小説家 2018-11-29 01:25:00 |
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…良いから、もう帰っておくれ。此処にはお前さんに頼むような仕事は無い、二日分の給料は出版社を通じて後日払うから。片付けも何もしなくて良い。
(彼が帰ってくる日の朝、自分から自棄になって頼んだ世話役だったがとにかく息が合わず、彼が声を掛けてきた時にようやく筆を止め鋭い視線を向けた。たった2日しか経って居ないのだから当然のことだったが、何に付けてもタイミングが悪い事も小説家を一層苛立たせていて。話し掛けて欲しくない時に限って声を掛けられ、湯のみが空のままの事も何度もあった。何よりも自分のパーソナルスペースに、よく知りもしない人間が居て動き回る事が耐えられない。普段ストレスなく執筆に集中出来ていることを思うと、留守にしている彼の存在の大きさを改めて感じさせることになる。そうして早々に怯えきった世話役を追い出して仕舞うと、煙草に火を点け煙を吐き出した。いつもの如く締め切られた部屋は煙たく、煙草は代理の世話役に追加で買って来させた為、この二日間で既に三箱も消費していることになる。その間食事は一切摂らず、口にしたのは執筆の合間に飲む煎茶と昨晩の酒だけ。彼が聞いたら失神しそうな状況だったが、執筆に関してはスランプという訳では全くなかった。執筆に没頭すれば何も考えずに済むし、自然と時間も過ぎていく。書く以外の気持ちの落ち着け方を知らず、原稿はどんどん溜まり部屋に散乱していた。彼の事となると此処まで気持ちが乱されるのが何故なのか、理解できない、理解したくないだけなのかもしれない。余計な事を考えなくて済むように、煙草を片手に原稿用紙に文字を綴り続けていた。)
(そうですね!提案いただいたもので異論ありません。とばっちりを受けた可哀想な代理君は帰らせておきますね笑 荒れ放題の小説家ですが、棗君が帰ってきたのは素直に嬉しい、だけど彼が此処を出て行く可能性も否定できなくなるお見合いの結果は聞きたくないし、という心情から顔を合わせても最初はツンケンしたままにしようかなと思います!帰ってきて早々の一悶着があって、その後に彼が出ていかないと分かってからの身の振りをどうしようかなあと悩み中です。嬉しいのを押し隠しつつもぱったりと機嫌が直るのも面白いですし、少し恋愛方向の雰囲気にするなら、悩まされていたここ数週間の自分の気持ちを素直に吐露してみても良いですし…他にも色々あると思いますが、どんな小説家がお好みでしょう?)
ただいま帰りました。…先生?
(定刻通り出発した電車に乗り、帰路へと着く。手には実家の方の土産の饅頭を。休憩時間にでも、熱い緑茶と一緒に先生と食べようと心静かに踊らせる。最寄駅に着くと実家とはまた違う安心感を感じ、早々家へと。門を開け、中を覗き込むが静かで、思わず先生、と声をかけてみる。中へ入ると、2日分の洗濯物や、洗い物。眉をひそめ、お世話役の方は来ていたはずじゃ、と首をかしげる。昼前、執筆する部屋へと向かい、戸を開けると一気に煙たさが鼻を劈き、久しいこの感触に思わず咳き込む。煙の中に、髭が少々伸びて、心なしか更に痩せた姿の小説家を見つけ、「ここ2日で、随分と、先生らしさを発揮されたようで…」た小窓を開けながら言う。自分と出会った頃もそうだった、いきなり押しかけた男に身の回りの世話を任せるのは誰だって警戒心は持つし任せきれないだろう。先生は人一倍強く、初対面のお世話役が2日で出来る訳もないのは最初から心のどこかで理解していた。空になっている湯のみに反して、満杯のゴミ箱を、横目に、隣に座ると、「先生、お茶でも飲んで、ひと休憩しませんか」と手土産見せつ、心配なのか首を傾けてみて、)
(つっけんどんな一面を持つ小説家、とても愛らしいと思います!お互いまだ恋愛感情には気づいておらず、名前のない感情のぶつかり合い。また、小説家はツンツンしつつも、見合いの様子を彼から聞いて、出て行くと確信。お世話役は、出て行かないけれど、何故か小説家の態度が冷たくなったように感じ、出て行って欲しいのかと勘違い、気持ちのすれ違いを挟みつつ、最後、お互いの気持ちがぶつかり合ったところで、気付いていく…のような流れはどうでしょう?あいも変わらず漠然としていますが、大事な場面なので、お互いの意見を尊重して進めたいと思ってます*
