日ノ本に残花 〆

日ノ本に残花 〆

梔  2019-05-10 21:27:49 
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  • No.41 by 榊 誠  2019-07-10 20:10:52 


>>梔

(アジトに戻ったヤマトの一同は忙しなく各々の責務に務めるもその空気は不穏が漂い、表面的ではないもののじとりとした重苦しさが蔓延っていて。無理もない、ここ最近、ヤマトでは内通者…件の部下の事件もあり、それに続いて頭である榊までもが裏切る真似をしたのだから。それでも不審感が高まる中、毅然と動く者達もいてその中の一人であるイチは救護室にて梔の本格的な治療を終えるところで。イチは包帯を綺麗に巻き終えると一度席を離れて隣接する別室に入り、掌サイズの長細い小さな箱を手に戻ってきて梔の前の丸椅子に座り『さっき言ってた効用の高い痛み止めだ。即効性もある。ただし効果が高いってことはそれだけ副作用もあるから、正直俺は使うのはおすすめしない。…でもお前の頼みだからな。使い時だけ注意してくれ。あと、今夜はちゃんと休む。わかったか?』と真剣な面持ちでまっすぐ目を捉えながら相手の手に注射針が入った箱を握らせつつ、強い口調で釘を刺す。その頃、茉莉花は情報収集に奔走しており、榊の不自然な振舞いに関して主に2つ、情報を得ていて。1つはスラムのオヤジから梔も聞いた話(>15)榊の妹分がマフィアの抗争に巻き込まれ死亡し、マフィアに対して恨みを抱いていたということ。そしてもう1つは榊を攫った赤髪の組織が薬品を用いた催眠術に長けているということ。これらの情報を紐付ければ憶測ではあるが榊の不自然な振舞いにも説明がつく。『…さて、可愛い弟くんはちゃんと休んどるとええけど。』すっかり暗くなった宵闇の中、日中に弟が榊に向けた言葉や姿を思い出してはフッと笑みを零して一人月に向かってぽつり呟き、ゆらりとアジトへの道に足を向けて。
一方、赤髪の男のアジト、案内された広場を見回しては本能的な居心地の悪さに眉を潜めて別室へ向かおうとする男達に「ちょっと待って。」と声を掛けて引き止め。「約束がまだだと思うんだけど。」『約束だァ?』「…惚けないでよ。俺が君たちについたら大蛇の情報を提供してくれるはずだよね。」と嘆息を混じえて男達に疑惑の目を向ける。自分がその約束のために大事な人を傷付け大罪を犯したことには自覚がないながら男達のこともまだ信用しきれておらず、先程から断片的に訪れる頭痛もあり声に苛立ちが含まれ。そんな榊の様子に赤髪の部下が『…催眠状態に掛かっていればもう少し従順になるはずですが…少し解けかけているのかもしれません。やはりあの梔とかいう右腕の言葉が影響しているのでしょうね。』と耳打ちしては次の指示を待って。)

  • No.42 by 梔  2019-07-15 21:32:44 


>>榊

(組に帰還するものの、組の中は慌ただしく、暗く重い空気が立ち込めている。しかしその中でも常時と変わらず身を粉にして働く者も多く、目の前のイチもそのうちの一人…否、その筆頭。毎回医療チームの人数を上回る怪我人の相手をし、常人ならば嫌になるであろう仕事を嫌な顔一つ見せずキビキビと働くその姿は正しく男性版ナイチンゲールといえる。その白衣の天使は真剣な顔で自分に注射器と薬、そして与えてくれた忠告を脳に叩き込みながら手の中で受け取った箱を開けて中身を確認する。「あぁ、分かった…ありがとう。イチには世話になってばかりだな。」彼も、榊さんのことを心配しているだろうに、と少し申し訳なく思いながらもそう伝え、続けて榊について聞こうとするもそれを邪魔したのは帰ってきた兄の『戻ったで。おもろい事ようさん聞けたわ…お、丁度ええわイチ君に聞きたいこともあるし、今からちょっと皆でお話ししよか』という声。そこからは医務室の中で茉莉花の報告が始まり『つまり、坊は催眠状態にあるんと思うのが一番自然や。そんなら催眠状態を解くのが最もな手段やけど…坊が催眠が解けるまでじっとしといてくれはるとは思わへん。付け込まれた弱みも多分マフィアへの恨みやからかなり強いやろ。そこでイチ君、榊の坊がそれに等しいくらい何か強く思う信念みたいなんは何かあるか?』と問い。
『…連れてきて榊の目の前で殺せ。ただし、少しでも抵抗…いや、不審な行動をするようであれば問答無用で殺して連れてこい。こっちの戦力を減らすんじゃねぇぞ。』チッ、と忌々しそうに舌打ちした赤髪の男はそう部下に指示を出し、彼に向き直る。『約束を破るわけじゃねぇ。大蛇についてだろォ?ゆっくりお話ししようじゃねぇの。』と胡散臭い笑みを貼り付け、馴れ馴れしく彼の肩を抱いて近くのソファに座り。近くの手すきの部下に茶を入れるよう指示して話を続ける。『で、大蛇の何が聞きたいんだい?榊誠君?…あー、もしかしてアレかな?大蛇が抗争の時、周囲の人を敢えて巻き込んで殺すように仕向けてるって噂かな?』と不穏な餌を榊の目の前に垂らし、それに食いつくのを待つ。自身の手の内としては情報を今の段階で言うのは得策でなく、適当にはぐらかして部下の持ってくる睡眠薬入りの茶でも飲ませようというのが本音。丁度その茶が目の前に運ばれてくると、部下が置いた睡眠薬の入っていない自分用の茶を一口飲んで『まぁ、飲めよ。飲めねぇってこたぁねぇよな?』と彼に勧めて。)

(/毎回毎回遅れて申し訳ありません…!今回出てきた大蛇の噂についてですが、その噂の内容については、『大蛇のトップは実は顔の知られた大物で、その人物が抗争に顔を出す時は目撃者がいない様に、相手チームだけでなく、周囲の一般人も事故に見せかけて皆殺しにしている』という感じのものです。噂なので本当か嘘かどちらでもいけるかな、と思ってのことですが、何か不都合等ございましたら何なりとお申し付けください!)

