主 2019-02-16 10:29:28 |
通報 |
いやいや無理無理、そもそもスーツなんてあんな肩こる服着るかっての。ズボンですら窮屈に感じるのに…。まぁ俺の場合だらしなくていいんだよ、どうせ怒られても一年契約だから来年はいないしな。
(最初のほうこそ自分の考え方に納得いっていない様子の相手が、解説をしていくうちにどんどん理解しており気がつけば自分が教えなくても次の問題を難なく解き始めたことに対して成長の早さに改めて驚かされて。教えるのが上手い、という言葉に嬉しさを感じながらも身だしなみやスーツという言葉に表情を歪ませ首を横に振って否定し最後に小さく聞こえてきた声に気のせいだろうと思い流して。そもそも自分は一年契約で来年はいないわけで、だからこそ適当にやっていることがある程度許されており、どうせ一年でいなくなるのだから自由に適当にやりたいという気持ちが自分の中にあるのが事実で。時間が経ち外が暗くなり始めていることに気が付くと「っと、もうこんな時間か…ほら、お前はそろそろ帰れ」と勉強を切り上げ、席から立ち上がって)
え、スーツって肩こるんですか?──ていうか、先生って1年の契約なんですね。ということは…私が3年になる頃にはこの学校には居ないって事なんですね。
(問題を一通り解き終わると先生の言葉にぐーっと伸びをしながら小さく欠伸を漏らし。その後教科書とノートを鞄に収めながら先に席を立つ先生に聞こえるか聞こえないかの声量でポツリと上記を呟けば、何事もなかったかのようにこちらも席を立ち、「勉強教えてくれてありがとうございました。…また教えてもらっていいですか?──あと、さっき私が言った事…“顔はいい”ってやつ…嘘じゃないので。じゃあ…私帰ります」と自分でも何を言っているのか分からなかったが何故かそれだけは伝えたかったらしく気まずそうに視線を逸らしながら先生に話せばペコっと頭を下げて鞄を肩にかけると先に教室を出て)
そうそう、だから来年はちゃんと他の先生の言うことを聞いて頑張るんぞ。…なんて言わなくてもお前は大丈夫か。むしろ俺がいなくなって清々してそうだからな
(席を元の場所に戻しながら軽く来年のことを話すが、たとえ誰が担任になろうが相手だったら問題ないだろうしむしろ嫌い嫌い言っている自分がいなくなってむしろ嬉しいのではないかと冗談交じりに思いながら自分も忘れ物がないか確認しつつ支度を済ませて。帰ろうと思ったところで突然相手が口にした言葉に思わず一瞬耳を疑ってしまい、こちらが聞き返す前に教室を出て行ってしまい「……最近の女子は本当に分からん」と改めてため息混じりに口にしながら自分も教室を出て)
──…私、なんであんな事言ったんだろ…。まさか先生のこと…ってないない、それは絶対ありえないっ…。勉強しすぎてどうかしてたんだ…。
(廊下を歩きながらふと、先程自分が口にした言葉を頭の中で思い返しながら呟いて。最近は勉強ばかりしていた事もあり疲れからそんな言葉を言ってしまったんだと自分に言い聞かせながら靴箱に向かって。でもどうしてだか先生が話していた“1年契約”の言葉に胸が切なくなるのを感じれば靴を取り出す手を一旦止め何かを考え始め。しかし首を振りながら我に返れば靴に履き替え上履きを靴箱に収めて玄関を出て、既に暗くなっている空を見つながら小さく息を吐きゆっくりと歩き出して)
おー、おはようさん。お前ら朝から元気良いなぁ…。これが若さか…。っいた!おいこら!挨拶するのに人の背中叩く必要ないだろ!
