Now saving... 2019-04-17 23:32:24 |
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「あらあら、それは良かったですこと。ユガ様のハンターとしてのご活躍に期待しております」
「ありがとうございます。」
にこりと笑ってその場を去ろうとすると、村長が思い出したように告げる。
「そうでした、今この村にはトゥーク様という方が滞在されております。ハンターとしても腕の立つお方ですから、お困りごとがありましたら、是非訪ねてみて下さい」
村長の方に向き直り、頭を下げてから立ち去る。
『トゥーク』という名は自分の住んでいた集落にも轟いていた。3人もの弟子を育て、更には雷狼竜の異名で恐れられるジンオウガを狩猟したという新人ハンターの憧れの的だ。自分も会いたいと思っていたので、時間が空いたら訪ねてみようと思う。
「おーい!ユガー!」
集会浴場に入ると、奥のカウンターから声をかけられた。声のした方向を向くと、桃色の制服に身を纏った受付嬢が手を振っていた。
自分に受付嬢の知り合いはいなかった筈だと相手の顔を確認すると、それは自分のよく知る人物だった。
「カレハ!」
思わず駆け寄り、カウンターに手をつく。
「カレハ、久しぶりだな」
「久しぶり、じゃないよ。5年も会えなくて寂しかったんだよ?」
昔、自分は商人をやっている父親の荷車に乗ってユクモ村へ遊びに来ていた。その時に良く遊んでいたのがカレハだ。自分の父親がカレハの父親と仲が良く、家に泊まらせて貰う事もあり、とても仲が良かった。
「にしても、大きくなったよなぁお前も。昔はあんなにちっちゃかったのにな」
「そりゃあ変わるよ。誰かさんが突然遊びに来なくなってから5年も経ってるんだから」
「悪かったよ。ハンターになりたくて、勉強とか鍛錬とかしてたんだ」
5年前、とあることをきっかけにハンターを志すようになった。そのために様々な知識を身につけ、体を鍛える事を始めたことを境にユクモ村へも行かなくなっていった。
「それは分かるけどさ、私に何も言わないんだもん…」
「悪かった悪かった。でもそれより俺は、カレハが受付嬢になった事の方が驚きだぞ?」
まだ文句を言いたそうなカレハに対し、いたずらっぽく言ってみると、案の定「う」と言葉を詰まらせ、
「こ、これは…ユガがハンターになるって言うから、私も何か手伝え無いかなって思って…」
と口ごもりがちに言う。
「そうか、ありがとう。頼りにさせて貰うからな」
カレハが自分の手助けをしようと思ってくれていることに嬉しくなる。
「うん、どんどん頼ってよね。なんたって私はギルドの職員ですから!」
「ひょっひょっ、まだまだ研修じゃがの。ヒック」
自慢気に胸を張るカレハに、横から酔っ払ったギルドマスターの突っ込みが入る。
ギルドマスターは、手に持った瓢箪に入っている酒をグビリと煽ってからユガを見た。
「おう、よく来たなユガ。話はアッシュから聞いているよ。ホレ、ギルドカードを見せてみい」
ギルドマスターに言われるがままギルドカードを差し出す。ギルドカードとは、ハンターの名前やハンターランク、直近の狩りが記録されたハンターの名刺のような物だ。ユガはハンターに成り立てなので、ギルドカードにはまだ訓練所での記録しか記されていない。ギルドマスターもそれは知っていると思うが、念のために確認しているのだろう。案の定、何もめぼしい物が無かったのか、ギルドマスターは少し眺めただけでそれを返してきた。
「まだ実戦経験は無い見たいだね、まあ採集クエストや小型モンスターの討伐から始めて、だんだん慣れていくと良い。ヒック」
「はい。とりあえず今は他にやる事があるので、また後で来ます」
「まったねー!」