  • No.43 by 榊 誠  2019-07-17 23:20:19 


>>梔

『信念か…。』
(イチは茉莉花の問いに深く呟き視線を落とすと手を組んで過去に榊と話した会話を思い返す。その会話は榊がこの組の頭になってまだ間もなく、なぜ先代は遺言として自分にボスの座を任せたのか、はっきりとは理解できなかったときにイチに零した言葉。『「俺は先代に試されてるのかもしれない。全ての事情を知っている先代が俺にこの組を任せ…どう引っ張っていくのかを。…俺は今ではこの場所が大好きだよ。悔いもない。むしろ狭かった視野が広がってすっきりしてるくらい。ただやっぱりこの無念は断ち切れないから復讐じゃなく別の形で晴らそうと思う。折角先代がくれたこの立場を利用する手はないよね。俺はね、イチ。あの子(少女)のような子をこれ以上生まないために、手を血で染めない人達を巻き込む奴らがいるなら俺はこの組を、その脅威から…俺たちから遠ざけて守っていける存在にしたい。ただ俺の我欲のために仲間を傷つけることも絶対にしたくはないんだ。…って人殺しがなにを言っても戯言にしかならないけどね。」』と、常の微笑みを携えて…。イチは榊の言葉を兄弟に伝えると弟である梔に視線を向けて『…信念かは分からねぇけどよ、アイツは自分のために人が傷つくのを一番恐れてる。だから今回もし誠が復讐のために動いているならアイツの意志に反することだ。しかもお前を傷付けた。アイツの動向によっては更に組の被害が広がるだろ。それをアイツ自身が理解すればその催眠状態ってのを解くきっかけになる……、そう言うことだろ、茉莉花さんよ。』イチはチラリと視線を茉莉花に移しては『本当はさっきの話、誰にも言うなって釘刺されてんだぜ。』とぶっきらぼうに付け足し、再び梔にまっすぐな視線を向けて怪我をしていない右肩に手を置き『…悔しいが今の誠に言葉を届けられるのはお前だけだ。…アイツはお前を…ってこれは話しちゃ不味いか。兎に角よ、お前にばかり負担は掛けたくねぇが馬鹿なアイツをまだ見捨てないでいてくれるってならもう一肌脱いでくれねぇか?』と童顔と言われるその顔をくしゃりと歪ませ笑って。
───シン…、と赤髪の男が大蛇の噂を口にした瞬間、胸の奥底が底冷えするような憎悪が這いずり、周囲の空気を氷点下へ下げるような、冷たく鋭い視線で男を射抜く。…あーそうだ。少女が死んだのは紛争に巻き込まれた偶然ではないのだ。あれは事故ではない。殺戮だ。黒々とした感情は男達への疑いをも飲み込み、まんまと男が仕掛けた餌に食いついていることにも気づかない。差し出されたお茶も何の疑いもなく口にしては、突然訪れる睡魔に抗えずボトリと手から茶の入った湯呑が滑り落ちて。最近良く意識を失うな…とぼんやりする思考で思い、ズルッと赤髪の男とは逆側に体が傾いて。「……何か盛ったね。」『まさか、お仲間の榊さんにそんな酷い真似はしねぇよ。…お疲れだったんだろ?』と怪しく笑う男の声が遠くに聞こえ。“仲間”か、と薄らぐ意識の中、脳裏に浮かんだのは大事な人の…大事なはずの彼の姿。でも靄が掛かっていてその表情が見えない。ぐにゃりとその姿までもが歪むとともに意識も暗転していき。赤髪の男は榊が眠ったのを確認するとナイフを取り出しその首元に充てがうとそれを部下にカメラで取らせる。そして現像した写真を持たせて『連れてくるとき抵抗するようならこれを脅しに使え。』と不敵な笑みを浮かべナイフを手の中でくるりと弄んで。)




(/こんばんは、いえいえお返事頂けて嬉しいです!大蛇の噂に関しても何の問題もありませんし、展開によって都合がきく提案で助かります。そして今回前半ほぼセリフですみません…。やたら説明くさい台詞になりましたがもし不明な点などがありましたらなんなりとお申し付けください。また場面などもすっ飛ばして自由に展開しても構いません。いつもダラダラと長い駄文にお付き合い頂きありがとうございます。)

  • No.44 by 梔  2019-07-21 13:47:42 


>>榊

(イチの口から語られる榊の過去に何も言葉が出ない。イチの口から聞くことができた、ということも大きいのかもしれない。その言葉は重く、鋭く、ただし人の優しさと温もりを持ったもので、『他人を傷つけたく無い』そんな彼の優しい信念を彩り、揺らぎかけていた榊誠という男の輪郭を強く鮮明なものに戻した。「…もちろんだ。教えてくれてありがとう、イチ。」イチの手を軽く握り、自分の覚悟を込めて真っ直ぐにその眼を見据えるといつも可愛らしい笑顔が大人びて見えた。優しく、他人を誰よりも思いやる彼をここまで奮い立てる復讐心は如何程に強いのか…その復讐の炎は強ければ強いほど、彼自身をも痛めてしまうもの。そして彼の心情を無視し、過去の痛みを掘り起こし苦しめるあの男達に対する自分の心にもそれは伝染する。恐らく部下達の心情も自分と大差ないだろう、現にこの組から距離を置いていた兄がこちら側に着いたのも彼に対するあの男達に怒りを抱いているからだ。「…明日は敵のアジト散策を。アジトが判明し次第突撃ができるように、動ける者の半数はさっきの拠点を中心に活動。残り半数は休養と装備の点検、補充…また、今晩のうちに戦闘に備えて各自の準備をするように。」自分がつけていたGPSは今は破壊されて反応がなく、アジトの捜索から始まるため、連絡役の部下にそう伝えるとその日は体を休めるために部屋に戻り。
日付が変わり、夜が明け始める頃にはヤマトの者は重い空気を纏いつつも、『頭領を取り戻す』という強い結託の元、昨日の戦闘があった廃倉庫へと足を運び。拠点へ移動した者のうちの更に半数を休養兼待機を指示し、1人2組で散らばって広範囲の捜索を開始する。兄はまだ不審感を抱く者が大半である為拠点付近の車の中に待機させ、自分はまだ経験の浅い部下と組んで付近の目ぼしいタイヤ痕を調べていると『見つけたぞ…なぁ、お前らヤマトのもんだろ?』背後から聞こえた声に2人とも武器を構えるが、見覚えのある向こうも2人組。間違いなく昨日赤髪の男の部下の中にあった顔だ。若い衆も怯むことなく『おい!てめぇら頭領を何処へやった!!』と威勢良く噛み付くも、返ってきた男達の返事は『おっと、変な行動は慎め。これの意味が分からんほどお前らも馬鹿じゃないだろうが。』と同時に見せられた写真。その写真に映る男性は間違いなく我らが頭領だが、昨日見た時よりも疲れでやつれているように見える。常に優しさの滲む目元には怒りによる憎悪が代わりに滲んでいることが、閉じられた瞼の上からもはっきりと分かる。その憎悪を拭い去りたい衝動に駆られるがその彼はいま自分の手の届かない場所にいる。何より目を引いたのはその首元の美しい柔肌にあてがわれている不敬な刃物。散々彼の心を弄び、利用した挙句脅しにまで使うとは…ぢり、と脳味噌の隅が焦げ付くような怒りが心を支配しかけるが部下の『くそっ…卑怯だぞ!!』という自分の心の代弁のような言葉に我に帰り「…榊さんは無事なんだろうな。」『今のところは、な。お前らが黙ってついて来るんならこのお綺麗さんには手ェ出さねぇよ。』そういうと相手の男はずた袋を取り出して『武器と通信機器を全部この中に入れろ。嫌なら死体にして連れて行くぜ?』と催促されると、部下と仕方なくそれに応じ、どこからともなく現れた車に乗ってアジトへ向かって。
一方赤髪の男のアジトでは、睡眠薬入りの茶を飲まされた榊を客室に寝かしていたため、確認も兼ねて朝食を持ったお手伝いの女性がその部屋をノックして。)

