御鏡 2019-03-23 18:45:40 |
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[削除済み]「私は初めまして、ですよね。ふふ、初対面でもそう言って戴けて、私も嬉しいです。お礼と言っては何ですが、黙示録の歌でもお聞きに「待て待て。黙示録はあかんから」………チッ」
そうですね! えッ嬉しいn …… ん ~ ? あれ ~ ? 何か黒い部分が見え隠れした …… ような …… 気が …… ((
あッそうそう、後でうちの子の設定とともに小説を載せる予定です ー 。
楽しみにしてまっす!!あ、[削除済み]さんの容姿がこちらですね。へへへ…
https://i.imgur.com/e0h0Wyv.jpg
以下[削除済み]さんに言わせたい台詞集、台詞の後の()は妄想用シチュ(一応夢小説なので名前は■■スタイル)
「はぁ…はぁ……っ…どうしましょう、■■さん………あなたの事を考えるとっ……無い筈の心臓が、ドキドキしている気がして……わた、私…は、壊れてしまったんでしょうか……?っふ、ぅ、苦し、い……胸が、苦しいです……助けて、ください。■■さん……」(滅茶苦茶切羽詰まった感じで。出来るだけ息荒げて。エッッッッッッな雰囲気にしてやりたいし、そのままそんな展開になれ)
「■■さん。私は常にあなたの事を考え、あなたのためを思い、あなたのためだけに行動してきました。なのに、■■さんは私以外に会いに行くし、私以外に笑顔を見せるし、私以外に愛されている……何故?何故私以外の者と会うのですか?ねぇ、私じゃ駄目なのですか?あなたを満足させる事は不可能なのですか?こんなに…こんなに、愛しているのに…っ」(拳を握り締め、唇を噛み締め、けれど何処か諭すように。ヤンデレ度全開で。「抵抗するなら」と、手錠だろうが何だろうが持ち出してこい)
「……私は、指揮者です。指揮者とは、物事に生命を吹き込む魔術師であり、魂を呼び寄せる祈祷師である存在」-Adagio-「私は……ただの、創られた、もの。どうやったって、本当の生命にはなれない」-Largo-「偽りの生命で出来た私は、本当の生命を生み出す事も出来ない。しかし…」-Andante-「…でも…嗚呼、私は……■■さんの、一番になりたい」-Moderato-「あなたの騎士になりたい」-Presto-「あなたを、■■さんの"騎士"と言う名の特等席で、音楽を奏でたい…!」(無名の指揮者のために、■■のために今、幕が上がる。緩慢な様子で流れていた音楽は、一度更にその速度を遅くすると、段々と確実に速くなって行く。嗚呼、今、終曲-フィナーレ-が鳴り響き、■■の脳内には音楽が溢れ返る事だろう)
容姿ぃ …… !! 好きです!!!
セリフもシチュもいいですね …… いやあほんとおいしいです。さッきのヤンデレとはまた違ッたおいしさですね!
水面と申します。
赤ずきん
昔、昔。これは、そんなありきたりな言葉で始まる、皆がどこかで知っている、でも誰も知らない物語だ。
彼に名前はなかった。誰もがその名前を忘れてしまったからだ。
彼はいつも頭巾をかぶっていた。その下ではとても端整な顔立ちをしているのだが、自分に向けられる好奇の目が心底嫌いで、滅多に他人に顔を見せようとはしなかった。それは彼の透き通るような肌がよく映える、恐ろしく鮮やかな赤色の頭巾だった。
そのため、彼は名前の代わりに『赤ずきん』と呼ばれるようになっていった。
ある日、赤ずきんはおばあさんの家へお見舞いに行くため、パンとワインを放り込んた籠を持って森の中を歩いていた。狭い道をずんずんと進む。日が傾くにつれあたりは段々と暗くなり、夜空にぽっかりと浮かぶ満月だけが、進むべき道を静かに、蒼く照らしていた。
そうしてしばらく歩いていると、突然畦道は途切れ、開けた空間に出た。赤ずきんは足を止めた。夜の薄闇の中に広がるのは、広大な花畑だった。
そこに咲き誇る色とりどりの花々はこの世のものと思えないほどの美しく、赤ずきんは思わず目を奪われ、感嘆の声を上げた。そして、この花を持っていけばおばあさんも喜んでくれるのではないか、と思い立って、笑みを浮かべながら赤い花の前にちょこんと座った。淡い月明かりを夜露が反射する花畑の中心で、赤ずきんは一輪一輪、丁寧に手折っていく。
手元が花でいっぱいになったときだった。
「やあ、赤ずきん。どこへ行くんだい?」
低い声が静けさを破った。
赤ずきんは、静かに、時間が正常に動いているのか不安になるほどゆっくりと、振り返った。
「こんばんは。オオカミ」
ぼさぼさの銀の毛並みに、満月のように金に輝く瞳。裂けたほど大きな口に、大きなお腹。そこらの村人ならば途端に逃げ出してしまうような、巨大で恐ろしいオオカミが、木に背を預けてこちらに微笑みかけていた。
「今日は満月だったから、会えると思ってた。僕は今、おばあちゃんの家へ行くところだよ」
赤ずきんは怯える素振りもなく、にこにこと嬉しそうに答える。
「そうかい。それはいい」
オオカミもそれを真似するように口角を上げたが、とても笑顔と言えるものではない、醜悪な表情をしていた。それすら気にも留めない赤ずきんは、立ち上がってオオカミに問うた。
「君も、一緒に来る?森は一人じゃ危ないし」
「いいのか?」
どうやらオオカミは少なからず喜んでいる様だ。
「もちろん!君と僕の仲じゃないか」
「じゃあ、ご一緒させてもらうよ」
奇妙なことに、赤ずきんはオオカミと一緒におばあさんの家へ向かうことになった。すぐ隣には恐ろしいオオカミがいるというのに、赤ずきんはのんきに鼻歌なんか歌っている。
オオカミは聞いた。
「なあ、赤ずきん。なぜ歌を歌っているんだ?」
赤ずきんは答えた。
「それは、君に会えて嬉しいからさ」
「そうか……」
オオカミは少し照れくさそうだった。
またしばらく、道を歩いた。
オオカミは問いかけた。どうしてかは見当もつかないが、何故か今、オオカミの腹の内は目の前の少年への疑念に満ちていた。
「なあ、赤ずきん。なぜ俺が怖くないんだ?」
赤ずきんは答えた。
「それは、君ともう何度も出会っているからさ」
オオカミはもう一度聞いた。もう既に、オオカミは違和感に気付いていた。
「なあ、赤ずきん。いつ、俺と会ったんだ?」
赤ずきんは歩みを止めた。
「それはね、オオカミ、
いろんな場所で、さ」
「……いろんな、場所……?」
オオカミには言葉の意味がわからなかった。
「そう、僕は憶えているよ」
「何を……だ?」
森の木々が、ざわざわと音をたてる。風が、肌を冷たく撫でる。
「君が、僕を食べたこと」
「どういう、ことだ」
「憶えているよ。君はチョークを飲んで声を変えて、母親のフリをして家に入った。君の歯で骨が砕かれる感触を、今でも憶えているよ」
「何を…言っている」
「君が僕や兄弟の家を吹き飛ばして、僕も僕の兄弟も、皆食べられてしまった。君の喉を通っていく感覚を、鮮明に憶えているよ」
「違う、俺は……!」
「憶えているよ。君が僕をさんざん利用して、結局お腹が空いて、僕を食べたことを。君の胃液で溶ける感覚を、確かに憶えているよ」
赤ずきんの底冷えした冷淡な瞳は、オオカミの目をしっかり捉えていた。
「ね、君も知っているはずだよ」
「違う……」
「本当なら、質問は僕がするんだったよね」
「この話は、本当なんかじゃない……」
赤ずきんは微笑みを浮かべた。それはそれは美しく、それはそれは恐ろしい笑みだった。
「ねえ、オオカミさん?どうして君はそんなに食いしん坊なんだい?」
オオカミの喉が、ひゅっと情けなく鳴った。
「やめろ!」
反響した咆哮に、森は波を打ったように静まり返った。
赤ずきんは相も変わらず不気味で狡猾な笑みを浮かべている。
「それは…お前じゃない……赤狐だ」
オオカミは怯えとも、怒りとも取れる表情を見せていた。
赤ずきんは、より笑みを大きくした。
「違うよ。赤狐達が、僕なんだ」
赤ずきんは、また歩き出した。足音一つ立てずに。
オオカミは、一歩後ろからついていった。
静かな森の中を、ただ歩いていった。もう、二人とも話をしようとはしなかった。
延々と続いているように思えた道も、そろそろ終わるようだった。
「さあ、着いたよ」
そこには小さなレンガ調の家と、井戸が一つあるだけだった。沈みかけの満月がスポットライトになって、この場所だけを薄闇に映し出していた。
「じゃあ、ここまでだな」
「……」
赤ずきんは黙して、ただオオカミを見つめていた。
「家には、入らないのか?」
オオカミは、どこかでわかっていた。
