小説家 2018-11-29 01:25:00 |
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──親御さんからかい。
(電話の音が遠くで響き、直ぐにやむ。相手が留守にしている時以外は電話を取ることもない、直接話が必要な編集者からの電話であれば相手が呼びに来る筈で、今日はその気配はなく己の作業に没頭して。手を伸ばした湯呑みを口元まで持って行って、既に中身が無くなっていた事に気がつく。相手を呼ぼうと声をあげようとしたが、先程の電話の対応中だろうと思い出し、筆を置くと湯呑みを片手に腰を上げて。書斎から台所へ行くまでの間にある縁側に面した廊下、明るい日差しと涼しい風が心地良い。そろそろ風鈴でも出そうかと考えつつ居間に向かうと、ちょうど電話をしている彼の声が聞こえた。薬缶を火にかけつつ、耳に入ってくる会話はどうやら母親からのもののようで。珍しく戸惑った様子の声、湯が沸くのを待ちながら自然と意識は相手の話し声へと向けられていて。世話役とは言え、大切な息子がいつまでも住み込みで働いて居たら親として心配しない訳がない。ふと思えば相手が此処にやってきてから6年、年齢的にもそろそろ結婚を考えるべき歳だろう。明確な言葉はなかったが想像するに電話の内容は見合い話だろうと見当が付いたのは、流石想像力が仕事に直結している小説家だからこそとでも言うべきだろうか。相手が電話を切り小さな呟きを零したのはちょうど湯が沸いた頃。急須に湯を注ぎながら、おそらく自分がいる事に気付いていないであろう相手に声を掛けて。)
(/いえいえ、大丈夫ですよ。ありがとうございます。相手と話して見合いに行く事を勧め、見合いの日程が決まった頃に後任の世話役の募集を編集者に頼もうとしている事を編集者伝てに聞いてしまって…というような流れはどうでしょう?不器用な小説家らしく相手を幸せにしようと思う余り、というような。喧嘩を経て、見合いに行ったにせよ結局元通りになれればいいかなと!)
─あ、先生。いらしたんですね。最近、電話も怠っていたので少しばかりご立腹でした。
(背後から聞こえて来た声に僅かにぴくりと反応して、振り返る。すでに電話は切った後、部屋は筒抜けだった事を示され僅か恥ずかしい気持ちを胸に。話の内容が内容に、何か間違いを犯した訳でもないのに、不思議な後ろめたさもあって早々に電話の話は切り上げる。それに今は業務中で、先生が片手に持つ急須からあがる煙はついさっき沸かしたばかりものだとすぐに分かった。本来、自分がすべき事をやらさてしまった、それに新しい仕事が始まったばかりの現在、「仕事中に私用の電話をしてしまい申し訳ありませんでした、先生は今休憩中ですか?新章を執筆されたばかりの今はとても大事な時期ですもんね。僕も気合を入れ直して、良いスタートダッシュが切れるよう支えます。」と謝罪を挟みつ、気を引き締めていこうと両手で頬を軽くぺちり、と叩き。)
( とてもいい流れですね!お互いがお互いを想うあまりの苦悩と葛藤が見え隠れした物語…今から紡ぐのがとても楽しみです。ふと、こちらは蛇足ですがここのトピックが出来たばかりの時にもお話した2人の間の人間愛が、話の物語の表現や流れによっては恋愛の方に捉えることもできるなと思いました。人間愛での方向性であれば表現に気をつけつつ、当初お話してた物語によってはそちらに向けても良いのであればこのままとりあえずは流れに任せて…となりますが、現在の意向はありますか?
