とある優秀な生徒 2019-04-13 23:46:26 |
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…何が悪いんだ、お前はどんな凄い魔法が得意なんだよ?
(手を抜いているわけでも、面倒くさがった訳でもなくて出雲は得意な魔法を見せてくれただけのこと。後ろの席から「あんな初歩的な魔法なんて、お前の次じゃ可哀想」と聞こえればそう言い返している自分がいて)
…………
(聞こえてきた声に驚きと恥ずかしさから振り返られずにいると「ねー弥生聞いた?やっぱ明飛君最高だよねぇ、優しいしカッコイイし腕いいしぃ」隣の席の友人が先生にバレないように小声で話しかけてきて。「そうだね」笑顔で友人に返事しながらも気持ちは沈み)
…出雲
(ずっと肩を落としている出雲のことを気にしていたのか、1限目終了のチャイムと同時にすぐ相手の席に近づき、「実技は苦手なのか」と問いかけて)
……うん。あ、さっきの凄いね!もう幻覚の魔法が使えるなんて、流石だよ。
(声をかけられるとは思わず少し驚いた顔を見せては、先程の魔法で相手の凄さを思い出し「頑張って卒業までには上級の魔法の一つくらいは出来るようにならなきゃ」実技一位の彼と実技毎回追試組の自分が話している状況に、クラスの一部の視線が痛く刺さり)
次の授業、俺と組んでくれないか?
(次の授業はペアで行う実技練習の授業で。クラスの1部からどよめきが起きているのを気にもせず、さすがに突然すぎたかと内心で反省しつつも相手に「駄目か」と押してみて、)
え、…えっと、
(ちらっと友人の方へ視線を向けると、笑顔だが怒っている様子で。しかし周囲のどよめきから逃げたい思いと、誘いを断ると失礼かと頭の中で葛藤し「…宜しく、お願いします」と何とか言葉に出して)
…ありがとう、これ、読んどいてくれ
(メモ用紙を取り出してとんとん、と軽くそれを叩けば『魔法に必要なものを持ってくること』と文字が浮きあがり。そのまま席に戻ろうとしたところでクラスメイトから問いかけられるも、特に深い意味は無いとしか答えずに)
…うん
(メモを読んでポケットにしまい、席に戻る背中を見ていると「弥生ぃ色目使ったなぁ酷ぉいっ」友人たちからいろいろ言われ。下手な魔法に同情されただけだからと宥めてから、魔法の準備をして)
……よろしく
(実技練習の授業は最初の挨拶だけ済ませれば何をしても自由で。改めて出雲に挨拶をしては紫のパーカーから黒のシャツに着替えており、「派手にやりたいから、汚れても平気か?」と問いかけて)
宜しく…
(普段はいつもの友人たちと組んでいたため少し相手に躊躇いを感じつつ。学校指定のジャージ姿で前に立っては「うん、やりやすい格好の方がいいよ」と返し、上手く出来るだろうかと表の笑みとは裏腹に)
さっきのうさぎ、可愛かった
(ぽつりと呟き、「裏庭でいい?」と聴きながらポケットから手袋を取り出せば右手だけはめ、実技が苦手な理由、自分勝手ながらクラスメイトをあっと言わせてやりたいと強く思っているとだんだん険しい表情になり)
え………、そんな風に言われたの初めて。ありがとう。
(馬鹿にされたことしかなかったあの魔法を意外な言葉を貰えてキョトンとしてしまい「うん、大丈夫」はっと我に変えれば、実技のレベルの差がありすぎる相手にどうすればいいのだろうと表情は崩さず内心焦り始め)
そんなに焦らなくてもいいのに
(裏庭へと移動しながら、クラスでは見せないような柔らかな視線を出雲に向けたのも束の間、「…手を抜いた訳じゃないのに、悔しくないか」と、今日の自己紹介の風景を思い出しながら呟いて)
……明飛君
(ふと暖かいものを感じたような気がしたものの、言われてから先程の失態を思い出し「あれは、悔しくないと言ったら嘘になるけど。明飛君の魔法、凄く素敵だったから…仕方ないよ」苦笑いすると足を止めて)
本当に綺麗だ、って褒めてくれてるんだな?
