったらしく、不思議そうな調子で無用を告げられてしまう。元より此方も彼から離れたいわけでもなく、ぱっと表情を明るくして顔を上げ。本人がいらないと言うのなら仕方がない、そう考え取り消そうとしたところで審神者たる己が待ったをかけ。自らの頬をぱちりと両手で叩き、頭を振って甘い考えを振り払う。薄く長く息を吐き、改めて彼の方へと視線を。既に触れ合いが恋しく、再び抱き締められたい欲がふつりと湧く。蜜のように甘い愛の言葉を聞きたい、口付けだってしたい。無限に湧く欲を素通りし、彼の方へと伸びてしまいそうな手を後ろで組み、乱れた髪も直さず口を開き。)
近侍を、ね。変えようかなって、考えてて…。
→ 日和
うん、さっき出掛けた時にね。…ふふ、妥当なお値段です。
( 身体を離しても良かったのだが、己を抱いたまま上体を起こした彼に軽く瞬き。小箱が彼の手へと渡るなり邪魔にならぬよう少し退がれば、包装を解いていく彼の反応を何処か緊張した面持ちで見守り。ふとその表情が緩むと安堵の息を吐く。一先ず好みにそぐわない、なんて事にはならずに済んだようだ。寝転んだ事で少々乱れた着衣を整えながら問いに頷き、高くも安くもなくその商品に見合った価格であったとやんわり暈し。彼が気にせずとも良いようにともう一つ、初期刀から己にと贈られた小箱を取り出しては、嬉しさに緩々と表情を崩しつつも中身が彼と揃いの物である事に懸念を抱き )
それに私もね、歌仙からもらったの。
→ 膝丸
…主?
( 難しく考える己に反し、顔を上げた彼女の表情は明るいもので。此方が深く考え過ぎだったのだろうかと拍子抜けしたところ、不意に頬を叩く音が軽く響いたと思えば、首を振り自身を諌める主人。訳も分からぬまま脳内で悶々としている彼女に掛ける言葉が見つからず、ただただ次の言葉を待ち。暫し黙り込んだ後、再び寄越された視線を受け止め、形の良い唇から零されていく言葉を何とか咀嚼する。近侍を別の者に変える。つまり、己以外の男が彼女を支える役目に着くという事か。瞬時に巡る嫉妬心と、口を突いて出そうになる拒否をぐっと抑え。代わりに分かり易く気落ちした面持ちで確認を取り )
──それは俺と……距離を置きたい、という事か?
燭台切:
…へえ。じゃあこれから、歌仙くんがくれた物を使い続けるんだね。……少し、妬けちゃうな。
( 不安だったのだろうか、穏やかに息を吐く彼女に表情を和らげ、華奢なその肩を抱いてとんとんと叩き。毎朝身形を整える度に彼女のことを想える良い品だ。あわよくば同郷の刀に惚気てしまおうかと呑気に考える最中、彼女が懐から揃いの小箱を取り出すと小首を傾げ。箱の装飾からして同じ品なのだろう。だとすれば先程考えた己と同じように、毎朝彼女は細川の打刀から贈られた櫛で柔髪を整えることとなる。元が道具だからだろうか、そのことに対し嫉妬の念がふつりと生まれ。視線を合わせず呟きを零し、今しがた受け取った贈与品を見詰め。暫くの後普段通り軽やかな笑顔浮かべ、さらりと髪を撫でて。)
───なんてね。今度僕からも何か贈らせて欲しいな。
霖:
距離…。そう、…なるのかな。勿論、貴方のことは大好きだけど…。
( 此方の言葉を聞くや否や、落胆の色を強く素直に見せる彼に申し訳なさが湧く。同時に普段と違う反応が新鮮で可愛らしいとさえ感じ、母性本能がきゅんと疼き。今すぐにでも前言を撤回し頬を撫で、安心させてあげたい。彼へと触れたい欲が高まり、無沙汰に落ち着きなく身体を揺らし。なるべく昂りを表へと出さないように口籠もりながら答え、ちらと彼を見上げ。彼は優しい。駄目だと分かっていつつも、主人がどうしてもと強請るようならば、触れ合いも許してしまうだろう。幼い頃の小さな少女と未だ重ねているのだろうか、そういった点も勿論愛しいのだが。機を考えず緩んでしまいそうな頬を覆い、深く溜息を。)
大好きだから、触れたくて仕方ないの。ずーっと膝丸と触れ合っていたくて、恋しくて、その…。
→ 日和
へ、──…あ、そ、そうだよね。えっと……うん、楽しみにしてます。
( 肩を抱く彼の腕に気を緩め、両手に持つ小箱へ視線を落とすも、呟く様に零された言葉には気の抜けた声と共に弾かれたように視線を彼へ。嫉妬を仄めかす物言いに本心だろうかと狼狽するが、彼の視線は逸らされたまま交わる事はなく。その後、普段通りの笑みを向けられると大人しく撫で受けるものの、間に受けそうになっていた単純な自分に肩を竦め。彼が己の事で嫉妬などする訳もないか。変に勘違いして自惚れるところだった、なんて苦笑を零してふるふると首を振り。切り替える様に此方も普段と変わらぬ笑みを浮かべると、お返しは気にしなくても良いのに、という無粋な言葉を呑み込んで頷きを返し )
→ 膝丸
そうか。……否、そうだな。俺が側に居ては業務に集中出来ない、という事なのだろう?