来週辺り休みをあげるから、近々実家に顔を見せて来ると良い。お前さんがいつまでも此処に入り浸って独り身でいたんじゃあ、親御さんも心配するだろう。
(相手が電話の話を早々に切り上げたがっているのはその様子から分かったが、湯飲みに茶を注ぎ乍そう言って。敢えて相手が避けたがっていた見合いの話を暗に持ち出し、休みをあげるとまで言ったのは、何故かほんの少し心に引っかかる物があったからだろうか。相手の言う通り今は新作の執筆に取り掛かった所、相手の言葉には同意を示すように軽く頷きつつ、早々に湯呑みを手に書斎へと戻っていき。相手が所謂結婚適齢期と呼ばれる時期に差しかかろうとしているのは分かっていた、いつまでもこうして二人で暮らして行く訳には行かないのだということも、頭の何処かでは少し前から分かっていたのだ。然程執筆に行き詰まっている訳では無かったが、煙草を取り出すと火を点けて煙を吸い込み宙に吐き出す。何故かはわからないが、少しもやもやしたものを胸に感じていた。)
(/ですね、ではその流れで進めて行きましょう!私も、恋愛感情の方に傾いて行っても良いと思っています。まだ本人は気付いていませんが今の先生の気持ちは嫉妬にも似たものですし、少しずつ人間愛が独占欲に、独占欲が恋愛感情に、という流れでも良いのかなあと!)
お気遣いありがとうございます。そう言って頂けるとのは嬉しいのですが、……先程も申した通り今は休む時期では…。
(相手の言葉に目を丸く、全て筒抜けだったのか、はたまた想像力が故の言葉なのかは検討付かずだが隠し事は出来ないのは確か。新しいお仕事が始まると、いつもに増して執筆時間は増える。そんな大変な時期に家事も全て放っては、出て行くのは心底心苦しいし、何より結婚自体に関心はなく、乗り気ではないのが正直な気持ち。反して、世間一般では、適齢期と呼ばれる時期。周りが気にかかるのも無理はない、少々口ごもりつ、次に顔を上げた時には先生は部屋に行ってしまっていた。溜息を1つ、お見合いを促されたような気持ちは母からとはまた異なり、何だか変な寂しさを胸に、再び家事に取り掛かる。)
(分かりました!ではその流れを意識しつつも、また物語の方向性によってその場の流れで色々と変えていきましょう。先生の気持ちの移り変わりとても良いですね!棗君の気持ちとしても似てはしまいますが、人間愛として持っていた大好きという感情がこれを機に恋心なのではと考え始め…という流れに致します。また恋人関係に発展する場面は追い追い考えていきましょう!
(机に向かい自分で淹れた茶を啜りつつ原稿に視線を落とし筆を滑らせていたものの、ふとした瞬間に先程の事が頭を過る。書き物に集中できないようではだめだと、自分自身に呆れたように溜息を零しつつ筆を置き。相手の見合いを巡り一連の騒動に発展したのは、この日がきっかけで。週末が近づくに連れて、自分でも理解しきれない感情を抱えたまま煙草の本数だけが増えて行く。相手に対する態度は普段と変わらないもの、特段機嫌が悪く荒んでいる、というような様子ではなく、執筆が行き詰まっているという訳でも無かったが、ふとした時に見合い話を思い出す度に、自然と煙草に手が伸びていた。)
(棗くんの変化も素敵ですね!もとから好意を隠さないタイプなだけに、その人間愛が恋愛感情だと気付いた時の棗くんもとても楽しみです!そうですね、関係がはっきりする過程は追い追い考えるとして、謎の感情に翻弄されて困惑する先生を置いておきますー!笑)
─…