  • No.45 by 榊 誠  2019-07-24 00:51:46 


>>梔

(頭領が不在の中の梔の毅然とした振舞い、そして的確な指示はじとりと重たい雰囲気のアジト内の士気を高め皆を奮い立たせた。イチは彼の日々の心労、傷の具合を知っているため何ともやるせない気持ちでいたが、彼を全力でサポートするため自身に出来ることに尽力して。そして、場は廃倉庫、車で待機していた茉莉花は十数メートル先で起る不審な動きに気づく。弟とその部下が車に連行に近い形で乗り込む姿。雲行きが怪しいなと眉を潜め、すぐに通信機器で見たままを他の部隊に知らせるも彼らが果たして自分の言葉を信じるか否か。それに他の部隊が此処に到着するまでに敵の車は待ってはくれない。見失う前に追跡することに決めては静かに車を発進させ尾行をはじめ。
梔たちを乗せた車は程なくして敵アジトへと到着し、男達は乱暴に2人を車から下ろすと背中を押して建物内へと。室内中央には赤髪の男が立っていてオーバーに恭しく執事のようにお辞儀をして『ようこそ、我がアジトへ。ッつってな。…お前等にはこれから一仕事して貰う。其れがお前等の最期の仕事になるだろうな?まあでも喜べ、お前等のボスのためになる重要なお仕事だからよ。』と鼻で嘲笑い。勿論、仕事とは“死”を意味する。部下はそれを察して恐怖と焦燥から冷や汗を浮かべ必死に平静を装いながら男を睨みつけ『…ッ、どういうことだ。お頭はどこに居る?!』『あ?…ハッ、安心しろ。すぐ会わせてやるからよ。それより随分な口の利き方だな?部下の指導がなってないんじゃないか?美人さんよ。』赤髪の男は片眉を上げると自分の部下に2人を後手に縛るよう指示を出しながら梔の前に歩き立ち、抵抗してこないと踏んでその滑らかな頬に厭らしく触れて、謝罪を強要するように口角を上げて瞳を覗き。
その少し前──、意識の遠くに聞こえたノック音に薄っすら瞼を開くと朝日の眩しさに一度目閉じ、手をついて気怠い体を起こす。僅かに痛む頭を片手で押さえながら室内を見回すとそこは見慣れない場所。徐々に頭が回り始め此処に来た経緯を何となく思い出すも、それは壊れたテープのように映像や音が飛びはっきりしなく大切な何か…誰かを忘れている気がして。──トントンと再び扉がノックされ女性の控えめな声が聞こえるとぼさつく髪はそのままに掛けられていたブランケットを横にやって軽く居住まいを正し入室の許可を出す。朝食を勧められるも食べる気は起きず申し訳ないが水だけ頂くことにしてコップの中に入った水分で喉を潤し一息ついて。「…ねぇ、君。ここのリーダーは今どうしてるか知らない?」『…ボスなら今客人を迎える準備をしておりますが、何か御用が?』「…昨日から何かはぐらかされてばかりな気がしてね。話がしたいんだ。」『大丈夫ですよ。…ボスに従っていれば全て上手くいきます。』女性は手付かずの朝食が乗ったトレイを手に淡々と答えると赤髪の男に榊の状況を報告すべく部屋を後にする。バタンと閉じる扉へ目をやり小さく嘆息しては自分の手のひらを見つめ「…従えば上手くいく、か…。」と監視役の部下が一人いる室内、ボソリと呟いては渦巻く憎悪と復讐心に瞳の色を暗くさせ。)

  • No.46 by 梔  2019-07-26 00:24:56 


>>榊

(普段ならばここで頭突きのひとつでもお見舞いしてやるのに、と眉間にしわを寄せつつ「すみませんね。威勢がいいのが多くて…しかし、突然人の組の頭攫ってった程じゃない。」相手の望んだであろう答えを告げるも、それは一言目のみ。続く二言目には嘲笑を交えて余裕げに眉を釣り上げてみせるが、内心は余裕なんてこれっぽっちもない。早く彼の…榊の無事な姿をこの目で確かめなければ気が気でない。もしあのきめ細かな首筋に一筋、いや、一点の赤でも見受けられるものなら、その時は。『ハッ、随分と俺たちが悪者みたいに言ってくれるなぁ…?忘れるなよ、榊誠が選んだのはお前達じゃなく俺達だったってことだけだ。そんなに大事なもんなら名前でも書いとくこったなぁ!…どうしたァ?反論してみろよ用無し君どもが!』そんなことを考えていると、赤い髪の男へ向ける己の視線が険しいものへ変わっていたことに気付けず、それに感化された赤髪の男がそう声を荒げつつ横っ面を叩く。2、3度それが続き口布の下で鼻と唇から血が出たが涼しい顔で「…終わりましたか?生憎、用無し君達は案外しぶといんで」と嘲笑って。
手がつけられることのなかった朝食を持った女性の次にその部屋を訪れたのは、催眠術の情報に長けた赤髪の男の部下。小さいノックの後に部屋に入ると、以前より暗く染まった彼の瞳を見てゾクリと鳥肌を立てる。彼の催眠状態は未だに不完全。なのにも関わらずこんな暗い瞳をするのは、復讐に取り憑かれているからだ。純粋で無垢な恨みの念がその暗い瞳の奥で渦巻いている事を確認すると、彼に催眠が完全にかかった時はどうなるのだろうか、と期待に胸を膨らませて彼の名を呼ぶ。『榊さん、おいで。リーダーが君のこと呼んでる。』そうして軽く手で彼を招いて。)

