お節介な先輩へ＿非募集

ありがとうございます、すぐ済ませてきますんで。飲み物…冷たいお茶で！
（　なんでもあるという誘惑に数秒悩んだ末、ピンと天井に指さしお願いすると鼻歌交じりに上着を脱いで一旦自室へ。鞄とともに片付けては手を洗い早々とリビングに戻ってきて席につき　）おお、美味しそう…

冷たいお茶な、了解。(　自室へ戻る背中を見送りながら冷蔵庫から十分に冷えたほうじ茶を取り出し二人分のカップに注いで。彼が席に着く頃には全ての品が並べられており、向かいの椅子を引いて腰を下ろす前に簡易的な説明を　) ベビーリーフのサラダと合わせてあるのがメインの照り焼きチキンで、そっちの小皿はマリネ。……あ、お前鶏肉平気か？苦手な物があれば遠慮なく言ってくれ。

すげえ。…檜山さんこれでなんで相手いないんすか。
（　料理名もどこかお洒落だ、と説明を聞く顔は口が半開きの状態。職場の女性陣が騒いでいた‘ スパダリ’とは料理も出来て気遣いまでしてくれる目の前の相手のようなことを言うのだろうかなんて考えながら本音をポロリ　）鶏肉好きです。あ、マリネに入ってるパプリカはちょっと…（　改めて眺めると小皿に赤い物体を発見。肩を竦ませ白状しては両手を合わせごめんなさいのポーズ　）

さあな、俺はいつでもその気なんだが、恐らく向こうは気付いてない。(　自嘲混じりに放った言葉は自分だけでなく、向かい合ってお手製の夕食に釘付け状態の相手に向けられたものでもあるのだが、視線をチラリと投げるだけで態とらしく匂わせる発言は控えて。表情を曇らせた彼の小皿からヒョイ、と器用にパプリカだけ己のそれに移しながら楽しそうにくつくつと喉を鳴らして笑い　) 俺がもらう、──パプリカが苦手か、案外味覚は子供なんだな、吉野？

え"っ…ん？…ん？？（　まさか想い人が、なんて当然のカミングアウトに驚いて相手を見つめるが改めて今の現状を整理すると俺の立場とは？なんて軽く混乱し　）や、ピーマンは普通に食べるけどパプリカ変に甘いのが！無理！！つーか変に色変える必要あるか！？カリフラワーも同罪な！！いただきます！！！（　自分の皿から消えるパプリカを見ながら‘ 子供’のワードについかっとなって早口になりつつ、最後は勢いのまま挨拶し頬張り　）

……いいや、訂正。恐らくじゃねェな、絶対気付いてない。(　一足先に食事にありつきつつ、" 想い人 " の鈍感さに長い溜息を吐いて。興奮気味に熱弁する彼を見て再び可笑しそうに笑い、幼子をあやすような口調で宥め　) どうだ、上手いか？ゆっくり噛んで食べろよ。
(　そう言う己は今夜も仕事を控えているためやや急ぎ足に料理を口に運び──箸を置いてテーブルの端に置かれたほうじ茶を飲み干すなり空になった食器類を持って立ち上がり　) 中々時間取れなくて悪いな、俺は先に部屋に戻るが、お前は気にせず食べててくれ。(　慌ただしい様子でシンクにそれらを運び終えると、去り際に一言 " おやすみ、吉野 " と残して　)

休憩。今日は早く上がれそうだ。何か買ってくか…？（　休憩室にてぐだりと寛ぎながらこの後の流れを頭の中で計算していけば定時で上がれるだろうと予想して。いつものお礼に何か甘いもの…お酒でもいいかとぼんやり考えメールを送信し　）

『お疲れ様です。今給食を食べ終え休憩に入りました。今まで特に何も考えてなかったんですが、檜山さんのご飯の方が美味しい…なんて。比べるもんじゃないっすけどね(笑)今日は俺が早く上がれそうです。料理は無理ですけど、待ってますね。』

(　職場を出るなり冷たい風が吹き付け、身震いしながら自宅へと足を向け。ふと、朝は会えなかった相手に連絡を入れようかとコートのポケットからごそごそと携帯を取り出せば、一通の通知がある事に気が付き。丁寧な内容に、出先である事を忘れ頬が緩んでしまい、人にぶつからないよう道の隅に移動してそそくさと返事を打ち始め　)

