小説家 2018-11-29 01:25:00 |
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…、お気遣いありがとう御座います。
(自分の言葉に対しての1人で充分だという答えの対象が自分でない事は学がなくても、すぐに分かった。もしかして、随分と前から交代させたかったのか。自分より料理も上手で柄の良い人は万といる。先生はお優しいので、きっと言いにくかった部分もあったのだろう。なんて、悶々と考えを巡らせる。答えの見つからない其れは、時間が経つにつれ増すばかり。普段より断然会話もない静かな空間で各々何を思っているのだろう。先に食事を終えた相手が立ち上がり部屋へ帰ると増す静けさ。空腹なのに進まない、味も感じない料理も今だけは気にならず。程々に終えると、静かにご馳走さまでしたと呟く。ご飯の後は次の日の仕込みと、作り置きの最終チェック。それと、先生と自分の分の寝支度を済ませ、眠りにつくとあっという間に翌日に。)よし、…明後日には帰宅しますので、ご飯はきちんと食べて下さいね。あと、タバコも程々にお願いします。それと─(玄関先で、荷物を抱えて後は出るだけというところで、先生の顔を見るとやはり世話役のさがで、細々と念押しを。たかが数日、されど数日。心配になる気持ちもあるが、先生が見つけた代わりの世話役なら大丈夫だろうと腑に落とし、家を後にして。)では、行って参ります。
…お前さんね、人の事を心配している場合じゃあないだろう。気を付けて行っておいで、
(翌朝、相手が家を出る時間に合わせて玄関に向かうと支度を整え荷物を纏めた相手の姿。其れを見て無性に、やはり行くのを辞めて欲しいと、引き止めたくなってしまうのは何故だろうか。まるで一人で留守番をする子供のように不安そうな表情を一瞬浮かべた事に、本人ですら気が付いて居なかった。普段通りの相手のお節介を聞き流しつつ、相手を送り出す言葉を掛けると玄関の戸が閉まるのを見届けて溜息を。やがて世話役がやって来ると挨拶も早々に家の中の事を一通り説明して。歳は彼とそう変わらない、日雇いの使用人として此れまでも様々な屋敷に出入りしており経験は豊富らしい。少々気弱そうにも見えるが真面目そうな青年だった。小説家の方は元々警戒心が強く、大体の場合初対面の人間には威圧感を与えてしまう事が多いが今回も例外ではなく、必要最低限の事務的な会話を済ませ、生活環境を整える以外の介入は不要だと伝えると部屋へと戻って。)
二日間世話になるけれど、生活環境さえ整っていれば良い。それ以上の事は求めないよ、仕事に関しての口出しも無用。お茶は熱いものを、原稿に溢すような真似だけはしないように。
(/ お世話になっております。小説家サイドは棗君が戻った時に大荒れの状態になっていればいいので、私も数ターン棗君サイドのストーリーに加勢しようかと思います。お見合い相手でもお母さんでも、キャラのイメージがあれば回しますので、軽く帰省ストーリーを挟んで帰ってきて貰えれば良いかなと…!)
─、只今。
(時刻通りに実家の最寄りに着く。6年経とうが未だそう変わりのない街並みはやはり懐かしく、意図せぬ里帰りも少しだけ心弾んだ。駅からそう遠くはなく、見える景色1つ1つの思い出を脳裏に移しつつ、実家にたどり着いて玄関の戸を開ける。迎え入れてくれる母は見て分かる程には嬉しそうに、お帰り、と声をかけてくれる。リビングで新聞を読んでいる父こそ冷静には見えるが心なしか声は少しばかり気まずくも嬉しさを滲ませている。6年経って、白髪も増えた両親だが至って変わりなく安心した。その日の晩は実家のご飯に舌鼓、ふとした会話でお見合いの話に。どうやら母の知り合いの娘さんだそうで、断ったら母の立場も立場だ。明日に控えており場所も設けられている。10時出発だと言う事で、その日は早く寝てしまおう。随分と前に出た自室も変わりなく、就寝を。)
(ありがとうございます。では、お見合いの話を数回したのちに再び先生の元へ…という流れでよろしいでしょうか?可能であれば、お見合い相手の女の子をお願いしたいです*
──初めまして、千代子と申します。
(翌朝、見合いの席である料亭に向かい言われるがままに相手が通された部屋には、控え目なワンピースを纏った器量の良い娘が一人。部屋は以前食事をした料亭にも少し似た造り、外には池が広がるやや広い和室に机を挟んで向かいあって座り。彼女の方はというと、人柄の良さそうな彼に対する第一印象は悪くなく、少しはにかんだように微笑んで。挨拶を済ませぎこちのない少しの沈黙の後、話を振ったのは此方から。事前に彼が文学好きで、とある有名な小説家の家で働いているらしいという情報は聞いていて、)
…総一郎さんは、文学がお好きなんですよね。母から聞きました、小説家の方とお仕事をされていると。
(/ そうですね、その流れでお願い出来ればと思います!お見合い相手の女の子、ご相談もなしに私の勝手なイメージで作ってしまいましたが、短い登場ですので少しだけお付き合いください…!そして毎度の事ながら、ハイペースで申し訳ありません。)
─初めまして。僕の名前は総一郎と申します。本日は宜しくお願い致します。
(当日、後に着いた自分は先に部屋には先方がいる事を知り緊張感を胸に。戸を開けると、洋服を纏った黒髪の女性。清楚で、朗らかな印象を受けつつ互いに自己紹介。席に着き、暫しの沈黙が流れる。そういえば、学生の頃は好きな人はいたしその話をする事こそはあったが特に発展もせず、卒業して直ぐに先生の元へと行った自分は年相応の恋愛経験が乏しい。その場の緊張感も合い待って、女性が好む話がぱっと思いつく事もなく、不意に先に口を開いたのは彼女だった。お喋り好きの母だ、きっと先方には事前─通りの情報は伝えてあったのだろう。普段、先生は名の知れた方なので自ら世話役をしているとは言わない。母が名前まで出しているかは知らないが、名前は伏せつつ会話を返そう。職業と文学について話し出すと、ついつい言葉が饒舌になる。途中でふと我に帰り、咳払い。自分はというと、急な見合い話だったので彼女の事は何も知らない。質問を返して、話を繋げようと。)はい、あまり公にはしていませんが、小説家の方のお側で、家事洗濯等の身の回りのお手伝いをさせて頂いております。先生の創る文章はとても繊細で、それが時に美しく時に儚く、時に切なく…。先生と、先生の創る本に出会えた事が、この上なく幸せで…こほん。すみません、お喋りが過ぎました。千世子さんのご職業やご趣味は何ですか?
( いえいえ、お気遣いありがとうございます。お見合い相手の彼女を提供してくださったおかげで、シーンがとても回しやすいです!何から何までありがとうございます。ハイペースなのもお気になさらないで下さい、返せない日もありますが返信を見ては毎度心が踊り、返せる時間が出来るまでふとした時に何て返そうかと考えるのですがその時間がとても楽しくもあります。人間愛から恋愛へと感情の違いが出始めましたが、今後とも末永く宜しくお願い致します!
…本当にお好きなんですね、小説も、その小説家さんのことも。
(穏やかそうな相手、自分からぐいぐいと来るような強引なタイプではなさそうだ。優しい表情を浮かべて文学について饒舌に話し乍、ふと我に返ったようにはにかむ相手。小説は勿論、其れを書いている小説家のことも含めて本当に好きなのだろうという思いが伝わってきて、思わずくすりと微笑んで。自分の事を問われると少し考えた後に答え。週に何度かではあるが小料理屋で仲居として働いており、料理も接客も好きなのでその仕事も天職だと思っている。趣味と言われれば、自分も読書は好きな方。幼い頃から習っていた三味線やお琴も好きで、今でも時々弾いていた。)
私は、小料理屋で仲居として働いています。お料理も好きで、お客様とお話しをするのも好きなので…私も本を読むのは好きです。あとは三味線やお琴、音楽も好きです。
(/ 本当に嬉しいお言葉です!増えている数字を見て心が踊るのは私も全く同じです。お互いのペースでこれからも末永くやり取りを続けていければ嬉しいです。こちらこそ、これからもよろしくお願い致します!)