  • No.47 by 榊 誠  2019-07-27 17:33:17 


>>梔

『てめェ…ハッ、そうしてられんのも今のうちだ。そのお綺麗な顔が絶望に歪むのが楽しみだな。』
(不利な状況下でも揺るがぬ態度、まるで此方が圧倒させられている彼の振舞いに赤髪の男の神経はさらに逆撫でされ、頭の悪いチンピラごとく吠えて相手の顎を掴むと口角を上げて乱暴に突き放し。その後、2人を拘束したまま何も置かれていない空き部屋に連れてきては跪くよう命令し背後にはあの大男を立たせ。『さっさと膝をつけ。』大男は2人の背中をドンッと押して早く命令に従うようせっつき。
「…君たちのリーダーは客人を迎える準備をしてるって聞いたど。」連れられるまま梔たちのいる部屋の扉の前まで来ては、催眠術に長けた部下を訝しげに見る。術師の男は何食わぬ顔で肩を竦めて『榊さんにもその客人に会って貰うんだよ。…貴方自身のためにね。』俺自身?眉を寄せ疑問に思う間に開かれる扉、その動作はやけにゆっくりに感じられ部屋奥の様子が徐々に視界に入ってくる。そして拘束された2人の男、その内の一人を見た瞬間ズキンと激しい頭痛が再び襲い。彼は誰だったか、昨日も、夢の中でも自分に必死に何かを訴えかけてきた。何故あんなにも傷だらけなのか…。口布の上からでもその端正な顔立ちが腫れているのが分かり胸の奥がざわめいて。「……ッ、」刺すような痛みに額を押さえていると赤髪の男が彼と自分を遮るように間に立ってきて『その痛みの原因はアイツだ。アイツがいる限りアンタはその痛みに悩まされる。』「…でも、あの子は…俺の、」『邪魔者、だよね。』すっと耳横で囁いてきたのは術師の男。にっこりと微笑むその笑顔は胡散臭さが漂うのに惹きつけられるようにその口元を見て、術師の言葉に耳を傾けてしまい『アイツは榊さんの邪魔をしに来たんだよ。…大蛇に復讐したいんだろ?だったらアイツを排除しなきゃ。アイツが居なくなれば全て上手くいく。…だから殺ってもいいよね?』まるで言葉の糸が直接思考に入り込み絡みついてくる感覚に足元までもが浮つく。彼を大切に思う気持ちがどんどん黒く染め上げられ、彼の存在が想い人から己の復讐を妨げる障壁と成り代わっていき、彼を見る瞳が冷酷に染まっていき。「……いいよ。好きにして。」感情のない声で彼に関心を失ったように吐き捨てては、それを見た赤髪の男は歓喜に口元を震わせバッと梔と部下に振り返り両手を広げて『聞いたか?お前達はいらないそうだ。お前達もボスの念願は叶えたいだろ?だったら大人しく消えないとなァ?』と高笑いを零し、梔の隣で震える部下の頭を銃口で軽く叩いて恐怖を煽った後、薄く浮かべていた笑みを消してその銃口を梔に向けて。)

  • No.48 by 梔  2019-07-28 17:28:17 


>>榊

(敵の数が少なければ勝機があるかと周囲を確認するも、立ちはだかるのは自分の背を超える大男。奴に騒がれず部下を連れて彼を探すのは難しい、と判断すればせっつかれるがまま両膝を床につき「…榊さん…っ!」『お頭っ!!』そして何分かの時間が永久に続くかのように感じていた静寂はゆっくりと開かれた扉の音と、その奥から現れた彼への自分たちの声によって破られる。一見、彼の凛とした立ち姿に外傷は認められないことを確認して小さく息を吐いて落ち着きを取り戻すが、彼の瞳を見据えると理知の泉に波紋が広がるように彼の瞳に何かが揺れ動く。慌てて言葉を続けようとするも、その彼との間に男たちが割り入り話が早々と展開されてしまう。しまった、これが兄が言っていた催眠かと気付いたのは彼の今まで聞いたことのないような低く、冷たい…否、温度自体がない…何もない無機質な音が成した意味を理解するより先に新たな発声したのは赤髪の男。彼の暖かい瞳に刺す温もりは今はなく、ただ冷たく凍てつく無機質な氷柱のような敵意が溢れるように、彼の優しい心を利用したこの男に思わずその腹に蹴りだけでも入れてやりたい衝動に駆られるがこちらに向いた銃口に体を硬くする。「…誠さん、自分達が邪魔ですか?」静かになった空気と、赤髪の男の顔から消えた笑みにハッタリなどでは無いと背中に冷や汗が流れるが、ここで引けば彼はもう帰ってこないだろう…それだけは嫌だ、と喉の奥から絞り出すような声でそう切り出す。一度声に出してしまえば、あとは言葉がスルスルと出てくる。「自分達は今のあなたには従いません。徹底的に邪魔しましょう。……俺は、貴方が『ヤマトの頭領』じゃなくても『榊誠』であれば死ぬまで従うつもりでした。しかし、今の貴方は、『榊誠』ではない。…誠さんは、他人の痛みが分かる優しさと、信念を持っている方です。その内面を伴わない貴方は『榊誠』とは違う!」彼の目を真っ直ぐと見据えながら、ただひたすらに心中を暴露する。イチはああ言ってくれたが、本当に響いてくれるかは分からない。しかし、伝えたいことはたくさんある。彼が、自分に教えてくれた他人への優しさを、彼が本当に忘れるはずがない。きっと、思い出してくれると信じて。『ガタガタうるっせぇなぁ!!とっとと消えろってんだよ!!』しかし、その言葉は苛立ちが募った赤髪の男の一言によって阻まれ、どこまでも邪魔をしようというその男にとうとう堪忍袋の尾が切れたプツン、という音が聞こえた。愛しい彼を貶め、操り、これ以上苦しめようというこの男を前に冷静な自我を保てるわけがない。「やかましい!俺は今おまんと喋りゆがやないちや!いね!!」起き上がる反動とともに靴の踵に仕込んだ刃物を出刃しながら赤髪の男の拳銃を握る手へ回し蹴りを見舞うと、それに弾かれた拳銃は幸運にも部下の足元へ飛ばされ、それを部下は後ろ手で把持する。「…やきに、俺は誠さん、あんたを今から取り戻すけんのぉ!!」部下の手首の縄を仕込み刃で切り離すと未だ不利な状況であれど彼の前に堂々と立ちそう宣言して)