(翌日、一体自分の身になにがあったのかいつもよりもずっと早い時間に目を覚ましてしまい、二度目を仕様と思ったのだが上手くいかず仕方がないため学校へと向かうと、時間的に生徒達も登校するような時間帯であったため学校へ近づくほど生徒達の姿も見え始め、いつも絶対に遅れてくる自分がこの時間に歩いていることに周りの生徒たちも驚いており『先生珍しいね!おはよう!』『これは今日雪かなぁ』などと言葉が飛んできたり、いきなり背中を叩かれながら挨拶をされるなど、朝から元気な生徒達の姿に年の差を感じ深いため息をついて)
おはようござ──…!え、城木先生…なんでいるんですか…?
(いつもの時間に学校に着き、何やら視線の先に数名の生徒に声をかけられている先生を見つければ、まさか城木先生だとは思わず“朝から生徒に絡まれて大変そうだなあ”と呑気にそんなことを考えながら挨拶しようと思い先生の元に向かい声をかけようとしたのだが、まさかの自分が苦手としていた先生であったため驚き目を見開きながら、教師なのだからいて当然なのだが、この時間にいるのは珍しいと思い失礼だとは思ったもののつい上記の質問を投げかけてしまい)
ったくこれだから最近の若者は……っておお榎本、おはようさん。なんでもなにも今日早く目覚ましちゃってなぁ。本当にやらかした。もっと寝られたのに…
(絡んでくる生徒達を適当にあしらいつつ、朝から疲れた気分になってくるとふと耳に聞き慣れた声が聞こえてきたため声の主の方へと視線を向けて若干だるそうに挨拶をして。考えたら朝相手と顔を合わすのは初めてのことで、なんだが新鮮な気持ちを感じるがそれでももっとギリギリまで寝られたことを後悔しており、悔しそうに表情を歪めて)
やらかしたって…普通教師なら生徒より早く学校に来るべきなんじゃないですか?…早く目が覚めたってことは…先生若くないんじゃないですか?
(先生の言葉に小さくため息をつきながら呆れた表情で答えればふと、いつものようにやる気のない服装に目をやりながら「早起きしたくせに…またその格好なんですね。たまにはまともな格好すればいいのに…もしかしてスーツ持ってないんですか?」と冷たい視線を送りながら先生を上から下まで眺めればまるで哀れむかのような眼差しで見つめ「先生と話してたら時間の無駄なので先に行きますね」と言いたい放題伝えればスタスタと先生を置いて校舎に入っていき)
えぇ…なんだよ…そんなに罵倒されるか普通…?ったく、時間の無駄ならなんで話しかけたんだよ…よく分からんわ…。
(次に口を開いたと思ったら、相手から飛んでくる言葉は全て罵倒のようなもので、若くないから始まり冷たい視線、そして最終的には時間の無駄といわれこっちの言葉を待たず校舎に入ってしまった相手の後姿を見て思わず立ち尽くしてしまったが、いつものことだから仕方ないと割り切り改めて盛大な溜息をつくと校舎内へと入っていき)
──…あ、どうしよう。今日までの課題プリント忘れてきちゃった…
(その後教室に入り席に着くと、1限目に必要な課題プリントをもう一度見直そうと思い鞄を探るものの見当たらずひとり焦っていて。確か1限目は厳しいことで有名な教師が教える数学で、課題プリントを忘れると罰として大量の課題プリントを出されると噂もあり。そうこうしている間にホームルームが開始するチャイムが鳴れば若干の焦りからか顔色が悪くなっており、どこか落ち着かない表情で先生が来るのを待っていて)
あーもう楽園、国語が一時間しかないとか最高だわ。最高すぎる…。今日はすぐ帰る…帰ってやる…!