ギルドマスターから有難い助言を頂き、先程と同じ様に手を振るカレハを背にして歩き出す。この村に来てすぐに村長さん経由でここまで来たので、まだどこに泊まるかも決めていない。やるべきことは沢山あるぞ、と気合を入れ直し、集会浴場を後にした。
「これで12本目、残りは3本か」
根本から引き抜いたばかりの特産キノコを腰の携帯ポーチに放り入れながら立ち上がる。
今回は特産キノコでのキノコダイエットを試したいマダムからの『特産キノコ15本の納品』の依頼だ。
今採取した地点にはもう、まだまだ小さい物しか生えていない。こういった小さい物も採取することは、その周辺の環境に影響を及ぼす可能性があるので、ギルドによって禁止されている。
ここは渓流と呼ばれるフィールドらしく拠点のユクモ村から一番近い。
気候は安定しておりホットドリンクやクーラードリンクといった体温を調節するアイテムもいらないため初心者ハンター御用達のフィールどとしても名高い。
一方で未だ生態が掴めていない牙竜種の目撃例が最近になって後を絶たないためハンターズギルドの面々も気が気ではなかった。
「くっそー。あと3本が見つからない…」
こういうときアイルーなんかが居たら楽なのかなと愚痴をこぼしつつ散策を続けるユガ。せっかくハンターに成れたのに初めての仕事がキノコ探しとは半ば肩を落としているのが実は本心だったりするのだ。
しばらく散策を続けていると小川から少し離れたところにある森林の中にユガは居た。森林の方にはまだ近づかない方が良いとギルド本部にも言われていた気がするが寧ろ少し危険くらいの方がハンターとしての仕事を全うしているような気がしていた。
森林の中はあまり日光が届かずジメジメしていた。朽ち木やコケの匂いを感じながら森林の中を彷徨っていると視線の先に大きなハチの巣があるのが分かった。
「ッ…!?」
だが、ユガが驚いたのは大きなハチの巣を見つけた事ではなく、その近くに沢山生えていた特産キノコでも無かった。
「デカい熊…ッ?」
視線の先に居たのは巨大な熊だった。全長は5メートル台と言ったところか。見たことも無い毛並みで全体的に青みがかっており両腕はもはや生物らしからぬ金属のような装甲を纏っていた。
巨大な青い熊はこちらには気づいていないのか大きなハチの巣に食らいついている。
「(なんだよアレ…。あんなのどうやって相手すれば…。)」
ユガは全身に嫌な汗が流れているのが分かった。直ぐにでも逃げ出したいと頭の中では分かっているのに、その足はまるで地面に縫い付けられたかのように動かなかった。人間は本当に恐いものと対面した時こうも動けなくなるものかと思い知らされた。
四肢の動かし方を忘れてしまったような錯覚を振り払いつつ、とにかく冷静に目の前で起こっていることを分析することにする。
「(と、とにかく奴はまだ俺の存在に気づいてない…!音を立てないようにゆっくり距離を取れば…っ!)」
視線を巨大な青い熊から離さず、そのまま後ろへ下がる格好で距離を取り始めるユガ。
が、
バキッ!と足が何かを踏んだ。
それは何処にでも落ちているような少し太い枯れ枝。ユガの体重がかかったことで折れた音だった。そしてその音は巨大な青い熊がこちらへ気づくには十分すぎるものだった。
「(まずい…ッ!!)」
巨大な青い熊が涎を垂らしながらこちらを睨みつけてくる。
直ぐにでも逃げようかと思ったが、あの視線を無視して背を向ける事なんてできなかった。
そうこうしている間にも巨大な青い熊は二足歩行に体制を変え両手で万歳するようなポーズをとると巨大な口を開けた。
咆哮。
獣の雄たけびというのは、ここまで人間を震え上がらせ戦意喪失させるものなのか。もはや耳を塞ぐことも忘れその場に立ち尽くしてしまうユガ。自分がハンターであることなど忘れてしまっていた。
巨大な青い熊は再び四足歩行の態勢に戻ると勢いよくこちらへ向かって走って来る。
「(ぶ、武器をか、構えて…それで…えっと…)」
無理やり頭を働かせて訓練所で習ったことを振り返るが、やはり考えがまとまらない。