─はい、とても。
(彼女の言葉に、本や先生の事を脳裏に浮かぶとするりと素直に言葉が出てきた。それが恋心を表すのか、はたまた人間愛なのかはまだ知る由もないが、躊躇いも何も全てを取っ払って出た言葉に戸惑いはなく、柔い笑みをふつり零す。後者、顔の整った彼女は性格も穏やかな印象で、かつ家事も出来て本も読むしお琴だって弾ける。欠点が見当たらない所か、秀でた物しか見当たらず、読書が好きという共通点に親近感を湧きつつも、まるで子供がヒーロー番組を見るような、そんな尊敬の眼差しを向けながらうんうんと頷いて見せる。彼女の弾いてる姿を見てみたい、と言葉を返す心中は、彼女が働く小料理屋に行って、和食を食べながら、お琴または三味線を聞く時間、先生と行ったらとても喜ぶだろうなぁ、と無意識ながら、ここまで来ても考えるのは先生の事で、)わぁ多彩な趣味や才能をお持ちなんですね。僕は千代子さんのような特別に秀でた才能も何もないので、とても尊敬致します。いつか、三味線やお琴を聞ける日が来ることを楽しみにしていますね。
(早速とても遅くなって申し訳ありません…。マイペースの度が過ぎて、解消されてもおかしくない立場にありながら、お待ちいただいて感謝しかありません。これからも宜しくお願い致します…!(泣)
…いつか、小説家の先生と一緒に来てください。サービスしますから。
(自分を見つめる相手の目は、子供のようにキラキラしていて、紡がれる言葉は素直なもの。いつか聞いてみたい、という言葉からは無意識であろうが結婚前提の話し合いの場であることをすっかり忘れている様子が伺い知れて、思わずクスリと笑った。自分に興味を持ってくれているのは確かな様子だったが、それ以前に彼の心中は大半が小説家の存在が占めているようで、自分も同じように料亭に遊びに来て欲しいと返して。お互いに今はまだやりたい事があるのだから、むしろ自分にとっても彼の様子は好都合で、無理に今結婚を急ぐ事はないと思えば自分の思いを口にして相手と視線を合わせると、微笑んで。)…結婚したら、女性は家庭に入ることが多いでしょう。──だけど、私もね、まだもう少し好きな仕事をしていたいって思っていたんです。…総一郎さんも、私と同じでしょう?早く小説家の先生に会いたいって、顔に書いてありますもの。
(一方彼の屋敷では、留守を任された世話役が既に困り果てていた。茶を差し入れる以外一切仕事を与えられず、食事の用意が出来たと声を掛けようにも話しかけるなと怒られる。小説家の為の食事は手を付けられることなく、昨夜唯一与えられた仕事は、滅多に晩酌をしない彼のもとに酒を運ぶことだけだった。どうしていいか分からないまま、彼の見合いの当日も食事を摂らせる事が出来ずにいて。)
(/ いえいえ、お気になさらず!やりとりが楽しみだと言ってくださったお陰で、少し間が空いてもお返事は必ずくださると信じて待つ事が出来ております!むしろ私の返信スピードのせいで急かしてしまっているような気がして心苦しいです…いつもお付き合い頂き、此方からの解消など微塵も考えたことはありませんよー!こちらこそ今後ともよろしくお願い致します。)
─あ、…はは、千代子さんは冗談もお得意なんですね。いけない、顔が緩み切ってたようで。お恥ずかしいです。
(彼女の後者の言葉に、思わず咄嗟に両手で頬を覆う。顔に文字など書いてあるはずもなく、すぐに冗談だと気付き恥ずかしさからやや顔赤らめながら笑って誤魔化す。図星だったのかはさておいて、彼女がそれほどまでに言うという事は随分と頬が緩んでいたようで、ぐっと引き締め直しながら咳払いをこほん。)千代子さんのお店に行く日を楽しみに、僕もお仕事頑張りますね。
__ふぅ。
(少しばかり躊躇っていた見合いも、いざ行ってみれば美味しい料理に弾む会話はとても楽しく。それもこれも、お見合い相手の千代子さんのお人柄の良さがあってこそ、簡単な自己紹介を終えた後は小説や休みの日の過ごし方など他愛のない話で盛り上がり、共通点もちらほら見つけた。あっという間に時間は過ぎ、帰路につく。実家に着くと、楽しかったとはいえ長い時間、外で初対面の方とのお話に、普段は着ない少々かしこまった装いを脱ぐと疲労感でと溜息を零す。明日の昼には先生の元へと帰るので、早々と入浴を終えて、荷物の整理を行う。ひと段落したところで、母から声をかけられた。『今日のお見合い、千代子ちゃんはあんたには勿体ないくらいのお嬢さんだと思うんだけど、どうかしら?そろそろ良い人でも見つけてくれれば、お母さんもお父さんも安心するんだけどね…』と。「もう少しだけ、考えてみるよ。今日はありがとう。」とだけ返事を返し、布団に潜る。真っ暗な中、ふと考える。母の言う通り、欠点の1つもない、ステキな女性だった。共通点も沢山あり、きっと彼女のような人と結婚したら幸せなのだろう。ただ、どう考えても彼女といる未来が見えない。今だって、明日には先生に会えると実家にいながらも浮き足立っていたし、お見合いの最中に時折思い出すのは先生だった。先生のおそばに居たい、自分が望む未来と現実との狭間で名前のない感情が渦を巻いて、そこから逃げるような深い眠りについてしまおう、)
( 毎度お優しい言葉に感謝致します泣
これからも末永く宜しくお願い致します!
さて、お見合いの場面をここで切って、明日昼に帰宅という流れに持って行こうと思うのですが貴方様のご希望の再会シーン・告白シーンなどありますでしょうか?1つの大きな場面にもなるので、やんわりでも流れを決めてから場面に移る方が良いのかなと考えました。当方としては、お世話役として雇ったは良い物の、台所家具等にまともに立てず、触らせず状態・当の本人も荒れて、今日には帰って来るからとそうそうに帰らせた先での帰宅ですと、2人の空間になるのでその後の展開はスムーズにいくかな…と漠然で何の根拠もないやんわり考えなので、この後の流れご希望ありましたら、全然そちらでも大丈夫です*
…良いから、もう帰っておくれ。此処にはお前さんに頼むような仕事は無い、二日分の給料は出版社を通じて後日払うから。片付けも何もしなくて良い。
(彼が帰ってくる日の朝、自分から自棄になって頼んだ世話役だったがとにかく息が合わず、彼が声を掛けてきた時にようやく筆を止め鋭い視線を向けた。たった2日しか経って居ないのだから当然のことだったが、何に付けてもタイミングが悪い事も小説家を一層苛立たせていて。話し掛けて欲しくない時に限って声を掛けられ、湯のみが空のままの事も何度もあった。何よりも自分のパーソナルスペースに、よく知りもしない人間が居て動き回る事が耐えられない。普段ストレスなく執筆に集中出来ていることを思うと、留守にしている彼の存在の大きさを改めて感じさせることになる。そうして早々に怯えきった世話役を追い出して仕舞うと、煙草に火を点け煙を吐き出した。いつもの如く締め切られた部屋は煙たく、煙草は代理の世話役に追加で買って来させた為、この二日間で既に三箱も消費していることになる。その間食事は一切摂らず、口にしたのは執筆の合間に飲む煎茶と昨晩の酒だけ。彼が聞いたら失神しそうな状況だったが、執筆に関してはスランプという訳では全くなかった。執筆に没頭すれば何も考えずに済むし、自然と時間も過ぎていく。書く以外の気持ちの落ち着け方を知らず、原稿はどんどん溜まり部屋に散乱していた。彼の事となると此処まで気持ちが乱されるのが何故なのか、理解できない、理解したくないだけなのかもしれない。余計な事を考えなくて済むように、煙草を片手に原稿用紙に文字を綴り続けていた。)
(そうですね!提案いただいたもので異論ありません。とばっちりを受けた可哀想な代理君は帰らせておきますね笑 荒れ放題の小説家ですが、棗君が帰ってきたのは素直に嬉しい、だけど彼が此処を出て行く可能性も否定できなくなるお見合いの結果は聞きたくないし、という心情から顔を合わせても最初はツンケンしたままにしようかなと思います!帰ってきて早々の一悶着があって、その後に彼が出ていかないと分かってからの身の振りをどうしようかなあと悩み中です。嬉しいのを押し隠しつつもぱったりと機嫌が直るのも面白いですし、少し恋愛方向の雰囲気にするなら、悩まされていたここ数週間の自分の気持ちを素直に吐露してみても良いですし…他にも色々あると思いますが、どんな小説家がお好みでしょう?)
ただいま帰りました。…先生?