(今日の曜日だけは国語が全部で一時間しかないという自分が唯一楽しみにしている曜日であり、授業自体は5時間目なためそれまで職員室でダラダラしており。近くの席に座る同年代の教師と話しながらも『ちゃんとしないと怒られますよー?城木先生適当すぎるってよく聞きますから』と言われるが、正直全然気にしていないため軽く流して)
──…すみません、課題プリント忘れました…。
(1限目が始まり数学の教師から課題プリントを提出するようにと指示があり、それぞれ教卓の上に持って行くのだが自分だけ席を立たないのを不審に思ったのか、「榎本、早く出しに来い」と相変わらずキツイ口調で言われ恐る恐る上記を述べれば「──はあっ…お前みたいな真面目な奴が忘れるとはな。授業終わったら職員室に課題取りにこい、いいなっ」と言われ渋々頷き。案の定周りからの視線は“あの真面目な榎本さんが忘れるなんて”等とひそひそ話が聞こえていていて。その後授業はいつも通りに進み終了を知らせるチャイムが鳴れば、落ち込みながら先生の後に続いて職員室に向かっていき)
まずは先にこれ終わらしてと……。あ…一年のクラスの小テストを採点しないと…完全に忘れてた…面倒くさいから全員に丸で良いかな…駄目か…。
(業務が溜まっているというわけではないのだが、それでもやらないといけないことは多々あるため仕方なくこなしつつ時にありえない発言をしながらも何とかモチベーションを保っているとふと職員室のドアが開いて。授業が終わったあとだから先生でも帰ってきたのかと思い、チラっと見てみると正直苦手な数学教師とその後ろからまさかの生徒が入ってきたため思わず「なんだあいつ…なにしたんだ…?」と呟いて)
──えっ…こんなにですか?しかも…これまだ習ってない所なんですけど…。
(数学の教師の机まで行くと、クリアファイルに入れられた課題プリントが数十枚入っており、中を確認するとこれまでの復習など解ける問題の中にまだこれから先習うであろう問題も入っていて思わず講義をして。それを聞いた数学教師に「…はあ?課題プリント忘れたやつに文句言う権利なんかないわ。いいから放課後居残って全部終わらせて持ってこいよ、はいっ、以上!」と自分の意見もろくに聞いてもらえないまま話は強制終了され、腑に落ちない表情を浮かべながらもペコっと頭を下げて職員室をあとにして)
うわぁ…きっつ…無理無理…俺なら絶対バックれて帰るわ…
(正直一体どうしたのか気になるため作業をしながら耳をすませていると、どうやら課題を忘れたようでそれの罰でかなりの量のプリントを放課後やらされるという自分からしたらかなり気の毒な話だが、課題を忘れてしまった相手にもほんの少しの非はあるため仕方がなくどこか納得していない様子の相手が去っていく姿を見て「……頑張れ」と呟き自分は仕事へと戻って)
…はあ。やっぱりこんなの解けるわけないよ…
(その後もどこか元気が出ないまま他の授業も受けていき恐れていた放課後になっていて。クラスメイトが次々と帰る中、一人ぽつんと教室に残りグラウンドから聞こえるクラブ活動の声や、テニスボールが地面に叩きつけられる音を静かに聞きながら、クリアファイルから大量の課題プリントを取り出せば分かる問題から解いていき。しかし例の問題に差し掛かるとその手はパタリと止まって深い溜息をつきながら机に突っ伏しながら問題と睨めっこしていて)
さてと…仕事終わったし帰りたいところだが…あいつの様子でも見に行くか…。
(今日も適当に授業をこなし時間が進んで放課後、今日分の業務を全て終わらしたところで午前中の出来事をふと思い出して。自分が聞いている限り居残りの課題は恐らくなかなかの量でそれを今日中に終わらすというのはなかなか辛いものだとは当然予想もつき、それはきっと成績優秀な相手も例外ではないだろうと考えると小さく息をついて、様子見のために教室へと向かって。もし既に終わっているのであれば問題はないし、終わっておらず遅い時間まで残るのはさすがに担任として放っておくことはできないため、とりあえず教室の着いてドアを開けると中には課題に取り組んでいるであろう相手が一人残っており、「よっ、どうだ榎本?頑張って居残りしているかー?」といつものように適当に軽く声をかけて)
──…だめだ、やっぱり分かんない…。え、先生…どうしたんですか?