( 突然の事に相当困惑しているらしい。上手く感情を押し込める事も出来ない自身に不甲斐なさを感じ、彼女の肯定には何処か覇気のない様子でぽつりと呟きを。そのまま心温まる彼女からの好意を耳に入れるも、ショックの方が大きいのか今はあまり喜べない。好きだと、触れたいと、本心を伝えてくれる彼女に此方からも相応の甘言を紡ぎたいのは山々なのだが、如何せん拗ねた頭では口説き文句の一つも出てこず。深く溜息を零して自分なりの解釈と共に首を傾けると、子供の様に駄々を捏ねる事も出来ずに物分かりの良い振りを続け。内側を侵食するじわりとした黒い感情にそっと蓋をし、先程から乱れているままの髪を軽く整えてやり )
──ならば仕方ないな、君が思うようにすると良い。
燭台切:
……ねえ、次に買い出しに行く時は僕を呼んでね。歌仙くんだけなんて不公平だよ。
( 軽く浮かべられた苦笑に、己が嫉妬の念をそのまま冗談で受け取ってしまったことを悟ると、内心で溜息を一つ吐いて。これは推測に過ぎないが、きっと自身が近侍を解任されたとして、次を任せるのはきっと初期刀だったのだろう。それを想像し、再び靄のかかる胸中に従い彼女の柔頬を掌で包み、背を丸めて瞳の高さを合わせ。琥珀の瞳に睫毛で影を差し、子を諭すように目を細めて言い聞かせ。一を手に入れれば次は十が欲しくなるというのが人の欲。指の腹で目尻を撫で、静かに数度瞬きを。)
霖:
…えっと、代わりはお兄さん───髭切に、お願いしようかなって。最近ちょっぴり仲良しなんだ。
( 暈していた理由を直接的に見せられ、思わず言葉に詰まり。無論彼の言った理由で正しいのだが、そう悪い意味で捉えられてしまうと心苦しい。矢張り主人として更に気を張り、そのまま続投を頼もうかと口を開きかけたところ、そっと髪を撫でられ。物分かり良く頷いてはくれるが、本心だろうか。再び口を噤み何か代わりの話題をと探し、少々明るめの声色で彼の慕う兄の名を挙げ。とはいえ共通の話題、つまりは専ら近侍の彼の話を互いに口にする程度だが、物腰の柔らかさも幸いして仲を深められている内の一振りと言っても良いだろう。そっと目を細めて彼の手を包み、やや不安げに首を傾げ。)
…ね、髭切なら安心でしょ?
→ 日和
ふ、こうへい…?──そっか、なるほど。じゃあ、次は燭台切に頼もうかな。
( 手に持つ小箱を仕舞い、無駄に期待して高鳴った鼓動を鎮める最中、ふと大きな掌に頬を包まれ、背を丸めた彼と視線がかち合うとゆっくり瞬きを繰り返し。諭す様な口調で告げられた内容に小首を傾げる。そんなつもりはなかったのだが、何振りといる中から初期刀の彼だけを連れ出すのは不公平なのだろうか。普段あまり外出をしない為に気にせず声を掛けてしまったが、同伴相手は慎重に選ぶものだったのかも知れない。瞬時にそう頭で結論付け、目元を撫でる指に軽く目を瞑り、次回の外出では彼を誘う事を約束し。安心する彼の手に頬を擦り寄せては、そっと手を重ね合わせながら呑気な声色で問いを投げ )
何か欲しいものがあるの?