(定刻通り出発した電車に乗り、帰路へと着く。手には実家の方の土産の饅頭を。休憩時間にでも、熱い緑茶と一緒に先生と食べようと心静かに踊らせる。最寄駅に着くと実家とはまた違う安心感を感じ、早々家へと。門を開け、中を覗き込むが静かで、思わず先生、と声をかけてみる。中へ入ると、2日分の洗濯物や、洗い物。眉をひそめ、お世話役の方は来ていたはずじゃ、と首をかしげる。昼前、執筆する部屋へと向かい、戸を開けると一気に煙たさが鼻を劈き、久しいこの感触に思わず咳き込む。煙の中に、髭が少々伸びて、心なしか更に痩せた姿の小説家を見つけ、「ここ2日で、随分と、先生らしさを発揮されたようで…」た小窓を開けながら言う。自分と出会った頃もそうだった、いきなり押しかけた男に身の回りの世話を任せるのは誰だって警戒心は持つし任せきれないだろう。先生は人一倍強く、初対面のお世話役が2日で出来る訳もないのは最初から心のどこかで理解していた。空になっている湯のみに反して、満杯のゴミ箱を、横目に、隣に座ると、「先生、お茶でも飲んで、ひと休憩しませんか」と手土産見せつ、心配なのか首を傾けてみて、)
(つっけんどんな一面を持つ小説家、とても愛らしいと思います!お互いまだ恋愛感情には気づいておらず、名前のない感情のぶつかり合い。また、小説家はツンツンしつつも、見合いの様子を彼から聞いて、出て行くと確信。お世話役は、出て行かないけれど、何故か小説家の態度が冷たくなったように感じ、出て行って欲しいのかと勘違い、気持ちのすれ違いを挟みつつ、最後、お互いの気持ちがぶつかり合ったところで、気付いていく…のような流れはどうでしょう?あいも変わらず漠然としていますが、大事な場面なので、お互いの意見を尊重して進めたいと思ってます*
…嗚呼、帰ったのかい。早かったね。
(思考は書き綴る文字の中に沈み、頭はやけに冴えていて筆が止まる事は無かった。ふと、襖の開く音で意識が引き戻され相手が戻ってきたのだと理解すると、視線を其方へと向けて。早々に窓を開けて回る相手に何を言う事もなく再び手元に視線を落としつつ煙草を灰皿に押し付ける。食事も摂らず随分と長い間机に向かっているというのに、身体の疲れも空腹も然程感じておらず、二日ぶりに帰ってきた相手に特段興味を向ける事もない。相手が留守にしていた二日間、余計な事を一切考えずに済むように執筆に没頭し続けたせいで、既にある種の感覚が麻痺していたのだろうか。状況はかつて酷いスランプに陥っていた時と同じ、しかし今回は執筆に関しては何ら問題がない、寧ろ調子が良いくらいなのだ。ただ、相手から今後に関する決定的な言葉を聞くのが嫌で、目を背けていたくて、胸に燻るその恐怖が小説家を執筆に溺れさせていた。筆を止めれば相手に話す隙を与えてしまう、何かに突き動かされるように話を綴る以外なかったのだ。当然そんな状態で休憩をという相手の誘いに乗るはずもなく再び相手に視線を向ける事はなくなってしまい、片付けを頼むことで相手を自分の側から遠ざけようと。)
今は良い、…戻って早々に悪いけれど、台所を片付けて置いてくれるかい。──気が散るばかりで、何の役にも立たなかった。
(/ そうですね、棗君が戻ったばかりの今は、お見合いの結果と言った今後に関わることを彼の口から聞くのが嫌で、だからこそ相手に話す隙を与えるのが怖くて、何かに取り憑かれたように筆を進める事でそれを拒んでいるというような状態。ですが二日間その調子で書き続けて居たため夜にはエネルギー切れを起こすと思うので(笑)、そのタイミングでようやく二人で食事、そこで避けようもなくお見合いの話を聞いてしまい…という流れが良いかなと思います!
先生はとにかく不器用なので、基本的に感情の鎮め方といえば周りを遮断して仕事に溺れる事。棗君が出て行くと思いどんどん感情に歯止めが効かなくなって相手にも冷たく当たり、自分自身もまた殻に閉じこもるように執筆、執筆と仕事に溺れて行き、棗君も小説家の冷たい態度と仕事の進め方に困惑。結果相手の言葉にも耳を貸さずに過労で身体を壊す寸前まで行って、ようやくお互いに感情を爆発させて…というようなイメージでいかがでしょうか?そこでようやくすれ違い続けていた2人の感情が合致して、落ち着いた話し合いができるようになり…というような流れだと自然かなあと!)
そうですか、…では、台所の片付けと、あと、洗濯まで終わったら休憩しましょう。
(帰宅早々に、やっと先生にお会い出来たが交わる事のない視線。ちらり、と塵箱を見やるとくしゃくしゃになった原稿用紙がこんもりと盛られ、抱えきれない分は床に落ちている。先生の事だから、台所だけではなく、洗濯だって手を付けさせなかったのだろう。1つ、洗濯という仕事を付け加え、それとお茶菓子の準備まで行えば丁度良い時間にもなるだろう。立ち上がり、ついでに塵箱も綺麗にしておこう、と片手に立ち上がり、「また声かけますね、熱い緑茶を用意してお待ちしてます」と換気を終えた窓を閉めながら、そう声をかけると退室。その後、山のような洗濯を終えて、台所を見ると溜まった食器、されど2日分には到底足りず、買いだめた食材も減ってはない。もしかして、不在時は食べ物を口にしていないのでは、と思考。湯を沸かしながら、今夜はうんと先生の好きな料理を沢山作ろうと決意を胸に、湯が湧くまでの時間に編集者に連絡を一本。世話役代理を用意してくださったことのお礼と、来てくれたお世話役への謝罪を一言。つっけんどんな態度、初見は驚いたであろう。気を病んでないと良いけど、と)
( とても自然で、2人らしい流れだと思います!
ギリギリまでお互い切迫詰まって困惑して、様々な感情に困惑して…これからの物語がとても楽しみです。その後のお付き合いといいますか、お互いの感情を認めて、伝え合う場面は、またその時の流れで紡いでいくのも一興ですね。主様の提案してくださる流れはいつも、自然で、綺麗で、わくわくが止まりません。素敵な提案、ありがとうございます*
(相手が炊事洗濯をする音が遠くで聞こえていた。相手が戻ってきた安堵感と、此れから彼の口から紡がれるであろう言葉を聞かなくてはならない憂鬱とが入り混じっていて、少ししてようやく筆を硯に置き。随分と長い間執筆を続けていたせいか目が疲れているようで、眼鏡を外しつつ眉間を指で解して溜息を。何も考えずに筆を進めていた原稿、書き終えて散乱した原稿を改めて読み直してみると登場人物の複雑な心境がやけに鮮明に綴られていて、無意識のうちに自分のもやもやとした心境を投影していたようで再び呆れたように溜息を。しかし一度筆を置いた事でどっと疲れと空腹が押し寄せて、突然に一切筆を執る気にならなくなる。相手が出掛けてから一度も固形物を口にしていないのだから当然だったが、気怠げな表情で火を付けた煙草の煙も、空きっ腹には心地が悪く直ぐに灰皿に押し付けてしまい。しかし相手と顔を合わせて話を聞くのが嫌で部屋からは出たくない、椅子の背凭れに凭れ掛かり天井に視線を向けつつ目を閉じる。ぱたりとエネルギーが切れてしまい、ようやく休みたいという思いに駆られていた。)
(/ そうですね、先生はだいぶ子供っぽい意地っ張りな所があるので扱いが大変かとは思いますが笑、ギリギリの所でお互い爆発させて、少しずつお互いの気持ちの答え合わせをしていく感じにしましょう!お互い自分の気持ちになんとなく気付きつつ…なちょっとギクシャクした期間があっても面白いですね!笑 お互いが気持ちを認めて伝え合う…とても楽しみです!こちらこそ、いつも繊細で綺麗な世界を紡いで下さること、とても感謝しています!背後様のロルで、小説家もどんどん生き生きしていきます!今後もどうぞ末永くお付き合いください。)
─失礼します、進捗はどうですか?ちょうど、お昼ご飯の時間になりましたので、あまっていた食材を使った、簡単な物ですが、お食事の準備が出来ました。
(当初の予定では、代わりの世話役が昼食まで準備して帰宅予定だったが予定外の事で、冷蔵庫の中身を確認。出た時よりは食材は減っているが、あまり口をつける事はなかったのだろう、思ったより余っている。だが、少々いたみ始めているものもちらほら、外側を余分に切って、煮物を作りはじめる。ご飯も炊いて、小一時間経っただろうか。配膳もさっと済ませると、扉を控えめにノックして、入室。)
(ギクシャク期間!!!とても良いです!!!笑 お互い自分の気持ちに気付いて、どこかよそよそしく、空回りして、なちょっとしたギャグ場面もあって良いかもしれませんね!もし可能であれば、そちらの流れを経てのお付き合い…という形でもよろしいでしょうか?
素敵な提案、ありがとうございます*
──…嗚呼、今行くよ。
(相手が戸を叩く音に目を開ける。相手と顔を合わせる事には抵抗があったが、良い加減に食事を摂らなければという思いはあり、そう返事だけ返して。書斎を出て肩を軽くほぐし乍居間へと向かえば、長らく書斎に籠っていた所為だろうか、歩き縁側に面した廊下がやけに眩しく感じて。配膳の済んだ机、いつもの場所に腰を下ろすと手を合わせて食事を始める。箸を伸ばした煮物は優しい味で、しばらく固形物を受け付けていない胃にも刺激が少ない。自分から見合いの話を振ることはしなかったが、おそらく近しい存在である自分には相手から報告されるだろう。ゆっくりとではあったが、相手と視線を交わらせる事なく黙々と食事を進めて。)
(/ 採用ありがとうございますー!恋愛慣れしていない2人なので、そういうギャグっぽいギクシャクが挟まるのも面白いですよね。ぜひその流れでいきましょう!)