(例の問題と格闘すること数十分、未だに解き方は分からず時間ばかりが過ぎていき。さすがに白紙で出す訳にもいかないためなんとか解こうと教科書を開くものの全く解き方を理解できないまま諦めようとしていた時、教室のドアがガラリと開く音にびっくりしそちらに視線を向けると、なんとも軽いノリで声をかけられれば内心“頑張ってるけど解けないんだってば、…絶対先生解き方分かんないよね…聞くだけ聞いてみようかな、でもな…分からないって言われたらかなりショックだし…”と表情を曇らせながら意を決したように「先生、数学って解けますか?」とダメもとで聞いてみて)
数学…?あぁ、まぁ一応高校生レベルなら普通に解けると思うけど…なんだ、お前でも悩むほど難しいやつなのか?
(きっと楽々問題を解いているのだろうという予想を反して相手の曇った表情やに、あの教師どれだけ難しい問題にしたのだろうと疑問に思うも相手から飛んできた質問に対して頷いて。数学は担当ではないが別に苦手ではなく流石に高校生レベルの問題は解くことは出来るだろうし、流石にこのまま放っておくことは出来ないため昨日と同じように隣の席の椅子を持って相手の席の前に置いて座り)
この問題なんですけど…分かりますか?まだ授業で習っていない所で…どうやって解けばいいのか分からないんですけど。
(先生の言葉に“先生でも数学分かるんだ”と失礼さながらな事を内心思いながらも、目の前に座る先生をちらりと見れば課題プリントを先生の方に見えやすいように向けてどのようにして解くのか興味津々に見つめていて。「因みにこの問題、教科書に解き方載ってないんですけど…応用なんですかね?…ほんとあの数学の先生鬼すぎます。」と教科書をパラパラと捲りながらぼそっと数学の教師の悪口を呟いて)
まぁ確かにあの先生おっかないよなぁ…俺も苦手だわ…。んで、問題は…と。あー…なるほどな…これはだな…。
(あの数学教師は鬼という言葉に、確かにその通りと同調し小さく笑みを浮かべて問題のプリントへと視線を向けて。国語ではないため上手く教える自信は全くないが、まず頭の中で問題をといた後「これは応用だな…。えーっと、まずこの数式があるだろ?まずこれを…」慣れない数学のはずなのだが、そんなことはことは感じさせないほど丁寧で分かりやすく、自分も一緒に解くようにして一から解き方を伝えていき)
え。先生って…数学も教え方分かりやすいんですね。
(普段適当に授業をしている国語教師の意外な一面に思わず驚いた表情で見つめながら、まだ授業で全く習っていない問題にも関わらずわかりやすく教えてくれる解き方に「なるほど…その公式を使えばいいんだ」と納得しながらもシャーペンを走らせていけばあっという間に手こずっていた問題は解けていき。「…あの、もう1つ…分からない所があるんですけど…この図形の問題が、どうしても理解出来なくて」と次の課題プリントを手にしながらちらりと先生に視線をやれば遠慮気味に訊ねて)
…え、そうか?これでも結構必死なんだけどな…数学は得意ってわけじゃないし…まぁでも、ありがとな。分かってくれたなら良かった
(教え方が上手いというのは教師にとって最高の褒め言葉で、恐らく自分が上手いのではなく相手の理解力が良いからだろうと思っている肯定はせずともお礼を告げて。次に遠慮気味に出てきたプリントに一応目を通して見ると、これは先程よりかは分かりやすい問題だったため「よし、こうなったら最後まで一緒にやるぞ榎本。俺も手伝うからさ」と、笑みを浮かべて言うとその問題の解き方を解説していき)
──…えっ?課題手伝ってくれるんですか…?なんで…?
