かび 2019-07-31 18:38:25 ID:994fddcc8 |
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>48ステファノ長編の続き
言い知れぬ不安を感じ、手短かにお礼を言ってハンカチを受け取る。
「じゃあ、またね。」
またねと言われてももう会う事はないだろう。そう思いつつ、頭だけ下げて家へ帰る。
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あの人もきっと私の長い髪の下に興味があり親切にしてくれたのだろう。見れば幻滅するだけなのに。
さっき渡してもらったハンカチをたたみ直そうと広げると、一枚の紙がはらりと落ちた。
「……何だろう。」
しゃがんで拾ってみれば、誰かの連絡先がかかれてあった。
………さっき渡してくれた人のかな。
何かの拍子に入ってしまったのかもしれない。そう思い、来た道を戻る。
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さてあの少女は僕のプレゼントに気付いてくれただろうか。きっとすぐに連絡が来る筈。
すぐに獲物を手に入れるのは楽しくなく、野生的で好きではない。だからこそ僕への連絡先を書いた紙を忍ばせ、じっくりと距離を詰めていくつもりだった。
内心ほくそ笑みながら、展覧会の会場を後にする。
「お兄さん、さっき若い嬢さんがアンタにって。」
清掃員らしき男がさっき僕が忍ばせた筈の紙を渡してきた。
「……彼女は、他に何か言っていたか?」
「何かの拍子でハンカチに入ったかもしれないから返しておいてくれ。って。」
「…、そうか。ありがとう。ああ、それと、彼女が来たのはいつ頃で?」
「ついさっきまで待ってたんだが、急ぎの用があるっつってお兄さんが来る1、2分前に帰ってったぜ。」
「そうか。」
ならばまだ遠くに行っていないはずだ。
さっき彼女が歩いて行った方向を向き、早足で歩き始める。
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