(基本的には綺麗なだけであまりメリットの無い幻覚魔法を好んで使う生徒は少なく、故に幻覚魔法が使える生徒も少なくて。裏庭の真ん中辺りまで進めば、「……幻覚魔法は、信じる気持ちがあれば簡単なんだ」そう語りながら同じ魔法陣を描き)
うん、魔法なんだって忘れそうなくらい綺麗だった
(ただただ見惚れてしまった相手の幻覚を思い出しては「あれだけ凄い幻覚魔法、簡単じゃないよ」相手の書く魔方陣を見つめ)
…使いたいとは思わないか?
(少しだけ間を置いてから問いかけ、魔法陣を描きあげれば今度はお菓子のようなものが次々に現れては消えていき、)
使いたいよ…やろうとした事もあったけど…
(またしても簡単に幻覚魔法をしてしまう相手に言葉が出てこなくなり「魔方陣は書けるんだけど、いつも上手くいかなくて」とりあえず幻覚を見せる魔方陣を同じように書いては見たものの、一瞬光っただけで何も起きず)
それだけ早く魔法陣が描けるなら、上手くいかないなんて思うな
(自分よりも早く魔法陣を描き上げた出雲に、「ちゃんと魔法も反応してる。見せたいものを強く思えばいい」と出雲の隣に立って様子を見。自分にはわからない苦労や努力が、彼女にはあるのだろうなと呆然と考え)
うん……イメージはしているんだけど何が足りないんだろう
(メモ用紙を取り出し鳩の絵を描き、呪文と息を吹き掛け「これだけは出来るんだけどね」出てきた鳩を空に飛ばし)
…なら、魔法陣の中にイメージしている物を描いたらどうだ
(図形と文字ばかりの魔法陣。多少の変形なら問題は無いはずであり、寧ろ強力な魔法が出来ることもある。「星とか、それこそ兎なんて出てきたら圧巻だな」少しだけ眉を下げつつ、出雲に提案してみて、)
…うん、やってみる
(もう一度最初からの手順で魔方陣を書き、最後に兎を描いてからいつもの呪文を少し変えてみることに「出ておいで、雪兎」冷たい風が魔方陣の周囲に吹き抜けると雪でできた兎が現れ)
……かわいい
(ひんやりとした空気と共に雪兎が出てくれば氷魔法で手袋をしている方の手に冷気を纏わせ、その手で雪兎に触れつつ「…難しいか?」と少し不安げに問いかけて)
……難しい、集中しないといけないし
(ずっと自分の魔法に付き合ってもらって申し訳ないなと思いながら少しふらつき「明飛君の凄さがよく解る」白い息をはきながら微笑み)
別に俺は凄く無い、…慣れればもっと楽に出来るから
(ポケットから飴を一つ取り出し、相手に片手を出すようジェスチャーすれば「おつかれさま」と労いの言葉をかけて飴を渡し、そういえば出雲の友達にやたら自分を気にする奴がいたなと思い出せば面倒事にならない様にと祈って)
明飛君、きっとみんなが知らないだけで沢山頑張っているんだね
(普段一人でいることが多い相手が影で努力している姿を勝手に想像し「ありがとう。美味しい」飴を貰うと授業がそろそろ終わる時間だろうと気づき「私ばかり…付き合わせてごめんなさい」)
クラスのやつが少ない時に誘うべきだった
(「気が回らない奴で悪いな」と、あの場で誘ったことを気にしているのか謝って。自己紹介が面倒だと、魔法に手を抜くクラスメイトもいたのに、出雲の魔法がとやかく言われたのが気に入らなくて後先考えずに誘ったことを反省し)
驚いたけど、少し嬉しかった
(教室に戻ったら、暫く何言われるかと考えると気が重いが「気にしなくていいよ」相手の気持ちはありがたいと思い、自分以上に気にしている様子の相手に普通に接し「ありがとう」)
また、誘ってもいいかな
(もっと腕を上げることが出来るだろうと出雲を見込み、「次は友達も誘った方がいいか」今日の様子を見て呟いては頭の中で次はなにを教えようかと既に考えており)
でも、…明飛君の邪魔にならない?