  • No.49 by 榊 誠  2019-07-29 19:53:28 


>>梔

『クソッ、武器は全部取り上げろつっただろ!!』
(数秒の間に俊敏な彼の動きによって場の状況が変わる。赤髪の男は憤りを顕に唾を吐いて怒鳴るとすぐに梔と部下を消すよう命ずるも、榊の様子を見て攻撃態勢に入った部下達を止めて。『待て、折角のボスとの最期だ。ゆっくり見守ってやろうじゃないか。』と高みの見物でもするように含み笑いをして。
──胸の内側にある暗くて冷たい、冷寒とした水面にピチャンと一滴、彼の言葉が波紋を作る。『誠さん、…』と微かに震えた、それでもまっすぐに意志の通った凛とした声。自分はこの声を良く知っている。彼が言葉を発する度に温度のある水滴が水面に落ちて、波紋が広がり波打ちを大きくしていく。不快だった。自分を否定されたことが…いや違う、自分の復讐を邪魔する男に己の信念を語られたことがか…。彼と対峙するといつも頭痛に襲われグラグラと意志が揺らぐ。催眠の掛かった思考は彼の真摯な言葉も苛立ちを増幅させるだけで、彼が『邪魔者。』という認識をより濃くしていけば、真っ向に立つ彼を冷たく見据え腰の刀を抜いて「…取り戻す?俺は俺の意志で此処にいるんだよ。邪魔するなら俺が君を斬る。」と。彼を消せば楽になれる、刀を相手に向け温度のない声色を向けるも、微かにその剣先は震えていた。それは『榊誠』の微かな抵抗。抗おうとする意志。それにいち早く気づいたのは術師で、このまま梔と対峙し続ければ榊の催眠が解ける可能性が高いと踏み。ならば片は早くつけたほうが良い。術師は赤髪の男とアイコンタクトを取ると梔に聞こえぬよう耳打ちしてきて。『…彼より先にあっちの僕を。』と。それに小さく頷くと目の前の彼を見据え「…俺はもう君と話すことはないから、いいよね?」と微かな冷笑を浮かべた後、刀を彼に向かって…ではなく、ギリギリで剣先を変えて大きく足を踏み込むと彼を横切りその後ろで拳銃を構えている部下を貫こうとして。)

  • No.50 by 梔  2019-08-03 12:22:05 


>>榊

(さりげなく後ろに回った自分の手を縛る縄も切断すると、こちらに向く彼からの温度のない殺意にやはり一筋縄ではいかないか、と唾を飲み。しかし、かた、と彼の手が微かに震えているように感じ、僅かに希望を抱くがそれも一瞬。「しまっ…!」彼の狙いは自分だと過信しすぎていた。一瞬にして向きを変えた刃はまるで流水の如く滑らかさで自分と部下との間の空気を切り裂く。その刃を止めることは不可能。体の反応速度が追いついたのは辛うじて刀を振るう彼自身に飛びつき、彼ごとその狙いを外そうとする程度のこと。しかし、やはりその美しささえも兼ね揃えた剣舞は揺らがない。自分が彼にタックルを仕掛け、狙いを狂わすことは叶えども、銃を構えた部下の右肩には早くも深々と切り傷ができ、それによる悲痛な男の悲鳴が響く。部下の目には『何故』という疑問と『痛い』という感覚が混ざり、死への恐怖が満ちる。「…っ、やめとうせ!コイツはあんたのことを誰よりも信じちゅうのは、あんたも分かっちゅうやろ!?」慌ててその場に崩れ落ちた部下と榊の間に滑り込むと両手を広げてその信仰を阻もうと声を荒げる。部下も自分も満身創痍、自分に武器は無く、部下の銃も先ほどの攻撃で弾き飛ばされてしまった。まさに四面楚歌、絶体絶命…しかし、そんな状況だからこそ、最後に彼に言葉を伝えられるとしたら今しかない、と覚悟だけは決まった。彼にこの言葉が届くかわからない。先ほどの言葉も、届かなかったと思うと、だんだんと気持ちは凪ぎ、口調も戻ってくる。しかし、彼が彼らしくある、普段の優しさを、暖かな笑みとその背中を思い出して続ける。「…あなたの思い、過去、全て聞きました。俺は少しも知らなかった…あなたはいつも俺たちの事を知って、助けてくれました。そのお返しがしたいんです。」そう言いつつ彼との間を一歩分詰める。「あなたは今、復讐に囚われて我欲で他人を傷つけている。それはあなた自身が一番嫌うこと。復讐をやめてほしいわけじゃないんです、俺もあなたのおかげで復讐ができた。ただ、今のままでは、復讐したい相手とあなたは同じになってしまう。自分の為だけに人を傷つける者。あなたが望むのはそうでないと、俺は信じてます。」一歩、また一歩と自分と彼との距離を詰めるごとに言葉を発し、刀を向けられてなお愛しいその瞳から目を逸らすことなく、その刃を掴む。彼が操られている間に、部下に傷を合わせてしまったことを彼が知れば、彼は必ず自責の念に駆られる。そんな彼の悲しい顔を見たくはない、とその刃を自分に向けさせて。「…帰ってきてください、誠。」)

  • No.51 by 榊 誠  2019-08-05 23:46:29 


>>梔

(身体を掴まれたことで剣先の軌道がずれ致命傷を大きく外し、何故こうも邪魔をするのかと苛立ちが募るも彼が目の前に立ちふさがりその揺るぎない真っ直ぐな双眸と視線が合った瞬間、凪いだ水面に再び大きな波紋を作る。邪魔で煩わしかったはずの彼の声から言の葉から耳が離せなくなり、今信じている偽りの信念が慄きその不安定感から微かに瞳を揺らがせ、彼が一歩ニ歩と距離を詰めるごとに半歩後退るも気づいた時には2人の距離はごく僅か。男の『そいつの話に耳を貸すな!!』と喚く声が聞こえた気がしたが、その声は酷くぼんやりとしていて彼と2人、外界から切り離された感覚になって。彼の手が刃を掴み、その靭やかな手から鮮血が流れ落ちるのをどこか遠くに見た時、凛と澄んだ声が己の名を呼ぶ。“誠”と。その瞬間、スゥと胸の中を風が吹き抜け、一輪の白く美しい花がゆらりゆらりと舞って水面に静かに降り立つ。自分はこの花を良く知っている。粛々と目立ちすぎずそれでも確かな明媚を放ち、愛らしさの中に毅然たる魅惑を秘めた可憐な花。「……梔…?」酷く掠れた声と戸惑いで揺れる瞳で彼を捉える。なんだこの状況は…と鈍い痛みが走る頭の中にあらゆる記憶と情報が一気に流れ込んできて、情報の処理が追いつかずグラリと足元が揺らぐも彼が掴む刃だけは動かさぬようにしていて。「…俺は、何して…」彼を傷つけたのは、彼の後ろで倒れている部下を傷つけたのは自分なのか…それだけじゃない。自分は我欲の為に多くを巻き込み傷つけた。戸惑いや絶望、後悔、自己嫌悪…負の感情が入り乱れ、いち早く起点を利かせてこの場を立て直させばならないと理解しているのに己の頭は狼狽えるだけで全く役に立とうとしない。その様子に赤髪の男は榊の催眠が解けたと察し焦燥と焦りから表情を歪めて『何してんだ!!さっさとそいつを殺れ!!!』と梔を指差し部下たちに吠えるように命令して。梔の背後に立っていた大男がゆらりと動き背中に背負う大剣を引き抜きこちらに迫ってくるのが見えては、反射的に刀を構えようとするもこのまま刃を引き抜けば彼の手を深く傷付けることに気づく。だが、きっと彼の反射神経なら…彼なら自分がこの後取る行動を組んでくれると…裏切っておいて虫のいい話だが彼を信じて大男を見据えたまま一気に刀を後ろに引き抜き、彼の身体を軽く押しのけると彼がどうなったか確認する暇もなく空間を切り裂くように振り落とされる大剣をギリギリのところで刀先を手で支えることで受け止めて。
その頃、男達のアジトの外近く、茉莉花は車での尾行に成功し何とか此処までたどり着くもまだ中に乗り込むのは躊躇しており。あともう少し…あと少し待って動きがなかったら行動に移ろう…と疼く古傷を手で押さえアジトの入り口を見据えていて。)