→ 膝丸
兄者にか?…うむ、兄者であれば心配は無用だろうが──、
( 近侍を外される事に抵抗はあるものの、主人の決断に私情を挟む事は許されない。胸中で諦めの悪い己を戒めつつ、明るく次の近侍を挙げられるとぴくりと眉を上げ。勿論、己が兄を近侍に据えて悪い事はない。何処かのほほんと掴めない所はあるが、存外しっかりしているし、他の刀剣を選ばれるよりは安心して任せられる相手だ。しかし、一抹の不安はそう簡単に拭い切れず。もし彼女がそのまま兄刀に懸想してしまうような事になったら、などと想像して溜息を。聡い兄刀の事、諸々察しているのだろうが、それがどう転ぶかは分からない。悶々と考え込んで再度深く溜息を吐き出した後、表情を引き締めて静かに唇を開くと承諾の意を )
…了解した。主の決めた事に従おう。
燭台切:
ううん、特には。好きな女の子と二人で出掛けたいってだけかな。
( 何をどう納得したのかよく分からないが、了承が返ってきたのならばそれに越したことはない。閉じた瞼に唇を寄せ、小さなリップ音を立てるとくすり笑い。重ねられる小さく繊細な掌の柔らかさを感じながら、掛けられた問いに迷うでなく答え。無論、元より買い物は嫌いではない。店頭に並ぶ物をぼんやりと眺めるだけでも暇は潰せるし、何より隣を歩くのが愛おしい彼女だというのならばもう言うことは何もない。想像するだけで口角が上がり、膨れた欲はもう一つ考えを浮かべ。声色を明るく再び声を掛け、愛し子としてではなく、主人として一つ許可の伺いを立て。)
そうだ。次は主と一緒に現世の店も見て回りたいな。駄目?
霖:
……やっぱり、嫌?
あのね、言いたいことがあるなら気にしないで良いんだよ。
( 一先ず却下はされなかったことに安堵して表情を緩めるが、途中で止まってしまった言葉と憂げな溜息に唇を結び。告げられた承諾も手放しには喜べず、気掛かりが有り有りと透けて見えるその様子を見詰め。無理に納得させたいわけではない。ずっと堪えていたのを止め、踵を持ち上げると彼の頬を優しく包み、視線をゆっくりと絡ませて。愛おしげに指先でそっと撫でながら、彼の主人として、また彼を想う一人の異性として、言い聞かせるように告げ。此方とてすれ違ったまま思いが離れていくのだけは御免だ。ならば彼の率直な気持ちが知りたいと、僅かに眉を下げ。)
→ 日和
すき…。ふふ、好き。楽しみだね。
( 瞼に落とされた柔らかな感触と、耳を刺激するリップ音に気恥ずかしそうに身動ぎ。間も無くあっさりと答えた彼の言葉に薄く頬を染めるも、嬉しげに破顔するなり直ぐ傍にある掌へちゅ、と口付けを。改めて好意を認識出来た事に胸は高鳴り、今から彼とのお出掛けが待ち遠しくなる。ちょっとした事で浮かれ気分になる単純な自分に内心呆れはするものの、この場だけは許されるだろうか。しかしふと、声色明るく次は現世にと希望を出され。未だ此方でも共に出掛けた事はない筈だが、次、という単語には違和感を覚える。その事に一度首を傾けるも、直ぐに言い間違いだろうかと考えるのをやめてしまえば、一先ず現世に行く分は問題ないだろうと許可を出し )
現世に?…ううん、ダメじゃないよ。なら、君とは現世にお出掛けしようか。
→ 膝丸
嫌、ではない。…ただ、君の気持ちが離れてしまうのではないか、とな。
( 彼女が業務を行う上で、己の存在が気になるというのなら、この本丸が安泰するまでは一旦距離を置いた方が良い。そこは己も理解しているし、それで本丸立て直しが捗るのであれば賛成する。頬を包む柔く小さな手に目を細め、踵を上げる彼女の負担にならぬ様腰を屈めつつ、私情を完璧に抑え込めなかった己自身に苦笑を。近侍を外される事が嫌というよりも、側に仕えるのが己ではない事に不安を感じる。そんな不甲斐ない姿を見せるつもりは毛頭なかったのが、結局異変に気付かれ、こうして困らせてしまった。一体何をしているのだろうか、僅かに眉尻を下げて目前の彼女を少しの間見詰め、気持ちを落ち着けるようゆっくりと瞼を下ろし )
──すまない。今は少し、切り替えが出来ていないのだ。
燭台切:
本当かい?ふふ、約束だよ。デート、だからね。
( 花が開くように可愛らしい笑みが広がり、つられて此方も優しく微笑みを浮かべ。掌へと落とされた柔い口付けに一瞬不意を突かれるも、子猫の悪戯にすぐに表情を戻し、一先ず次の約束を取り付けられたことに悦を隠そうともせず。念押しを一つすると、先程桜色の唇が触れた箇所にちゅ、と軽く口付けを。間接的な口吸いを見せつけるようにちらりと彼女を見、掌を離すとにっこりと笑い。本当は今にでも接吻を交わしたいのだが、それは後でのお楽しみ。後頭部へと手を添えると、互いの額を合わせて視線を絡ませ。)
初めてのデートだし、ちゃーんとおめかししてくれるよね。…勿論、そんなことしなくても十分可愛いけど。
霖:
……膝丸は、私が側から離れたら、もう好きじゃなくなっちゃう?