(思いもよらないお誘いに戸惑い「…うん」友達と言われ彼女たちを思い浮かべては、授業どころでは無くなりそうな感じがしつつ)
平気、友達も邪魔じゃない
(そんなことを気にしていたのか、驚いたように相手を見るが、すぐに首を振って。「友達に出雲から言っておいてくれないか」自分から誘っておいてとは思いながらどうにも話かけにくいので、)
…そうだな
(教室に入れば、席の近いクラスメイトからお約束のように茶化され出すも、「何もしていない」「何を期待しているんだ?」と呆れた声で返答しており)
「弥生ぃ、ちょっといい?」
(やっぱりか。教室に入ろうとすると、待ち伏せしていた複数の女子につかまり。話があるからとトイレに連れていかされ、いろいろと言われること数分間。彼女たちが戻るのを見送ってから、漸く教室へと戻り)
……本当に、そんなんだから…
(「人を下にしか見れないんだよ」誰にも聞こえないよう、気付かれないよう呟いてはいつものパーカーに着替えて手袋を外し、未だ続く茶化しに少し鬱陶しく感じて)
……
(制服に着替えて着席しても、妙に女子たちの視線が痛く。ちらっと明飛君の席を見ると、あちらも他の男子からいろいろ言われているようで。自分の言動が浅はかだったと反省しては、次の授業の準備をして)
…なんだ、俺とペアでも組みたいのか
(ふ、と薄く笑っては「言えば良かったんじゃないか?」とずっとからかってきていた男子生徒のひとりに向かって、茶化すような言い方を真似して反論しては黙らせて)
……
(明飛君すごい、黙らせちゃった。一斉に教室が静かになり、女子たちの痛い視線も消え失せ。後でお礼を言いに行こうと思いながらも、なるべく彼の席を向かないようにして)
良かったのかよ…
(全ての授業も、帰りのHRも終わり、放課後魔法の事を聞かれたり幻覚魔法をもう1度見せたりと、クラスメイトの相手をしていて気付けば下校時刻を40分も過ぎており、ずるずると脱力しながら椅子に座って)
あ、明飛君
(職員室まで先生に問題の質問をしに行った帰り、教室に忘れ物をしたことを思い出し。教室に入ると相手が一人いるのを見つけ「今日は、沢山ありがとう」忘れ物を鞄にしまうと「疲れてるみたい、大丈夫?」)
……俺は平気、出雲の方は大変だったな
(確かに疲れてはいるが、いつものように表情を崩さず、自分よりも女子のゴタゴタの方が大変だっただろうと、「俺のせいでごめん」と謝って)
私は大丈夫だよ、謝ることないから
(なんとか長く感じられた一日が終わったことにほっとしながらも、疲れているはずの相手が気にかかり「私の方こそごめんね」と伝え)
出雲が謝る必要ないだろ…
(クラスの奴らが悪いんだ、そう付け足しては自分は1人でも平気だが、出雲が今日のようにならない様に気をつけなければ、はあ、と軽く息を吐き)
(ひとけの無い校内を歩き校舎裏に着くと、鞄を下ろし。外部に影響が出ないように小さい結界のようなものを作ると魔法の練習を始め。)
涼しい…
(久しぶりに散歩でもしようかと私服に着替え、黒い帽子を目深に被り。涼しい風が吹く度過ごしやすい季節になったと感じつつ、自然と学校の方へ足が進んでいき)
あ…?
(どこからか流れてくる魔力を感じ、学校の壁に手をついて空間魔法の呪文を詠唱すると、出雲が張ったであろう結界の前にたどり着き)
悪い、驚かせた
(さすがに結界の中に入る気にはなれず、不安げな出雲の前に謝りながら現れれば帽子を取り、「いつ帰るんだ?」と相手の身を案じて)
明飛君
(驚いて次の言葉に迷いながらも片付けを始めて「…もう帰るよ。明飛君はお散歩?」最後に結界の元を綺麗に消してから相手に微笑みかけ)
まあ、な
(邪魔してしまっただろうかと気にするも、結界に近づいたときの異常に冷たい空気を思い出せば、ここに来て正解だったかもと思い直して「ずっと残ってたのか?」)
ああ、女子が1人なんて危ないだろ?
(元より出雲の家の近くまで歩いていくつもりでいて。ここまで努力しているのを、あの友達は知っているのだろうか。再び帽子を被り直し、モノトーンの服に銀色のピアスが光っていて)
ありがとう
(相手の歩く早さに合わせるようにしては、ふと相手の横顔を見て「似合ってる、それ」男の子だけどお洒落さんだなと、今更ながら相手をじろじろと見てしまい)
…ピアスのこと?