…嗚呼、帰ったのかい。早かったね。
(思考は書き綴る文字の中に沈み、頭はやけに冴えていて筆が止まる事は無かった。ふと、襖の開く音で意識が引き戻され相手が戻ってきたのだと理解すると、視線を其方へと向けて。早々に窓を開けて回る相手に何を言う事もなく再び手元に視線を落としつつ煙草を灰皿に押し付ける。食事も摂らず随分と長い間机に向かっているというのに、身体の疲れも空腹も然程感じておらず、二日ぶりに帰ってきた相手に特段興味を向ける事もない。相手が留守にしていた二日間、余計な事を一切考えずに済むように執筆に没頭し続けたせいで、既にある種の感覚が麻痺していたのだろうか。状況はかつて酷いスランプに陥っていた時と同じ、しかし今回は執筆に関しては何ら問題がない、寧ろ調子が良いくらいなのだ。ただ、相手から今後に関する決定的な言葉を聞くのが嫌で、目を背けていたくて、胸に燻るその恐怖が小説家を執筆に溺れさせていた。筆を止めれば相手に話す隙を与えてしまう、何かに突き動かされるように話を綴る以外なかったのだ。当然そんな状態で休憩をという相手の誘いに乗るはずもなく再び相手に視線を向ける事はなくなってしまい、片付けを頼むことで相手を自分の側から遠ざけようと。)
今は良い、…戻って早々に悪いけれど、台所を片付けて置いてくれるかい。──気が散るばかりで、何の役にも立たなかった。
(/ そうですね、棗君が戻ったばかりの今は、お見合いの結果と言った今後に関わることを彼の口から聞くのが嫌で、だからこそ相手に話す隙を与えるのが怖くて、何かに取り憑かれたように筆を進める事でそれを拒んでいるというような状態。ですが二日間その調子で書き続けて居たため夜にはエネルギー切れを起こすと思うので(笑)、そのタイミングでようやく二人で食事、そこで避けようもなくお見合いの話を聞いてしまい…という流れが良いかなと思います!
先生はとにかく不器用なので、基本的に感情の鎮め方といえば周りを遮断して仕事に溺れる事。棗君が出て行くと思いどんどん感情に歯止めが効かなくなって相手にも冷たく当たり、自分自身もまた殻に閉じこもるように執筆、執筆と仕事に溺れて行き、棗君も小説家の冷たい態度と仕事の進め方に困惑。結果相手の言葉にも耳を貸さずに過労で身体を壊す寸前まで行って、ようやくお互いに感情を爆発させて…というようなイメージでいかがでしょうか?そこでようやくすれ違い続けていた2人の感情が合致して、落ち着いた話し合いができるようになり…というような流れだと自然かなあと!)
そうですか、…では、台所の片付けと、あと、洗濯まで終わったら休憩しましょう。
(帰宅早々に、やっと先生にお会い出来たが交わる事のない視線。ちらり、と塵箱を見やるとくしゃくしゃになった原稿用紙がこんもりと盛られ、抱えきれない分は床に落ちている。先生の事だから、台所だけではなく、洗濯だって手を付けさせなかったのだろう。1つ、洗濯という仕事を付け加え、それとお茶菓子の準備まで行えば丁度良い時間にもなるだろう。立ち上がり、ついでに塵箱も綺麗にしておこう、と片手に立ち上がり、「また声かけますね、熱い緑茶を用意してお待ちしてます」と換気を終えた窓を閉めながら、そう声をかけると退室。その後、山のような洗濯を終えて、台所を見ると溜まった食器、されど2日分には到底足りず、買いだめた食材も減ってはない。もしかして、不在時は食べ物を口にしていないのでは、と思考。湯を沸かしながら、今夜はうんと先生の好きな料理を沢山作ろうと決意を胸に、湯が湧くまでの時間に編集者に連絡を一本。世話役代理を用意してくださったことのお礼と、来てくれたお世話役への謝罪を一言。つっけんどんな態度、初見は驚いたであろう。気を病んでないと良いけど、と)
( とても自然で、2人らしい流れだと思います!