  • No.52 by 梔  2019-08-10 10:41:16 


榊>>

榊さん…!(彼の瞳が大きく揺らぐと同時に呼ばれた自分の名は酷く掠れていたけれど、その揺らぎの中には確かに以前までの…愛しい彼の心が感じられて思わずその名を呼び返す。良かった。このまま彼が戻らなかったら、あの透き通るような双眼が、道のほとりでそよ風に揺れる花のような微笑みが失せてしまうのかと気が気でなかった。しかし、やはり彼は戻ってきてくれた。その事実に思わず笑みが浮かんでくるが、相対する彼は今までの記憶が一気に逆流でもするかのように流れ込んだのだろう、愕然とする姿に笑みは消え言葉を失う。そうだ、まだ安心はできない。優しい彼の心が折れてはいけない。彼は利用されただけで何も悪くないのだ。何か言葉を、と上げた目に映ったのは自分の後ろを見据える彼の瞳。一瞬反応に遅れるが、今までの曇った瞳とは違う、いつもの聡明で、相手の隙を見極めるその強い意思のこもった眼差しに何をしようとしているのかが理解できると同時に彼の刀から手を離す。押された体を反転させたところで、視界に赤く流れ出た液体が映り込む。それが彼の手からも流れる鮮血だと知るや否や、ドッと怒りがまた込み上げてきて「榊さんから離れろ…!」と今までのお返しだとばかりに大男へ飛びかかり、両手に構えた拘束用の縄をその首に掛けて榊とは反対側へ引き倒し、周囲を確認する。彼の剣舞の見事さ、実践の強さは身に染みて分かっているが、今の精神状態ではいつもより気力の磨耗が激しいだろう。何より、今の状態で無茶をして欲しくない、また倒れていた部下は自力で起き上がり、他の相手と応戦しているがそれも長くは持たないだろう。かくいう自分もこの大男を相手取り、勝利することができるかと考えるとそれは否。ここは臥薪嘗胆ではあるが、もう一度体制を立て直すべきだと逃走ルートを考えるがそれを邪魔するのは『もういい!!ボンクラ共が!退け!!』と発しながら他の部下を押しのけ前に出てきた赤髪の男と、その手に持たれた拳銃の威嚇射撃音。『…榊さんよォ、俺たち上手くやれてたじゃねぇか。今その隣の部下二人を殺したらこのことは無かったことにしてやる。アンタにゃ大蛇の情報が必要なんだろ?』と榊へ甘ったるい猫撫で声でそう提案しつつ銃を構え『ただし、断ったら分かってるんだろうなぁ。』と脅しをかけて。
中から響いた銃の高い発射音に気付いた茉莉花は、それが威嚇射撃だとは分かるはずもなく、その音がもし、榊の体に穴を開けたものであったらどうしようかと冷や汗をかく。『くそ…ほんまは嫌なんやけどなァ…!』と苦笑いを浮かべながらホルスターにしまっていた拳銃を取り出してアジトの中へ勢いよく突入して)

  • No.53 by 榊 誠  2019-08-12 10:44:43 


>>梔

…っ…、
(赤髪の男の猫撫で声と差し付けられた脅しに背筋がゾワリと冷えて吐き気を覚える。催眠の解けた頭では“情報”などゴミの価値もない。こんな、こんな卑俗な男の言葉に自分は惑わされ、組を仲間を…大切な彼を傷つけたのか。もしこの場で自分に罰を科すことが許されるならば腹を切り裂いてしまいたいが、命を絶つことで許されるほど自分の犯した過ちは軽いものではない。男達以上に自分が憎い。奥歯をギリッと噛み締め暴走しそうな激情を理性で抑え込む。このまま感情に流されれば男達を全員斬り殺してしまいそうだった。でもそれではいけないとまだ脳内の情報の整理が追いつかない中、冷静になろうと努め一度部下と彼に真っ直ぐな視線を送りゆっくり目を伏せて。「……情報か。従えば今度こそ本当に教えてくれるんだよね?」『…ああ。当然じゃないか。』「…だったら君たちの部下に彼らから手を離すように言って。気が散るし間違って斬っちゃうかもしれないからね。」刀を構え直し真っ直ぐに梔に視線を向けて冷たい声で言い放つも、これは演技。この最悪の状況下、手負いの相手と部下を安全に逃がすには男達の隙をつくしかない。それには真っ向から迎え撃つよりも男達に従う姿勢を見せたほうがやりやすい。要は、復讐にまだ囚われているフリをして隙を狙う訳だが、この程度の打開策しか浮かばない己の愚鈍さを呪ってやりたい。上手く行くかはこの手と信頼のおける彼と部下の動き次第。2人なら自分の演技に気づいているはず…。赤髪の男の訝しむ視線が刺さるが『…抵抗やめてソイツ等から手ェ退け。』と命令が下され、梔に取り押さえられていた大男も抵抗をやめ、部下と対峙していた男も武器を下げて後に引く。それを確認すると刀を持つ手に意識を集中させ彼を見据えて「…梔…、君のことは大事だよ。でもやっぱりどうしても諦めきれないんだ。ここまで来たら後戻りは出来ない。…ごめんね。」微かに眉を下げて微笑むと刀を彼に向かって振りかざす。勿論、真の狙いは一番厄介な大男を戦闘不能し、その流れで2人の無事を確保すること。ギリギリまで刃の狙いを彼に向け、刀を持つ手に微かに力を込める。その時、視界の端に彼の兄、茉莉花が映ったように感じた。その手には拳銃。タイミングが良いのか悪いのか…判断する暇もなければ動き出した身体を止めることも出来ず刀の持ち手を微かに傾けて。)