(無難にまとまるよう、着る色はモノトーンだと決めていて。似合ってると言われればピアスのことだろうかと思い、耳にかかっている分をかきあげてよく見えるようにしてみたり、)
うん
(あまり見るのも失礼かなと視線をそらし、女の子たちがカッコイイと騒ぐのが少しは理解できたかなと一人で頷き「明飛君、勉強以外もしっかりしてるよね」自分自身に厳しいのかな、と勝手に思いながら)
そんなことない
(ふるふると首を振って否定し。自分にだって人並みに苦手なことがある、ただそれを出していないだけであって「そんな風に見られてるのか」と、問いかけて)
きっと頑張っているんだろうなって
(普段は冷静で一人でいる事が多いイメージだけど、みんなが知らない一面が沢山あるんだろうなと頭の中で考えながら「凄いな、明飛君」)
出雲の方が、頑張ってる
(ほとんどの魔法が使えたって、成績が良くたって治らないものは治らない。凄い、と言われたことが過去のあることと重なって一瞬言葉に詰まるが、少しだけ口角を上げて出雲を褒め)
今度は私が明飛君の力になれたらいいな
(微かに違和感を感じるも気のせいかなと「生意気なこと言ってごめんなさい」苦笑しては駆け出して「また明日」)
ああ、また明日
(軽く手を振り、出雲の姿が見えなくなったのを確認してから来た道を戻って自宅へと向い、ひそかに出雲がクラスの前で幻覚魔法を見せてやれたら、驚くであろうクラスメイトの顔を想像してくすりと笑い)
(翌朝。いつものように登校すると未だ女子たちは冷たく、友人たちも目が合うとさっさと先に行ってしまい「仕方ないよね」昨日はどうにか粉雪の幻覚魔法が出来たのはいいが、未だ不安定のため披露するには未熟で。今度明飛君と組んだときは、相手の力になりたいなと考えながら教室に入って)
しつこいぞ…
(別の女子達から囲まれており、ペアを組んでくれと頼まれていて。頑なに首を縦に振らないまま、顔色は変えずにそう言い放っても逆効果なようで)
あ…
(おはようと言おうにも、あの様子だと難しく。なるべく目を合わさないようにと教科書を開くと「弥生、もちろん今日はアタシたちと一緒だよね?」目の前に友人たちが企んだ笑みで。うん、と短く答えると満足そうに友人たちが席に戻るのを見送り)
突然腕が上がるとでも思ってるのか
(はあ、とわざとらしく呆れ切った様子で溜息をつき、後少しで1限目がはじまるにも関わらず席を立ち上がって教室を後にして)
あ…
(教室から出ていく様子に心配になり、つい座っていられず後を追うように教室を出て「明飛君、大丈夫?」相手の背に恐る恐る声をかけ)
大丈夫だ、…心配するな
(まさか出雲に声をかけられるとは思っておらず。後を追って出てきてくれた出雲に背を向けたままなのも如何なものかと、相手と向き直れば自嘲的に笑ってみせ)
…大丈夫って言ったら大丈夫なんだよ、魔法と同じだ
(心配してくれているのだろうか。それならと「1限目は休む、2限目からは出るから心配するな」と先程とは違い、優しく笑って)
……うん、わかった
(これ以上なにか言ったら失礼かな、と続けようとしていた言葉を変えて。チャイムが鳴り「引き止めてごめんなさい」頭を下げて、教室に戻って行き)
…こんなに使えてもなあ
(職員室に体調が悪いから1限目を休むと伝えた後、使われていない教室を見つければ魔法で鍵を開け、同じく魔法で鍵穴に多重結界を張り、そのまま床にへたりこんで)
……ごめん、お腹痛いから保健室行くね
(一時間目が終わると相手の事が気になり、探しに行こうかと席を離れようとすると友人たちに捕まり。言い訳をすると教室を出て、屋上や校舎裏など探しては「大丈夫かな、明飛君」)