─頂きます。
(先生が目の前に着くと、自分も真向かい側に鎮座。手を合わせて、一緒に食事を進める。普段から言葉数はそう多くない先生だが、目線も合わない今はいつもの沈黙とはどこか違う。しばらくして、口を開いたのは自分の方で「…改めて、休暇を頂きありがとうございました。連絡していたとはいえ、帰省した時の母の顔がやはり嬉しそうで、地元でゆっくりするのもたまには良いですね。とても、充実した休暇となりました。…」と。また、お見合いを見送る方向でいることも、伝えなければならないのに、なぜか今の沈黙ではお見合いの話は禁句のようにさえ感じる。しばしの間のあと、「あの、先生。お見合いの件なのですが─」と口を開こう。)
(今からとてもとても楽しみです!*
恋愛成就まで遠回りを繰り返す2人も2人らしくて、ほっこりいたします**
──お相手さんとは、上手くやれたのかい。
(ぎこちない沈黙破ったのは相手からで、休暇に対する礼には静かに頷いたのみ。相手が里帰りする事などこの六年間ほぼ無かったため、きっかけがあったとはいえこの機会に休暇を与えられたのは良かっただろう。無言で箸を進めつつも、再び訪れた沈黙の後に、お見合い、という言葉が相手の口から出ると僅かに反応を示し、やはり避けては通れない話題に観念したようにようやく相手に視線を向けて。見合いの話となれば祝福すべき幸せな話題の筈だったが、どういう訳かこの夕食の席では互いに何処か緊迫感さえ漂う。結婚を決めた、という結論から聞かされるのが嫌で、結論を少し遠去けるように、お相手と上手くやれたのか、という所から相手に尋ねて。)
(/ おっしゃる通りです!気が付けば先生と棗くんの物語も9ヶ月近く続いていました。長くお相手頂き嬉しい限りです!二人の関係性が変わりつつあるこの頃ですが、今後も様々なストーリーが紡げることを楽しみにしておりますね!)
─あ、え、えぇ。うまくやれたかは定かではありませんが、お料理や読書など会話の共通点も多くあり、気立ての良い女性です。ほんと、僕には、もったいないくらいの方でした。
(思わぬ質問に、若干の驚きと同様を滲ませ乍、お見合いの時の記憶を掘り起こす。うまくやれたかと問われれば不慣れな場面で相手から口を開かせてしまったし、緊張で違和感ある視線の動きだったかもしれない。それでも、相手の方は笑ってくれていて、安堵した記憶もあるので、ただただ不快な思いさせることなく会が終了した事を祈るばかりで。欠点なんてなにも無い、何度考えても勿体ないくらいの女性。「先生の名は口にしていませんが…作品の事を話してたらあっという間に時間が過ぎてしまい、一瞬でした。」と自分の行いに苦笑い。ふと彼女の″お好きなんですね、小説も、その小説家さんも″という言葉を思い出すと、少しだけ照れ臭さもあり、耳僅かに染めつ、自分の話題を終わらせよう、「先生の方は…進捗はどうですか。」と。代わりの世話役との間に起こったことは見れば分かることで、掘り起こす事もわざわざせず、首を傾けてみて、)
(わぁ、そう思うと1年あっという間かもしれませんね*
これからも末永く、お世話役共々宜しくお願いします!
──…そうかい、其れは何より。
(手にしたお椀の中身に視線を落としたままに聞いた相手の返事は、その声色だけであっても成功したのだろうと察しが付くほど柔らかなもの。あれほど見合いを嫌がっていた相手がここまで楽しそうに話すのだから、さぞ素敵なお嬢さんだったのだろう。箸を止める事なく相手の話を聴きながら、途中から話の内容はあまり頭には入ってこなくなり、ただ相手はじきに此の家を出て行くだろうという思いは確信に変わっていて。祝福の言葉を述べるべきだったのだろうが、ようやく開いた口から紡がれたのはひと言だけ。空になったお椀を机に置き、ようやく視線を上げて相手を見れば薄らと耳元を赤く染めた相手。見合いをした彼女に其れ程惚れ込んでいるのかと思えば、黒い靄が一気に胸の内に溢れるような気がして、箸を置き。これ以上この話を続けて居られず、彼の口から決定的な一言が紡がれるのが耐えられず、執筆を進めたいと、彼が決して止められない言葉を選んで部屋へと篭ってしまおう。この靄を消せるのは、執筆に没頭して何も考えずに済む時間だけなのだから。)
…部屋までお茶を一杯持ってきてくれるかい。進捗は問題ない、書ける間になるべく進めてしまいたいから、悪いけど執筆に戻るよ。
…、はい、分かりました。
( 口数が少ないのは元からの性格もあるが、今の空気は若干違うのは自分でもわかった。進捗に問題がない事が本当だとしたら、何か思い悩む事があるのだろうか。そう考えると、心なしか避けられているような、そんな気分になる。空になった器を片しながら、後姿観ると思い出したように「あ!先生、今日は夜ご飯までは煙草は控えて下さいね。随分とお吸いになられているようなので…!」と声をかける。咄嗟に出た言葉は今までの長い月日お世話役をしていた性分からなる癖で、一息零し見送って、)……─失礼します。(あの後お茶を出した後は溜まった洗濯物掃除等の家事を全て一通り片した。そうしている内にあっという間に夜になって、夜ご飯は焼き魚を用意、配膳。その間昼から一度も外には出て来てない先生、一言かけ入室した先で、疲労の色が見え隠れ。晩御飯のご用意が出来ました、と声をかけて)
…、…其処に置いておいておくれ、後で食べる。
(背中を追って来る相手の言葉には特段反応を示すことはなくそのまま書斎へと。書きかけの原稿用紙と硯に置かれた筆を一度眺め溜息を吐く、同時に自分の中に燻っている何かを感じるのが嫌で、何かに追われるように筆を執り。不器用な小説家は、書き物に溺れる以外の感情の忘れ方を知らない。自分でも正体の分からない焦りとも苛立ちとも取れない妙な感覚、それが自分の中にあるのが不快で躊躇なく煙草の箱に手を伸ばし、一本を口に咥えると火を付けた。手を止めれば考え出してしまう、考えることで得体の知れない感情の正体を知ってしまう事も怖かったのかもしれない。相手の声がして不意に物語の世界から引き摺り出された時には辺りは暗く、文字を書き連ねた原稿用紙は机の上の一画に積まれていて。締め切り直前などには此れまでも書斎で食べる事はあったが、此処まで持ってきて貰うよう頼むと再び原稿用紙に視線を落とす。翌日以降の食事も部屋に持ってきて貰うよう頼むばかりで、ほとんど部屋から出る事も相手と顔を合わせる事もなくなり、食事にあまり手をつけないまま膳が襖の前に置かれている事もあり。時折交わす言葉の言葉尻も冷たいもの、相手を避けていることは明らかだった。)
…あ、あの。先生が御多忙なのは重々承知ですが、一度原稿から離れて、お食事されませんか。
(自宅に帰って数日が経った。その間、相手と視線が交わった回数はきっと片手で数えられる程度だろう。会話だって、必要最低限の物ばかり。ある日の夕食を作っている最中、カレンダーを一瞥。締切日から逆算して、ここ数日篭っては執筆を進めていることを考えると、たいそう余裕のある進行具合であろう。相も変わらない態度に、一人でいると溜息さえ出てくる。しかし本来ならば、自分はお世話役として側にいる身。お食事は取れているし、煙草の数もやや増えてはいるがお声掛けで何とか許容範囲に収まっている。家事は滞りなく進んでおり、仕事としては何ら支障はない。なのに、心のどこかで寂しさを感じているのは別の関係性を求めてしまっているのだろうか、はたまた気の迷いなのか。知る由もなく、あからさまに避けられている理由も考えれば考えるほど分からない。単刀直入に聞くしかないと夕食は居間に配膳、執筆部屋をノックして)
(2週間遅れて申し訳ありません。10月からペースを早めに返信出来たらと思います。毎回の不定期更新ながら返信して下さる事、大変感謝致します。
上記にて耐えきれなくなった棗くんからお声掛けさせて頂きました。ここから会話を進める中で、彼自身、恋心に気づく流れにいたしたいと思います。
──お前さんの仕事は、私を執筆に集中させる事だろう。
(執筆に没頭しては、彼の呼び掛けやノックの音で意識を引き戻される事をここ数日で何度繰り返しただろうか。灰皿には煙草の吸殻、スランプの時に比べればまだ落ち着いて居るが普段よりは明らかに多い。机の上に溜まる一方の原稿は、既に締め切りまでに求められているものをゆうに超えているだろう。一日中部屋に篭って執筆を続ける事の連続で疲労も相当に溜まっており、肩の凝りと頭痛とに苛まれていて、其れもまた苛立ちの原因になっていて。食事を、という声にも振り返る事はなく、眼鏡を外して眉間を指でほぐしつつ、少しの間を置いて返した言葉はたったのそれだけ。食事を取る取らないというよりも、執筆の邪魔をするつもりなのかとでも言うように冷たい言葉を突きつけただけで。)
(お返事ありがとうございます!そうなんですね、それは嬉しいお知らせです…!また少しずつ一緒に話を紡いでいきましょう!