「うん。もう意味ないからね」
赤ずきんは、もうおばあさんに会う気はない。
「なんでだ」
「僕は、知っているよ」
赤ずきんは、知っている。
「君はもう、猟師さんを、食べてしまった。」
もう、自分が助からないことを。
「そうか。……おばあさんは、どうした?」
「……もう死んでると思うよ。一昨日のお菓子に、毒を混ぜたから」
オオカミは、あろうことか、赤ずきんを食べたくないと、そう思っていた。赤ずきんの切ない横顔は、あまりにも美しく、あまりにも哀れだった。
「……赤ずきん……」
オオカミがそっと手を伸ばそうとしたとき、一瞬にしてその横顔は歪み切り、全く逆の表情を映した。
「……フフッ……アハハハハッ!」
オオカミは伸ばしかけた手を戻した。
「な~んてね。全部嘘。全部ホラ話さ。」
嘘…?そんなことあるか。オオカミはどうしてもわからなかった。あの悲しそうな声も、あの切ない横顔も、全て嘘だなんて、ありえない。それなら、人間は、いや、この世界は、あまりにも醜悪だ。
「……お前は……本当は一体誰なんだ?」
オオカミの問いに、赤ずきんは不敵に笑った。
「……さあね?でも、しいて言うなら、僕は……オオカミ少年さ。」
オオカミの中で、全てがつながったような気がした。
「お前は…これからどうする気だ?」
どうなっても、オオカミは受け入れられる気がした。
「そんなの、決まっているじゃないか。」
「朝が来る前に、君を、殺す」
わかっていた。
自分は罪を犯してきた。当然の罰だ。
「……そうか、仕方ないな」
オオカミは、もう、死ぬのを怖いとは思わなかった。
「……君を、殺す前に、言っておきたいことがある」
言われることは恨み節だろう。でもオオカミはそれでもよかった。赤ずきんの声を最後に聞いて**るなら、それで。
「何だ」
赤ずきんの表情は、見えなかった。
「……君は、前回の話で、僕を殺さなかった。まあ、あの話は、君が死なない話だったからだと思うし、町の人は皆死んじゃったけど」
オオカミは、静かに話を聞くだけだった。
「それで、僕は初めて物語の後日談を生きることができた。そして、僕は初めて孤独を知った。たったひとりで生きるつらさを。
……そして、君が毎日あんな苦しみを味わっていることを」
オオカミは、驚いた。
「……それで?」
でも、理解された様な気がして、嬉しかった。
「……もしかしたら、僕は少しだけ、君に同情したかもしれない」
「……それは、ありがたいな」
オオカミは照れくさそうにそう言った。
「それじゃあ、目を閉じてくれ。オオカミ」
言われるがまま目を閉じた。
オオカミの毛むくじゃらの手に、赤ずきんの小さく、冷たい手が触れた。赤ずきんはオオカミをぐいぐいと引っ張っていく。オオカミはその行動を不思議に思ったが、黙って言う通りにしていた。
「目を開けていいよ」
目を開くと同時にオオカミは手を引かれた。どうやら落ちているようだった。
「……じゃあ、落ちようか。君はこの物語で、井戸に落ちて死ぬのだから」
オオカミは、自分が死ぬのはもう怖くなかった。
でも、赤ずきんのことは死なせたくなかった。
「だめだっ!待ってくれ!」
赤ずきんはオオカミの悲痛な願いを聞き入れない。
それに、もう、遅い。
「……でも、独りは寂しいでしょう?だから、
一緒に、落ちよう。」
二人は落ちる。
ずっと落ちる。
でも、それは二人が歩いてきた道に比べればとても短いものだった。
オオカミが最期に見た赤ずきんの表情は、笑顔だった。
この世の何よりも美しい、笑顔だった。
山の端から顔を出した朝日が、井戸の中を一瞬、淡い金色に染めた。
ん"っ……水面様の作品を久々に読みましたが、やはり至高……
[無名の指揮者と難聴ちゃん。盲目さんの騎士は忠告する]
「~♪……おや、■■さん…来ていたんですね」
何時ものように指揮棒を振るい、私は身体の中から音楽を響かせる。
手慣れた作業をするのに、視覚から得る刺激は必要ない。私は、目を閉じた。
しかし、小さな声で「指揮者さん」と私を呼ぶ声が聞こえれば、もう目を閉じる必要はない。
指揮をする必要も、ないのだから。
「指揮者さんの演奏は、きっととても素敵なものなんでしょうね。私も聴きたいなぁ」
彼女の笑顔が、私の変化するはずも無い表情を綻ばせる。しかし、同時に彼女の言葉は私を苦しめる。
「―――すみません、調子が優れなくて……■■さんが折角来てくれたのに申し訳ない。風邪かも知れませんから、今日は帰って戴けますか?」
勿論嘘だ。無機物である私は、体調を崩さない。身体が崩壊する事はあっても、体調を崩す事はない。
しかし、■■さんは何も知らないのだろう、疑う事なくそれを信じた。
少し名残惜しげな、残念そうな顔で「また来ますね」と言うと、手を振って帰って行った。
嗚呼、申し訳ない限りだ。彼女がいるのに、演奏をしてしまうなんて。
かつて聞いた事がある。あれは、■■さんと私が出会って間もない頃。
私がここに住むようになってすぐの頃。住人達に挨拶をして回っていた際に、
ファウスト医師から聞かされた事。
「ファウストさん、あのお人が返事をしてくれないのですが……」
「…■■さんは、殆ど耳が聞こえないンですヨ。無視している訳ではないンですけどネ。私の見解では、あれは過度なストレスから発症した若年性難聴と思われます……って言う訳で!彼女の事、よろしくお願いしますネ!!」
そう言って、逃げるようにその場を去ったファウスト医師。追いかけようにも、
脚の無い私は走る事が出来ない。否、出来なくはないが、その下準備に時間が掛かる。
仕方がないので彼女の隣に立ってみるが、当時の■■さんは私を横目でチラリと見ると、
読んでいた本に視線を落とした。
―――嗚呼、可哀想に。きっと、何年も前からこの状態なのでしょう。
―――あまり良く聞こえなくて、聴きたくて。しかし現実が非情で。
―――全てから目を背け、耳を塞ぎ、誰にも心を開かない。誰も、信用できない。
「……成程。壊れた心の修復ですか。私への挑戦とお受けしますよ、ファウスト医師…」
―――音楽は時に、人を狂わせる。しかし、逆に言えば人を癒す事もある。
―――今回は、癒す力を使って彼女の心を開かせれば良い。
―――ただ、それだけの事。
それだけの事、だったのに……何時からか、私は彼女に会いに行く事を楽しみにしていた。
急用で会いに行けず、申し訳ない事をしたと思っていた矢先、
彼女が私の元を訪れて、私の胸が高鳴った。
嗚呼、異常だ。私はただ、舞台芸術のために全てを注いだ異形の筈なのに……私は…
私は彼女に情を抱いてしまった。
少しは心を開いてくれたのか、■■さんは時々ではあるものの、私の元を訪ねるようになった。
嗚呼そうだ、ここで"呪具"としての本領を発揮しよう。二度とあなたの心が壊れないように、
呪いを掛けよう。あなたを守るための呪いを。
私が指揮棒を大きく振るうと、淡色の光が彼女の耳を包み込む。
そうして、私は■■さんを守る"騎士"となった。
「では気を取り直して……おや?」
私が目を閉じて指揮棒を振り上げるのと同時に、ガチャリと部屋の扉が開く音がした。
「どうしたんですか、■■さん。今日はもう帰ったんじゃ『随分と平和呆けしているようだな、シャーデンフロイデ』……何だ、あなたでしたか」
目を開くと、黒髪でスーツを着た男が立っていた。かつての私の同胞だ。
『何だ、ではないだろう。呪具としての使命も全うしないガラクタ如きが』
「失礼ですが、その言葉はそっくりお返ししますよ。マレディツィオーネさん…私より先に役目を放棄したツルハシ風情が、何を言うんですか」
『……所詮動けもしないマネキンが生意気な…脳髄かち砕いてくれようか………っと、違う違う。今日はそんな事は如何でも良い………シャーデンフロイデ。貴様に忠告だ。"騎士"としての私からの忠告だ。如何なる形であろうと我が主を傷付けた際には、問答無用でその心臓部を破壊する。覚えておけ』
主、と言う事は、あの盲目の女性だろう。一度相対したのを覚えている。
「では、私からも一言……どんな理由があろうと、■■さんを傷付けるようであれば私は放棄していた使命を全うする。その所為で私が壊れようと、全人類が滅びようと、構わない。何故なら私は黙示録のシャーデンフロイデ。呪具としての本来の力は、あなた以上である事をお忘れなく」
指揮棒を振るうと、魂魄の響きに乗ってゆっくりとした歌唱が響く。
途端に顔を顰め、マレディツィオーネさんは踵を返して部屋を出た。
沈黙交響詩第16番、第1楽章演奏開始。
あ ー …… 好きです …… !!