もうちょっと冷静にいられると思ったんだけどなあ
(ははっ、1人だけの教室で声を出して笑い。多重結界をかけたことによる安心感からか自然と無防備になっていて。魔法も使わず、ただ時計を見つめながらぼんやりする時間が続き)
…どうやって探そう
(念のため保健室に自身の変わり身をベッドに寝かせて置き、意識を集中させ魔法で犬を召喚して「他の皆に気付かれずに明飛君の場所まで案内して」駆け出す犬の後を追い、来たことのない校舎の一廓に到着し。ただここまで来た途端に犬は匂いも気配も判らなくなり、一歩も動けなくなったみたいで「近くにはいるのかな」)
…可愛いかわいい
(コチコチと一定のリズムを刻む時計を見つめ、ふと思いついたように猫を召喚してはそれが幻だとわかっていても嬉しそうに撫でていて)
ありがとう、もういいよ
(撫でてから犬の召喚を解き、順番に教室を覗いても誰もいないようにしか見えず「探したら迷惑かな」最後の教室の扉を開いても見つけることが出来ず)
あー…もう始まっちゃうな
(ここからでも聞こえるチャイムの音を聞きながら、このまま2限目も休んでしまおうと思いつくが、出雲にまた心配をかけてしまうかと思い直せば多重結界の魔法を解いて教室を出、)
……あ
(1限目が終わるチャイムに顔を上げて、自分の教室に戻ろうと廊下に出ると「明飛君」先程見たときは誰もいなかったはずの教室から相手が出てきたところで、結界魔法があったことに漸く気付き)
ああ、…出雲…
(なぜここにいるだろうと気にするも、先程までぼんやりとした思考回路のままではどうにもきりっとすることができず、それ以上何も返さずに教室に戻り、)
…ふあ
(授業を聞く姿勢はどこか上の空。しかし当てられれば完璧の答えを言い、難しい問題であったためかクラスメイトから感嘆の声が上がって)
…ありがとうございます
(先生から「流石だな」と褒められ、軽く頭を下げながら礼を述べ、切り替えようと手の甲を少しだけつねって軽く目を閉じ、次に目を開けたときはもういつもの冷静な表情で、)
…
(普段の冷静さとは違う、ただ冷たい目をしていて。何故こんなにも虚無感に襲われているのだろうかと不思議に思うも、けして表には出さずに)
明飛君、明日よかったら付き合ってくれる?
(休み時間になり、席を立つと相手の席へと向かい。明日は学校が休みなので時間があれば、と声をかけながら)
…別に、いいけど
(休みの日に予定が入るなんていつぶりだろう、魔法の練習だろうかと何をするか、なんの為に自分が誘われたのかはっきり検討がつかないまま「何時に何処、行けばいい?」)
駅前広場に…午後一時で大丈夫?
(普段休日はどう過ごしてるのかな、と考えながら相手に訊ねて。落ち着ける場所は無いかと、ふと思いつき「プラネタリウムとか、好き?」)
プラネタリウム?
(自分が予想していたこととは全く違う返事に、思わず聞き返したところではっとして「好きだ」と一言返し、忘れないようメモを取り)
…よかった
(嬉しくなり微笑んで、少しでも休めるといいなと思いながら「じゃあ明日、楽しみにしてるね」次の授業のチャイムがなる前に席に戻り)
…どうしようか
(学校を終え、自宅で明日のことを考えていて。いつもの服でいいかと思っているものの、せっかく誘ってくれた相手に迷惑をかけない程度に洒落た方が良いだろうかと悩んでいて)
はぁ…
(よく考えたら女子の友達とでさえ買い物の付き添いくらいしか出掛けたことがなく、明日はどうしようかと夜になってから悩んでしまい。なるべくいつも通りがいいかなと自分自身を納得させると、すぐ布団に入り)
おまえはどう思う?
