ある日、夢を見た。俺が、一人さ迷う夢を。何もかも失い周りを消していく。その夢だけが脳内に凄く焼き付いている。
* *
「あんた、そろそろ真面目に勉強しなさいよ。帽子ばっかり買ってないでさ」
煩い、また始まった。母さんの勉強コール。うざいくらいにしつこいからだんだん怒りが沸いてくる。
「わかったわかった」
「また適当な返事して……」
煩いなぁ。少し黙ってほしいとか思う自分が嫌になる。
俺が帽子と出逢ったのは、まだ幼さの抜けきれないある夏の日。俺は、暑いからと母さんに言われて帽子を買いにいった。その店は、古くさくて独特な感じがした。店のドアを押し開けるとカランと鈴の乾いた音がする。
「いらっしゃい」
低く渋い声が奥からして、幼い俺は、母さんの後ろに隠れてしまった。
「ごゆっくり」
そのおじさんがニコリと微笑んだので俺の緊張など消え去っていた。俺は、店内を見渡した。赤、白、黒。様々な色や形をした帽子が並んでいた。
……続く………
(集中力切れ)