とある優秀な生徒 2019-04-13 23:46:26 |
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「きゃー!弥生すごい!いいなぁアタシもお話ししてみたいぃ!」
(席に戻るなり友人に騒がれ、一体何なんだと思いつつ笑顔を浮かべ「普通に話せばいいじゃん」チャイムと共に先生が入ってくると友人たちも各々着席して)
「それでは、自己紹介をしてもらいたいと思います!」
(HRも中盤に差し掛かったところで、新学期によくあるクラス全員の自己紹介が始まり。担任によって付けられた自己紹介の条件は「自分が1番得意な魔法を使うこと」。自分の番が近づくにつれ、どうしたものかと頬杖付きながら考え込み)
え…得意な魔法…
(実技が苦手な自分にとって得意と言える魔法が見当たらず。頭の中で、あれでもないこれでもないと考えている内に、他のクラスメイトは次々に自己紹介を終えていき)
…明飛涯です、よろしくお願いします
(自分の番になり、どうしたものかと何も決まらないままおもむろに席から立ち上がっては黒板にある魔法陣を描きあげると、教室に偽物の星を降らせる、一種の幻覚魔法を見せては軽く頭を下げて名乗り、)
凄い…
(高度な筈の幻覚魔法を簡単に披露してしまう姿に思わず呟き、次は自分の番であることを暫し忘れ。彼の自己紹介が終わると、慌てて起立し「い、出雲弥生です。得意な魔法は…えっと…、はいっ」机の上のノートに兎の絵を描き、呪文を唱えて息を吹き掛けると本物の兎が現れ。入学して間もない頃の初歩的な魔法を選んでしまい、背中を丸めながら着席し)
…何が悪いんだ、お前はどんな凄い魔法が得意なんだよ?
(手を抜いているわけでも、面倒くさがった訳でもなくて出雲は得意な魔法を見せてくれただけのこと。後ろの席から「あんな初歩的な魔法なんて、お前の次じゃ可哀想」と聞こえればそう言い返している自分がいて)
…………
(聞こえてきた声に驚きと恥ずかしさから振り返られずにいると「ねー弥生聞いた?やっぱ明飛君最高だよねぇ、優しいしカッコイイし腕いいしぃ」隣の席の友人が先生にバレないように小声で話しかけてきて。「そうだね」笑顔で友人に返事しながらも気持ちは沈み)
…出雲
(ずっと肩を落としている出雲のことを気にしていたのか、1限目終了のチャイムと同時にすぐ相手の席に近づき、「実技は苦手なのか」と問いかけて)
……うん。あ、さっきの凄いね!もう幻覚の魔法が使えるなんて、流石だよ。
(声をかけられるとは思わず少し驚いた顔を見せては、先程の魔法で相手の凄さを思い出し「頑張って卒業までには上級の魔法の一つくらいは出来るようにならなきゃ」実技一位の彼と実技毎回追試組の自分が話している状況に、クラスの一部の視線が痛く刺さり)
次の授業、俺と組んでくれないか?
(次の授業はペアで行う実技練習の授業で。クラスの1部からどよめきが起きているのを気にもせず、さすがに突然すぎたかと内心で反省しつつも相手に「駄目か」と押してみて、)
え、…えっと、
(ちらっと友人の方へ視線を向けると、笑顔だが怒っている様子で。しかし周囲のどよめきから逃げたい思いと、誘いを断ると失礼かと頭の中で葛藤し「…宜しく、お願いします」と何とか言葉に出して)
…ありがとう、これ、読んどいてくれ
(メモ用紙を取り出してとんとん、と軽くそれを叩けば『魔法に必要なものを持ってくること』と文字が浮きあがり。そのまま席に戻ろうとしたところでクラスメイトから問いかけられるも、特に深い意味は無いとしか答えずに)
…うん
(メモを読んでポケットにしまい、席に戻る背中を見ていると「弥生ぃ色目使ったなぁ酷ぉいっ」友人たちからいろいろ言われ。下手な魔法に同情されただけだからと宥めてから、魔法の準備をして)
……よろしく
(実技練習の授業は最初の挨拶だけ済ませれば何をしても自由で。改めて出雲に挨拶をしては紫のパーカーから黒のシャツに着替えており、「派手にやりたいから、汚れても平気か?」と問いかけて)
宜しく…
(普段はいつもの友人たちと組んでいたため少し相手に躊躇いを感じつつ。学校指定のジャージ姿で前に立っては「うん、やりやすい格好の方がいいよ」と返し、上手く出来るだろうかと表の笑みとは裏腹に)
さっきのうさぎ、可愛かった
(ぽつりと呟き、「裏庭でいい?」と聴きながらポケットから手袋を取り出せば右手だけはめ、実技が苦手な理由、自分勝手ながらクラスメイトをあっと言わせてやりたいと強く思っているとだんだん険しい表情になり)
え………、そんな風に言われたの初めて。ありがとう。
(馬鹿にされたことしかなかったあの魔法を意外な言葉を貰えてキョトンとしてしまい「うん、大丈夫」はっと我に変えれば、実技のレベルの差がありすぎる相手にどうすればいいのだろうと表情は崩さず内心焦り始め)
そんなに焦らなくてもいいのに
(裏庭へと移動しながら、クラスでは見せないような柔らかな視線を出雲に向けたのも束の間、「…手を抜いた訳じゃないのに、悔しくないか」と、今日の自己紹介の風景を思い出しながら呟いて)
……明飛君
(ふと暖かいものを感じたような気がしたものの、言われてから先程の失態を思い出し「あれは、悔しくないと言ったら嘘になるけど。明飛君の魔法、凄く素敵だったから…仕方ないよ」苦笑いすると足を止めて)
本当に綺麗だ、って褒めてくれてるんだな?
(基本的には綺麗なだけであまりメリットの無い幻覚魔法を好んで使う生徒は少なく、故に幻覚魔法が使える生徒も少なくて。裏庭の真ん中辺りまで進めば、「……幻覚魔法は、信じる気持ちがあれば簡単なんだ」そう語りながら同じ魔法陣を描き)
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