(母から電話があったあの日から2週間が経った。あれから何か変わった事が起こる事もなく、以前と変わらない日々が過ぎていった。明日、朝の電車で2泊ほど実家に帰省を予定している。自分が居ない間に、先生が困らないように数日分の煮物とおひたしを作り置きした上で、何か食べたい時に即席で作れるように野菜もあらかた一口大に切ったものと、下茹でされた肉類も保存しておく。衣類に関しては数日分の寝巻きと普段着を1セットとして置いているので、使う時にすぐ使えるよう用意しておく。こんな大事な時期に家を開けてしまう心苦しさを胸に、卓で夕飯を待つ相手におぼんからメインである魚の煮付けを前に置いて、自分も箸を持ち頂きます、と。先に口を開いたのは自分で、「明日から2日間家を空けてしまいますが、出来る限りの物は用意しました。また、何かあったらすぐに連絡下さい。…それと……母の言っていた事ですが、昔からの口癖のような物なので、お気になさらないで下さいね。それに、見合いの話だって、半ば強引に決められましたが、そもそも僕のような者が相手になる方が不憫でなりません。それに、今は仕事に─」と。見合いの話が来たは良い物の受ける気には未だになれない。矢継ぎ早に、見合いを断る方向で本音であるも言い訳じみた言葉を並べるのは、先生が離れていってしまうのでは、という想いも少なからずあって、)
(ありがとうございます!見合いの前日の日の場面に移行しておきました、回しにくい箇所ありましたら遠慮なくおっしゃって下さい。
そんなに気にしなくて良い、此れまで休みをやっていなかった私も悪いんだから。
──…会ってみないと分からない事もあるだろう。前々から身構えるものじゃない。それに、余り仕事を優先させ過ぎるのも考えものだ。
(手を合わせて箸を取り食事を始めつつ、一瞬の沈黙を破ったのは相手の方。ただ見合いに行くだけだというのに、酷く申し訳無さそうな言い訳じみた説明をする相手に、気にしなくて良いと再度伝えて。見合いに否定的な相手に対して、肯定的な言葉を投げ掛ける。相手にしてみれば此れまでに親から何度も言われてきた言葉だろう。相手が聞きたいのはこんな言葉では無いと分かっていながらそんな一般論を告げたのは、見合いに否定的な思いが心の底で燻っている事に見てみぬふりをしたかったからだろうか。結婚を考える時期で相手が見合いをする事は喜ばしい事であるはずなのに、何かが胸の奥に引っかかっている。不可解なその感覚を消し去りたくて、数日前相手の出ている隙に自ら編集者に電話を繋いだ事を相手は知らない。そして、恐らく今日中に折り返しの電話が掛かってくるであろう事も───ちょうどその時電話が鳴り、席を立つ相手の背中をちらりと横目で見つめ、再び食卓に視線を落として。)
(/ありがとうございます、繋げやすかったです!後任の世話役を探しているだけでなく、既に試用期間を明日からの二日間に設定していて、掛かってきた電話は、候補が見つかったので明日の朝向かわせるという旨のもの。相手が留守の間に後任の世話役候補が代行を務めるも、普段以上に機嫌が悪い小説家に手がつけられる筈もなく、相手が戻った頃には二日間で一食さえ取らせる事が出来ず煙草も制止できず、荒れに荒れた散々な状況…というような流れを想定してみたのですがいかがでしょう?)
そんな事はありません、休みの日でもここに居る事を選んだのは僕ですから。…すみません、─はい、もしもし。
(たしかに世話役は自分以外におらず彼がここで生活する以上は年中無休なのかもしれない。しかし、やる事と言ったら家事と編集者との橋繋ぎが主。先生は、自分とは比にならないくらい仕事中は頭を使っているだろう。それに先生がオフの日はゆっくりとした日程の為、自分もゆっくりさせて頂いてる。休憩だって好きな時に取れるのが利点、大変さはあれどここにいたい理由は山ほどある。ふと、電話が鳴り響き取ると編集の方からで。伝言として、お話にあった新しい世話役の試用期間を明日2日で設定しました、との言葉に目が点。誰かと間違えているのかと思ったが先生ともなると編集は1対1。聞き慣れた声に間違いもなく、とりあえず「はい、伝えておきます。お電話ありがとうございました。」とそつない返事。卓上に戻り、)先生、明日から二日間世話役の方がいらっしゃるという事なのですが…、新しく、増やすのですか?
