百合 2019-03-21 20:42:40 ID:6b716f026 |
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「…………少し寝過ごしてしまったか」
(朝、むくりと身体を起こしたシラベは
ランプを手に取り、真っ赤な学生帽を被る。
窓の外には相変わらず、自転車を押している
少年がひとり居た。
【スオウ】と呼ばれていた、少年だ。)
うぅ…。熱っぽいな…。
(案の定風邪を引いてしまったようでゴホゴホと咳をして、外に自転車を押す少年を見つけたようで「朝から元気だな…。」と少々羨むように呟き)
「それは災難だな。小生を助けたり
するからさね」
(さもおかしそうに笑ってみせると、
何処に隠し持っていたのか、学生服の内側から
氷嚢を取り出す。)
「仕様がないな。看病するから、
大人しくしておいてくれると助かるんだがね」
(苦笑を浮かべながらレイの額に手を当てる。
その手は氷のようにひんやりと冷たく、
体温を一切感じさせない異質なものだった。)
悪いな…。っ…!?シラベ、やっぱりお前人間じゃ無いな…。
(自分の情けない姿に苦笑しつつもじっとして、相手の手が額に触れた瞬間にビクリとその冷たさに驚き。それと同時にシラベが人間では無い事に確証を持ち)
「何時、小生が自分のことを人間だと
言ったかい?あの時、言ったろう。小生は
移ろう者だと」
(相変わらずの微笑みを浮かべながら、肩を
竦めてみせる。
チリン、と自転車のベルの音が響いた。)
確かにそうだな…。
(ゴホゴホと咳をしながら相手の言葉に苦笑しつつ頷き)
それより…この音は何なんだ…?
(昨日も聞こえた自転車のベルを再び耳に入れるとボソボソと呟き)
「【蘇芳】。姿を見せてはくれまいか?
君の姿を、小生の新しい友人に見せて
やりたくてね」
《…仕方ないね、君の頼みならば》
(どこか諦めたような声が響く。
何処からか、金木犀の香りが漂ってきた。
次の瞬間には蘇芳色のマントを纏った、
ハンチング帽を被った小柄な青年が居た。)
《僕は蘇芳。シラベの友人さ》
《君が、シラベの言っていた人間だね?
僕は蘇芳、シラベと同じく移ろう者さ》
(蘇芳もどことなく老人のような雰囲気を
纏ってはいるものの、シラベよりまだ些か
若々しさの目立つ喋りだ。)
ところで、シラベは俺の事を友人と思ってくれてたんだな。
(熱で火照った体にその冷たさは心地良いのか蘇芳の手をしっかりと握って軽く振り、先程のシラベの発言に少し驚きつつも笑みを浮かべながら聞き)
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