水面様の作品では赤ずきんちゃんが結構怖い。でも好きです。ちょッと別の童話も入ッてるのも色々考え深まッて面白いです。よすぎてにやけましたすみません。( )
御鏡様の作品ではほんとすげェッてなりました ( 語彙 ) 。お話が …… 色々しゅき …… 、難聴ちゃん可愛いなあ ……
それからお待たせしましたぁ …… 深夜テンションで書いたものを多少修正したものです。色々察してください。
・
深夜。
空が真っ黒に染められ、満ちた月と星が輝いている。
昔は月も星も夜も嫌いだった。でも今は違う、最高の夜だ。最高の夜が、始まった。
今日から夜の全てが好きになりそうだ。それほど今日は大切な日……姫も従者も、仲間も揃った。準備も整ったから、後は私が進めるだけ。
皆を、動かすだけ。
「どうしてっ……!」
するとここで、従者の……彼の、消え入りそうな声が響く。他の皆も唖然とした顔で見つめるか、憎悪に満ちた目で睨んでくるか、呆れたような表情を浮かべていた。
ああ、『これ』だ――『これ』を、ずっと、待っていた。
己の瞳は三日月のように形を変え、口角が歪みを持って上がる感覚があった。
なんて楽しいんだろう。
「……あは。私がいつ、鬼様に従うと言った? 大多数の人はそうかもしれないけど、私は違うんだよ。わかってるんでしょ、キハク!」
わざわざ問いかけんな、ということを含めて無邪気な風に言葉を返す。
自国を含めて五つの国は基本鬼に従い敬う。だが『基本』だ、例外もいる。その例外に当てはまるのが私。ましてや私は姫。それに皆の性格。さっきのような反応するのも分かってた。
想定内で何かつまらないものも感じるけど、楽しいならそれでいい。
心の中で楽しさがどんどん募っていく。きっと私の表情は笑顔だけれど歪んでいるのだろう。
「……反逆者。あなたは前から姫らしくないとは思ったけれど、まさかこれまでとはね。失望しましたわ」
わざわざご丁寧に扇子を持って口を隠し、眉を寄せてはつり上がった青い瞳でこちらを睨んでくる青姫サン。あからさまなところがまた面白い。
――反逆者。基本的鬼様信仰なのだが、少数それを拒む人がいる。
そんな人たちが集まり、やがて反逆者と呼ばれるようになった。
反逆者の詳細はほとんど知られていない。まあ現に私が反逆者とばらしているのだけど。
「それはありがとうごさいますぅ。だけどこちらにも色々事情はあるのよ。そもそも『色鬼』なんて馬鹿げてる。あんな鬼に何故従うの?」
にっこりと笑ってみれば顔を真っ赤にしたものが数名。
儀式名『色鬼』、別名『色姫争奪戦』は簡単に言えば一定期間鬼に姫を捧げるということ。目的は魔力補給。……表向き、は。
だけれどこれを知らない姫の方々は裏切ったように聞こえるらしい。鬼も酷いよね、伝えないなんて。
「なっ……! 失礼ですよ、貴女! 鬼様はとても尊く素晴らしい御方で……!」
「へえ、そうなんだ? で?」
肩を震わせ、こちらを鋭く睨んでくる黒姫サン。黒姫サンの隣から舌打ちも聞こえた。
思い通りなのが楽しくて笑ってしまう。
「……あなた、そんな人……なんて……」
「元々こんな性格なの、知らなかった? ふふ、それとも覚えることができなかったのかしらあ」
普段大きな動揺はしない白姫サンすらもこちらを睨んでいる……というか目を細めている。
わざと煽るように言えば彼女は唇を噛み更に目を細めた。白姫を溺愛している彼女の従者もこちらを射貫くようにして睨んでくる。
怖いんじゃなく面白いのだけれど。
「黄姫、これ以上はやめようじゃないか、まだ、まだ戻れるはずだ……!」
……面白いはずなのに、どこか冷めたような感覚が広がる。
折角下準備したのに、やめようだの戻ろうだのはしない。したら全部が水の泡だ。
あれ、おかしいな、赤姫サンはもっと賢かったはずなのに。
「……馬鹿だなあんたら。何にも分かってない。あいつの表面だけしか見てないんだろう?」
自分でも驚くほど低い声が出た。どうやら苛ついているらしい。少し頭も痛くなってきた。
しかし苛立ちと同時に、愚かな人たちを見て笑いが込み上げてくる。
思わずくつくつと喉が鳴った。
従者たちも鬼様を信仰しているようで。こちらを睨んでくる。……キハクを除いて。
手出してくれた方が面白いんだけど、痛いのは嫌だしなあ。
ああ、そうだ。反応が見られる言葉がまだあった。自然と頬が緩む。
「……ねえ、みんな。このことを他人に喋ったら、崩壊すると思ってね?」
にっこりと笑って、仲間以外のこの場にいる人たちに魔法をかけた。なにが、とは言わない。皆承知だろう。
私の魔法の恐ろしさは昔の事件で知っているはずだ。逆らうなんて自害を望むようなもんだ。自分でいうのもあれだけど、それほど強大だ。
その証拠に顔が青くなったり白くなったり。忙しい人たちだ。面白くてたまらない。
この後どうやって動くのやら。予想しながらこの場を去ろうとした。
「じゃあもう用はないよ、さよな……」
「待って姫さん! ……うそ、ですよね? いつもの冗談ですよね……?」
震えたような声で問われた。そんな声でも足は止まる。
普段なら明るくヘラヘラとしたようなキハクが、泣くのを堪えているような……そんな気が、した。
いつもなら、冗談で済ませていた。その冗談で反応を見て楽しんでいた。
だけど今は今。冗談じゃなくても面白いはずなのに。なのに、どうして。
――やめよう、意味が、ない――
「……本気だよ、分かってるんでしょ? 馬鹿だね」
何で、そんな傷ついたような顔をするかな。ぞわぞわして落ち着かない。貼り付けた笑みが崩れてしまいそう。
キハクの表情をなんだか見たくなかったから、さっさと行こうと近くにあった木へ向かって飛んだ。
ミシッと大きな音が鳴ったけれど気にしない。おも……いや、とにかく行こう。気にしない。
誰か一人くらいは追ってくるのかと思ったけれど、誰も追ってこなかった。
何故、とは思うが、まあ逃げれたしいい。どうでもいい。きっと仲間がうまくやったのだろう。
反逆者の集まりに向かおうとした刹那、とても晴れていたのに、雨がぽつぽつと降りはじめた。
やがて強い雨となり、私たちの髪や服を濡らし、地面には水溜まりができはじめた。
それでも空は晴れたまま。
……我が国名の由来とされる天気だ。特に珍しくもないから普段は濡れても構わなかった。
だけど今日は違う。最高な、最高な夜なんだ。だから濡れて少しだけ苛ついてしまった。
まあ天候は変えられまい。取り合えず今は本拠地に行くだけだ。
「……え?」
突然、雨が降る前感じた違和感が、消えた。
……違和感は少しの間だけだったし、気のせいなのかもしれない。
それにあのとき、確かに感じたあの快感。楽しかったんだ。楽しかったはずなのだ。愉快さが最高潮に達したような感覚、だったんだ。
そう、だから。
雨が降る直前、目の前がぼやけて、頬が少し濡れたことなんて気のせいなんだ。
・
▽ 視点主設定
「面白けりゃなんでもいいでしょう? いいじゃない、別に」
「今ここで選んでね。さあ、自分を取るか、仲間を取るか。どうするのォ?」
【 名前 】
キョウカ - 通称『 黄姫 』
【 性別 】
♀
【 年齢 】
15
【 容姿 】
腰まで伸びた黄髪をツ ー サイドアップにしている。瞳はぱッちりとしており、赤から黄色のグラデーション ( 黄色の割合 多 ) 。服は暖色を多く含む ( 主に黄色 ) 、着物をアレンジしたような服。帯から下はスカートみたいにふんわりと広がッている。ミモレ丈。柄は様々な大きさの円。黒タイツに茶ブ ー ツ 。身長163cm。
【 性格 】
『 日雨ノ国 』のちと狂ッたお姫様。矛盾が激しい。色々な意味で無邪気で、時によッて残酷。幼い子どものよう。子どもッぽいかもしれない。気分屋であり、物事は楽しければ基本的よし、という思考の持ち主である。楽しいことや面白いことが大好き。ものや人を好きになることはあるけれど、執着することはほぼない。興味があるものには構うが、興味のないものは最低限しか接しない。はッきりとしている。愉快犯。
【 能力 】
『 崩壊 』 .. そのまま。主に精神についてを得意とする。指定が細かければ細かいほど後に全身が痛くなる。
【 備考 】
隠れ反逆者。『 色姫争奪戦 』もとい『 色鬼 』をよく思っていない。というか過去にあれこれあッたため、鬼自体が嫌い。怪力。一発殴られるとくらッとくるレベル。尚木登りが得意。口調は整ッたり崩れたり。姫としての義務はこなしているつもり。姫です。姫です。 ( 二度目 )
ついでのイメ画。最近描いた絵です。 ( 全身なんて知らない )
https://i.imgur.com/fIopCr1.jpg
https://i.imgur.com/ZVcxPI5.jpg
アナログの方は絵柄を変えてみたかッ …… た …… ( あんまし変わッてない )
キョウカちゃんの表情は描いているといつの間にか似たようになッてしまう …… あッ耳はちゃんと丸いでs 、
わーい、雨露さんの小説だあ!!(半分深夜テンション((既に朝
では、自分も>46に関する、ちょっとした設定を。
【三種の神器ならぬ、三種の呪具】
(呪具は"呪"術師の呪術による呪術のための道"具"だよ!効力を発揮すると、呪いが発動するよ!!)