( 内に渦巻く淀みを少しだけ吐露してくれた彼に双眸を細め、犬か猫でも愛玩するように滑らかな肌を何度か擦るように撫で。不安を持ってくれることは、少しだけ嬉しい。そうした負の感情を持ってくれるのは愛情の裏返しでもある。しかしそれを堪え、打ち明けることなく独りで抱え込まれるのは望むところではない。視界を閉ざしてしまう彼に寂しさを感じ、輪郭を辿るようにして腕をだらりと下ろし。こんなにも彼を愛しているのに、伝わりが不十分なのだろうか。下ろされた長い睫毛を見詰め、しょんぼり、やや大袈裟に肩を落として声色を曇らせ。)
→ 日和
うん、約束──あ、う……あんまり期待しないでね。おめかし、にがて。
( 彼からの念押しに頷きを返すものの、今し方口付けた箇所に彼の唇が触れるのを目にした途端、ぶわりと身体は熱を持ち。唇を重ねたわけでもないというのに、何故だか妙な気分になってしまう。脳内で疑問符を浮かべながら手の甲を口元に当て、滲み出る欲を抑え込もうと軽く唇を噛んだところで、綺麗な笑みを見せた彼の端正な顔が徐々に近付き。こつりと額同士が合わさる。そのまま必然的に交わる視線を控え目に返すも、さらりと零された要望と口説く様な文言には失念していたとばかりに小さく声を漏らし。当日までに初期刀やお洒落が得意な男士に助言を求めに行こう、なんて甘えた思考を巡らせながら視線を泳がせ )
→ 膝丸
俺が、君の事を…?
( 頬を撫でる細指の動きを感じながら何とも格好付かない自身を咎め、内に燻る黒い感情を落ち着けていたも、彼女の手が下ろされると同時に問いを投げられ。何処か落とされた声色に眉を顰めつつ薄く目を開くと、目前でしゅんとした様子を見せる彼女に一つ瞬きを。此方の嫉妬心を悟られぬよう、不快な思いをさせまいとしていたのだが、選択を間違えたのだろうか。逆に彼女の方から言葉を返されてしまった事に苦笑を浮かべる。今でさえ醜く独占欲を膨らませ、彼女への想いを増幅させているというのに、そんな事があり得る筈もない。ゆっくりと伸ばした手で艶やかな黒髪を掬い、愛しげに声を和らげながら断言しては、掠める程度にそこへ口付けを落とし )
──君が側を離れようが、俺の気持ちが冷める事はない。絶対にだ。
燭台切:
ああ、貞ちゃんに手伝ってもらう?貞ちゃんなら、──…うん、きっと可愛くしてくれるよ。
( 僅かな狼狽と共に視線を泳がせ、口をもごつかせる彼女を不思議そうに見詰め。つい先程も言ったが、元から可愛らしいのだからそう気張る必要などないというのに、律儀な子だ。再び同じ文言を口にしようとしたところでふと口を噤み、少し間を開けてから同郷の短刀の名を口にし。己と同じく身形に拘る彼ならば、主人から頼られれば喜んで引き受けるだろう。それに彼の好みからすると、きっと普段ならば選ばないような華美な衣服を用意するだろう。それを想像すると口許に浮かぶ笑みを抑えきれず、少々の無言の間に身を離して顔を背け、一息吐いた後変わらぬ様子で彼女を見て。)
僕から貞ちゃんにお願いしておこうか。きっと喜ぶよ。
霖:
…ふふ、嬉しい。…ね、私も同じ気持ちなんだよ。
( 重力に従い垂れていた髪を一束掬い取られ、俯けていた顔をふっと上げ。捉え方を変えれば子供に向ける声色にも取れる優しい声で誠実な言葉を告げられ、毛先へと唇が寄せられる様を見ると、思わずほうと息を吐き。迷いもせず断言する姿勢にも、そんな気障な行動が似合ってしまう風采にも、更に想いが深まる要素しかない。恋心を前に身体の不調も忘れて表情を弛ませ、此方も愛しさをたっぷりと含ませた砂糖の声で返答を。髪を取る彼の手を導き、自らの腰に添わせて抱き締められる形を作り、今度は悪戯に目を細めて。)
それに、そうやって不安に思ってくれることも嬉しかったりして。
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