(ペットの猫と触れ合いながら、いつも通りでいいかと決めれば猫を離し、もしもの時に氷魔法が使えるよう、制服のポケットから明日着る服のポケットに入れればすぐに眠りにつき)
早く来すぎたかな…
(待ち合わせの場所に30分も前についてしまい、普段来ている黒の長袖ワンピース姿で木陰で相手が来るのを待ち。)
よお…
(それから5分後、黒のジャケットに白シャツといったシンプルな格好でも絵になっていて。軽く手を挙げながら相手に近づき、「新鮮」と一言発して)
…明飛君
(声のする方に顔を向けると、待ち合わせ時間より早く現れた相手に驚いて。時間間違えたかなと広場の時計を確認し、気遣ってくれたのかなと笑みを浮かべて「かっこいいね…」相手の服装を見てはよく彼自身に合ってるなと見惚れてしまい、新鮮と言われては何の事だろうかと不思議そうな顔で)
出雲の私服、似合ってる
(不思議そうな顔をしている出雲に、口角を少しだけあげて優しく微笑み。「そもそも休みの日に誰かと会うのも新鮮だ」笑ったのも束の間、すぐにいつもの表情に戻って付け足して)
…ありがとう
(言われ慣れない言葉に擽ったさを感じて、微笑んでくれた相手を真っ直ぐに見られず下を向き。「普段のお休みは何してるの?」あれ?またいつもの明飛君、と少し残念に思いつつ)
だいたい…そうだな
(何をしているかと聞かれ、ぱっと思いついたことが魔導書を読んでいるか散歩しているかのどちらかであり。素直にそう答え、つまらない休日の過ごし方だと改めて感じ、)
じゃあ、たまにお誘いしてもいい?
(明飛君一人なんだ。魔法の練習と友人の付き添いが休日の過ごし方の自分と、学校でも休日でも一人の彼を想像し。気づくと言葉が先に出てしまって「…あ、えっと。気が向いたときでも一緒に気分転換どうかなって」言い訳みたいになってしまい)
…ああ、待ってる
(出雲に想像以上に気にかけてもらっていることに気付き、かなり余裕が無い自分がいるのではと内心焦るも、出雲の気持ちは素直に嬉しくて頷き、)
……うん
(面倒だと思われるかなと、僅かな不安も消えて。ほっとしたのは束の間、何か聞こえた気がしたのと同時に一瞬変な感覚が過り「?」すぐに元に戻ると笑顔で相手に「そういえば、プラネタリウムって明飛君よく行く?」先日の幻覚魔法を思いだして)
小さい時はよく行ってたな
(プラネタリウム、それをもう1度見たくて覚えたのがあの幻覚魔法で。小さい時はたびたび見ている間に寝てしまうこともあったけど、今は大丈夫だろうと楽しみにしていて)
そっか…
(幼い頃の明飛君の楽しい思い出なのかな、と横顔を覗き見ては微笑んで。たまには魔法ではなく、こういうのも気分転換になるかなと「あまり混んでいないみたいでよかった」話ながら歩いているうちに目的地に到着して)
だいぶ変わってるな…
(記憶の中にあるプラネタリウムよりも、かなり綺麗になっていて。思わず目を丸くしてしまい、自分がどれだけ外に出ていなかったのかを実感したようで悔しくもあり、)
綺麗になっちゃったよね
(何度か来たことのあるプラネタリウム。設備や外観はだいぶ近代建築らしいつくりにはなってしまい、驚く彼を見つめ。「でも変わらないものもあるよ」初等科の頃に来た時にいた清掃員のおじさんは、老夫になった今も清掃員として働いている姿に懐かしさを感じ。)
そうだな
(ぐるりと見渡し、外壁や内装などはほとんど変わっているが、自分が気に入っていたステンドグラスは変わっていないことに気づき。ひとつでも当時のものがあって、ゆっくりと温かい気持ちが胸を満たしていき)
………
(あたりを見ている相手の様子から、楽しんでくれているようで。半ば強引に誘ってしまったのではないかという不安も、誘ってよかったかなと微笑んで。)
…なあ、どれ見るんだ?
(投影番組のポスターを見つつ、すこし弾んだ声で問いかけ。クラスで見せる姿とは違う、年相応の柔らかくはつらつとした笑顔で「出雲が見たいので構わない」)
……そうだな、今はあるかわからないけど
(プラネタリウムの奥の方に進んでいき、「この辺りに…あった」突き当たりに鏡張りのドアが現れ。躊躇せずそのドアを開け。星に見たてられた小さなライトが、全面鏡張りの部屋に反射して夜空のようになっていて)
すごい…綺麗…
(こんな場所にドアがあったなんて。後を着いていくと知らない空間で、相手にとって特別な思い出なのだろうと。中に入り、まるで魔法のような幻想的な空気に「魔法みたい」)
こんな奥まで来る人もいないからさ
(プラネタリウムを見て帰る人も多く、わざわざ奥まで足を運ぶ人はごく僅かで。「この前の幻覚魔法は、これが元なんだ」少し誇らしげにそう言うと、ゆっくり歩き出し)
そう感じてくれたのなら、報われる
(嬉しそうに、でもどこか寂しそうに笑い。携帯で時間を確認しては「そろそろ行こうか」そう行って出口のドアを開けた先には最初、入口のドアを開ける前の場所が広がっていて)
へぇ、ここに出るんだ?
