青柳 2019-06-14 05:28:12 |
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……汚いな
( ふと喉奥が煮え立つような熱さを持つ。刹那襲い来る激しい痛みと咳に身体を丸めて浅く呼吸を繰り返し。口元を覆った掌を徐に覗き込めば、鮮血に塗れた薄水色の結晶がひとつ、ふたつ。気管支が切れた痛みよりもその光景への不快感に表情を歪ませて。ベッドシーツの白に点々と口端から零れた血が落ちる様を最近になって幾度となく目にすることが増えた。自身の寿命が残り少ない事を誇示するように、再度しゃくり上げた咳に背を揺らし。一堂屋薫の人生を、現在を、一寸先が闇に攫われた将来を「悔しい」と表現するには些か単純すぎる。永遠に続くと腹を据えた実家での自分の努力とはなんだったのか。突如罹った病の点とは結び付かないにせよ、不服な心情が頭を擡げ投げ捨て場所もない怒りすら込み上げて。仄暗い眼差しで掌上の血濡れた結晶の欠片を力任せに握る。ぷつりと切れた皮膚からぽたぽたと垂れ、薄汚い染みを作っていく様子を伏せた双眸で見詰め。表情の抜け落ちた唇は鮮血を帯びたまま、酷く掠れた声音で言葉を吐き捨て )
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