ギリギリまでお互い切迫詰まって困惑して、様々な感情に困惑して…これからの物語がとても楽しみです。その後のお付き合いといいますか、お互いの感情を認めて、伝え合う場面は、またその時の流れで紡いでいくのも一興ですね。主様の提案してくださる流れはいつも、自然で、綺麗で、わくわくが止まりません。素敵な提案、ありがとうございます*
(相手が炊事洗濯をする音が遠くで聞こえていた。相手が戻ってきた安堵感と、此れから彼の口から紡がれるであろう言葉を聞かなくてはならない憂鬱とが入り混じっていて、少ししてようやく筆を硯に置き。随分と長い間執筆を続けていたせいか目が疲れているようで、眼鏡を外しつつ眉間を指で解して溜息を。何も考えずに筆を進めていた原稿、書き終えて散乱した原稿を改めて読み直してみると登場人物の複雑な心境がやけに鮮明に綴られていて、無意識のうちに自分のもやもやとした心境を投影していたようで再び呆れたように溜息を。しかし一度筆を置いた事でどっと疲れと空腹が押し寄せて、突然に一切筆を執る気にならなくなる。相手が出掛けてから一度も固形物を口にしていないのだから当然だったが、気怠げな表情で火を付けた煙草の煙も、空きっ腹には心地が悪く直ぐに灰皿に押し付けてしまい。しかし相手と顔を合わせて話を聞くのが嫌で部屋からは出たくない、椅子の背凭れに凭れ掛かり天井に視線を向けつつ目を閉じる。ぱたりとエネルギーが切れてしまい、ようやく休みたいという思いに駆られていた。)
(/ そうですね、先生はだいぶ子供っぽい意地っ張りな所があるので扱いが大変かとは思いますが笑、ギリギリの所でお互い爆発させて、少しずつお互いの気持ちの答え合わせをしていく感じにしましょう!お互い自分の気持ちになんとなく気付きつつ…なちょっとギクシャクした期間があっても面白いですね!笑 お互いが気持ちを認めて伝え合う…とても楽しみです!こちらこそ、いつも繊細で綺麗な世界を紡いで下さること、とても感謝しています!背後様のロルで、小説家もどんどん生き生きしていきます!今後もどうぞ末永くお付き合いください。)
─失礼します、進捗はどうですか?ちょうど、お昼ご飯の時間になりましたので、あまっていた食材を使った、簡単な物ですが、お食事の準備が出来ました。
(当初の予定では、代わりの世話役が昼食まで準備して帰宅予定だったが予定外の事で、冷蔵庫の中身を確認。出た時よりは食材は減っているが、あまり口をつける事はなかったのだろう、思ったより余っている。だが、少々いたみ始めているものもちらほら、外側を余分に切って、煮物を作りはじめる。ご飯も炊いて、小一時間経っただろうか。配膳もさっと済ませると、扉を控えめにノックして、入室。)
(ギクシャク期間!!!とても良いです!!!笑 お互い自分の気持ちに気付いて、どこかよそよそしく、空回りして、なちょっとしたギャグ場面もあって良いかもしれませんね!もし可能であれば、そちらの流れを経てのお付き合い…という形でもよろしいでしょうか?
素敵な提案、ありがとうございます*
──…嗚呼、今行くよ。
(相手が戸を叩く音に目を開ける。相手と顔を合わせる事には抵抗があったが、良い加減に食事を摂らなければという思いはあり、そう返事だけ返して。書斎を出て肩を軽くほぐし乍居間へと向かえば、長らく書斎に籠っていた所為だろうか、歩き縁側に面した廊下がやけに眩しく感じて。配膳の済んだ机、いつもの場所に腰を下ろすと手を合わせて食事を始める。箸を伸ばした煮物は優しい味で、しばらく固形物を受け付けていない胃にも刺激が少ない。自分から見合いの話を振ることはしなかったが、おそらく近しい存在である自分には相手から報告されるだろう。ゆっくりとではあったが、相手と視線を交わらせる事なく黙々と食事を進めて。)
(/ 採用ありがとうございますー!恋愛慣れしていない2人なので、そういうギャグっぽいギクシャクが挟まるのも面白いですよね。ぜひその流れでいきましょう!)