・"黙示録"のシャーデンフロイデ(46登場/年齢27歳)
常時マネキン型の異形。術式(我が家の世界線における魔法)によって強制的に魂をマネキンに定着させているので厳密には呪具ではないが、呪具と呼ばれるのは体内に呪具が埋め込まれているため。また、術式の行使によって人型になる事も可能。普段から指揮棒を振るう事で、体内に組み込まれた音響装置から音楽を演奏する。通常、その音楽は人を癒すために用いられるが、不協和音を混ぜれば、相手の精神を汚染する事が可能。
リミッターを解除した状態、及び製造者による洗脳を受けた状態で演奏すると、必ず"黙示録"を引き起こす曲を演奏する。しかも小さな声で本人の歌唱付き。歌詞の内容は黄衣の王を崇めるもの。
[削除済み]さん。呪具としての力は三人の中でも真中で普通。他の二人に比べて、感情が豊か。
・"終止刑"のマレディツィオーネ(46登場/年齢29歳)
常時ツルハシ型の異形。"黙示録"同様、術式によって人型になる事は可能。意思を持つ呪具だが、製造者に忘れ置かれて、"盲目少女"に拾われる。感情は乏しいが、あまりに危なっかしい彼女を見ていて保護欲に駆られている模様。ツルハシなので当然のように人の頭蓋をかち割れる。と言うより、人型になって自由に行動している時は大概、"素手で"人の頭蓋を割っている。攻防共に強い。
現所有者である"盲目少女"を傷付けられると、ステータスが暴走し、問答無用で急所に一撃必殺を入れてくる。しかも非武装で、老若男女お構いなしに、無差別に。
呪具としての力は他の二人に比べて弱いが、通常の武器としては耐久力がある。
・"終末樹"のアルルーナ(46未登場/精神年齢26歳・外見年齢15歳or16歳)
常時人型の少女だが、桜の樹と同化している辺りやはり異形。三人の中でも特に製造者の事を快く思っておらず、一度は逃亡するものの、製造者に捕獲されてしまった。主人を見つけた他の二人を羨んでいるが、人間は脆くすぐに死ぬと知っているため正直微妙な気持ち。地中を移動する事が可能で、他にも自生している樹木を眷属として操る事が出来る。但し火にはめっぽう弱い。
呪具としての本来の力を解放すると、終末が訪れる。例え訪れても、終了後には再建の余地がある黙示録と違い、こちらは訪れたら最後、どれだけ巨大な都市があろうともそこに残るのは平らな世界と一本の桜の樹だけ。
三人の中で、呪具としての力が最も強い。仲間意識を殆ど感じない上、負の感情が増幅しやすい。しかも地中を移動して瞬間移動…なんて事も出来るから、敵に回すと非常に面倒。対処する時、男性陣二人はこうする。シャーデンフロイデの演奏で牽制→マレディツィオーネが接近して羽交い絞め→シャーデンフロイデが指揮棒の柄で彼女の頭部を殴打。"終止刑"は何の反応も示さないものの、"黙示録"は女性に手をあげてしまったと落ち込むし、"終末樹"を心配して看病もする。実はこの時、行動こそ起こさないものの、"終止刑"は彼なりに"終末樹"を心配している様子。
【相関性】
・シャーデンフロイデ→マレディツィオーネ
「…不器用なお人ですね。もっと素直になれば良いと思うんですが…言っても無駄でしょうね」
・シャーデンフロイデ→アルルーナ
「彼女は強い。しかし孤独で哀れなお人…素敵な主人が見つかる事を願います」
・マレディツィオーネ→シャーデンフロイデ
「指揮者気取りのガラクタ如きが、感情論で諭して来て……大きなお世話だ」
・マレディツィオーネ→アルルーナ
「面倒な女だ。最強の呪具が聞いて呆れる…さて、アイツの好きな花は何だったか…」
・アルルーナ→シャーデンフロイデ
「相当変わってるわね。人間が好きなんて変だわ。どうせ……どうせすぐ、いなくなるのに」
・アルルーナ→マレディツィオーネ
「不愛想な男、どうして私より先に主を見付ける事が出来たの?妬ましい!憎らしい!……羨ましい」
深夜テンションは続けば続くものですよ …… ( ?? )
ぱぴ …… すげ …… 御鏡さんの設定は細かいし素敵ですし好きです !! キャラ自体もたまらんのに関係さえも吐血レベル …… あふッッッ ( 遺言 )
…… さて。 ( 蘇生 ) まだ執筆途中の小説がありますのでいッてきます。
お久しぶりです(。・ω・。)ゞ
ちょっとバトル系を書いてみましたが…
やはり苦手です。
トウキョウクロスロード
case1,絶望
狭い面積になんと人口の3分の2もの
人間を抱え込む日本の首都、【トウキョウ】。
スクランブル交差点は今日も混雑し、
電車には人がぎゅうぎゅう詰め。
〈昨日のテレビ見たー?〉
《見た見た!出雲くん最高だったよねー!》
座席で他愛の無い会話をする同じクラスの
女子たち。
少し物騒だけれど、平穏な日常。
…それが壊れるのは、あまりに突然だった。
電車が酷く揺れる。
[…ミロク、揺れ酷くない…?地震かな]
友人が、声を掛けてくる。
「地震じゃないと思うけど…」
[そうだよね…もう予測出来るもんね。
今日の地震遭遇率、0%だったし…]
友人はスマホを見やる。
「変だね」
[…………]
返事が、返ってこなかった。
「ユウ?」
[……………]
やはり、返ってこない。
隣を見る。
「…ユウ!?」
ぽっかりと、座席が空いていた。
〈…きゃあぁ!〉
聞こえた悲鳴に、周りを見る。
…目を疑うような光景が、そこにあった。
電車の中は血溜まりのようになっていた。
まるで、血の雨が電車の中にだけ
降ったかのように。
生きているのか、死んでいるのかすら
分からない人たちが床に転がっていたが、
友人はいなかった。ただ、同じクラスの
女子が一人、へたり込んで悲鳴を上げていた。
〈ミロクくん…!〉
艶やかな黒髪を腰まで伸ばして気の強そうな
顔立ちをしたクラスのマドンナ、伊藤さんだ。
「…伊藤さん、何があったか教えてくれる?」
〈私が、うたた寝から覚めた時は…
こうなってて、田中さんと宮本さんが…血を
流しながら床に転がってて…〉
伊藤さんは錯乱しているようだ。
これ以上話を聞くのは無理だろう…。
「…出よう、ともかく。立てる?」
〈う、うん!〉
伊藤さんはすっと立ち上がる。
僕は彼女の手を引き、いつの間にか
着いていたらしい【シブヤ】駅のホームに
降りる。
そこには、人に似ているけれどどこかが
決定的に違う【ナニカ】が暴れていた。
〈何、あれ…!?〉
伊藤さんも、僕も、呆然としていた。
だがそこに、血の匂いを纏った一陣の風が
吹き抜けた。
『ボサッとしてんじゃねーぞ!