展開もありがとうございます。相変わらず冷たい先生ですが、頑固かつ寂しいだけなので笑、ここで話を進めて頂ければと思います。その中でこちらも自分の気持ちを理解して行ければ良いのかなと!)
…執筆に集中して、かつ、心身ともに健康でいられるように、お仕えしております。
(此処まで来ても交わる事のない視線と、向けられた言葉は冷たい刃となって自身の心を抉った。ずきん、とした精神的な痛みを胸に、それでも心なしか痩せていく姿が心配で、はっきりと上記を告げる。帰省前と後であきらかに違う態度、帰省中に何かあったのかと思っていたが、ここ最近の様子から鑑みるに自分自身が影響しているのではとかんがえる。「…失礼ですが、最近の先生は、どこか苦しそうで、見てられません。僕が帰省から帰ってきた頃からです、…僕自身が原因と仰るのなら、覚悟していますので、それ相応の対処を、……お願いします。」と真っ直ぐに背中へ視線を向け告げる。対処、すなわち解雇すらも覚悟の上。全ては先生の為、と自分に言い聞かせる。途中、離れたくないという本音が、たった一言お願いしますとの言葉を紡がせるのを邪魔をした、)
( 度々背後から失礼します。
大きな台風が過ぎましたが、如何お過ごしでしょうか。地域によって被害が大きく異なる為、貴方様が無事でいることを心よりお祈りしておきます。此方の方は、何とか無事に乗り換え被害もなく、過ごしております。返事等、ご無理をなさらず…気長にお待ちしてます。
…私がお前さんの任を解けば、それで満足なのかい。
(肩こりから来る頭痛だろうか、ズキズキとした痛みに、相手に背を向けたまま眉間を抑えつつ目を閉じる。思考も言葉も、今は互いに完全にすれ違っていた。自分に非があるのなら、と彼が紡いだ言葉すら、穿った見方をしてしまう。自分から出て行くと言い出すのが忍びなくて、此方から任を解くのを待っているのだろうか、と。暫しの間を置いた後、ようやく椅子を回し相手と視線を合わせる。しっかりと顔を合わせるのはいつぶりだろうか、疲労の色濃いやや気怠げな鋭い視線が相手を見つめた。出て行くと決めていながら、決して自分からは言い出さない彼はひどく酷だ。そんな事を思いつつ、煙草に火を付けた。出て行け、と口にすれば彼は愛すべき女性の元に向かい二度と此処には戻らないと確信していたからこそ、好きにしろ、という月並みな言葉を告げただけで、彼を突き放しきれずにいて。言葉少なで、彼と向き合えないその不器用さが、そもそも根底の事実の認識が間違っているという事に尚も気付けなくしている事に、本人は気づいていなかった。)
──第一、私たちの間に契約なんぞ存在しない、お前さんの好きなようにすれば良い。
(/ ご心配いただきありがとうございます…!私が今住んでいる地域は夜のうちに過ぎ去ったようで何事もなく、無事に乗り切りました。テレビなどで見ると各地相当に被害が大きかったようで…背後様もご無事で何よりです。昨日で担当していた仕事が一段落した事もあり、またもやお待たせする暇もなくのお返事となってしまい恐れ入ります、!)
─…、嗚呼、そっか。
(久しく交わった視線は、嫌に鋭く、疲労感交じりのものだった。その裏腹に交わった視線が妙に嬉しくもあり、向けられた事実に早くも感情が混乱する。先生の仰る通り、2人の間に正式な紙面による契約はない、全て口頭での口約束でここまで来た。2人を繋ぐ、確固たるものはない。改めて自覚すると、自分と先生はいとも簡単に離れる事が出来る事実が1つ増え、悲哀の気持ちが芽生えた。最初は先生の作品が好き、という率直で単純な理由だけだったのに、今は違う。それだけは前から気付いていた。ただ逃げて居ただけで、今ならすとんと落ちてくる。自分が先生に対して、恋心を抱いている事が。ふと自覚した気持ちに、思うわずぽつりと上記の言葉と同時に、一筋涙を零した。ただでさえ同性同士というのは理解し難い世の中だ、このまま居て、もし、気付かれとして、先生の足枷となるような事を増やしてしまう。最初から決まっていた、このまま一緒に居てはいけないではないか。悲しくて、2回目となる涙も、これで最後かと、言葉は止まらず。)……好きなようにしていいんですか。でしたら、僕は先生のお側から離れるつもりはありませんよ。6年前、ここの戸を叩いた時から、気持ちは変わりません。…ここを離れるときは、先生からのお言葉に従うのみです。
(返信ありがとうございます。私の方も、同じように一晩のみで被害は特に出ておりません。ご無事で安心しました。
物語の方向について、棗君の方は恋心に気付いた場面を投稿させて頂きました。先生の方の気持ちの流れはお任せ致します。
──どうして……私を置いて、出て行くんじゃあないのかい。彼女と、一緒になるんだろう。
(吐き出した紫煙の奥、相手の頬を滑った涙を見て、あの雪の日を思い出した。初めて彼の涙を見たあの日も、自分は彼に出て行け、と言葉を突き付け、同じように、心の隙間を埋めるかのように煙で身体を満たしていた。思えば彼と言い争いをするようになったのは此処数年のこと、いずれも自分が機嫌を損ねて、その後も引くに引けなくなり彼に手を焼かせていた。今回これ程までに彼と向き合う事を拒み殻に閉じ籠った理由、其れが「独占欲」である事には薄々気付いてはいたが、形式上主従関係にある彼に抱くべき感情では無いと自分に言い聞かせていた。彼の流した涙の理由は掴みきれていなかったが、また彼を傷付けてしまったと思ったし、少なからず動揺した。あれ程に鋭い言葉で、視線で、彼を遠ざけたのは自分だと言うのに。それなのに彼の口から出たのは、まだ自分の側に居たいということ。予想とは異なる相手の言葉に驚いたように彼に視線を向けた。思わず紡いだ言葉に、無意識ながら正直な気持ちが現れていた。自分は、彼に置き去りにされてしまう事をずっと恐れていたのだ。彼が自分から興味を失い、他の誰かと姿を消してしまう事を、妬ましく思っていたのだ。その気持ちが何なのか、まだ彼のように明確に理解はしていなかったが、言い知れぬ感情が胸の内に渦巻いているのは確かだった。)
(/ 棗くんが自らの感情を認識する場面展開、ありがとうございます。先生もようやく棗くんの言葉で、自分の思い違いだった事に気がついて、胸の内にある独占欲についても理解するという流れにしてみました。現段階では恋心、とまでは理解できていません。ただ棗くんが大切で、自分以外に興味を持って欲しくないという我儘な状態です笑 認識としては棗くんの片思いのまま少し話を進めても良いですし、先生も恋心に気づき両思いで進めても良いと思うのですが、どちらが良いでしょうか?今後のストーリーも悩みどころですね。)
…その話は、とっくの前に、丁重にお断りしましたよ。
(お世話役とあろう者が、作法も礼儀もなく、つたう涙を、袖で、まるで叱られた子供のように乱雑に拭う姿が、心の余裕の無さを表しており、心がきゅっと詰まるのを感じた。ただ、恋心を抱えたまま側にいる心苦しさもあって、どちらにしても居るべきではないのではという気持ちもあるが、今ばかりは自分の正直な気持ちが勝ってしまい、先生の目をまっすぐ見つめた。その表情は、眉もやや下がり、悲しみも含まった表情で、)僕の居たい場所はいつだって決まってます、…先生。貴方の元なんです。
(またまたお返事遅くなり申し訳御座いません…;!
