常連さん 2019-05-09 16:45:49 |
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「ふふふ、だって響、俺に構ってくれんのやもん…悪戯くらい許してくれてもいいやん?」
(ふふふ、だって響、俺に構ってくれないんだもん…悪戯くらい許してくれてもいいじゃん?)
奈津は不服そうに口をとがらせた。
「…………」
奈津は響の上から降りた。
「ふーん、そうなん、仲良しなんやね」
冷たく言い、ふい、と顔を逸らす。
「…やっぱり勉強しよ。早よ座り」
『はい、こっちが響のでこっちが奈津先生の』
姉が階下に降りようとしたとき、
誰かの声がする。
《すんませーん、響いますかー?日野ですー》
『はーい』
階段を上がってきたのは響の友人、
日野京夜本人だった。
「あれ?京。何で来たん?」
《響の顔見たくなったから》
「んふふ、さよか。なら一緒に勉強しようや」
《うん、俺はええけど…先生は大丈夫なんか?》
「ありがとね~お姉さん」
ぺこり、と礼して笑いかける。
「……別にいいばい、もう今日の分は終わったき。…じゃあね、響くん、楽しんで」
(……別にいいよ、もう今日の分は終わったから。…じゃあね、響くん、楽しんで)
京夜にそう言うと、荷物をまとめて立ち去る。
《……響。あれはな、先生怒ってはるねん。
次の日ぃ謝りや?》
京夜はばつが悪そうに頭を掻く。
「…そうなん?何で怒っとるんやろ…」
《多分響の鈍感さと、その性格やね》
「鈍感?何が」
《そういう所や》
いつもよりも大股で帰り道を歩いていく。
「何なん…響のばーか…!」
足元の小石を蹴飛ばし、毒を吐いた。
「……あ…。…ボールペン忘れた…。…もういいや!戻りたくないけん!」
大きな声で言うと、また歩きだした。
「あー、ほんとぐらぐらこくばいね、すかーん…」
(あー、本当に腹が立つね、嫌いだ…)
《ほな、帰るわな。さいなら》
京夜はひらひらと手を振って帰っていった。
『あれ?響。これ先生のペンとちゃうん?』
「ホンマや。忘れてったんやな」
『届けに行きぃや。響、足速いやろ』
「分かったわ」
響はペンを握って家を飛び出す。
「…陸上部舐めたらアカンで」
独り言を呟きながら、どんどん加速する。
背中が見えたらしく、大声で呼び掛ける。
「せんせー、奈津先生ー!ペン忘れてるー!」
「うわ、なんか来よーやん!?なんで!?」
(うわ、なんか来てるじゃん!?なんで!?)
驚くと、奈津はその鈍足で走り出した。
「お友達はどうしたんー!?1人にしたらダメやろー、可哀想やろー!?」
奈津は走りながら言った。
「京なら帰ったでー!」
響は現陸上部である。
鈍足の奈津に追い付くのは簡単だったが、
あえて追い付こうとはしなかった。
「それより、ペン忘れてたから届けに
来たんやー!」
響の脳内で、京夜の言葉が再生される。
《謝りや》
「…奈津先生、怒っとるん?」
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