そこに立たれると殺すのに邪魔じゃねーか!』
茶髪を風に揺らし、鈍く光る瞳をこちらに
向ける鉄パイプの青年。
高校生ではあるのだろう、僕らの
高校ではないが制服を着ていた。
「キ、キミは…?」
『…あ"?俺かよ。大和。水無月大和。
今関係ねーだろ』
彼はぶっきらぼうに吐き捨てると、
鉄パイプを【ナニカ】に降り下ろす。
重い鈍器が【ナニカ】の頭にめり込み、
血を噴水のように流させる。
もう一話載せます。
トウキョウクロスロード
case2,戦闘狂
大和、と名乗った青年は【ナニカ】を
圧倒していた。
「…凄いね…」
〈…ぅ、う…〉
伊藤さんは今にも吐いてしまいそうだ。
「…大丈夫?伊藤さん…」
〈う、うん……多分…〉
『おい、お前!』
青年の声に顔を上げる。
『名前。何て言うんだ?』
「ミロク…篠宮、ミロクです」
『んじゃミロク。手伝ってくれ。
これやるから』
青年は僕に刀を投げる。
…本物…!?
一瞬受け取るのを躊躇って、地面に
落としてしまう。
カラン、と妙に軽い音から、模造刀だと
分かった。
『…コイツらにはよ、何でか知らねーけど
本物の武器よりレプリカの方が効くんだわ』
僕は伊藤さんを見る。
彼女を一人でここに置いて、
大丈夫だろうか…?
『お嬢さんは退避してろよ。コイツらは
俺が片付けるからよ』
青年は僕と伊藤さんに悪戯っ子のように
笑ったかと思うと、バケモノに突進していく。
…こんな所でじっとしていたら、
僕も伊藤さんも死ぬだけだ。
伊藤さんはこくりと頷いて、
コンビニに走っていく。
【ミロク。とりあえず何事もやらなくちゃ、
何も変わらないんだから】
僕が5歳の時に死んだ姉の言葉が、
脳を駆け巡る。
僕も覚悟を決めて模造刀の柄を握り締め、
闇雲に飛び掛かる。
「…おらぁ!」
小さめなバケモノの腕を掠めた攻撃は、
バケモノの腕を吹き飛ばした。
僕の顔に、黒い血飛沫が散る。
『…へぇ、中々やるじゃん。
素質あるかもな、お前』
「……素質…?」
『戦闘狂の素質』
彼は本気なのか冗談なのか分からない
笑みを浮かべ、敵に向き直る。
僕らは凄まじい惨劇を展開していた。
その原因は主に大和だが。
『ふー、終わったな。お嬢さん
迎えに行くか。どこ行った?』
「……多分、あっちのコンビニ…です」
『サンキュ。後、敬語じゃなくて良いから。
俺、お前と同い年だし』
「…分かった」
彼はボリボリと髪を掻きながら
コンビニへと進む。
『…なあ、ここで合ってんだよな?』
彼はコンビニの中を覗き、僕に問い掛ける。
「え、多分…」
『…やらかしたな。ここがまずかった。
お嬢さん、殺られちまったな』
彼が指差したガラス越しには、タイルの床に
広がる血溜まりの中で濁った目を大きく
見開いた伊藤さんが、まるで玩具のように
転がっていた。
「………伊藤、さん…?」
彼女はもう答えては、くれない。
僕はこみ上げてくる吐き気を抑えながら、
彼女の名前を呼び続ける。
『やめとけ、無駄だよ。
それより…逃げる方が先だ。ずっとここに
居たら俺らもこのお嬢さんみてぇに
なっちまう』
彼に肩を掴まれ、僕は振り向く。
その顔はどこか哀しげで、それでいて…
とても美しかった。
『…ほぉら、おいでなすったぜ。
お嬢さんはどんなヴィランになることやら…』
彼の言葉に前を向き直る。
倒れている伊藤さんの身体がビクリと動き、
操り人形か何かのように立ち上がる。
ガラスを通してこちらに向けられる、
虚ろな瞳に、背中に氷を詰め込まれたような
寒気が走った。
伊藤さんは薄い桜色の唇をぱかりと開き、
何かを呟く。と、同時に。
彼女の着ている女子制服の背中の生地が
ビリビリと裂け、背中から黒くドロドロに
溶けた汚泥のような色をした羽根が生える。
白くほっそりした腕も痙攣したかと思うと、
あっという間に血管が浮き出て黒くなり、
指がナイフのように鋭くなる。
そして長い黒髪が目元までだらりと
垂れ下がり、顔を覆ってしまっている。
『…随分とお綺麗なヴィランになったなぁ。
やっぱり、お嬢さんだからか?』
彼は鉄パイプを構えて笑う。
同時に『彼女』もゆっくりと
コンビニから出てくる。
「…い、とうさん…」
『…コイツはもう、お前の言ってる
『伊藤さん』とやらじゃねーよ。
衝動のまま、欲望のまま動くヴィランだ。
生き残りたきゃ、倒すしかねーんだよ』
彼の声は真剣そのもので、瞳は鋭かった。
《……………ミロク、くん》
『伊藤さん』が口を開く。
その声は何の変わりもない。
…何だ、やっぱり伊藤さんじゃないか…。
「…どうしたの?」
《…どうして、私を見捨てたノ?》
長い黒髪に隠された表情は、
伺い知れなかった。
「見捨ててなんて…」
『…おい、ミロク!ソイツと長いこと
喋るんじゃねーぞ!』
彼の声が、聞こえる。
《……嘘。キミは、私ヲ…見捨テタ、ヨネ?》
彼女の声が、次第に低くなる。
「…見捨ててなんて、ないよ」
《…ウソ、ダ。………ミロク、コロス……》
彼女が一際低い声で言ったかと思うと、
彼女の腕が僕に降り下ろされる。
「……っ……」
死ぬ覚悟を決めて目を閉じた、その時だ。
『…おらァ!』
彼女の腕が、粘る血と共にどこかへ
吹き飛んだ音が聞こえた。
《………ギャァァ!》
耳を劈くような叫び声が響き、
僕は恐る恐る目を開く。
そこには、片腕を無くして叫ぶ『伊藤さん』と
顔を血まみれにした大和が立っていた。
『…ミロク、情に流されんじゃねぇ!
もう、ソイツはお前が知ってる
お嬢さんじゃねぇんだ。ただの
ヴィランなんだよ』
大和の真剣で、酷く美しい声が聞こえた。
「……でも、伊藤さんは…」
『…ごちゃごちゃうるせぇんだよ!
コイツは!ヴィランなんだよ!敵なんだ!
お嬢さんじゃ、ねぇんだよ!』
大和の叫びに、圧倒された。
『………ッ!』
彼が微かに表情を歪め、肩を押さえていた。
その指の隙間からは、止血しきれない血液が
漏れ出て、彼の服を濡らしていた。
…僕を、庇ったから?
だから彼は、怪我をしたのか?
「…大和くん、怪我…!」
『何とも、ねぇよ…倒す方が、大事だろうが…』
彼は少し荒く呼吸をしながら、鉄パイプを
構え直して『伊藤さん』へと飛び掛かる。
彼女は叫びながらもう片方の腕で大和を
振り払い、地面に叩き付ける。
『……っ、ぐぁ…』
呻きを漏らし、彼が地面に沈む。
僕はただ、腰を抜かしながらそれを見ていた。
怖くて、目を逸らしたくて、逃げたくて…
自分に出来ることなんてなくて。
『……ミロク…ッ!…何、ぼーっとしてんだよ…
テメェの手に、あんのは…飾りかよ…!』
大和の声に、はっとした。
『…何もしなきゃ、テメェも…俺も…
死ぬだけなんだよ…!…それ、なら…
何か…して、死んだ方が…マシだ…!』
彼が叫ぶと同時に、大和の首を伊藤さんの手が
締め上げる。
『…………っか、は…ッ…!』
大和が吐血したのを見て、ナニカが
僕の中で切れた。
僕は模造刀を手に、覚悟を決めて立ち上がる。
もう、怖くない。
もう、目を逸らさない。
もう、逃げない。
ユウに会うまで、死ぬわけにはいかないから。
「……伊藤真理子ぉぉ!!」
恐怖や罪悪感なんて振り払うように、
怒りに任せて彼女の名前を絶叫する。
『伊藤真理子の姿をした化け物』は
勿論反応して、こちらに目線をやって
近付いてくる。
意識を無くしかけている大和の首から
手を放し、汚泥のような羽根で飛んできた。
手を放された大和は咳き込み、地面に転がる。
『…ミロク…クン』
『女の形をしたバケモノ』は
『伊藤真理子』の声で僕に呼び掛ける。
まだ、騙せると思っているのだろうか。
「………もう、オマエに容赦なんてしない!