(元の場所に戻ると驚いたように「素敵な場所教えてくれてありがとう」微笑むと時間に遅れないように急いで)
…間に合ったな
(他にもプラネタリウムを見る人で混んできており。時間は間に合っているものの、この人混みの中で出雲とはぐれたら、そう考えるとぞっとして)
ううん、明飛君が少しでも楽しんでくれているなら嬉しいな
(意識してしまっている自分に気付くと恥ずかしくなり、眼が合うと照れてしまい)
ああ、心配するな
(なんだそんなことを気にしていたのかと、まるで小さい子供のように少しだけ歯を見せて笑えば、「楽しいから」)
そうだな…本当に久しぶりだ
(出雲が指を指したあたりに移動し。プラネタリウムを見上げ、思わず笑みが零れるが出雲ならば隠す必要ないかとそのままで)
本当に綺麗だったな…誘ってくれてありがとう
(プラネタリウムの上映が終わり、流れるように人が退場するのと同じくプラネタリウムを後にして、)
…いつもつけてるだろ? こういうの
(それから数分後、紙袋を片手に戻ってきて。紙袋を相手に手渡し、その中身は細かい星柄のストールで)
ありがとう
(紙袋からストールを取り出すと首に巻いて「大切に使うね」こちらからはプレゼントを用意していなかったので申し訳なく思い)
そうだな……出雲は学校好きか?
(明日からまた学校、それを聞いてクラスメイトを思い出し。自分は学校が嫌いではないが、相手はどうだろうと首傾げ)
(/返信遅くなって申し訳ございません…!)
うん、好きだよ…
(笑顔で答え少しの陰りを隠しては「明飛君も学校、好き?」と同じ問い掛けをして)
(/いろいろ忙しかったみたいですね。お疲れ様です。こちらも遅れて申し訳ありません)
……まあ、それなりに
(なにか隠しているのでは。ちらりと射るように鋭い視線で出雲を見るも、まだいいかとすぐにいつもの目付きに戻って)
(/お気になさらず。 学校始まってしまったので返信遅くなります…)
もっと頑張って明飛君みたいになりたいな
(いつも一人でいるイメージなので、寂しくないのかなと疑問に思いつつ「卒業までもっともっと腕上げたい」それには触れずに他の話題をして)
うん、明飛君にそう言われたら出来る気がしてきた
(嬉しくなりニヤけてしまいそうになるのを抑えながら「明飛君ありがとう」相手に感謝を告げて)
(/お疲れ様です。お返事は無理のないペースで大丈夫ですよ)
楽しみにしてる
(出雲が自分に追いついたら、良きライバルにでもなるんじゃないだろうか。そんな日を想像しては自分ももっと努力しなければ、そう考えながら自然に笑い)
(/ありがとうございます。)
出雲は頑張りすぎないようにな
(相当の努力家であろう出雲にそう伝えれば、少し間を置いて「こちらこそありがとう」と付け加えて)
…また明日
(出雲が見えなくなっても、しばらくの間手を振っていて。これで明日からは余裕を持って行動できそうだと思いながら帰路につき)
…今夜は此処にしよう
(一日の終わりに、人気の無い空き地を見つけては魔法の特訓を始めて。ふと、笑顔を見せてくれた明飛君を思い出しては手を止めて暫く考え込み)
あー…明日の準備しないとな…
(家に着くなり考え出したのは学校のことで。明日は体力つくりの一環で、そういえば1500m走が予定されていたことを思い出せば服を着替えてランニングを始め、)
…美味し
(自販機でスポーツドリンクを買い、その中身を一気に飲み干し。随分風が強くなってきたなと呑気に考えつつまた走り出して)
…っ
(体力がついていけず膝をつくと風が止み「…まだまだ、だなぁ」笑いながらそのまま地面に倒れ。星が綺麗、と夜空を見上げて)
一日に2回も会うなんてな
(ジャージ姿のまま、上から出雲を覗き込んで。「…邪魔か」もしかして出雲は夜空を見ていたかもしれないと、すぐ隣に腰を下ろし)
ああ…やっぱり、現実には敵わない