(1人では解けない問題もまだ残っているため先生の言葉は正直嬉しかったものの、どうしてここまでしてくれるんだろうと心の中で疑問に思いながら問いかけて。先生の事を嫌いだと言っていた生徒にここまで親身になって課題に付き合ってくれるという姿勢に少しだけ嫌いだと言っていた自分を後悔し始めていて。ただ今はそんなことを考えている場合じゃないと我に返りながら、解き方を教えてくれている声に耳を傾けて)
なんでってお前…。俺はお前のクラスの担任だろ?担任が生徒の手伝いをして何が悪い?……あと、生徒に何があったら怒られるの俺だし…怖いし…。
(何故もなにも自分は相手の担任であり一人の教師であり、担任そして教師である以上生徒のサポートをするのは当然であるのが、それ以上にもしこのまま相手が遅くまで残って何か問題でもあったりしたら怒られるの自分であり間違いなく大変な目に合うからという何とも自分らしいゲスな理由であり、ため息交じりに表情を歪ませて相手の問いに答えて)
……結局は自分が大事なんですね。──少し期待した私が馬鹿でした。
(先生の言葉に初めは自分の事をちゃんと心配してくれてるんだと思いながら書く手を止めて聞いていたものの、聞いているうちに結局は先生自身の身の安全の為だと分かれば冷たい視線を向けながら小さくため息をつき、再び課題プリントに目を向けて。「先生って…ほんと最低ですね」とぽつりと呟けばどこか寂しそうな表情を浮かばせながら先生を見つめて)
最低って…なにを今更なこと言ってるんだ?俺は最低だし、そんな俺をお前は生理的に無理なんだろ?…まぁ、それでも俺はお前の担任だからな…俺がここにいる以上お前のこともサポートするし、こうして課題の協力もする。それだけだ。
(自分が大事、最低、そして極めつけに寂しそうな表情を向けられても決して動揺することなくむしろ笑顔を浮かべて相手の言葉に頷いて。自分は当然自分のことが一番大切であり、適当で最低だと言うことは自分が一番分かっているが、それでも自分は相手の担任である以上サポートしたいと思っていることは紛れもない事実であるが、それを大に言うことは絶対にせず、1年間という短い期間だからこそ自分は最低な教師と思っていてもらうのが良いため今も適当な調子で相手と接して)
それは…そうですけど。なんか最近先生といる時間が長いっていうか…助けられてばっかりでなんか調子狂うっていうか。
(先生の笑顔に思わずじっと見つめていたもののぱっと視線を逸らし。確かに今までは発言も授業態度も服装も適当だった先生は生理的に無理で心の底から嫌いな人物ではあったのだが、最近は体調が悪い時に助けてくれたり、クラスメイトに酷いことを言われた時は庇ってくれたりと何かしら自分と関わってくれていた事を思い出せば、何故かは分からないが今まで感じた事のない感情が自分の中にあることに気付いていて。「先生は、どうして教師になろうとおもったんですか?」と今まで疑問に思っていた事を問いかけてみて)
どうして教師に……か。この学校にきたきっかけは強制労働みたいなものだからなぁ…。でもお前らみたいな若いヤツらが頑張ってるの見てるのは…嫌いじゃないんだわ。今だってお前の手伝いをしててどこか嬉しく思ってる自分もいるし…やっぱり、そういう理由で今教師をやってるんだと思う
(どうして先生になったのか、なんてこの学校に勤めていて初めて聞かれた質問で改めて聞かれると少し悩み、ポツリと自分の気持ちを口にして。確かにきっかけこそ強制であり、今でも面倒くささは消えないがそれでも生徒達と関わり成長を目の前で見るということは嫌いではなく、むしろこうして今相手と過ごすこの時間も好きだと思う自分がいることも事実であり、「だからお前にも感謝してるんだぞ?ありがとな」と普段適当な自分が言わないであろう台詞を笑顔で告げて)
えっ…私に感謝されても…困るんですけど。それに感謝される筋合いありませんから。
