セシル 2019-07-15 20:34:25 |
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チート悪魔と最弱勇者
第1話 史上最弱の勇者、ここに爆誕!
(やあ。僕の名前はゼーレ・アルフォンス。
ごく普通に小さい田舎の村で暮らしていた
少年…のはずだったんだけど、
何の手違いか聖剣が抜けちゃって勇者に
なってしまったんだ。
あーあ、本当はモンスターとなんか
闘いたくないのに…。
本で読む勇者様って大変だったんだなぁ…。
村でライゼと遊んでたあの頃が懐かしい。)
「…って、僕は誰に喋ってるんだ?」
僕は自分で自分にツッコミつつ、
のろのろ、のろのろと歩を進める。
《モンスターに遭遇したくないなぁ…》
そんな願いも空しく、僕の目の前には…
スライムが現れてしまった。
すごく逃げたい。でも逃げようとすると
「ゼーレは逃げ出そうとしたが、
勇者としての使命を思い出して
踏みとどまった!」とかいうふざけた
テキストメッセージが表示される。
何、勇者の使命って!
こちとらさっきまで村人Aレベルだよ!?
まだ15歳の少年に酷すぎない!?
「…と、とりあえず…えいっ!」
僕は聖剣をスライムに振る。
が、かすりもしない。
スライムはぷるぷる揺れていて、
僕に突進してきた。
「…うっ!」
かなり重みのあるタックル…だ。
体力がヤバい、かも…しれない…。
僕が死を覚悟して目を閉じた、その時。
スライムが弾け飛んだ。
「えっ?」
自分でもすっとんきょうな声を上げて
僕が目を開けると、目の前には
ピンクの髪の男の人がいた。
『…あー、お前生きてっか?』
すごく気だるそうな喋り方の男の人だ。
「は、はい…ありがとうございます」
『お礼とかいいから。お前、名前何?』
男の人は蝿でも払うみたいに手を振って、
ぶっきらぼうに聞いてくる。
「ゼ、ゼーレです。ゼーレ・アルフォンス」
僕は、名前だけは一人前で強そうなのだ。
『ゼーレぇ?お前、名前強そうなのに
雑魚かよ』
案の定、目の前の人は笑う。
『俺はハンナ。ハンナ・エスペラント。
女みてーな名前だけどな』
「あ、ありがとうございました…
ハンナさん」
僕はお礼を言って立ち去ろうとした。
が、ハンナさんに止められた。
『待てよ。お前だけじゃ心配だから
付いてってやる。俺の友人にも
連絡しとくし』
ハンナさんはポケットから
スマホを取り出す。
《あ、意外と最近の人なんだ…》
『…あーもしもし?ロノ?俺、俺。
…詐欺じゃねーよ!ハンナ!』
ハンナさんはその後も3人くらいに電話を
掛けて、スマホをポケットに入れた。
『…おし、大丈夫だ。行こうぜ、
勇者ゼーレ様』
「え、分かるんですか…?」
『当たり前だろ。そんなクソ重そうで
でっかい聖剣背中に背負ってて
分かんない方がおかしいだろ?』
そう、この聖剣は…超重いんだ。
歩くだけでも大変なのに、
ちゃんと振るのなんか出来るわけがない。
僕は剣術なんて生まれてこの方
やったことがないんだから!
チート悪魔と最弱勇者
第2話 僕を助けてくれたハンナさんは
この世界最強らしい。後、友人Aがやって来た。
僕らはしばらく歩いて、街に着いた。
(勿論、道中のモンスターはハンナさんが
全部倒してくれた。)
「ハンナさんって…人間なんですか?」
『いや?俺は悪魔だぜ』
「あ、あ、悪魔!?」
悪魔なんて、本でしか読んだことがない。
でも、本の悪魔はもっと…。
「悪魔って、黒くて、尻尾があって、
角が生えてるんじゃ…?」
ハンナさんがゲラゲラ笑う。
『っははは!いつの時代の悪魔だよ!
そりゃあ、俺のひい爺さんや長老の
時代の話だよ!』
「そ、そうなんですか…」
ハンナさんはひとしきり笑った後、
僕に言った。
『俺のことが気になんなら、ステータス
見ろよ。勇者特権で見れるはずだぞ?』
「ど、どうやって見るんですか…?」
『何も知らねーのな。俺をじっと見てりゃ
表示されるはずだぞ?』
僕は言われた通りにハンナさんをじっと
見つめる。
しばらく見ていると、ぼやぁ…と何かが
浮き出てきた。
【ハンナ・エスペラント:ステータス
LV:99
基本HP:99999
補正HP:150000
基本MP:99999
補正MP:150000
基本攻撃力:999
武器補正値:1500
基本防御力:999
防具補正値:1500
使用魔法属性:時空、破壊、五大元素
種族:悪魔
運:999…】
…その後は、見る気がしなかった。
あまりにチートすぎる。
『どうしたんだよ、鳩が豆鉄砲
食ったみたいな表情して』
「つ、強いなぁ…って」
『まあな。魔王…カロンだっけ?
俺、あいつワンパンできるもん』
「えっ!?ま、魔王を…?」
ハンナさんは当たり前のように頷く。
『そりゃな。LV99だし…HPやら諸々
タスカンしてるし。出来なきゃ問題だろ』
「そ、そうですね…」
『あ、そういや俺の友人がこの街の
どっかにいんだよ。何処で待ち合わせしたか
忘れちまった』
「お、お友だちですか…?」
チートキャラの友達。
一体どんな人なんだろうか。
マッチョの強そうな人だろうか。
それとも、逆に細っこい人だろうか。
『あ、ロノ居たわ』
ハンナさんの声に反応して、僕は前を向く。
ロノ、と呼ばれた人もこちらを向く。
(髪はさらさらの赤髪で、その人の
腰くらいまであった。
赤い目は綺麗で大きくて、ぱっちり
二重だった。
服装は赤いローブに白いブラウスを
着ていた。)
《やっほー、ハンナくん。来たよー》
ロノさんがハンナさんに手を振る。
『おう、ロノ』
ロノさんはとてとてと駆け寄ってきた。
《その子が例の?》
『ああ、名前だけは一丁前のゼーレだ』
《初めまして、ゼーレくん。
私はロノ・フルカス。ロノでいいよ》
ロノさんは僕に笑って、
手を差し出してくれる。
「よ、よろしくお願いします」
僕はその手を握った。
驚くくらい小さくて、柔らかい手だった。
《そんな堅苦しくなくていいよ。
私はゼーレくんって呼ぶし、ゼーレくんは
私のことロノって呼んで》
「は、はい…」
ロノさ…じゃなかった、
ロノはにこ、と笑ってくれる。
よく笑う人だなぁ…。
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