─頂きます。
(先生が目の前に着くと、自分も真向かい側に鎮座。手を合わせて、一緒に食事を進める。普段から言葉数はそう多くない先生だが、目線も合わない今はいつもの沈黙とはどこか違う。しばらくして、口を開いたのは自分の方で「…改めて、休暇を頂きありがとうございました。連絡していたとはいえ、帰省した時の母の顔がやはり嬉しそうで、地元でゆっくりするのもたまには良いですね。とても、充実した休暇となりました。…」と。また、お見合いを見送る方向でいることも、伝えなければならないのに、なぜか今の沈黙ではお見合いの話は禁句のようにさえ感じる。しばしの間のあと、「あの、先生。お見合いの件なのですが─」と口を開こう。)
(今からとてもとても楽しみです!*
恋愛成就まで遠回りを繰り返す2人も2人らしくて、ほっこりいたします**
──お相手さんとは、上手くやれたのかい。
(ぎこちない沈黙破ったのは相手からで、休暇に対する礼には静かに頷いたのみ。相手が里帰りする事などこの六年間ほぼ無かったため、きっかけがあったとはいえこの機会に休暇を与えられたのは良かっただろう。無言で箸を進めつつも、再び訪れた沈黙の後に、お見合い、という言葉が相手の口から出ると僅かに反応を示し、やはり避けては通れない話題に観念したようにようやく相手に視線を向けて。見合いの話となれば祝福すべき幸せな話題の筈だったが、どういう訳かこの夕食の席では互いに何処か緊迫感さえ漂う。結婚を決めた、という結論から聞かされるのが嫌で、結論を少し遠去けるように、お相手と上手くやれたのか、という所から相手に尋ねて。)
(/ おっしゃる通りです!気が付けば先生と棗くんの物語も9ヶ月近く続いていました。長くお相手頂き嬉しい限りです!二人の関係性が変わりつつあるこの頃ですが、今後も様々なストーリーが紡げることを楽しみにしておりますね!)
─あ、え、えぇ。うまくやれたかは定かではありませんが、お料理や読書など会話の共通点も多くあり、気立ての良い女性です。ほんと、僕には、もったいないくらいの方でした。
(思わぬ質問に、若干の驚きと同様を滲ませ乍、お見合いの時の記憶を掘り起こす。うまくやれたかと問われれば不慣れな場面で相手から口を開かせてしまったし、緊張で違和感ある視線の動きだったかもしれない。それでも、相手の方は笑ってくれていて、安堵した記憶もあるので、ただただ不快な思いさせることなく会が終了した事を祈るばかりで。欠点なんてなにも無い、何度考えても勿体ないくらいの女性。「先生の名は口にしていませんが…作品の事を話してたらあっという間に時間が過ぎてしまい、一瞬でした。」と自分の行いに苦笑い。ふと彼女の″お好きなんですね、小説も、その小説家さんも″という言葉を思い出すと、少しだけ照れ臭さもあり、耳僅かに染めつ、自分の話題を終わらせよう、「先生の方は…進捗はどうですか。」と。代わりの世話役との間に起こったことは見れば分かることで、掘り起こす事もわざわざせず、首を傾けてみて、)
(わぁ、そう思うと1年あっという間かもしれませんね*
これからも末永く、お世話役共々宜しくお願いします!