どちらにしても先生の心情なので、貴方様が動かしやすい方で構いません* どちらの流れも、素敵でわくわくします**取り敢えずはこの勢いのままお見合いは断ったとお話しをして、お互いのモヤモヤが取れた所でここでは仲直り、また普段の生活に戻るが気持ちの変化も互いにあり、照れも入ってからどこか余所余所しかったり…なんてもどかしく甘酸っぱい流れも良いですし、そこにたまに少しのギャグ要素を加えて、両片想いのような、空振り場面を入れても楽しいですね*
──私は、てっきり……お前さんが、居なくなると思って──…
(哀しげな色を浮かべた相手の瞳は、また涙の粒が零れ落ちそうな程に危ういもの。続いて聞こえた言葉は、自分が頑に聞きたくなかった筈の内容とは正反対のもので思わず数回目を瞬かせた。見合いを断って居たなどと、予想だにしなかったのだ。此れ程までに傷付けられても尚、側に居たいと言う相手の何と健気な事か、そしてこの数週間勝手な思い込みでどれ程彼にきつく当たっただろうか。言い訳のような言葉が零れるのと同時に指の間で紫煙を立ち昇らせる煙草は既に吸殻が幾つも捨てられた灰皿の中へと。彼はもう泣いては居なかったが、いつも気丈な相手が子どものように乱雑に涙を拭った姿が、此方を見つめる涙に揺れる瞳が、自分の過ちを認識するには十分なほど傷付いて見えた。目の前に立ったままの彼の手を咄嗟に引き、自分の肩口に抱き寄せたのは、これ以上泣き出しそうに弱々しい彼の姿を見ていられなかったからだろうか。自分でも行動の理由は判らぬままに、子供をあやすように彼の後頭部を軽く撫でては、「悪かった、」と小さく呟くように謝罪の言葉を。)
(いえいえ、お返事いただけただけで嬉しいです!^^*そうですね、この場面は無事仲直りにしてその後のちょっと甘酸っぱい展開に移行していきましょう!ギャグで言えば恋心とまでは認識していないけど、これまではツンばかりだったのが少しだけ棗くんにデレたり、恋心を自覚してしまった棗くんを余計にやきもきさせる先生というのも面白そうです!笑)
…、はなから決まっていました。僕は、僕は…
(ぐらり、と揺らぐ視界とバランスを崩す体を受け止めたのは温かさ。其れに絆され、つい自分の気持ちを表す言葉を言いそうになるのをぐっと堪える。ふと後頭部に添えられる優しく包み込んでくれる手に、そっと目を閉じ一考。恋心を自覚したとは言え、性別立場年齢を考えると自分達に立ちはだかる壁は多すぎる上、一方的な想いをぶつける訳にもいかない。しかし知ったからには意識してしまうだろう。自分に出来る事は今まで通り、自然に、先生のお役に立てるよう振る舞うだけ。そこに余計な感情を挟んではいけない。これからもお側に置いて頂けるという事実に嬉しさと切なさが入り乱れる感情から逃れるように、今だけは先生の温もりに甘えて「…申し訳ありません。」と静かに零した後、やや遠慮気味ながらも背中に伸ばした腕で着物をきゅっと摘んで、)
(そう言っていただき、有難うございます。嫉妬ネタいいですね!告げる訳にもいかない上、恋仲になってもいないのであまり干渉も出来ないけど気になって気になってついやきもちやいてしまうお世話役…ぜひ、その展開しましょう!
…夕食が冷めてしまうね。悪いけど、お茶を一杯貰えるかい。
(着物を軽く握る相手の髪を撫でて、どれくらいそうしていただろうか。謝罪には応える事はなく、少しして彼を解放すると、彼の目尻に出来た涙の筋を軽く指で拭ってやりつつ呼びに来てから随分と時間が経ってしまったと思いながらそう言って。安堵からなのかどっと疲れが押し寄せて息を吐くといつもならお茶は食後なのだが先に茶を要求しつつ、机の上に溜まった大量の原稿用紙はそのままに立ち上がり、軽く首を捻りながら居間へと向かい。意固地になって書斎で食事を済ませる事が多かったため、居間で食事を摂るのは隋分と久しぶりの事。自分の定位置に腰を下ろすと食卓に並ぶものは相変わらず自分の好みのものが多く彼の優しさが身に染みるようで、今更ながら自分の早とちりと大人げなさが気恥ずかしく、再び溜息を。)
(物語が始まってから一周年ですね。いつもありがとうございます。そして今後とも宜しくお願い致します!
そうしましょう!例えばですが、担当編集が長期休暇なり入院なりしてしまいその代わりとして短期の担当になった編集さんが、棗君と同い年くらいでしかも先生愛の強い人だった…とか、弟子にして下さい!みたいな小説家志望タイプか、はたまた追っかけ女子みたいな存在とか…棗君のライバルになり得るような人物の登場が無難でしょうか?)
…失礼致しました。すぐにご用意致します。
(しばらくは温もりに甘ては、髪や頬を伝う手の感触の余韻に浸ら。離れても尚触れられた場所は熱さえ帯びているような気もする。しかしいつまでも惚けていては仕事にもならない、気を引き締めて、言われた通り熱い緑茶を2人分用意して、夕ご飯を配膳する。向かい合わせに鎮座、「今日は新鮮な鰆が売っていたので、塩焼きにしました。」と言いながら手を合わせる。いつも通りと言えばいつも通りの光景だが、久しいのも事実。当たり前であった日常が、こうも幸せだったのだと改めて実感しては1人でに笑みさえ溢れ。)
( 1年、あっという間でした。移りゆく季節を貴方様、そして先生と過ごせた事とても嬉しく思います。今後とも末長く宜しくお願い致します…!
ライバル!とても燃える展開ですね!先生愛の強い同い年の女の子で、棗君と同じく恋愛感情も持っており…な子だと、お見合いの時とはまた違う葛藤もあって楽しそうですね!
ん、魚は塩焼きか西京焼きに限る。
(熱い煎茶を受け取ると口にして、ようやくほっとひと息吐く事ができて。自分の勘違いと嫉妬心のせいで暫く食べられていなかった相手の腕を振るった料理を前に手を合わせると二人で食事を始めて。旬の焼き魚は好物で、鰆にも箸を付けると口に合う味に些か満足そうな表情を。二人で話をしながらの食事は久々で、かつ相手がこれからも此処に留まると分かった今、これまで拗ねていたのが嘘のように分かりやすく機嫌は良くなった様子で。──突然電話が鳴ったのは食事を終えようとした頃で、時計に視線を向け。出版社からだとすれば、この時間に掛かってくる電話は、直近で言う代わりの世話役の話も含め良い内容であった試しがない。相手に電話に出るよう促しつつ茶を啜り。)
…出てくれるかい、面倒事じゃ無ければ良いけどね。
(此方こそ、これからも末永く宜しくお願い致します!
いいですね、では現在の担当者が長期休暇で1ヶ月代わりの人が担当を任される事になり、その人が棗君と同い年の女性で、先生の作品が好きで編集になることを決めた、というくらい愛が強く、実際に直接関わる事で一層本気の恋愛感情を抱くようになってしまい…というような感じにしましょう!
自分の作品を好きなだけあって指摘や感想も的確で、人見知りが激しい先生も割と受け入れていて、というような感じで棗くんの嫉妬を誘えればなと…!電話は、担当が1ヶ月変わる旨と代わりを務める担当者の概要を伝える内容というイメージでお願いします。)
ご馳走さまでした。…はい、分かりました。
(不意に鳴り響く音に、すくっと立ち上がり電話を取る。聞きなれた声は先生の担当の方で、長期休暇を取る事になりその間の代わりの担当が今日挨拶も兼ねて来訪すると、の事。手短な電話、「-…はい、…嗚呼、そうなんですね。分かりました。お伝えしておきます。」と静かに切る。代わりとなる担当の方の性別や年齢までは事細かに聞いてはおらず、長年世話役をやっていたが担当が変わることは度々あった。今回の事を、特段きにする訳もなく、先生の元へ戻る。せっかくの機会、先生と2人で顔合わせをした方が新しい方も心の準備が出来るだろう、尋ねかけ、)担当の方が長期休暇を取られるそうで、1ヶ月だけ別の方が代わりに担当して下さるそうです。今日午後、原稿の受け取りの際ご挨拶にお伺いするそうで…先生も、もしお手隙でしたら一緒にどうでしょう。
(遅れましたが、明けましておめでとうございます。
マイペースながらも棗くんと先生のお話がこんなにも長く続きました事、とても幸せに思います。今年も変わらぬ日常を紡いでいけたらと思います。
場面展開の文ありがとうございます。同じような気持ちを持った異性となると性別の葛藤もありそうですね!もし可能であれば、女性の気持ちには気付いていない先生は、仕事の都合上話している棗くんと担当代理、その場面を見ては、なぜかもやっとした気持ちになりつつ…なんてすれ違い要素を含むなんてなあでしょう?先生が恋心に気付く場面はここでもその他でも、お任せ致します!
…嗚呼、そんな事かい。煩く口出ししてくるような人間じゃ無ければ誰になろうと構わないけど…家に来るって言うなら、名前くらいは聞いておこうかね。
(居間に戻ってきた相手からの報告に納得したように頷きつつも、本人としては担当が一ヶ月変わる事など大した問題ではないようで。現に担当とのやりとりは何かと相手に仲介してもらう事も多く、直接関わる機会と言えば家にやってきた時に話をしたり資料探しを頼む程度。担当の事は信頼しているとはいえ、過度に干渉したり注文を付けたりしてこないからこそ上手くやれている面もあり、自分のスタイルに口出しをしてくるタイプでなければ特段こだわりは無いと言いつつ、家に来るというなら挨拶くらいはと了承して。担当が来たら呼んで貰えば良いと、執筆に戻る旨伝えつつ立ち上がり。)
少し執筆に戻るから、来たら声を掛けてくれるかい。今回渡す分を纏めておかないと。
(明けましておめでとうございます!今年も変わらず、2人の日常を一緒に紡いでいける事が楽しみです。
明るくて愛情表現もストレートで、どことなく初めて会った時の棗君と同じ印象を受ける女性編集者、というイメージで動かしていきますねー!
