深い闇の底から覚醒していく。
視界を塞ぐ瞼をゆっくりと開けて、まだ覚醒しきっていない身体を気だるげに起こした瞬間に、ささやかな違和感を感じ取った。
「……?」
その違和感の正体を確かめるべく視線を己の体へと移した。視界に映ったものに瞬時に思考が停止する。目の前に広がる光景に、脳が考えることを拒否した。
胸元にある二つの膨らみ。
恐る恐るダボッとしたシャツの襟を広げて再確認してみた。
「ぎゃああああ!」
ほっそりと伸びた手足は、かつて自身が持っていたはずの筋肉は皆無に等しく、代わりに柔らかな脂肪に包まれている。
認めたくない気持ちのまま、今度は恐る恐るとパンツを少し開けて確認。
「な……ない。……あるはずのものが……ない!?」
性別的にあるはずのものが跡形もなかった。咄嗟に近くに鏡がないか探し、部屋の端にこじんまりと設置された洗面台にある鏡を発見して、よろよろと慣れない身体を鞭打って移動した。
「……そんな。……嘘だろ……?」
鏡に映っているのは、かつての自分の面影を微かに残している少女の姿。
そう、これが始まりだった。
理不尽に人生を狂わされた者たちの物語。
レス禁