(ふと問いかけた質問に先生は悩んだ様子を見せたものの、嫌な顔ひとつせずその質問に答えてくれたのだが、どうせ適当な答えが返ってくるのだろうと思っていた矢先まさかのまともな意見が返ってくれば、驚いたようにペンを止め思わず聞き入ってしまい。しかし、自分に感謝しているなど言われるとは思っていなかったためか困ったような表情をしてみせれば、笑顔をこちらに向けてくる先生が何故か見れずふいっと視線を逸らしてしまい)
はいはい、それは申し訳ございません…っと。ほら、早くしないともっと寝られたのに遅くなるからな。課題に集中するぞ。
(案の定、感謝の言葉を受け入れることはなく視線を逸らされたが、相手が困ったような表情を浮かべたのは見逃すはずがなく少しでも自分の言葉が届いた証拠であるため今はそれで納得して。少し話が逸れてしまい時間も経っているため思考を切り替えると、相手の取り組んでいる課題を一緒に解いていき)
──やっと終わった…。ていうかもうこんな時間…
(時折、先生にわからない所を聞きながら一生懸命課題に取り組み、最後の問題を解き終えれば静かに口を開きちらりと時計に目をやって。時刻は18時半を回っており辺りはいつの間にか暗くなっていて。小さく息を吐きながら終わらせた課題を全て集めクリアファイルに入れていき「…先生手伝ってくれてありがとうございました。職員室にこの課題持って行って帰りますね」と鞄に荷物を纏めれば席を立ち上がり)
おう、俺もなんだかんだで楽しかったわ。普段数学の問題なんて解かないし…またこういうのあったら声掛けてくれ。一人で悩んでても仕方ないしな。
(ようやく全ての問題が解き終わり、時間を見えばすっかり窓の外は暗くなっており、そこまで時間が経ったのかと改めて数学教師の鬼加減に小さくため息をついて。相手が全ての荷物をまとめ終わったのを確認すると自分も席を立ち「俺も職員室に戻るかぁ…。ほら、教室閉めるから行くぞ」と、伸びをしながらも退室を促して)
次は絶対に忘れないと思うので、声を掛けることはないと思います。──でも…もしまた何かあったらその時はよろしくお願いします…
(先生の言葉に否定をしながらも今日の事は本当に感謝しており、先生が手伝ってくれていなかったら今もまだやっていたかもしれないと思えば素直になっていて。「先生はまだ帰らないんですか?」と教室を出て冷んやりとした廊下を歩きながら不意に問いかけて)
俺か?俺ももう今日は帰るわ。元々お前の様子を見るために残ってたもんだし…それも終わったしな。外も暗いし大丈夫か?途中まで送ってくか?…なんて、お前は俺と一緒に歩くくらいなら絶対に一人を選ぶだろうな…。
(廊下を歩きながら相手の言葉に頷くと、時間を確認すれば、あまり暗い中で女子一人で帰らせるというのは担任としても男としても心配であるが、相手がそれを望まないだろうというのは分かっており、あえて冗談っぽく問いかけて)
え…わざわざ私の為に残ってくれてたんですか?──大丈夫です。学校からそんなに家まで距離ないので。それに街灯もあるしそこまで暗くないですから。
(先生の言葉に目をぱちぱちとさせながら問いかけ心の中で少しだけ嬉しいと思う自分があれば慌てて首を横に振り否定をし。その後先生の冗談混じりの言葉に本気で返しながら「私みたいな可愛げのない生徒より、もっと素直で可愛い生徒を送る方が先生はいいんじゃないですか?」と先生に視線を向けながら逆に問いかけて)
素直で可愛い生徒ねぇ…無理無理、ああいうタイプは裏でなに考えてるか分からないからな…。その点お前は正直に接してくれるから楽なんだわ。まぁ、正直といっても嫌いとか無理とかそんなんばっかりだけど…。
(素直で可愛い生徒と言われれば、もちろんそれらしい生徒がいることも事実だが、自分的にはそういうタイプほど裏で何考えているのか分からないため接しづらく、正直言って苦手な部類に入り、小さくため息交じりに首を横に振って。少し歩いて職員室の前にくればドアに手をかけ再度相手に視線を向け「帰り、気をつけろよ?」と、外をチラッと告げて)