(とても良いと思います。繋げやすいロル、ありがとうございます!
──…早いうちに後任を探して置かないと、と思ってね。
いずれ二人で暮らす事になるなら、ちょうどお前さんが留守にしている期間に来てもらった方が都合が良いだろう。
(受話器を置く音、当然の事ながら戻ってきた相手は何が何だか分かって居ないというような困惑した顔をしていた。相手の目を見ないままにそのわけを冷静に説明するも、明確に「後任」という言葉を選んで。二人に増やすのではなく、あくまで相手の代わりなのだと。相手が結婚を決めて此処を出て行くと明言したわけでもない。しかし彼の母親から電話があったあの日から、自分の中で相手の幸せを願う思いと独占欲にも似た嫌な感情が交錯していて、良い心持ちがしない。自分はあくまでも相手の幸せを願っているのだと、自分自身に証明するためだけに突き動かされているようだった。気付かぬうちに相手に酷く執着している自分が理解できない、相手は幸せになるべきで其れを引き留めるような事が有ってはならないのだと思うあまり、不器用な小説家は結局自ら相手を突き放す事しかできずに。箸を置くと漸く相手と視線を合わせてそう告げて。)
……そういうわけだから、此方の事は気にせずゆっくりして来ると良い。帰りが遅くなるようだったら電話を一本寄越してくれれば、其れで構わない。
後任って…、僕は先生のおそばを離れるつもりはありませんよ。ただ、世話役がもう1人必要とならば受け入れますが…。
(後任という言葉が何を指すかはすぐにでも分かった。お見合いの話も先生にはすでに筒抜けで、点と点はとてもシンプルに繋がる。つまりは、結婚適齢期の自分に気を遣い、自らもお見合いを進めてくれているのだろう。先生の懐の広さと優しさが、今ばかりはいじらしく感じるのはまた別の話。増員との違いをひしり、感じつつも上記をはっきりと申す。実際問題、家事その他を全て一人でこなす身として、やれる事はやっているつもりだが一人が出来る範囲には限界もある。やれていると思っていても、知らない所で弊害があったのかもしれない。もう一人いるとなると心強くもあるだろうが、先程から感じているもやっとした感情を表す術もない。せっかく用意した晩御飯が冷める前に、一旦は保留と自ら終止符打って。)…….この話は、また後日にします。帰りの電車の切符もとってありますし、定時には帰宅出来るかと思います。お忙しい中の休暇、ありがとうございます。
──…世話役は一人で十分。六年も私の為に働いてくれたんだ、次はお前さん自身の本当の幸せが何なのか、よく考えて来ると良い。
(相手に促され再び食事を再開しつつ、世話役の件に関してはあくまで一人で事足りていると淡白な返事を。側を離れるつもりは無いという相手の言葉に対しても頑なに其れを受け入れようとしないのは、自分も意地になっているからだろうか。自分のような生き方は、おそらく世間一般で言う幸せとはかけ離れている事は理解している。所帯を持たず独りで生きてきた自分にとって相手は唯一の身内のような存在で、だからこそ相手を一般論の幸せへと押しやろうとしているのかもしれない。普段であればそのような明瞭な自己分析を行えたであろうが、今は余計な感情が邪魔をしてきて其れもまた苛立たしい。相手に八つ当たりをするわけにもいかず、それ以降は何を語るでもなく食事を済ませると手を合わせて。心が落ち着かない時は、何も考えなくて済むように書き物に没頭するのが彼の癖で、其れは無理に繋がる事もしばしばあった。今日も無意識ながら、早々に執筆に戻りたいようで直ぐに立ち上がり。)
後片付けは簡単に済ませておいてくれれば良い、明日来てもらった時に片付けて貰うから。
…、お気遣いありがとう御座います。