──…そうかい、其れは何より。
(手にしたお椀の中身に視線を落としたままに聞いた相手の返事は、その声色だけであっても成功したのだろうと察しが付くほど柔らかなもの。あれほど見合いを嫌がっていた相手がここまで楽しそうに話すのだから、さぞ素敵なお嬢さんだったのだろう。箸を止める事なく相手の話を聴きながら、途中から話の内容はあまり頭には入ってこなくなり、ただ相手はじきに此の家を出て行くだろうという思いは確信に変わっていて。祝福の言葉を述べるべきだったのだろうが、ようやく開いた口から紡がれたのはひと言だけ。空になったお椀を机に置き、ようやく視線を上げて相手を見れば薄らと耳元を赤く染めた相手。見合いをした彼女に其れ程惚れ込んでいるのかと思えば、黒い靄が一気に胸の内に溢れるような気がして、箸を置き。これ以上この話を続けて居られず、彼の口から決定的な一言が紡がれるのが耐えられず、執筆を進めたいと、彼が決して止められない言葉を選んで部屋へと篭ってしまおう。この靄を消せるのは、執筆に没頭して何も考えずに済む時間だけなのだから。)
…部屋までお茶を一杯持ってきてくれるかい。進捗は問題ない、書ける間になるべく進めてしまいたいから、悪いけど執筆に戻るよ。
…、はい、分かりました。
( 口数が少ないのは元からの性格もあるが、今の空気は若干違うのは自分でもわかった。進捗に問題がない事が本当だとしたら、何か思い悩む事があるのだろうか。そう考えると、心なしか避けられているような、そんな気分になる。空になった器を片しながら、後姿観ると思い出したように「あ!先生、今日は夜ご飯までは煙草は控えて下さいね。随分とお吸いになられているようなので…!」と声をかける。咄嗟に出た言葉は今までの長い月日お世話役をしていた性分からなる癖で、一息零し見送って、)……─失礼します。(あの後お茶を出した後は溜まった洗濯物掃除等の家事を全て一通り片した。そうしている内にあっという間に夜になって、夜ご飯は焼き魚を用意、配膳。その間昼から一度も外には出て来てない先生、一言かけ入室した先で、疲労の色が見え隠れ。晩御飯のご用意が出来ました、と声をかけて)
…、…其処に置いておいておくれ、後で食べる。
(背中を追って来る相手の言葉には特段反応を示すことはなくそのまま書斎へと。書きかけの原稿用紙と硯に置かれた筆を一度眺め溜息を吐く、同時に自分の中に燻っている何かを感じるのが嫌で、何かに追われるように筆を執り。不器用な小説家は、書き物に溺れる以外の感情の忘れ方を知らない。自分でも正体の分からない焦りとも苛立ちとも取れない妙な感覚、それが自分の中にあるのが不快で躊躇なく煙草の箱に手を伸ばし、一本を口に咥えると火を付けた。手を止めれば考え出してしまう、考えることで得体の知れない感情の正体を知ってしまう事も怖かったのかもしれない。相手の声がして不意に物語の世界から引き摺り出された時には辺りは暗く、文字を書き連ねた原稿用紙は机の上の一画に積まれていて。締め切り直前などには此れまでも書斎で食べる事はあったが、此処まで持ってきて貰うよう頼むと再び原稿用紙に視線を落とす。翌日以降の食事も部屋に持ってきて貰うよう頼むばかりで、ほとんど部屋から出る事も相手と顔を合わせる事もなくなり、食事にあまり手をつけないまま膳が襖の前に置かれている事もあり。時折交わす言葉の言葉尻も冷たいもの、相手を避けていることは明らかだった。)
…あ、あの。先生が御多忙なのは重々承知ですが、一度原稿から離れて、お食事されませんか。
(自宅に帰って数日が経った。その間、相手と視線が交わった回数はきっと片手で数えられる程度だろう。会話だって、必要最低限の物ばかり。ある日の夕食を作っている最中、カレンダーを一瞥。締切日から逆算して、ここ数日篭っては執筆を進めていることを考えると、たいそう余裕のある進行具合であろう。相も変わらない態度に、一人でいると溜息さえ出てくる。しかし本来ならば、自分はお世話役として側にいる身。お食事は取れているし、煙草の数もやや増えてはいるがお声掛けで何とか許容範囲に収まっている。家事は滞りなく進んでおり、仕事としては何ら支障はない。なのに、心のどこかで寂しさを感じているのは別の関係性を求めてしまっているのだろうか、はたまた気の迷いなのか。知る由もなく、あからさまに避けられている理由も考えれば考えるほど分からない。単刀直入に聞くしかないと夕食は居間に配膳、執筆部屋をノックして)
(2週間遅れて申し訳ありません。10月からペースを早めに返信出来たらと思います。毎回の不定期更新ながら返信して下さる事、大変感謝致します。
上記にて耐えきれなくなった棗くんからお声掛けさせて頂きました。ここから会話を進める中で、彼自身、恋心に気づく流れにいたしたいと思います。
──お前さんの仕事は、私を執筆に集中させる事だろう。
(執筆に没頭しては、彼の呼び掛けやノックの音で意識を引き戻される事をここ数日で何度繰り返しただろうか。灰皿には煙草の吸殻、スランプの時に比べればまだ落ち着いて居るが普段よりは明らかに多い。机の上に溜まる一方の原稿は、既に締め切りまでに求められているものをゆうに超えているだろう。一日中部屋に篭って執筆を続ける事の連続で疲労も相当に溜まっており、肩の凝りと頭痛とに苛まれていて、其れもまた苛立ちの原因になっていて。食事を、という声にも振り返る事はなく、眼鏡を外して眉間を指でほぐしつつ、少しの間を置いて返した言葉はたったのそれだけ。食事を取る取らないというよりも、執筆の邪魔をするつもりなのかとでも言うように冷たい言葉を突きつけただけで。)
(お返事ありがとうございます!そうなんですね、それは嬉しいお知らせです…!また少しずつ一緒に話を紡いでいきましょう!