  • No.54 by 梔  2019-08-14 23:12:33 


>>榊

(怒りで震える肩を必死に堪えようと歯をくいしばるに思わず手を伸ばしそうになるが、それはこちらへ向けられた彼の澄んだ瞳に静止させられる。彼の心が宿ったこの美しい瞳が語るのは…。『そんな…っ!頭領!!』部下も自分も、彼が何を考えているのかはすぐに想像がつき、部下はそれに上手に合わせ、自分は咄嗟の演技が下手な為それを黙って見ていた。彼からのアイコンタクトはあったが、彼の凛と背筋正しい構えと、迷いのない刀の鋒は静かなる覇気を感じさせ畏怖と同時に目の離せないような美しさを放ち、自分の目はそれに釘付けとなる。彼の気迫に足がすくむ…というより意識を全て持っていかれる。そんな時に彼から発せられた言葉は蜘蛛の巣を辿る雨水のようにすんなりと胸に落ち、彼に…今の榊誠になら自分の全てを差し上げたって構わない、と彼を信じて両目を閉じて腕を広げる。彼の衣擦れの音と刀の重厚な音が微かに聞こえたかと思えば、次いで聞こえた悲鳴は自分のものでも、部下のものでもなく大男のもの。振り返って確認すると、見事に彼の刀が描いた軌道は大男の胴体を切り裂き赤い血だまりを作っており、その美しい腕前にほう、と息を吐く。『…て、テメェ…ふざけやがって!』そう怒鳴り声を上げた赤髪の男は自分の思惑通りにいかないことに怒り狂い、乱雑に自分の頭髪をかき乱しながら部下に指示を出そうとするも、その指示を出そうとした指を左手ごと銃弾で吹き飛ばしたのはやっと現れた茉莉花。先程榊が弟に刃を向けていた時には驚いたが、やはり聡明で仲間を思いやる彼には計画があったのだ、そしてこの様子だと催眠も溶けたのだろう、と察知し弟と部下に向かって取り上げられていた武器類が入った袋を投げてよこし『管理するには案外不用心すぎるんとちゃいます?』と笑みを。これで立場はほぼ対等に近づいた。『クソ…ッ!クソが!こっちが甘く言えばデカくでやがって…!もういい、もうお役御免だ。全員ここで死んでもらうっきゃねぇ!お前ら!いけ!!』その袋の中にはイチから貰った例の薬もあり、躊躇うことなくそれを自分の腕に突き刺すと短刀を構え、彼と赤髪の男との間に割って入って。)

  • No.55 by 榊 誠  2019-08-16 21:18:01 


>>梔

(取り返しの付かない過ちを犯した愚かな自分の意図を正確に汲み取り動いてくれる部下と、彼。普通であれば背を向けられてもおかしくないのに未だ自分を信じてくれる彼らに胸が熱くなると同時に刺すような痛みも伴い。それでも今は傷心している場合ではない。敵が待ってくれるはずもなく、左手から大量の血を流してヤケを起こす赤髪の男の命令によって手下の一人が突貫してくるのを刀でいなし、よろめいて無防備になったその項に刀の持ち手で鉄槌を食らわせ床に沈め。それに続く形で武器を手にした部下と茉莉花が赤髪の手下を制圧していく。それを横目に把握しながら視界の端に映ったのは彼が腕に注射らしきものを刺す姿。あれは一体…と考える間もなく自分を庇うように赤髪の男との間に立つ彼の背中にざわりと胸が騒ぎ。その靭やかな体は既に消耗しきっているはず。それでも尚その立ち姿は翳りなく高潔さを失わない。守りたいと思った。彼を、その心を、許されるならその信用を──少なくとも今だけは。刀を持つ手に力を込め一歩二歩と足を進め彼の前へと出ようとした時だった。『畜生!! 役立たず共めが!! こうなったらお前達全員俺らと一緒にあの世に道連れにしてやるよ。残念だったな、榊さんよ。アンタが大人しくしてれば命だけは助けてやったのに!! ハハ、ヤマトのツートップ殺して死.ねるなら本望だ!! 』手下をやられ左手を失い大量の失血で気でもおかしくなったのか、赤髪の男は狂ったように叫んで笑うと胸元から手榴弾を取り出して。その手榴弾は通常よりも大きく爆発力も甚大でこの部屋1つなら容易に吹き飛ばすことができると予測でき。『…リーダー…ダメです。逃げてください。』息絶え絶え聞こえた声は床に伏す赤髪の男の手下のもの。その声が当人に届くことはなく今にも安全ピンを口に咥えて抜こうとしているところ。此処は二階、窓から飛び降りて脱出することは可能だが、全員の無事を確保するには大元を潰すしかない。自分の落とし前は自分で──、「全員窓から退却!! 」普段滅多にしない声張った命令を下すと共に、窓へ…ではなくその逆、赤髪の男の手から手榴弾を奪うべく大きく一歩を踏み込み前に立つ彼の横を通り過ぎようとして。)

  • No.56 by 梔  2019-08-21 08:56:29 


>>榊

(身体を焼くかのような一瞬の痛みの後、引いていく痛みに心の中でイチに感謝しつつ目の前の相手を見据える。こいつが彼の弛まぬ意思を、強靭な四肢と磨き上げられた剣術を一方的且つ利己的に…そう、まさに傀儡かのように指先で操っていたのか、否、操れると思っていたのかと思えば、肺に腐ったヘドロを詰められたような嫌な感覚になる。そんな嫌な感覚を更に強めたのは男の手に握られた手榴弾を見るや爆発的に増加する。「…貴様ッ…!!」そうはきだしあ咄嗟に相手の右手に向かって下ろしかけた短刀をすんでの所で止めたのは、珍しい彼の大声。普段柔らかな声が紡がれる唇から飛び出たその声は強い命令となり、茉莉花と部下は直様それに従い窓から脱出し、自分もそれに続こうとしたものの、ふと背後にいたはずの彼が自分の横を通り過ぎようとしていることに気づく。そして、その目には強い信念が燃え揺らいでいることが確認できたが、まさか。「榊さん…っ!!」彼は責任感の強い男だ。きっと、みんなを逃がそうとしているに違いない。ならば自分はどうするか?彼を担いで逃げることは可能だが、彼の信念を自分は尊重したい。出口に向かっていた足を回転させ、彼の後に続く。その際床についた手元にあった砂利を掴むと赤髪の男の気をそらすべく、それを目潰しとして顔へ投げつけ、視界の端で彼が男の持つ手榴弾を取り上げようと手を伸ばしているのを目にする。しかし、その結果を見る前に体は動き、赤髪の男の胴体に短刀で斬りかかり。)

