梔 2019-05-10 21:27:49 |
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>>梔
勿論だよ。…俺に? 君を独り占めして贈り物まで貰うなんて何かバチでも当たってしまいそうだね。
(彼に名前を呼ばれるだけで胸の鼓動が早まる。彼から告げられる言葉は簡単に己を高揚させて断る理由もなく頷けば、彼の指先が己の目元から肌をなぞる仕草に目を奪われて。彼の目に己はどう映っているのか、彼の目元が綿花が綻ぶ如く和らぐのを見て自惚れでなければと期待してしまう。そんな時に渡された彼からの贈り物。全く予測していなかったそれに小さく目を瞬かせては喜びを露わに目元を緩めると、今すぐに中が何のか確認したい気持ちを抑えて空いている手で大事に持っては街へと歩き出して。
中心街へと到着すれば人目も多くなる。手を離すか離さないかそんな些細なことを気にしてしまいその緊張が手から伝わってしまわないか気にしながら、結局手は繋いだまま広場から横へ逸れた路地へ入っていく。そして少し歩いたところで古民家風の創作料理を出すお店にたどり着き。そこで漸く手を離せば暖簾を片手で避けて引き戸を開き彼に先に入るよう促して。それと同時に此処の店主である初老を迎える女性がすぐに出てきて常連である自分の顔を見ると目を細めて『おやおや、今日は随分と綺麗な殿方をお連れじゃないの。…奥の個室が開いているから使ってくださいな。』と彼を見て目尻の皺を深めて微笑み、こちらが何も言わなくても察してくれるのに感謝しながら彼と共に個室へと移り。「ここね。お酒も肴もとても美味しいんだよ。…是非君にも食べて欲しくて。…あ、でも昼間から飲むのは流石にダメかな?」彼の背中を押してさり気なく奥の席へ誘導しようとしつつ、己は彼と今日会うまで飲んでた癖に一応とばかりに少しおどけたふうに確認を取って。)
>>榊
…とても、素敵なお店ですね。(手のひらで分け合った体温が無くなる頃には小綺麗に整えられた個室の座席に着いており、ぽつりと一言。この店の暖かく、優しい雰囲気は彼によく似ている。古く続くものを継承しつつも自分の色を散りばめ、自分の色に染め上げる。温故知新とも言うのだろうか、落ち着いており、決して派手ではないが、絶対的な安心感と安らぎをもたらしてくれる空間。そう考えると、彼のテリトリーに入れてもらえたようで嬉しくて、少しくすぐったい。「ありがとうございます。お料理上手な誠さんが言うのであれば間違いありませんね。…はは、折角誠さんを独り占めできる機会に、それは些か勿体無い。お天道様も本日は大目に見てくれると信じましょう。」なんて、彼の酒を嗜む姿を見たいから、と8割方我欲を隠した返事を。それがいつもより饒舌なのは、彼の戯けた笑顔にのぼせたか、はたまた贈り物への不安の紛らわしか。その箱の中身は、黒と紫の編み込まれた根付紐と黒曜石のあしらわれた彫刻の根付。これを見たときに彼の目の色、髪の色と重なり、一段と輝いて見えた…と同時に彼の刀に収まるお守りを思い出し。頭であれば仕方ないことではあるが、最近立て続けに起きた事件は気高く、優しい彼の心身ともに傷跡を残してしまっているのは火を見るより明らか。彼の側で忍び寄る脅威全てを叩き切ってしまえたら…そんな願いに釣り合うほど自分の実力は高くなく、そんな時に目にしたあのお守りは、とても尊く見えた。彼の大切にしているそのお守りと比べると、気休め程度にもならない、ただの自分のエゴだが、彼の安全を願う意と…あわよくば自分の瞳と同じ色を身につけた榊さんを見たい、という『お返し』とは名ばかりの我欲の塊。我ながら汚いな、とマスクの下で自重気味に笑えば一度その思考に蓋をして「では誠さん、何を頼まれますか?酔い潰れても俺が介抱します…と、言えどもそれは俺の願望に留まりそうですが。」とあまり上手くない冗談まじりにメニューを開き。料理上手で、酒の嗜み方も心得ている彼の注文ならば間違いないだろう、と注文を聞くと、自分もそれに合うような肴を店員に頼んで。)