展開もありがとうございます。相変わらず冷たい先生ですが、頑固かつ寂しいだけなので笑、ここで話を進めて頂ければと思います。その中でこちらも自分の気持ちを理解して行ければ良いのかなと!)
…執筆に集中して、かつ、心身ともに健康でいられるように、お仕えしております。
(此処まで来ても交わる事のない視線と、向けられた言葉は冷たい刃となって自身の心を抉った。ずきん、とした精神的な痛みを胸に、それでも心なしか痩せていく姿が心配で、はっきりと上記を告げる。帰省前と後であきらかに違う態度、帰省中に何かあったのかと思っていたが、ここ最近の様子から鑑みるに自分自身が影響しているのではとかんがえる。「…失礼ですが、最近の先生は、どこか苦しそうで、見てられません。僕が帰省から帰ってきた頃からです、…僕自身が原因と仰るのなら、覚悟していますので、それ相応の対処を、……お願いします。」と真っ直ぐに背中へ視線を向け告げる。対処、すなわち解雇すらも覚悟の上。全ては先生の為、と自分に言い聞かせる。途中、離れたくないという本音が、たった一言お願いしますとの言葉を紡がせるのを邪魔をした、)
( 度々背後から失礼します。
大きな台風が過ぎましたが、如何お過ごしでしょうか。地域によって被害が大きく異なる為、貴方様が無事でいることを心よりお祈りしておきます。此方の方は、何とか無事に乗り換え被害もなく、過ごしております。返事等、ご無理をなさらず…気長にお待ちしてます。
…私がお前さんの任を解けば、それで満足なのかい。
(肩こりから来る頭痛だろうか、ズキズキとした痛みに、相手に背を向けたまま眉間を抑えつつ目を閉じる。思考も言葉も、今は互いに完全にすれ違っていた。自分に非があるのなら、と彼が紡いだ言葉すら、穿った見方をしてしまう。自分から出て行くと言い出すのが忍びなくて、此方から任を解くのを待っているのだろうか、と。暫しの間を置いた後、ようやく椅子を回し相手と視線を合わせる。しっかりと顔を合わせるのはいつぶりだろうか、疲労の色濃いやや気怠げな鋭い視線が相手を見つめた。出て行くと決めていながら、決して自分からは言い出さない彼はひどく酷だ。そんな事を思いつつ、煙草に火を付けた。出て行け、と口にすれば彼は愛すべき女性の元に向かい二度と此処には戻らないと確信していたからこそ、好きにしろ、という月並みな言葉を告げただけで、彼を突き放しきれずにいて。言葉少なで、彼と向き合えないその不器用さが、そもそも根底の事実の認識が間違っているという事に尚も気付けなくしている事に、本人は気づいていなかった。)
──第一、私たちの間に契約なんぞ存在しない、お前さんの好きなようにすれば良い。
(/ ご心配いただきありがとうございます…!私が今住んでいる地域は夜のうちに過ぎ去ったようで何事もなく、無事に乗り切りました。テレビなどで見ると各地相当に被害が大きかったようで…背後様もご無事で何よりです。昨日で担当していた仕事が一段落した事もあり、またもやお待たせする暇もなくのお返事となってしまい恐れ入ります、!)