  • No.57 by 榊 誠  2019-08-23 16:16:09 


>>梔

(己が命令を下すと共に動き出す3つの気配。2つは外へ、もう1つもと思ったが名を呼ばれ此方に応戦する動きを感じれば、その気配は一息として考える間など無かったにも関わらず淀みなく的確に動き──。砂利は見事赤髪の男の目に命中、その痛みに男は蹌踉めきながら堪らず咥えていた手榴弾の安全ピンを口から離して目を押さえ呻き声を上げる。その呻き声も彼の華麗な一太刀によって醜い潰れた声へと変わり男の胴体から血飛沫が飛んで。拍子に男の手から手榴弾が零れ落ち、それをすかさず掴み取り安全装置が外れていないのを確認して安堵したのも束の間、ガシリと凭れ掛かられるように男に胸ぐらを掴まれ『…ッ…ハハ…良い部下を持ったもんだなァ……だが、榊さんよ…、アンタの闇はいずれヤマトも…ソイツも潰すことになる。…大蛇は闇ある場所に現る…、アンタもソイツも皆殺し…ッ、』息絶え絶えに嘲笑を零す男の口からゴボリと血が溢れ、ズルリと力を失った体が床に転がる。室内にジトリとした静寂が訪れ嫌な汗が背を伝い目を伏せては此れから自分がすべきこと、彼に掛けるべき言葉を潜思するもどう推し量っても自分が悪く、敵を制圧し落ち着いて考えられるようになった今、彼と向き合うことの恐れが胸の内に渦巻き。「……梔…、君が居てくれて良かった。あとは処理部隊に任せて充分な療養を取るんだ。…俺は少し、頭を冷やしてくるよ。」今の自分に組を率いる資格も彼を気遣う資格もない。だからと言って傷心できる立場でもない。結果、自分が導き出した答えはこの場から逃げること…。彼の顔をまともに見られないまま彼へと向くと短刀を握る一方の手にそっと手を重ねて静かに言葉を落とす。ぬるりと濡れる彼の血は己の刀を握ったときできた傷から溢れるものだろう。この手だけじゃない。彼の靭やかで弛まぬ身体と心に無数の傷をつけたのは他でもない自分。すりっと親指で彼の手の甲を撫でながら視線を横に流し何とか口元に微笑みを携えるとそっとその手を解放して手榴弾をコトリと床に置き。「…後は任せたよ。」目も合わせぬまま無責任と承知の上でそう告げると彼に背を向けて、屍を跨ぎ部屋を出ていこうとして。)

  • No.58 by 梔  2019-08-27 07:38:42 


>>榊

(ここで彼を行かせては駄目だ、と本能が警告を鳴らす。先を見通す知識と慈愛があふれた瞳は今は、その長く物憂げな睫毛で伏せられ、今まで我々を守ってくれた勇ましく、威風堂々たるその背中がほんの一瞬目を逸らしたうちに夏の陽炎に連れ去られそうな、そんな先程とは違う恐怖が腹の奥から湧いてくる。もう彼をこの手から逃したくない、そんな汚い我欲が行動として湧いて出、この部屋から出て行こうとする彼を後ろから抱きしめる。「榊さん、待ってください…!」自分のものだろうか、と一瞬迷うほどに焦燥に駆られた掠れ声で彼の名前を呼ぶ。「もう、貴方を失いたくないんです…。」自分より少し低い彼の頭をじっ、と眺めても今はどんな表情をしているのか分からず、戸惑いが勝りそうになるが、彼を留めたい、という気持ちは強く、彼を抱きしめる腕はそれを代弁するかのように強く力がこもる。「…自分も、同行させてください。」時間にして数十秒、自分の考えが纏まると、彼の腕を緩い力で掴んだまま彼の体から離れ、斜め後ろに立つと、そう要望を口に出す。彼が自分の頭を冷やしたいというのは本当だと思うが、彼を狙う他の者がいるかもしれない。それに、今の状態の彼をそのままにしておけない、という自分の気持ちが強いのもあり。掴んだままの彼の右腕を指の腹で一度拭うように撫でると「お願いします。榊さん。」ともう一度、今度はやや強く申し出て)

  • No.59 by 榊 誠  2019-08-28 17:36:37 


>>梔

(後ろから抱きしめられると小さく目を開くも次に聞こえた彼らしくない掠れた声に胸がキリと痛み目を伏せる。彼の声や気遣い、その腕から彼の気持ちが伝わってきてどうしようもなく苦しくなり、逃げ出したい気持ちと受け止めたい気持ちが入り混じって。胸中で葛藤するうち、彼が離れて腕を解放されるもまだ腕は掴まれている感覚が残っていて、続く申し出に伏せていた目をゆっくり開き。ふーと深く息を吐くと彼に背を向けたまま静かに口を開き「……君の治療が先だからね。」と根負けしたように一言だけ告げることで同行を許すと彼の反応を待たずに今度こそ部屋の外へと足を向ける。実を言えばまだ彼と向き合う気持ちの整理は出来ていない。だが放っておくとこんな自分でも信じてくれる彼は傷などお構いなしに動き回ってしまいそうだったから。ならばまだ目のつく場所に置いて休ませてやるほうが安心できる。アジトはきっと優秀な部下たちが何とかしてくれるだろうと無責任に思いつつ階段を下っていき。
その頃、窓から無事に脱出した部下と茉莉花は中々降りてこない2人を気にかけつつ、部下は茉莉花の車に備え付けてあった通信機器から応援の要請を、茉莉花は部下の傷の応急処置に当たっていて。)

  • No.60 by 梔  2019-08-30 13:45:07 


>>榊

(少し長めに吐き出された彼の息に続いたのは、渋々出された同行への承認。我儘がすぎた、と反省はすれど彼のそばに居られることに不謹慎ながら嬉しさが込み上がってくる。しかし、心のどこかでは分かっていた。彼の声と向けられたままの背中から、まだ彼の心は不安定に揺れ動いている、この承認は苦く痛いものだったのだろうと。彼にとって仲間の負傷、刃を向ける行為そのものが心臓を貫くほどの精神負担の筈だ。その傷は癒えるどころか、未だにその心臓奥深くに深々と根を張り今も彼を傷付けている最中だ。いつもの心地よい静寂とは少し違う長い静寂の中トン、トン、と彼に続いて階段を降りると、その先には無事に退避していた2人が階段から降りてきた2人を見てほっと安心した息をこぼし『お…お頭ー!』『2人とも無事そうやな、良かったわぁ…』と各々の迎えの言葉を口に出す。『今応援を呼んだんですぐに仲間が来ますよ!皆貴方のお帰りを待ってます!』茉莉花の手当てを受けていた部下は相当嬉しかったのか立ち上がってそう言いつつ彼に近寄ろうとするも、柔らかくそれを茉莉花が阻止し『…坊、大丈夫かいな。』と一言だけ問いかけて。)

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