良いですね!そのモヤモヤとした気持ちはやっぱり嫉妬に近いもので、自分が何かと相手に対して独占欲を抱いてしまう事に悩む…というのも良いかもしれませんね。後に恋心と気付くのは、例えば以前の棗君の家出と反対に、頭を冷やす為に棗君に何も告げずに家を出てしまい、普段一人で外に出る事など滅多にないため棗君が心配して探し回って…とかの末に、胸の内の感情をぶつけるとかも良いかなあと画策しています!)
そうだ、せっかくなので夕食にお誘いしませんか?これも何かの縁です、短期間ではありますが、同じ作品を作り上げる1人として歓迎致しましょう。
(現在担当に着いている方は数年と決して短くはない方で、先生の事も分かっているであろう。それに1つの作品が世に出る過程には、色んな方がバックアップした上で成り立っている。その為には互いの協力が必要不可欠、自分も最初働き始めは毎日緊張と不安で一杯だった。きっと新しい方も同じ気持ちを抱えているであろう、親睦を深め少しでもほぐし、働きやすい環境を整えるために今自分が出来ることはおもてなしする事だと考えた。先生に確認を取った後、1人になっては、こうしてはいられないとやる気満々で、買い出しから仕込みまで、済ませた頃にはあっという間に夕刻に。ふと鳴るはベルの音、)─はい、今開けます。…あ、今日は。世話役の棗総一郎と申します。宜しくお願い致します。
(目の前には見慣れた担当と、その隣に自分と同い年くらいであろうか綺麗な女性が1人。深々お辞儀と、自己紹介を済ませば相手方も笑顔で応えてくれて、「宜しければどうぞお上り下さい。……今、先生をお呼び致しますね。」とリビングへ通す。お茶を人数分用意、執筆部屋へ向かい、先生へ来訪のお声掛けを行なって。)
(此方こそ、宜しくお願い致します!
とてもいいですね、棗くんも最初は自分と重ね懐かしいなと微笑ましく思っていましたが段々とヤキモチにも似た感情が芽生え…という流れでいこうと思います。先生の方の流れは了解致しました、とても楽しみです。*
(相手の思いを汲んで会食の提案を了承すると、代理の担当を歓迎すべく腕を奮う相手に其方の準備は任せ再び部屋に戻ると筆を進めて。一方、約束通りの時間に屋敷に到着した編集者たちは居間に通されていたが、肝心の女性編集者は落ち着かない様子。屋敷の立派な門構えに、迎え入れてくれた人の良さそうな世話役を名乗る青年、そして少しお香の香り漂う整頓された室内。憧れの先生の住む所と思えばその全てに感動してしまい、ピンと背筋を伸ばして座りながらも緊張した面持ちで。呼びに向かった相手の足音と共に静かな足音が聞こえて居間に入って来たのは長年憧れ続けた先生本人で、「ご苦労様です」というなんの気ない声に本物だという実感が湧いてきて思わず感動を露わにしつつ、ガタンと立ち上がり。尻尾があれば左右にブンブンと振っていただろうというくらいに瞳を輝かせて挨拶を。)
し、東雲先生…!一ヶ月代理の担当を務めます、三木梓と申します!私、先生の大ファンで…まさかこんな幸せな機会が自分に訪れるなんて、信じられないくらいです。先生に憧れてこの業界に入ったようなものなので、感動しちゃって…新作も、何回も読み直しました。特に好きなのは「鶯の夢」で、言葉のひとつひとつが本当に綺麗で切なくて…毎日持ち歩いてます!彼処の表現も──
(三木、と呆れたように隣の編集者に呼ばれて我に帰ると興奮して喋りすぎてしまったと慌てて顔を赤くして「一生懸命頑張りますので、よろしくお願いします!」と付け足して再び座り。その様子を見ていた本人の表情は、一見しただけでは分からないがどことなく普段よりも優しさを感じるもの。全く同じようなことが7年ほど前にもあったと、相手が直談判に来た時の様子と目の前の彼女が重なって見えていて。その後は腰を下ろして当たり障りのない挨拶を。)
…随分と威勢の良いお嬢さんだ。分からない事はこっちの総一郎に聞いてくれ。
(昔の棗君を彷彿とさせる感じの女の子にしてみました!結果的に二人の距離を縮める役割を担ってもらいましょう…!
二人の想いが通じる瞬間も楽しみですね*)
─、短い間ですが宜しくお願い致します。
(来客用の湯のみ2つと先生と自分の分、計4つの緑茶を淹れてお出しする。見慣れた編集の方に、齢は同じくらいの女性の方。先生を前に、瞳に緊張と感動の色を滲ませながら、並べられた言葉。思わず、自分もまたあそこの場面ですよね…!なんて相槌が溢れそうになるのをぐっと抑え、ふと昔の自分を脳裏に。大好きな作品の魅力を、作者本人に語れる事の幸福感に密かに共感を覚え、微笑みながら挨拶を。それから、業務の引き継ぎをメインに事務的な打ち合わせは進みあっという間にお外は日が落ちる時間に。話もまとまった所で、こちらから提案を投げかける。)あ、もし三木さん達がよろしければ夕ご飯を食べていかれませんか?僕の手料理なので、大層なものをお出しする事は出来ませんが…旬の食材をご用意しましたので、素材はピカイチの、はずです。親睦会の意も込めて…なんて。(来客に手料理を振る舞う事など殆どない為、腕は振るったつもりだがやや自信に欠ける気持ちも反面、旬の食材を揃えているのできっと大丈夫だと言い聞かせる。了承得ると、お待ち下さいと既に調理済みの物を食卓に配膳していく。円卓の真ん中に、鍋敷きと大きな鍋に、あたまに取り皿と、小鉢諸々並べてゆき。)冬が旬の、金目鯛を使った塩鍋に、こちらがほうれん草とじゃこを使った和え物と、蕪と柚子の煮物です。
(お待たせ致しました。夕飯までの流れを作ってみました。三木さん、とても愛らしくて魅力的な女性です*想いが通じる場面、とても楽しみです!
わあ…!これ、全部棗さんが作られたんですか?こんな豪華なお食事、お店でしか見たこと無いです…!ありがとうございます、頂きます。
(初めての憧れの人との打ち合わせは緊張もあってかあっという間に時間が過ぎ、先方のご厚意で夕食をご一緒させて貰う事になれば運ばれてきた料理の数々を前に感動した面持ちでそう言って。豪華だが決して派手さはなく、旬の食材にこだわった綺麗な料理の数々に感動しきりで。やがて全員が席に着くと箸を進め談笑しながらも、考え事を始めるとつい目の前の事がおろそかになってしまうのが悪い癖。時折食卓を挟んで向かいに座る先生にちらりと視線を向けては、憧れの人と一緒に食事をしている現状に頭が追いつかず、思わず惚けたように先生の所作を見つめていて。視線を感じたのであろう先生が此方に視線を向けそうになると慌てて視線を逸らして箸を進める事を繰り返しては、今度こっそりとサインをお願いしてみよう、なんて考えながら柔らかく煮えた金目鯛の綺麗な白身を口に運んで。一方、明るく朗らかな印象の世話役の彼は自分たちが話しやすいようにとさりげなく会話をリードしてくれていて、その様子を見ながら、優しくて料理も得意な彼は先生と毎日一緒に暮らしているのだと再び自分の世界に入りかけては、羨望とも尊敬とも付かない眼差しを彼に向けていて。)
(ありがとうございますーー!こちらは、時々話を忘れて自分の世界に入り込んでいる三木さんで続けてみました!先生と棗君に向けているそれぞれの視線も、2人の受け取りようによっては何とでも解釈できますからね!笑
先生は黙々と食事をしながらも目敏く棗君への視線には気付いて、三木さんが棗君に一目惚れをしたのではないだろうか、なんて考えに既に向かっているかもしれません*笑)
次の新刊も、心待ちにしております。
(何時もは2人の食卓も、倍の人数となると賑やかさも増す。元より、騒がしい場は好まない先生も、担当の方と代わりの女性の穏やかな賑わいに悪い気はしていないご様子。寧ろ、時折笑顔のような物も見られて、安堵の気持ちを胸に、釣られるように笑って。お魚を摘みながら、女性の方を見ると視線は先生の方へ向けられており、交わろうとすると逸らして。そんな一連の流れを眺めては、ふと自分と同じ感情を持っているのかな、なんて先走った思い。齢変わらない立場だが性別が違うだけで、こんなにも絵になるんだと勝手ながら1人静かに落ち込みかけるが、ぐっと持ち直し話に加わる。そうこう話し込んでいる内に、あっという間に時間は過ぎた。19時を回る頃には、下膳し食後の緑茶とちょっとした甘味を提供。女性の方をあまり遅くまで残してはと自分なりの気遣いから、言葉投げかけ。)…お時間は大丈夫ですか?楽しい時間はあっという間に過ぎてしまいますね。夜分遅くまで、引き留めてしまい申し訳ありませんでした。(頬をぽり、眉下げ笑いつ、)
(初期の棗君のような初々しさがとても眩しいです…!視線一つですれ違う心…繊細なもどかしさ、がとても良いです*
──…、とんでもない!今日がずっと続いて欲しいくらい、本当に幸せな時間でした…お料理も全部美味しかったです。ご馳走さまでした。
(美味しい料理の最後に甘味と煎茶を戴き、料亭でフルコースを食べた時のような満足感を感じながらほっと息を吐いて。先生も席を立つ事なくこの場に留まって下さるものだから、ついお茶を都度注ぎ足して貰いながら食事を終えても変わらず会話には花が咲いていて。やがて会話が途切れたタイミングで、なんの気なく目の前の先生が煙草を咥え火を付ける動作に思わず目を奪われたのは一瞬の事。担当するとしてもこれまでは同性の先生が多かったこともあってか、普段あまり嗅ぐ事のなかった煙の香りにも、どうしようもなく心動かされた。大好きな小説を生み出した憧れの人、手の届かないはずだったその人をすぐ近くに感じる事のできたこの数時間で、長年抱いていた憧れや尊敬の念はその感情に留まらなくなりそうな程に膨れ上がっていた。此方を気に掛けてくれる言葉にはっとして時計を見遣れば思いの外時間が経っていた事に驚きつつ、最高のもてなしをしてくれた彼にお礼を述べて。いつまでも浮かれた気分ではいけないと再び気を引き締めて、同行の編集者と共に帰り支度をすると次の予定を伝えては深々と頭を下げて。)
1週間後に、進捗を伺いにまた来ますね。改めまして、短い間ではありますが、これからお世話になります!