(出雲と同じように夜空を見上げ、プラネタリウムで見た夜空や、自分で作りだした夜空と比べ物にならない程綺麗な空を静かに見つめて)
俺の…? そうだったら
(「そうだったら破壊魔法なんて使えないよ」という言葉を途中で飲み込み、「出雲の魔法は綺麗だ、落ち着く」と独り言のように呟き)
明日の為にもな
(沢山動く予定の前日に夜更かしは禁物、と誰に言うわけでもなく付け足して。出雲に続くように立ち上がっては「…帰るか」)
今日は沢山明飛君と話したね…
(ゆっくりと歩き出しながら「クールだけじゃない一面も見ることできて嬉しかった」と明飛君の顔をみて微笑み)
…そんなの、皆の思い込みだろ
(クールに見えるのを狙っているわけではないのだが。顔を見て微笑まれれば気恥ずかしくなって顔を逸らし)
…ありがとな
(まだ話すようになって日が浅い出雲からそんな言葉をかけられるとは思っておらず、照れ隠しかまたいつもの表情に戻って)
どういたしまして
(普段の表情に戻ってしまい、少し残念に思うもふれず。十字路に差し掛かり「じゃ、また明日、学校でね」駆け足でその場から去り)
ああ
(気をつけて、そう付け足して自分も家に帰ればコップに水を汲みつつ、普段からああやって夜遅くも練習しているのだろうかと出雲のことを考えて)
眠い…
(翌朝、歩いて登校しながら瞼を擦り「徹夜しちゃった」あの後、場所を変えて幻覚魔法の実戦の練習をしたので睡魔に悩まされ)
…誰もいないか
(早くに目が覚めてしまい、少し迷ったが登校して。教室のドアを開ければまだ誰もおらず、ふわふわの猫を紙に描いては実際に猫を出してみせ、)
早かったかな
(まだ登校時間にしては早かったため、静かな廊下を一人で歩き「あれ、もう誰か来てるのかな」気配を感じると教室の前で立ち止まり)、
よしよし、かわいいなーおまえ
(かりかりと猫を撫でながら、まだ誰も来ないだろうと思っていて出雲の気配に気づかず。猫と戯れる表情は幼い少年のようであり)
…あ、いや、おい、いつからいたんだ
(ふと気配を感じ、ちらりと振り返れば出雲がいて。いつから居たのだろうか、かなり焦りながら猫を抱きつつ出雲に近づき)
…今来たばかりだよ
(あたふたしてる明飛君に微笑みながら、おはよ、と挨拶すると「かわいい…撫でていい?」抱っこされてる猫に顔を近づけて)
はい
(ずい、と猫を差し出して。猫の様子を見て、出雲のことを気にいったのだと判断すれば「こいつ、人が多くなると消えるんだ」と猫の頭を撫で、)
変なとこ見られたな…
(まさかこんなに早く誰かが来るとは。そう思って時計を確認すれば、自分が登校してきたよりもかなり時間がたっていて。「出雲ならまあ、良いか」)
明飛くんって、いつもこんなに早いの?
(ネコを抱っこしながら、時計を見る明飛くんに「みんなの知らない明飛くんは優しい眼をしてるね」ネコの鼻を撫でては小さな声で)
…まあ、暇だからな
(テストが近くなれば、さらに早くなるだろうと考えつつ。優しい眼をしている、その言葉を否定しようと口を開いた瞬間、遮るように「にゃう」と猫が鳴き。)
誰もいないと教室も広いよね
(暇だと答える相手に視線を向けては、本当は一人で努力したり大変なんだろうなと思いつつ。ネコの鳴き声に微笑み「だよね、このコもそうだって言ってるよ」と燥いでみせて)
あんまりそう言うこと言うな、
(調子が狂う、そう付け足せば近くの席に座り、「出雲は毎日、この時間に来るのか?」ごく自然に足を組み、頬杖を付きながら問いかけ)
落ち着いて勉強できるから
(参考書を開くとマーカーや付箋でチェックした箇所を確認しながらノートに書き込みをして「少しでも頑張って上を目指したいから」)
…出雲の隣がいいんだって
(応援しているのか、自分の隣にいた猫がとことこと出雲の隣に移動して。頑張っても報われないのが世の理だ、そう心の中で呟いては少しだけ口元を歪ませ)
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