─…、嗚呼、そっか。
(久しく交わった視線は、嫌に鋭く、疲労感交じりのものだった。その裏腹に交わった視線が妙に嬉しくもあり、向けられた事実に早くも感情が混乱する。先生の仰る通り、2人の間に正式な紙面による契約はない、全て口頭での口約束でここまで来た。2人を繋ぐ、確固たるものはない。改めて自覚すると、自分と先生はいとも簡単に離れる事が出来る事実が1つ増え、悲哀の気持ちが芽生えた。最初は先生の作品が好き、という率直で単純な理由だけだったのに、今は違う。それだけは前から気付いていた。ただ逃げて居ただけで、今ならすとんと落ちてくる。自分が先生に対して、恋心を抱いている事が。ふと自覚した気持ちに、思うわずぽつりと上記の言葉と同時に、一筋涙を零した。ただでさえ同性同士というのは理解し難い世の中だ、このまま居て、もし、気付かれとして、先生の足枷となるような事を増やしてしまう。最初から決まっていた、このまま一緒に居てはいけないではないか。悲しくて、2回目となる涙も、これで最後かと、言葉は止まらず。)……好きなようにしていいんですか。でしたら、僕は先生のお側から離れるつもりはありませんよ。6年前、ここの戸を叩いた時から、気持ちは変わりません。…ここを離れるときは、先生からのお言葉に従うのみです。
(返信ありがとうございます。私の方も、同じように一晩のみで被害は特に出ておりません。ご無事で安心しました。
物語の方向について、棗君の方は恋心に気付いた場面を投稿させて頂きました。先生の方の気持ちの流れはお任せ致します。
──どうして……私を置いて、出て行くんじゃあないのかい。彼女と、一緒になるんだろう。
(吐き出した紫煙の奥、相手の頬を滑った涙を見て、あの雪の日を思い出した。初めて彼の涙を見たあの日も、自分は彼に出て行け、と言葉を突き付け、同じように、心の隙間を埋めるかのように煙で身体を満たしていた。思えば彼と言い争いをするようになったのは此処数年のこと、いずれも自分が機嫌を損ねて、その後も引くに引けなくなり彼に手を焼かせていた。今回これ程までに彼と向き合う事を拒み殻に閉じ籠った理由、其れが「独占欲」である事には薄々気付いてはいたが、形式上主従関係にある彼に抱くべき感情では無いと自分に言い聞かせていた。彼の流した涙の理由は掴みきれていなかったが、また彼を傷付けてしまったと思ったし、少なからず動揺した。あれ程に鋭い言葉で、視線で、彼を遠ざけたのは自分だと言うのに。それなのに彼の口から出たのは、まだ自分の側に居たいということ。予想とは異なる相手の言葉に驚いたように彼に視線を向けた。思わず紡いだ言葉に、無意識ながら正直な気持ちが現れていた。自分は、彼に置き去りにされてしまう事をずっと恐れていたのだ。彼が自分から興味を失い、他の誰かと姿を消してしまう事を、妬ましく思っていたのだ。その気持ちが何なのか、まだ彼のように明確に理解はしていなかったが、言い知れぬ感情が胸の内に渦巻いているのは確かだった。)
(/ 棗くんが自らの感情を認識する場面展開、ありがとうございます。先生もようやく棗くんの言葉で、自分の思い違いだった事に気がついて、胸の内にある独占欲についても理解するという流れにしてみました。現段階では恋心、とまでは理解できていません。ただ棗くんが大切で、自分以外に興味を持って欲しくないという我儘な状態です笑 認識としては棗くんの片思いのまま少し話を進めても良いですし、先生も恋心に気づき両思いで進めても良いと思うのですが、どちらが良いでしょうか?今後のストーリーも悩みどころですね。)
…その話は、とっくの前に、丁重にお断りしましたよ。
(お世話役とあろう者が、作法も礼儀もなく、つたう涙を、袖で、まるで叱られた子供のように乱雑に拭う姿が、心の余裕の無さを表しており、心がきゅっと詰まるのを感じた。ただ、恋心を抱えたまま側にいる心苦しさもあって、どちらにしても居るべきではないのではという気持ちもあるが、今ばかりは自分の正直な気持ちが勝ってしまい、先生の目をまっすぐ見つめた。その表情は、眉もやや下がり、悲しみも含まった表情で、)僕の居たい場所はいつだって決まってます、…先生。貴方の元なんです。
(またまたお返事遅くなり申し訳御座いません…;!
どちらにしても先生の心情なので、貴方様が動かしやすい方で構いません* どちらの流れも、素敵でわくわくします**取り敢えずはこの勢いのままお見合いは断ったとお話しをして、お互いのモヤモヤが取れた所でここでは仲直り、また普段の生活に戻るが気持ちの変化も互いにあり、照れも入ってからどこか余所余所しかったり…なんてもどかしく甘酸っぱい流れも良いですし、そこにたまに少しのギャグ要素を加えて、両片想いのような、空振り場面を入れても楽しいですね*
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