もう巨大な青い熊は目の鼻の先まで迫ってきていて。
そして――。
「えーっと、次はどこに行くかな」
ギルドから支給された地図に目を落とす。渓流と呼ばれるこのフィールドには、父の荷車に乗って何度か来たことがあったが、ハンターとして来るのは初めてだった。
地図によると現在位置はエリア3、エリア1、4、5、6、2の順番で回ってきたので、次に行くべきはエリア9だろう。
行動指針を決めた所で、エリア9に続く橋を渡る。橋とは言っても木の根やら枝やらが絡み合って偶然橋のような形になっている所に、少し人の手が加わっている程度のものだ。歩くたびにギシギシと音がするし、下を覗くと恐ろしい高さで、落ちたらひとたまりも無いだろう。橋に対する不安と恐怖を必死に押し殺しながら渡っていると、ふと下の様子が目に留まった。
この橋の下はエリア7になっているのだが、そのエリア7に大量のジャギィがいたのだ。ジャギィは肉食の小型モンスターで、群をなすモンスターではあるが、あれ程の量は流石に異常だろう。様子を見に行こうかとも考えたが、今の自分が行っても返り討ちに合うだけだと思い直し、今は特産キノコの採集に集中しようと、エリア9に踏み入る。
エリア9に入ると、視界の右端に動く者を捉えた。そちらを向くと、3頭のジャギィが茂みに向かって威嚇していた。茂みがどうかしたのかと目を凝らして見ると、茂みの陰に緑色の体毛のアイルーがいた。詳しい状況は分からないが、とにかく助けなければ、と駆け出して行った。この時、ジャギィがユガに気付いていなかったのは幸いだった。もし気付いていたのならば、訓練しか受けていないユガは簡単にやられていただろう。
ジャギィ達に駆け寄りながら背に下げたユクモの太刀に右手をかける。そして、一番近くにいたジャギィまであと3歩程の所で抜刀する。
「はあぁっ!」
勢いのついた掛け声と共に振り下ろされたユクモの太刀は、ジャギィの薄紫色の鱗を切り裂いて地面に食い込む。
突然の邪魔者に3頭のジャギィは動揺しているようで、威嚇をしつつも2、3歩後退りしている。
これは好機とユガは畳み掛ける。ユクモの太刀を地面から浮かせ、先程切りつけたジャギィに向かって突きを放つ。
「ウォウン!」
見事に突きはジャギィの首筋を捉え、それが致命傷となったのかジャギィが悲鳴を上げて吹き飛び「グルル…」と短く喉を鳴らし、そのまま息絶える。
仲間が一頭やられた事でようやくユガを排除すべき敵だと認識したのか、残った二頭の内片方が飛びかかって来る。
「おわっと」
それを危な気のある動きで横に転がって回避すると、着地したばかりのジャギィに狙いを定め、ユクモノ太刀を振り下ろす。
「グルゥ…」
ジャギィが怯む。「これならいける」そう思ったのは束の間、背中に強い衝撃が加わる。
「ぐはっ!?」
何が起きたのか確認する暇も無く、ユガの体は前方に大きく吹き飛ばされた。
地面を転がりつつ体制を立て直すと、こちらに向かって吠えるジャギィが二頭。先程の衝撃はもう一頭のジャギィによる跳びかかりだったのだと理解する。
「くそっ、一頭だけに集中してちゃダメだな。もう一頭にも注意しないと」
熱くなりすぎた脳を冷ます様に深呼吸をする。そうするとほんの少しだが心に余裕ができた気がした。
ジャギィが吠えているうちに先程一太刀浴びせたジャギィに近づくき、もう一度切りつける。その際、脇腹に噛み付かれたが、気にせずに切り下ろしへ繋げる。そうする事で二、三歩後ずさり、もう一頭のジャギィも視界の隅に捉える。跳躍の体制を取っていたそれは、慌てて体の向きを変え、ユガを蹴飛ばそうと飛び掛かるが、それを前転で回避し続けざまに手負いのジャギィに突きを繰り出す。ユクモノ太刀の刀身を真に受けたジャギィは、一体目と同じように地面に倒れた。残るは後一頭、これで背後の心配は無くなった。