オマエはただの…『敵』だ!」
その愚かさを、自分の弱さを、意気地無さを。
全て込めて、敵に一撃を放つ。
その一撃は、敵の振り上げたもう片方の腕を
吹き飛ばすには充分だった。
模造刀が敵の振り上げた右腕を、断つ。
『…ギャァァ…!』
粘る血が僕の顔に飛び、思わず顔を
背けそうになる。
冷たく、錆びた鉄のような匂いが
僕の鼻を突く。
「……うっ…」
『…上出来、だ。………ミロク…』
大和の声が微かに聞こえて、敵の
汚泥のような翼が片方吹き飛ぶ。
敵はバランスを崩し、地面に膝を突いた。
「…大和くん!怪我は…」
『……痛いに、決まってんだろ…が…
バーカ…でも、よ。…助かった…ありがと、な』
大和が、初めて笑ってくれた。
あの時の狂ったような笑みではなく、
伊藤さんに向けた愛想笑いでもない、
本心からの笑顔に見えた。
緊張の糸が解れたのか、大和はどさりと
倒れる。
急いで駆け寄るが、息はしているようで
安心した。
「…僕は…大和には、なれないよ…」
こんなに強く、気高く、優しい大和になんて…
いつになっても僕は追い付けないだろう。
僕はまだ動こうとする敵に、妙に冷静な頭で
脳天への一撃を撃ち込んだ。
『…ヴァァ…』
ドロドロと溶け出す敵をちらりと見て、
大和を背負ってその場を後にした。
「……大和、重いなぁ」
身体は細身だけど、鉄の塊みたいな重さだ。
空に、やけに綺麗な太陽が見えた。
「…綺麗だな…」
それだけが、この狂った世界で異質に思えた。
ただ、美しい太陽を眺めながら歩き続けた。
渋谷駅前通りの裏路地にあると噂の、
怪しい女医が営む医院へと。
>49から考えて、【三種の呪具】から【呪具四天王】にしてみた。
・"調律詩"のラ・フレア(46未登場/外見年齢・精神年齢共に不明/されど淑女の模様)
常時人型、"終末樹"のように、何かと同化している訳でもないため、異形らしさを感じさせない。
となれば、彼女の顔を隠す黒布は、一体何のためにあるのだろう。そう考えると、やはり異形か。
忘れ置かれるでも、逃亡でもなくただ捨て置かれた呪具。その理由は、彼女が生まれ落ちた
その瞬間から呪具としての力を発揮しないと明言したためだろう。故に、失望した製造者は
彼女を捨てた。しかし、一番人に近しい容姿の彼女は、誰よりも人間社会に馴染んだ。
ピアニストとして、バイオリニストとして、あらゆる楽器の演奏者として。以前街で開かれた
とある演奏会で彼女はフルートを演奏していたが、その際の指揮者は"黙示録"だったと言う。
"調律詩"の着るドレスは、淑やかな彼女の性格を表すように落ち着いた色をしている。
加えてそれは、彼女のしなやかな身体の線を強調する。隠された素肌を暴こうと、一体
どれほどの人間が躍起になっただろう。しかし、彼女を暴けた者はいない。
呪具としての本来の力を解放した彼女は、全てを正そうとする。誰も暴けぬ彼女の素顔が、
月灯の下に晒されて、仄かに鼻を擽るは芳香な果実の香り。誰がためでもなく、彼女のためだけに
戦慄の音階が鳴り響く。彼女に追従すれば、あるいは助かるだろうか。
【相関性】
・シャーデンフロイデ→ラ・フレア
「……あのお人は、少々苦手です。きっと、あのお人が人に頼らないからだと思います」
・マレディツィオーネ→ラ・フレア
「指揮者に続いて演奏家…同じ芸術家でも、諭す時でさえ理論的な辺り…まだこっちの方がマシだな」
・アルルーナ→ラ・フレア
「…上手く言えないけれど、彼女の事は好き。人間で言う所のボセイ?を持ってて…暖かいのよ」
・ラ・フレア→シャーデンフロイデ
「彼は私が人に頼らないと言うけど、彼も大概よ……感情に敏感な私達だからこそ、頼れないの」
・ラ・フレア→マレディツィオーネ
「…少々頭が残念よね。いいえ、賢くはあるのだけど、品位が無いと言うのかしら…」
・ラ・フレア→アルルーナ
「素直じゃない子ね。甘えたいならそう言えば良いのに……仕方のない子だわ」
【小ネタ:名前の元】
・シャーデンフロイデ…ドイツ語で「人の不幸は蜜の味」を指す語、原文(原語?)ママ。
・マレディツィオーネ…イタリア語で「呪い」を指す語、原文(原語?)ママ。
・アルルーナ…花型女性モンスター「アルラウネ(ドイツ語)」の別名。
・ラ・フレア…実は略称。正式名称は「グランドフルーティア」で、壮大なフルートの意。
>>51,52
あう …… バトル系書く時点で凄いです …… お上手です …… !!
ミロクくんのその倒し方的なアレ ( 語彙 ) がすごく好きです。最後の一文が気になッて仕方ない。大和くんとこれからどうなッていくのやら 、想像するだけでも楽しいです ( にッこり )
>>53
おわ …… おわ …… えう …… ((
なんかもう凄いです好き 、設定と文章が超絶好み …… 全員好きすぎて辛い ……
小ネタも凄くいいです効きました ( 主語 )
>54
大変だ、雨露さんの語彙力が…!!雨露さんのごいりょくさん、かえってきてー!
▼ ミカガミ は いのりのまい を おどった!
【小ネタに対して更に小ネタ】
現時点での名前は呪具としての名でしかなく、創造主の元を離れて新たな主を見付けた者("調律詩"は例外)は新たな名を付けられている。
・"黙示録"のシャーデンフロイデ→ルクス(ラテン語で「光」を指す単語【ルークス】より)
・"調律詩"のラ・フレア→ラルフェージュ(「非常にゆっくりとした速度で,表情豊かに」の意を持つ【ラルゴ】と「楽譜を母音又はドレミの音階で歌う声楽訓練」を意味する【ソルフェージュ】の複合語。尚、彼女は主を見付けた訳ではなく、人間と大差なく自立して生活できるため、名前も自分で考えた模様)
・"終止形"のマレディツィオーネ→変更なし(現主である"盲目少女"からは「ツルハシさん」の愛称で呼ばれるため)
因みに昨日は深夜テンションを発揮して、黙調を書いてました。
一応年齢不詳って事になってるけど、四人の中じゃ調律詩さんが一番上。
「私は最年長だから、年下のあなた達に頼っちゃいけないのよ」って言う調律詩さんに、
「だとしても、あなただって一人の女性なんですから……もっと頼ってください」って言う黙示録さん。
紳士淑女コンビであり、音楽組である二人…多分呪具達の中では一番絡みが多いのです。
>>55
いやあ語彙力は身に付けては消えてしまうので …… もう遅いです …… ッッッ ((
ほお …… よきです ……
設定好きですし細かいよお …… 一つ一つに意味があるの凄いです。え ? 私 ? 適当じゃないですよ ? ( 震 )
わあ 、深夜テンション恐るべしですね 。
えッ調律詩さん一番上なんですか …… ? マジで ? ( )
うわそのコンビいいですね ! うひゃ ー 好みだあ ……
小説はもう暫くお待ちください 。 ( )
カジノベースの小説を書いてみようとして
作ったキャラです。
一応設定だけ…(´・ω・`)
【Black Rose】オーナーの個人情報
【姓名】リチャード・アサギ
【性格】母親讓りなのか礼儀正しく、
丁寧な口調で喋るが口はあまりよろしくない。
取り乱すことは滅多に無く、常に笑顔。
【容姿】髪は肩くらいまで伸ばされ、風に
さらさらと揺れるブラウンのショートヘア。
瞳は鋭く切れ長のくっきりとした二重瞼で、
宝石のように美しいライト・グリーン。