そうなんですか?先生はてっきりそういう可愛い生徒がいいのかと思ってました。逆に私が「先生の事好きです」とか言うのも絶対ありえないですけどね。
(先生の言葉に少し意外そうな表情を見せながら問いかけ、冗談混じりに少しだけ表情を変えながら軽く芝居時見たセリフを述べればサッといつもの表情に戻し。「はい、ありがとうございます。…そういえば最近不審者出てるって言ってましたね。ま、私には関係ないですけど」とクラスの女子が話していたのを小耳に挟んでいたのを思い出し気にしていない様子で話せば職員室を出てそのまま靴箱に向かっていき)
ったく…いちいち一言多いんだっての…。むしろお前に好かれる未来が見えないわ…。にしても不審者…ね。ちょっと注意しとくか…。
(相変わらず言いたいことだけ言って去っていく相手の後ろ姿にため息をついて、小さくつぶやいて。普段嫌いや無理や適当やその他色々言ってくる相手が自分を好きになることなど想像できず、二年生が終わるまでの間はこのような関係性が続くのだろうなと思いながらも、ふと帰り際相手が言っていた不審者という言葉が頭に引っかかっていて。少しなにかを考える仕草をした後頷くと、職員室へと入っていき)
──なんか誰かに見られてる気がする…。
(その後学校を出ていつもの様に街灯がある道を歩いていると、何やら誰かにつけられているような気配を感じたまに振り返るものの誰もそこには居らず。もしかしたらさっき先生と不審者のことを話していたから暗示にかかっているのではと自分に言い聞かせながらも特に気にする様子はなく歩いていて。しかしやはり誰かの足音が聞こえ自分が止まると何者かも止まり、それを何度か繰り返していくうちに急に恐怖心にかられ思わず走り出し人通りの少ない路地裏へと入り込んで行ってしまい)
あー…っと…確かあいつの家は…。
(職員室ですぐに帰りの支度を済ませ、足早に校舎を出ていくと校門を少し歩いた先の分かれ道で足を止めて。やはりこの暗さもあるが不審者という言葉がどうしても引っかかり、勝手に送れるところまで送っていこうと思い、担任である以上クラスの生徒の住所はある程度把握しているためなんとか相手の住所を思い出し、その方向を早足で歩いて)
──さすがに…ここまでは来ないよね…。
(路地裏へと入ったこともあり、昼間とは違った異様な不気味さに恐怖を覚えつつも先程の足音が頭から離れず小さく体を震わせながら見つからないようにさらに奥へと向かっていき。少しして広い通りの方を見れば誰も来る気配がないと安心していた矢先、何やら人影らしき者がこちらに気付きゆっくりと近付いてきているのがぼんやりと見えあまりの恐怖に体は動かずその場にしゃがみ込んで)
……路地裏…?ってまさかあいつ…。
(相手の家へと向かう道を早足で歩いていると、ふと怪しげな男がフラフラとゆっくり歩いている姿が視界に入り、一瞬まさか不審者だろうかと思い、足を止めるとその男が不自然な動きで路地裏へと入っていった瞬間『ヤバい』という感覚が身体に走り、もしかしたら誰かが追われているのかもしれないし、もしそれが自分の生徒だったらと思うと身体は勝手にその男に追うように走り出して)
──…どうしよう…なんか近づいてくる…!──先生…助けて…っ。
(徐々にその足音はこちらに近付いてきており、しゃがみ込んだままぎゅっと目を閉じ鞄で必死に身を隠そうとしていて。このまま不審者に見つかってしまったら自分はどうなってしまうのかと思えばさらに恐怖心は大きくなっていき。そんな中ふと頭の中に先生の姿を思い浮かべれば咄嗟に先生の名前を声に出し、こんな路地裏になんか入るんじゃなかったと今更ながらに後悔しながらも必死に恐怖心と戦っていて)
あのちょっとすみません…一点お聞きしたいことがあるんですけど…最近出るって噂の不審者について……ってどっか行きやがった…まぁいい、この先に誰かいるのか…?
