《 君よ、 知 っ て い る か い ? 太 陽 で さ え も 、月 で さ え も 息 を 潜 め て し ま う よ う な 恋 が あ る っ て 》
___ もしも、その恋が叶うとするならば 僕は 獅子にでも 龍にでも なんにでもなろうと思ったのだ
初めはただの出来心。 物怪を見ても驚く所か近付いて来るような不用心な君を 1度でいい、泣かせてやりたいと思った。
次に出来たのは好奇心。 僕の中で君が愛しい存在に登りつめた時、 君の好きな女に、なってみたいと思った。 女に君がどういう声色で接して、どういう表情をしているのか 知りたいと思った。
最後に出来たは嫉妬心。 僕は君を初めて妬み、 君を見て初めて苦しみ、 君の声を聞いて初めて泣き叫んだ。 嗚呼、罪人よ。 僕は君が憎くて憎くて仕方が無い、そう思った。
___そう、思ったのだ。
いつかの春、君は嫁を貰ってしまった。僕とは、顔を合わせられない日々が始まる、そう思うと無性に腹が立った。 君は願わぬ婚約、とやらに 僕と暮らす人生を絶たれた。 君も泣いて謝ってくれたが、家を捨てる事を拒んだ。 僕が一生、君を飽きさせないで居られる存在で、何処までも君を許し、愛せる存在で、 最後に看取ってやるのも僕だった筈だろう?
僕の怒りに触れた。君たち夫婦は、身篭ることは無かった。何年、何十年経とうが身篭ることは無かった。
すると君は現れたね。『 妻が、身篭りたいと。 』
__僕に願い事? …笑わせてくれるな。
でも僕はこれが狙いだった。
《 __良かろう、貴様の女が身篭るように祈祷を捧げようでは無いか。 ただ、1つこちらの要件も 飲んでもらう 拒むことはもう、赦さんぞ。 》
__ どうか、勾引かされてはくれまいか?