肌は色白で手足は細く、手は少し骨張って
こそいるが、皮膚はまだ滑らかで柔らかい。
顔立ちは高い鼻に彫りの深い顔立ちで、
いかにもヨーロッパ風の容貌。
服装は濃いネイビーのブレザーに
グリーンのネクタイ、白いワイシャツ、
茶色いスラックスと学生風なファッション。
【年齢】16歳
【性別】男
【身長】180.3
【能力】能力1 超幸運
カードゲームでもルーレットでも、
ギャンブルの女神は彼に微笑む。
その幸運によって最強の役を揃え、
玉は運良く狙った所に落ちる。
ツキが回って来た時の彼は
【美貌の少年オーナー】の仮面を脱ぎ捨て、
【クレイジー・ギャンブラー】と化す。
彼自身でコントロールすることは不可能だが、
何故か彼が窮地の時によく発動する。
能力2 全能視
相手の隠し持つ能力を視ることが出来る。
だが、彼のチカラでは視るまでに
留まっている。
【備考】カジノ【Black Rose】の
少年オーナー。巧みな話術と天性の
嘘吐きの才能で相手の心理を掌で弄ぶ。
カジノ内では「オーナー」或いは偽名で
「マーシャ」と呼ばれている。
母親は日本人、父親はイギリス人の
日系ハーフ。
カジノ【Black Rose】No.1ディーラーの
個人情報
【姓名】ティーダ・マクレラン
【性格】軽い口調で喋るものの口は固く、
面倒見の良い兄貴肌な性格をしている。
オーナー、リチャード・アサギの
保護者的存在。
【容姿】仕事の時は目が覚めるような濃い
赤のロングヘアウィッグ、普段の髪は
後ろで無造作に束ねられたブロンドの
艶やかなセミロングヘア。
瞳はアイラインとアイシャドウで女性らしく
なっているが、普段は少し吊っていて細く、
奥二重で大きなブルーの瞳をしている。
肌は異常なほど白く、手足は女性のように
細くしなやか。手はがっしりとした掌に
折れそうな程細い指がくっついており、
アンバランスだが美しい。
仕事の時は顔をファンデーション等
メイク道具で徹底的に覆い隠して女性的に
見せてこそいるが、本当の容姿は
どちらかと言えば男寄りの中性的な
顔立ちをしている。
仕事の時の服装はド派手な赤のロングドレスに
ハイヒール、赤のウィッグをカールさせた
目立つ服装だが、普段はグレーの
カーディガンとブラックのジーンズ、
クラッシュ生地のTシャツと地味な
ファッションを好んで着ている。
【年齢】23歳
【性別】男
【身長】184.9
【能力】能力1 レイズ・アンド・リターン
自分が勝負している時、賭けられた金額の
分だけ相手にそのまま負債として戻すチカラ。
至ってシンプルなチカラだが、この世界では
単純な事こそ最も恐ろしいチカラとなるのだ。
この力は自分で制御可能。
賭けられた金額より多く負債を戻す
「レイズ・アンド・ハイリターン」も可能。
【備考】カジノ【Black Rose】の
No.1ディーラー。カードゲームの腕は
超一流で、オーナーである
リチャード・アサギを凌ぐほど。
カジノ内での名前は「ダイアナ」。
カジノ【Black Rose】新米ディーラーの
個人情報
【姓名】ジャック・シェパード
【性格】短気で怒りっぽく、粗暴な口調で
喋る不良少年。だが忠誠心は高く、
一度忠誠を誓えば裏切ることは無い。
【容姿】髪はボサボサであまり艶のない
目が覚めるように鮮やかな青髪。
瞳は吊り上がり、肉食獣のように
鋭い光を放つ二重瞼のグレー。
肌は少し浅黒く、手足はすらりと長細いが
がっしりとした体躯をしている。
顔立ちはそばかす痕があり、
些か幼さが残るが整っている。
服装はチェーンの付いた
ブラックのスキニージーンズ、バンドの
ロゴマークが描かれたグレーのTシャツ。
【年齢】15歳
【性別】男
【身長】176.7
【能力】狂犬の意地《ドッグ・プライド》
自分が窮地に陥った時のみ発動する能力。
身体能力を5倍に跳ね上げ、疾風の如く
地を駆け抜ける。発動時は瞳が赤く、
髪が白くなる。
【備考】元【Black Rose】の客。
生まれついての激運を持っていたが、
リチャード・アサギに敗れた。
しかし、彼に能力を見出だされて
【Black Rose】に雇われることとなる。
自分をカジノの【飼い犬】だと
卑下することも。
お久しぶりです。本日は小説ではなく小ネタなのですが、もしも[削除済み]さんが二重人格だったら。と言うものを、いくつかのケースに分けて紹介したいと思います。流れはルクス→ルクスとシャーデンフロイデ交代→シャーデンフロイデ。安定した夢要素。
【CASE1:ちょっと殺伐とした内容の映画を見せてみた】(内容は殺人鬼もののホラーかデスゲームです)
ルクス「物騒なものは嫌いです。こんなものを見せる■■さんの事も、嫌いになってしまいますよ…?」
ギュウ、とあなたを抱き締め、縋るように囁いて来ます。
シャーデンフロイデ「物騒なものは嫌いじゃなかったのか?そんな訳ないでしょう。私自身物騒ですし…おや、これは使えそうですね……」
興味津々と言った様子で映画を見ていますが、時折あなたを驚かせようとして来ます。
【CASE2:皮肉を言ってみた】
ルクス「ふふ、それは嬉しい言葉で…え?今のは皮肉?そうですか…皮肉、ですか…」
最初は嬉しそうな笑みを浮かべますが、あなたの言葉が皮肉だと知った途端に落ち込みます。
シャーデンフロイデ「…私は馬鹿じゃありませんよ。嗚呼、しかしこう返させてください。あなたは太陽のようですね…と」訳:真面に見たら目が潰れてしまいますね。(※本来は美しすぎて~の意味と思われますが、皮肉屋の彼は別の意味で捉えています。)
あなたの頭を軽く叩き、爽やかな笑みを浮かべながら皮肉を返してきます。
【CASE3:息も絶え絶えに命乞いをしてみた】
ルクス「っ…そ、そんなに必死に助けてくれなんて言われたら……幾ら倒さなければならない相手と言えど、躊躇ってしまいます…」
手を胸の前で握り締め、手にした黒剣と指揮棒を取り落とします。
シャーデンフロイデ「助けて欲しい、なんて良く言えたものですね、先に仕掛けて来たのはそちらで――――――嗚呼、どうしても助けて欲しいなら………解りますよね?」
冷たい眼で黒剣を振り上げますが、あなたの首に当たるギリギリのところで刃を止め、悪魔のような笑みを浮かべてあなたの耳元で囁きます。
【CASE4:術式を披露してもらってみた】(内容は皆様のご想像にお任せします)
ルクス「これで満足ですか?」
快く承諾し、十八番の曲を演奏してくれます。
シャーデンフロイデ「別に構いませんよ。おや、そのような顔をされるとは心外ですね。断われるとでも思っていたんですか?」
演奏中、懐に隠していた第三、第四、第五…ryの手を召喚し、あなたを擽り始めます。
【CASE5:好きな物事を聞いてみた】
ルクス「音楽と舞台鑑賞と、人間さんと、それから…■■さん、です…」
少し照れ臭そうに言いますが、すぐに両手で顔を隠してしまいます。
シャーデンフロイデ「音楽、宵闇、舞台鑑賞……あなたはどうかって?ええ、好きですよ。とても揶揄い甲斐がありますし」
好き、とは言ってくれるものの、純粋な好意ではないと即座に言います。
【結論】
極端に言えば、ルクス→紳士、シャーデンフロイデ→ドSで、例えるなら天使と悪魔。シャーデンフロイデに泣かされたら、ルクスに慰めてもらいましょう!