(棗くんに似てる、という所が先生的にもつい可愛がってしまうポイントですね!笑 今後先生にしっかりと恋愛感情を抱きそうな雰囲気の編集さんですが、先生と棗君とお互いが彼女を通して嫉妬を経験して、同じく彼女を通してお互いの感情に気づくという過程が非常に楽しみです!)
宜しくお願いします。帰り道、気をつけて下さいね。
(頭を下げる彼女に此方も、頭を同じく下げて。玄関先まで見送り、彼女と先生が一言二言交わすのを見守り、簡単ながら再度挨拶を。角を曲がり見えなくなるまで、見送るとふと先程の事を思い出した。お時間は大丈夫か、問おうと視線を彼女に向けると、彼女の視線は先生に釘付けだった。恍惚とした輝きを纏う視線、その瞬間は先生と彼女が主役の空間だった。太陽のように明るく、真っ直ぐで、一生懸命で、正直な性格に、彼女のような方が先生の隣に居て欲しいな、と感じた。傷心の気持ちは少々、すとん、と気持ちが落ち着いて、「…すごく、誠実で明るい方でしたね。」と微笑ましく、笑ってみせて。)
(たびたび遅れて申し訳ありません…;
お互いの感情に気づく瞬間が楽しみでたまりません!*
どうにも、誰かさんの面影が重なって仕様がないお嬢さんだった。
…お前さんもそう思っただろう。
(彼女の後ろ姿を見送り少し冷えた夜の空気に着物の袖口に腕をしまいつつ、玄関の戸を閉めて振り向いた相手の好意的な言葉を聞いては笑みを浮かべて。暖を求めて居間へと戻りながらも、おそらく相手も同じ事を感じていただろうと同意を求め。時折感じた彼女の視線も、話している時の僅かに上擦った声も、小説の話をするときの輝いた瞳も、彼女の仕草のひとつひとつに過去を思い出して重ねてしまうのは自分だけだろうか。お互いに「尻尾を振っているのが見えるような」という比喩は心の内にしまっておこう。自分の小説をよく知ってくれているというのは担当としては非常に心強い事、相性の面でも心配は無さそうだ。加えて相手との年も近く話も合うようで、その点も問題はなく現時点で気を揉むような要素は無く、初顔合わせにしては珍しく機嫌も上々だった。)
(お気になさらず。小説家にお付き合い頂き、のんびりとでも一緒にお話を紡いで行けることが嬉しい限りです!)
━…温かい緑茶をお持ちしますね。
(振り返った先で柔こい表情の先生に、微笑ましくもあり、自分以外を対象に笑顔を見せる姿は珍しく、彼女の温かな人柄を一段と感じた。自惚れていた感情を押し込んで、袖口に腕をしまう姿に、お身体を冷やしてはいけないと執筆部屋に戻るであろう後ろ姿に上記の声かけを。その後、緑茶を部屋まで届けに行った後は、夕食の後片付けと、翌日朝食の下準備を済ませ、いつもと変わらない日が終わって。)…今日の予定は、担当の方が13時に進捗を確認しに伺います。如何なさいますか?(あれからあっという間に1週間が経ち、朝食後の一息に本日の予定を述べる。担当が家に来る事は珍しくなく、先生の進捗によっては伝言を貰い自分が対応する事もしばしば。可能であれば彼女が担当となってからは初の対面、先生が相手をした方が良いのでは、とやんわり告げつつ、首を傾け、)
…嗚呼、今日が初仕事だったね。来たら声を掛けてくれ。
(今朝は起き抜けに執筆を始めたのか、寝巻きの浴衣に羽織を掛けただけの格好で机に向かって居ては今日の予定を伝える相手の声を背中に聞きながらも原稿に視線を落とし筆を進めており。カレンダーに目を向けると今日が彼女の初仕事の日だと思い出した様子。声を掛けるように、という反応の時は自分で応対する場合が殆どで。編集者との打ち合わせがある事を失念していたのか早々に着替えなければならないと、些か面倒臭そうな反応を見せ。一度執筆部屋に来て筆を執ってしまうと自室に戻るのは億劫なもので、相手に着物を持って来て貰うよう頼み。)
…来客があるんじゃあ、いつまでもこの格好で居る訳にもいかないね。悪いけど、着物、出しといてくれるかい。
承知しました。では、来訪次第お声かけ致します。
(約束の時間まで幾分かあり、此方も家事は早々済ませておくことにしよう。ふと、相手に声をかけられると振り返る。他所行き用の着物姿は案外珍しく、思わず笑みこぼれつつ了承。)はい、分かりました。お持ちしますね。(別室にある棚を開けると、様々な色・柄の着物が並んでいる。どれも高価な物で、一つ一つ丁寧に保管されており、その中から自分の目利きで選択。春らしいもの、と手に取ったのは長春色の差し色が入った着物。初仕事であり、彼女はきっと緊張するだろう、柔い色で少しでも和やかな雰囲気作りにでもなればと思案も一つ。手に持ち、静かに戸を開け、鏡のすぐ傍に置いて。)ご用意致しました、こちらに置いておきますね。
嗚呼、ありがとう…おや、良い色を選んだね。こういうセンスは昔からお前さんには敵わないよ。
(程なくして戻ってきた相手の声に一度筆を止めて振り返ると、鏡の傍に掛けられていたのは久しく袖を通していなかった春長色の差し色が入った着物。今の季節にも今日の場にも合う選択だと納得し乍、気遣いに長けている相手だからだろうか、着るものからもてなしの食事、出掛ける際の手土産に至るまで、昔から時と場合に合ったものを選ぶセンスは自分よりも光るものがあると素直に感心し。先に着替えてしまおうと鏡の前で着物に袖を通すと改めて着るもの一つでも心持ちがしゃんとするのを感じつつ帯を締めて、)
有難う御座います。先生はどんなお着物もお似合いになられますね、今着ているお色もとても似合っています。
(更衣し、自分が選んだ着物に袖を通す姿を見ると、前に着ていた物とは真逆の色合いとて、様になって、格好の良く色も映えていた。小さく微笑み、一旦退室。再度、迎え入れる準備は整っているか、お茶菓子や座布団とのヨレ等細かい所までチェック。終えた頃に丁度よく鈴の音が響き渡った。玄関で、彼女を迎え入れ、客室にご案内。次に、先生の執筆部屋へ「先生、担当がお見えです。」と一言添えて。)
──ご苦労さん、此れが今回の分だ。…其れ程の量でも無い、気になるなら此処で読んで行っても構わないよ。
(相手に声を掛けられると筆を置き、書き終えた原稿を手に居間へと向かい。1週間ぶりに再会しても尚緊張した面持ちで腰掛ける彼女と挨拶を交わしつつ腰を下ろすと、早々に原稿の束を渡して。受け取るなりキラキラとした表情で頁を少し捲る様子を見れば、本来で有れば編集社に戻って校正をするのだろうがそんなに興味が有るなら此処で読んでしまっても構わないと伝えて。途端に嬉しそうな表情を浮かべ表情のコロコロと変わる相手に思わず笑いつつ、その場で原稿を読み始めた相手を待つ間にと自室から紙と筆を持ってくると相手の向かいで執筆を進め始め、彼女が原稿を読み終えるまでの間、束の間二人の静かな時間が流れていて。)
ご無沙汰しております、お元気にやっていらっしゃるでしょうか。
1年半という長い間お付き合い頂き、一緒に物語を紡ぐ事ができて先生共々とても嬉しく思っております。
さて、最後のやり取りから、早いもので3ヶ月が経ちました。
もしもこのまま、あと一週間お返事が無ければ、申し訳ありませんが再度募集を掛けさせて頂こうと思っております。
もう少し此処でお待ちしていますね。お身体ご自愛ください。
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