"　お疲れ、今から帰る。口に合ったみたいで良かった、寛いで待っててくれ。　"

お。帰ってくんのか！
（　ゆったりとしたルームウェアに身を包みテレビを眺めていたところに弾んだ通知音が鳴り、見れば帰宅を知らせる相手からの連絡で小さくガッツポーズ。テーブル上のワインやビールが入っている冷蔵庫をちらりと見て喜んで貰えるといい、なんて囁かな計画に胸を踊らせ　）

──ただいま。(　家に誰かがいる事が分かっているだけで、こんなにも足取りは軽くなるのかと、珍しく浮かれながら早足で扉の前まで辿り着き。ノブを回して扉を開ければ、靴やコートを脱ぐ何より前に帰宅を知らせる一声を　)

おかえりなさい、檜山さんっ（　待ちに待ったドアの音に反応しさっと顔を覗かせて相手の姿に笑み零し　）檜山さんの料理と一日ゆっくり休んだおかげで今日はすっかり元気です。でもって今日は酒、用意したんで夜の仕事までゆっくりしてください。（　昨日とは打って変わって軽い体の証明にその場で力こぶをつくって見せると、靴に手を掛ける相手を急かすようにリビング指差し　）

今朝は顔が見れなかったからな、元気そうで良かった。(　すっかり疲れの取れた様子で出迎えてくれた彼を見て満足そうに頷き　) 吉野お前、準備良いな。(　大好物の酒があると聞いた瞬間顔色が一層明るくなり、冷えた身体を暖めようと誘われるままリビングへ　)

朝はギリギリまで寝ちゃってて（　苦笑い　）ビールとワインくらいですけど、どっちがいいです？ちなみに甘口なら赤白両方ありますよ。つまみも適当に。（　嬉しそうな明るい相手の顔を見られた事にくすりと笑いながら後を着いていき後ろから声を掛け　）

仕事に間に合いさえすれば、たまには寝坊したって良いだろ。(　頭にぽんぽん、と手を置き　) 今日は取りあえずビールで頼む。つまみは昨日、俺も買い物がてら仕入れて来た。(　意気揚々と食器棚からジョッキやグラスを出してテーブルに並べ　)

はは、どーも。（　優しいフォローと手の平に嬉しく思いながら照れ笑いし　）了解です。そんじゃ一緒に出しますか（　ビールと自分用に白ワインを持ってくれば並んだ皿の上に揚げ物やらお刺身やらをのせていき　）ん、檜山さん（　ある程度落ち着いてから缶を持ち上げ向かい側の相手の方へ傾けて　）

どうも、──いやァしかし美味そうだな。ここ最近バタバタしてて、この間は休日だってのに飲めなかったから、今日は素直に嬉しい。(　相手に合わせてジョッキを軽く持ち上げ、注がれる黄金色のビールの泡とテーブルに出揃ったつまみを眺めながら、心底嬉しそうに表情を和らげ　) ──吉野、乾杯。(　折角だから、とそのまま相手のグラスにジョッキを近付けて　)

まだ火曜日なのが難点なんすけどね。少しくらい息抜きしましょ（　残りの日数を考えると憂鬱にはなるものの、相手の表情にこれも悪くないかとつられてにっこり　）…ん、乾杯。お疲れ様です（　かちん、と小さく音を鳴らしワインを口に含んで　）

お互い明日も仕事だしな、あんまり酔えないが良い息抜きになるだろ。──お疲れ。(　繊細な硝子の音を立てて乾杯をすれば、同じようにジョッキに口をつけてビールを含み。ゴクン、と喉を鳴らしながら一気に量を減らすと、溢れんばかりの爽快感で述べて　) あ"ァ、やっぱ仕事終わりのビールは体に沁みるな。

休日なら付き合いますし！今日は慣らしってことで。（　甘く広がるワインの香りが鼻に抜けふ、と一息。ビール特有の反応を示す相手の声にぶふっと笑い思わず「おっさんだなぁ」なんて突っ込みながら唐揚げをつついて　）

ああ、お前さえ良ければまた付き合ってくれ。……そう言えばお前、割と酒弱かったよな。(　過去に忘年会やらで一緒になった彼が、僅か数杯で酔っ払っていた姿を思い出し。唐揚げへと箸を伸ばしたところで投げ掛けられた " おっさん " のワンフレーズにガクッと項垂れ顔を顰めながら　) お前なぁ……、人が気にしてる事をよくも笑顔で。