(後ろから男に近付いて、かなり用心しながらもまるで道を訪ねるかのように自然を装い話しかけると、男は自分に邪魔されたのが予想外だったのか小さく舌打ちをしてどこかに走り去っていき。男がどこか行ったことを確認すると、すぐに先へと向かい小さく座り込んでいる人物が視界に入り、その人物が自分がよく知っている相手だと認識して安心したように息を吐き「おいおい、お前の家ってこんな路地裏にあるのか?…大丈夫か榎本?」と、相手を安心させるためあえていつも通りの軽い態度で話しかけ笑顔を浮かべて)
──…先生…っ…!こ、怖かっ…た…
(何者かが慌てたようにその場を走り去っていく足音を聞きながら恐怖に体を震わせていると、聞きなれた声が聞こえぱっと顔を上げるとそこには先生の姿があり思わず安心感からか先生にぎゅっと抱きついてしまうも本人はそんな事は何も考えていない様子で未だに震える体をなんとか落ち着かせたい一心で夢中で先生にしがみついていて「…私…先生来てくれなかったら…今頃…あの人に…っ…」と先生が来てくれた安心感からか涙を流し言葉に詰まらせながら話して)
うぉっと…ったくお前は…気をつけろって言っただろ?どうせ自分には関係ないとでも思ってたんだろ?まぁ今言っても仕方ないか…とりあえず、よく頑張ったな。
(相手が無事であることにホッとした次に瞬間、いきなり相手に抱きつかれて一瞬驚き一体どんな状況か分からなかったが、相手が置かれていた状況を考えると無理もなく、注意こそはしたが今はなにを言っても無駄だと判断すると最後ポツリと安心させるように呟き相手の頭の上に手を乗せて。普段が大人っぽく振舞ったり強がったりしているが、やはりこういうときになると年相応の女子であることを再認識して「ほら、帰るぞ。家まで送っていくから。いけるか?」ポンポンと頭を軽く叩きながら、明るい口調で問いかけて)
ごめん…なさい…っ…。──…ありがとう…ございます…
(暫くして先生に頭を撫でられるとようやく自分がやってしまった行動を自覚したのかそっと先生から離れると、頬をつたっていた涙を拭きながら小さく頷きお礼を伝えて。「…先生、でも…どうしてここが分かったんですか…?もしかして…私のこと心配してくれてたんですか…?」とあまりにも偶然の出来事に疑問を浮かべながら先生をじっと見つめたまま問いかけて)
どうしてもなにも不審者の噂があるのに、暗い中女子一人帰らせる訳にはいかないだろ。心配だったから急いでお前の後を追いかけて…今に至るって感じたな。
(ようやく落ち着いたことに安堵しホッと息を小さくつき、相手と距離を離して。相手の問いかけにたいして、あまりにも答えが分かりきっている質問であるため軽く笑うと、頷きながら答えて。あと少しでも自分の到着が遅かったらと考えると恐ろしいが結果的に間に合ったため良しとして)
そうだったんですね。心配かけてすみませんでした…先生が来てくれて…嬉しかったです
(ゆっくりと立ち上がりながらペコッと先生に頭を下げながらお礼を伝えて。「…私の家この路地を抜けた所なので」と先生より少し前を歩き出したものの、やはり先程誰かに後を付けられていた恐怖が蘇りその足取りはどことなく重くなっていて、時折先生が着いてきているか不安なのか振り返って確認してみて)
いやお前…俺を嫌いなのは当然分かってるけどさ…こういう時くらい先に行こうとするなっての。それと、振り返って確認しなくても俺は別にいなくならないから大丈夫だ。ほら行くぞ。
(こういう時でもいつも通り、自分の横を歩かず先を歩く後姿に小さくため息をつくが隣に並んでも拒否される姿が目に見えるため少し後ろを付いていっているのだが、先ほどの出来事のせいか時折こちらを見て自分がいるのかどうかを確認してくるため思わず軽く笑ってしまい、相手を少しは安心させるために隣に立ち一緒に歩こうとして
トピック検索 |