お久しぶりです。すらんぷとかすらんぷとか色々あって浮上してませんでした。 ( )
大分前にかいたやつをちょこッと修正したやつです 。
白い月がぼんやり浮かんだ夜、俺はとある人物に呼び出された。
とある人物とは、俺が所属している組織の一番トップ、通称リーダーのこと。
正直、リーダーは苦手だ。あの貼り付けた笑顔が妙に気持ち悪い。……主に相棒から笑顔が気持ち悪いと言われる俺が言ったことじゃないけど、まあそれは置いといて。
まあ大体予想はついている。恐らくこの前の仕事のことだ。
重大任務で少々やらかしたことだろう。俺も立場は上のほうだし、上司じゃ俺の性格上対処できない。というわけで少し前から、やらかすと逆らえないリーダーに呼び出されるようになった。ほぼやらかすことはないんだけど。
やらかした言い訳はしない。寧ろあの人の前で言い訳をして無事に帰ってきた人を見てみたい。殆ど精神が折れるのだ。それか、物理的か……
そんなことを思っていればあっという間に指定された部屋の前へと来た。わざわざ防音魔法を異常に重ねた部屋なんて、あの人は何をするつもりなのか。
「失礼します」
ノックをし、少し間をおいて扉を開く。広いとは言えない部屋なので、すぐにリーダーが視界に入ってきた。
頬杖をつきながらにこにこと笑みを浮かべる相手が胡散臭く感じ、少し眉を寄せてしまった。
「やあ、月露くん。あの重大な任務は無事終わったかい?」
わかっている癖に何故問うのだろうか。しかも『無事』を強調して。こういうところも苦手だ。
此方を探るようにして見る瞳は左右違う色で、澄んでいるはずなのに濁ったように見えた。……内側が黒いってことなのか、きっとそうだ。
「もうご存知なのでしょう? 私の相棒をこの手で傷付けてしまいましたよ」
淡々と無表情で述べれば、リーダーはクスクスと笑い出した。何が原因で笑っていられるのか。
「はは、そうだね。君は君の相棒のヨウカちゃんを傷付けた。あの子は重要人物だって言ったんだけど、まあいいや。そんなことで呼び出したわけじゃないんだ」
「申し訳ござ……は?」
一瞬動揺してしまい本音が出てしまった。
いつもの笑顔で相棒のことを雑に終わらされた気がして、驚愕や怒り、疑問が混ざったせいだ。
「あっはは! その顔いいね、珍しい表情だ。月露くんは笑ってることが多いからね? ……さて、今回呼び出した理由はね、任務とか仕事とか関係ない、君自身のことに用があっただよ」
多分口がぽかんとあいているであろう俺の顔をジロジロと見た後、面白そうに手を叩いた。叩き終われば、更に笑みを深めた。同時に目も細くなり、その奥は面白いといっているようだった。
この人の右頬にえくぼができたときは、愛想笑いではないということを、俺は知っている。今右頬にえくぼが出来ている――つまり楽しんでいるらしい。
といわれても身に覚えがない。この人が楽しむようなカードを俺は持っていただろうか。答えは否。
……答えは否と言えるのに、どこか寒気がするのは何故だろうか。
それでもえくぼが出来たのは先程の表情のことかもしれないし、取り敢えず疑問を消したい故に言葉を放った。
「そうですか。それで、私自身に用とは、どういう意味でしょう?」
問えばわざとらしくきょとんとした顔を作った相手。だが直ぐ普段の笑みへと戻し、あざとく首を傾げた。
一つ一つの所作が無駄に綺麗で腹立たしい。ちょっとしたイラつきが顔に出そうになったとき、整った口が開かれた。
「どうって、そのままさ。本来なら月露くんは、ヨウカちゃんを護るはずだったのに、物語のように上手くいかないものだね」
独り言のように零したそれは、さらに疑問が深まるだけだった。
全く、理解が出来なかった。その言い方じゃまるで、元々の話があるみたいじゃないか。
「理解不能って顔をしているね? 物語は、物語さ。何故そんなこともわからないんだい?」
思っていることを読み取られ、軽く肩が跳ねた。困惑に驚愕も含まり、思考が恐怖にへと進む。
こいつは何がしたいんだ。何が言いたいんだ。
「……物語ってなんです? リーダーは何を仰りたいのでしょうか」
困惑ながらも出た言葉は少々震えてしまい、感情も出てしまったと思う。
冷や汗が滲み、リーダーを睨んでいても、気にする様子もなく、くつくつと喉を鳴らしながら愉快気に話したのだ。
「僕の、物語さ。僕の作った物語を現実にするって、前も言ったでしょ?」
こいつ馬鹿なのか、と思った俺は悪くないと思う。
そんなぶっ飛んだ話を聞いていたら絶対思い出す。なのにその記憶がないってことは、『前』なんてないということで。なのにどうしてこうズレているのか。
「そのような、奇妙な話を聞いた覚えはございませんが……どういうことでしょう?」
此方が首を傾ければ、笑みから不思議そうな表情を浮かべた。俺の方が不思議そうに見つめたい。許されるなら一発殴りたい。
暫く見つめ合っていれば――本当は目を逸らしたいけど――先程の笑みとは変わり、にやりとした笑みとなった。
「ふうん、少なからず、興味を持っているのかい? いいよ、特別に教えてあげよう」
気になるところだ。疑問も消えるかもしれない、が。どうしても得体のしれない何かがあった。
その笑みの奥に何があるのか、到底読み取れない。だから断ろうと思っていたんだ。
「いえ、やはりいいで――」
「君に拒否権なんかないよ。僕の質問に、答えて?」
断ろうと思っていたのに、言葉で覆われた挙句、ぞくりとするほど美しく恐ろしい笑みを見てしまった。恐怖感に包まれるのに、赤と金の瞳から目が離せない。
煩いほど激しく鳴る鼓動を落ち着かせるように、此方も表情を笑みへと変化させた。
「……君は、過去に重要人物の少女と出会ったことがあるだろう?」
――重要人物。それはリーダーが守る人達のことらしい。俺はその一人に会ったことがある。
確か、小柄で不思議な子だったと思う。最初は拒絶されて……あれ、歓迎されたんだっけ……?
と、話が逸れた。返事の代わりに首を縦に振って肯定すれば、相手は目を細める。
「じゃあその子は、どんな色の髪と瞳なのかい?」
音もせず立ち上がり、目尻の下がった目を此方の目と合わせたままのリーダー。心情を読まれるようであまり目は合わせたくないんだけど、この人はなぜか中々目を離させてくれない。
「? 何言っているんです、黒髪赤目で……」
黒髪、紅目? 本当に?
頭の奥に痛みを感じた途端、そんな問いがふと思い浮かんだ。
なぜ思い浮かんだかわからないが、いい気分にはならないため誤魔化すことにした。
「その子は、どんな性格だい?」
誤魔化しで首を振ったのがいけなかったんだろうか。少し低くなった声で尋ねられ、探るような瞳で見られた。
「……気さく、で、誰とでも仲良くできるような……」
ちがうでしょ?
俺の声でもリーダーの声でもない、どこかで聞いた少女の声が頭の中で響く。
……何が違うかはわからないが、声の主は、過去の少女ではないということは分かる。
じゃあ、誰だ。
今日は何かがおかしい。今までこんなことはなかったし、リーダーの前でもこんなに感情を出すことはせず、ただ淡々と……
「へえ? 白髪青目の、中々心を開かない、孤立してしまった厄介な少女ではなく?」
リーダーの声で考え込むことが強制的に終了された。
いつの間に近づいたのか分からないが、とん、と人差し指で胸元を軽くつつかれ、急に混乱する。リーダーの言葉は、俺が思っているあの少女とは正反対の子だったからだ。
――本当に分からないの?
その声が聞こえた途端、記憶を支えていた糸がぷつんと切れた、感じがした。
刹那、頭に激しい痛みが走り、どこからか自分の声が一斉に耳に入ってきた。
――違う。
ちがう。
違う違う違うちがうちがう。
何が違う。誰が違う。どこから、違う。
……最初から違っていた? 何が?
あの子だった? この子だった?
違う、あの子じゃない。違う、あの子だ。
どうして忘れている、どうして覚えている。
忘れなきゃ、思い出さなきゃ、崩れてしまう。
違うんだ。やめてくれ……あの子は、あの子は――
様々な感情と記憶がぐるぐる回って、黒でぐちゃぐちゃに塗りつぶされる。
何が本当か何が嘘かわからず、何もかも分からないまま視界がぼやけた。
そのまま頬が濡れ、頭が真っ白になる。真っ白になった刹那、意識も真っ黒に染まった。
意識を失う直前、誰かが優しい笑みを浮かべた気がした。
2年ほど前のトピックのようですので、もう誰もいないかもしれませんがこちらに駄作を吐き出して供養しておきます。
ーーー
夜も更け、しんと静まり返る闇夜の街を、
ふたりの【人間】が歩いている。
「ラドゥちゃ~ん、遊ぼうぜ?」
ひとりは酷く軽薄で薄っぺらな笑みを
浮かべながら、横を歩く片割れに問う。
「…嫌っすよ。まだ仕事残ってるし。
ジェリコさん、遊ぶよりも先にあんたのせいで溜まってる仕事片付けてもらえません?考えてくださいよ。あんたの首の上に付いてるそれは、五キロの重い飾りですか。」
問われた片割れの女は不快そうな表情を
浮かべ、自分よりずっと長身の片割れを
見つめるというより半ば睨み付けて毒舌を返す。
「ははっ、相変わらず辛辣ゥ~♪」
「…相方を殺して良いならあんた、今すぐ殺してますよ。」
片割れは気にする様子もなく
へらへらと笑い、女は更に眉間に
皺を寄せて溜め息を吐く。
「ストレスはお肌に悪いんだぜ~?」
「…俺にストレスがあるなら、それ全部
ジェリコさんのせいですね。ほら、
仕事場ですよ。さっさと切り替えてください。」
「はーいはい、っと…仕事終わったら遊んでくれんのォ?」
男は肩を竦めて答えながらも表情を引き締め、首の骨をぽきぽきと鳴らして拳銃を懐から取り出す。
「………いいっすよ。ま、終わったらの話ですけどね。」
女は片割れの方を見もせずメリケンサックを嵌めた拳を構える。
「マジ?じゃさっさと終わらそっかなァ。」
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