>>梔
(まだ食事は始まっていないものの彼もこの店の雰囲気を気に入ってくれた様子で目を細めつつ席については先程彼から渡された贈り物を大事に傍らに置く。いつもと同じお店、変わらぬ空間のはずなのに彼が其処に居るだけで別空間の様に明るく感じ、彼の冗談や綻ぶ目元が一層この個室に彩りを与えるのは気のせいではないだろう。ただほんの一瞬、微かにだが彼の表情に刺した陰り。それが贈り物に込められた彼の気持ちからだとは露知らず、その陽炎のような靄は続く彼の冗談によって泡沫の如く消えゆき、己も気に留めぬようすれば緩く微笑みを浮かべ。「君に介抱されるなら酔い潰れてみたいけど、俺が酔い潰れる前に君が泥酔してしまうかもね。…嗚呼、でも茉莉花もお酒には強いみたいだし君の生まれは酒豪が多そうだから案外飲めるのかな?」小さく笑いながら冗談を返しては、そう言えば彼が羽目を外して飲酒している姿は見たことがないなと思い。真面目な彼のことだからいつでも現場に出られるようにセーブしている部分もあるかもしれないが、己としては彼の酔っぱらう姿を見てみたい。そんな我欲から自然な会話の流れで態と兄の名前を織り交ぜつつ、彼に続いて日本酒と肴を注文して。程なくして酒や頼んだ肴が運ばれてくれば、店員に暫くは注文を控え二人きりにするよう頼み、また個室に二人になったところで彼と自分のお猪口に運ばれてきた酒を注ぎ入れ徳利をテーブルに置き。「じゃ、君との初めてのデートに。」お猪口を片手に軽く顔の前に掲げて恥ずかしげもなく穏やかな声色で乾杯の音頭を取っては一足先にグビッと酒を喉に流し込んで小さく息を吐く。酒の香りが鼻腔から抜けていく余韻を楽しみつつトンとお猪口を置いては、彼におかわりのお酌を催促するように指先で軽く徳利の縁を叩いて。因みにお酒は口当たりはまろやかで後味はすっきりとした果実味のある日本酒。飲みやすいが度数はやや度数は高めのもの。彼の選んでくれた肴にはぴったりのもので彼の反応を気にしつつも彼のお手並みを拝見するような気持ちで目元を緩ませて。)
>>榊
…違いありませんね。(注文が終わり、再び空間が2人のものになると彼の浮かべた挑戦的な笑みに思わず背筋がぞくりと震える。いつものふわりと揺れるような彼の可愛らしい笑みとは違う魅力に一瞬言葉を失う。嗚呼、こんな彼の表情が見られるなんて。しかし、そんな浮かれた脳味噌も出された名前が己が兄のものだと分かれば、緩慢な動きに戻る。「酒にはあまり強くありません、が据え膳食わぬは何とやら。誠さんのお酒を頂けるなら、俺も貴方を酔わせられるよう少々張り切らねばなりませんね。…特に兄には負けぬよう。」彼は火の付け方がとても上手だ…それとも自分の理性が低くなったのか?彼の言葉に簡単に乗せられ、燃え上がるとニコリと笑みを深めるが、その眼の奥が隙を狙う大型獣のようにギラついていることには気付かない。もっと知らない彼を見たい、知りたい。今、頭にあるのはそれだけ。「光栄です。」乾杯の音頭の穏やかながら率直なそれを耳にし、彼もデートだと意識してくれていたことに純粋に喜ばしく思う。彼の酒を煽る喉の動き、僅かな吐息、僅かな挙動にも意識を奪われると、不躾な視線を思わず向けてしまい。その視線は彼が此方に向けた視線と交わり、誤魔化すように自分も一気に煽る。酒は飲み慣れないが、すっきりとした果実の味わいに彼の優しさを感じ、味覚に集中をやれば視線を一度宙に浮かせ。その視線は次いで徳利の縁を叩く彼の柔らかな指先に落ちると、「失礼します。」とお望みの日本酒をその徳利に満たして。「これほどの美酒は久しいものですね。肴によく合う…勿論、それも貴方と飲めるからこそ格別なのですが。」と早くも酔ったような言葉を。それは、酒にか、彼にか、どちらにせよ早々にへばってしまうわけにもいかないな、と気を引き締めなおして)
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