残ったジャギィはユガを睨みつけ、様子を伺っている。対するユガもジャギィの動きを観察し、次の動作に備えている。両者が睨み合い、エリア9に僅かな静寂が訪れる。
その静寂を破ったのはジャギィ。動きのない状況に痺れを切らしたのか、一直線に駆け寄り噛みつきを仕掛けるが、ユガが体をよじって避けたお陰で牙は空を切るのみ。噛みつきを外し無防備になったジャギィの体側に、ユクモノ太刀を振り下ろす。
「せいっ」
ジャギィの薄紫の鱗を裂き、肉を切る感触が伝わる。そこからさらに一歩踏み込み、もう一度ユクモノ太刀で斬りつける。そうするとジャギィは吹っ飛び、痙攣した後に動かなくなる。
「…ふう、なんとか、なったな」
全ての敵を倒した事を確認すると、緊張の糸が切れて気が抜ける。
地面に座り込み、携帯ポーチから緑色の液体が入ったビンを取り出す。これは回復薬と呼ばれるハンター御用達のアイテムで、飲むと傷を癒す事が出来る。これにハチミツを混ぜた回復薬グレートはより効果が高いのだが、新人ハンターであるユガは回復薬グレートを余り持っておらず、持っていたとしてもそう簡単に使える物では無い。
回復薬を煽ると気分が落ち着いて来た。ジャギィの事でいっぱいだった頭も情報が整理され始める。
「そうだ、あのアイルー!」
呑気に落ち着いている場合では無かった。若干の焦りを含んだ声を上げると、回復薬の空きビンもそのままに、先程アイルーを見かけた茂みへと駆け寄る。
ジャギィに襲われていた時と同じ場所にそのアイルーは居た。
あの時は気付かなかったが、よく見てみると体中に傷が付いている。呼吸も荒い様で、肩を上下させて息をする様子が見て取れる。
アイルーは危険な状況に置かれると地面を掘って逃げると聞くが、それもしていないと言う事は体力がもう無いという事だろう。自分の中で焦りの感情がどんどん膨らんで行くのが分かる。
しかし、いくら焦った所で状況は変わらない。怪我人にする応急手当ての仕方ならば多少は心得ているが、怪我アイルーの手当ての仕方は知識に無く、何か、少しでも役に立つ物が無いかと思考を巡らせる。
「傷をどうにかして塞げれば。傷…傷?そうか!」
アイルーの傷をどうにかしようと考えると、先程飲んだ回復薬を思い出した。
回復薬がアイルーにも効果が有るのかは分からないが、もし効果が有るとすれば、助けられる可能性は一気に上がる。
善は急げだ。地面に倒れるアイルーを抱え上げ、口を開かせ、回復薬を少量流し込む。喉が動き、飲み込んだ事を確認すると、続けて少しずつ飲ませて行く。
一本分飲ませ終えると、先程よりも落ち着いた様に感じた。
しかし、脂汗が浮かんでいる事からも、まだ良い状態であるとは言いがたい。
このままベースキャンプへと向かっても、途中で力尽きてしまう可能性もある。
携帯ポーチを覗いて見ると、残りの回復薬の数は後一本。採集クエストだからと油断し、狩場で現地調合した分しか持っていなかったのが災いしたようだった。
一本では回復出来る量はたかが知れている。その量ではとてもこのアイルーは耐えられない。
「せめてあと一本、二本あればどうにか…そうか、一本で二本分の回復量を確保する方法があるじゃ無いか!」
抱えていたアイルーをそっと地面に寝かせると、すぐさま駆け出す。
足を止めたのは崩れた社の前。かつて何かが祀られていたであろうそれには、今は大きなハチの巣が陣取っている。
そう、目的はハチの巣から取れるハチミツだ。それがあれば回復薬グレートを調合する事が出来、あのアイルーも助けられるかも知れない。
蜂を刺激しないようになるべく気をつけながらハチミツを採取し、その場で回復薬と混ぜ合わせる。これで回復薬グレートの完成だ。再び走りアイルーの元へ向かう。
先程と同じ様にして回復薬グレートを飲ませると、大分良くなったのか、脂汗も引いて来た。
この調子ならばベースキャンプまで体力が持ちそうだ。
アイルーをしっかりと抱えると、ユガはベースキャンプに向かって一直線に走り出した。
ベースキャンプには、狩りに必要な様々な物がある。例えば支給品ボックス。ギルドからクエスト遂行に必要だと思われるアイテムが届けられており、それらを使用する事で狩猟を楽に進められる事も少なくない。例えば仮眠用ベッド。狩猟の途中で休憩するために設置されている。ハンターは短時間の睡眠でも体力を回復出来るように訓練されているので、回復系アイテムが心許ない場合はここを使う事も多い。渓流のベースキャンプにも設置されているそれに、今はハンターではなくアイルーが寝かされていた。
仮眠用ベッドに寝かされた黄緑の毛色のアイルーは、すやすやと寝息をたてて眠っていたが__
「うにゃあああ!」
「うお、ビックリした」
突然、叫び声を上げて飛び上がる。目を覚ましたアイルーは、辺りをキョロキョロと見渡すとユガに気が付き、慌てた様子でまくしたてる。
「そこのオマエ!ここはどこニャ?ジャギィ達はどこニャ?オレは今どういう状況ニャ!?」
「お、おう。えと、取り敢えず落ち着け」
今にも飛び出しそうな勢いのアイルーをなだめ、落ち着いたのを確認してから、簡単に説明する。
「ここはベースキャンプ。それで、お前はエリア9でジャギィ達に襲われてたんだ。それをたまたま俺が見つけて、ここまで運んで来た。今は怪我してたお前をベットに寝かせてたんだが、もう大丈夫そうだな」
もう一度アイルーを見る。傷跡は多少残っているものの、体力はすっかり回復したようだ。
「むむむ…つまりオレはオマエに助けられたという事かニャ…?」
「まあ、そうなるな」
アイルーは考え込むような仕草をし、暫し時間を置いてから顔を上げ、ユガをに問い掛ける。
「オマエはハンターで合ってるニャ?」
「ああ、まだ駆け出しも良いところだけどな」
するとアイルーは納得したように頷き、ユガを真っ直ぐに見る。
「なら頼みがあるニャ。えーっと、オレはオマエを助けてやるニャ、だから、えっと…オマエはオレを一緒に狩りに連れて行って欲しいのニャ!」
「…つまり、オトモアイルーになりたいって事か?」
「そう!それニャ!」
どうやらオトモアイルーという言葉が出てこなかったらしく、つっかえつつ提案してくる。
「そうだな…」
少し考えた後に、考えても分からない部分を尋ねる。
「ひとつ聞かせてくれ、何故俺なんだ?」
別に自分である必要はないと思ったのだ。直接ハンターに声を掛けずとも、ネコバァに頼めばハンターに取り繕って貰えるだろう。それにユクモ村に滞在しているトゥークは、色々なアイルーとも狩猟に出かけると聞く。そっちの方がまだまだ駆け出しの自分について来るよりもよっぽど良いと思ったのだ。
答えを待っていると、アイルーが渋い顔をして口を開いた。
「…じ、実はオレ、人見知りなのニャ。それで、あんまり人に話し掛けられないのニャ。でも、オマエにはその場の流れで話しかける事が出来たのニャ。だからお願いニャ!オレをオトモアイルーにして欲しいのニャ!」
到底人見知りとは思えないような饒舌だった事はさて置き。このアイルーが自分を選んだ理由はわかった。すると今度は別の疑問が浮かんだ。
「じゃあもうひとつ質問だ。何故そんなにオトモアイルーになりたいんだ?」
先程の口ぶりからしてかなり必死のようだった。オトモアイルーになりたいと言うアイルーは多いらしいが、こんなに必死な様子で頼んでくるアイルーはそう多く無いのではないか。
今度は聞くと同時に答えてくれた。
「オレは前に一度この渓流でとあるモンスターを見たのニャ。そしてその美しさに心を奪われたのニャ。だからそのモンスターを探すためにオトモアイルーになりたかったのニャ。因みに一人で探し回るのはもうやったニャ。けどなんの手がかりも掴めなかったのニャ…」
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