(自分の言葉に対しての1人で充分だという答えの対象が自分でない事は学がなくても、すぐに分かった。もしかして、随分と前から交代させたかったのか。自分より料理も上手で柄の良い人は万といる。先生はお優しいので、きっと言いにくかった部分もあったのだろう。なんて、悶々と考えを巡らせる。答えの見つからない其れは、時間が経つにつれ増すばかり。普段より断然会話もない静かな空間で各々何を思っているのだろう。先に食事を終えた相手が立ち上がり部屋へ帰ると増す静けさ。空腹なのに進まない、味も感じない料理も今だけは気にならず。程々に終えると、静かにご馳走さまでしたと呟く。ご飯の後は次の日の仕込みと、作り置きの最終チェック。それと、先生と自分の分の寝支度を済ませ、眠りにつくとあっという間に翌日に。)よし、…明後日には帰宅しますので、ご飯はきちんと食べて下さいね。あと、タバコも程々にお願いします。それと─(玄関先で、荷物を抱えて後は出るだけというところで、先生の顔を見るとやはり世話役のさがで、細々と念押しを。たかが数日、されど数日。心配になる気持ちもあるが、先生が見つけた代わりの世話役なら大丈夫だろうと腑に落とし、家を後にして。)では、行って参ります。
…お前さんね、人の事を心配している場合じゃあないだろう。気を付けて行っておいで、
(翌朝、相手が家を出る時間に合わせて玄関に向かうと支度を整え荷物を纏めた相手の姿。其れを見て無性に、やはり行くのを辞めて欲しいと、引き止めたくなってしまうのは何故だろうか。まるで一人で留守番をする子供のように不安そうな表情を一瞬浮かべた事に、本人ですら気が付いて居なかった。普段通りの相手のお節介を聞き流しつつ、相手を送り出す言葉を掛けると玄関の戸が閉まるのを見届けて溜息を。やがて世話役がやって来ると挨拶も早々に家の中の事を一通り説明して。歳は彼とそう変わらない、日雇いの使用人として此れまでも様々な屋敷に出入りしており経験は豊富らしい。少々気弱そうにも見えるが真面目そうな青年だった。小説家の方は元々警戒心が強く、大体の場合初対面の人間には威圧感を与えてしまう事が多いが今回も例外ではなく、必要最低限の事務的な会話を済ませ、生活環境を整える以外の介入は不要だと伝えると部屋へと戻って。)
二日間世話になるけれど、生活環境さえ整っていれば良い。それ以上の事は求めないよ、仕事に関しての口出しも無用。お茶は熱いものを、原稿に溢すような真似だけはしないように。
(/ お世話になっております。小説家サイドは棗君が戻った時に大荒れの状態になっていればいいので、私も数ターン棗君サイドのストーリーに加勢しようかと思います。お見合い相手でもお母さんでも、キャラのイメージがあれば回しますので、軽く帰省ストーリーを挟んで帰ってきて貰えれば良いかなと…!)
─、只今。
(時刻通りに実家の最寄りに着く。6年経とうが未だそう変わりのない街並みはやはり懐かしく、意図せぬ里帰りも少しだけ心弾んだ。駅からそう遠くはなく、見える景色1つ1つの思い出を脳裏に移しつつ、実家にたどり着いて玄関の戸を開ける。迎え入れてくれる母は見て分かる程には嬉しそうに、お帰り、と声をかけてくれる。リビングで新聞を読んでいる父こそ冷静には見えるが心なしか声は少しばかり気まずくも嬉しさを滲ませている。6年経って、白髪も増えた両親だが至って変わりなく安心した。その日の晩は実家のご飯に舌鼓、ふとした会話でお見合いの話に。どうやら母の知り合いの娘さんだそうで、断ったら母の立場も立場だ。明日に控えており場所も設けられている。10時出発だと言う事で、その日は早く寝てしまおう。随分と前に出た自室も変わりなく、就寝を。)
(ありがとうございます。では、お見合いの話を数回したのちに再び先生の元へ…という流れでよろしいでしょうか?可能であれば、お見合い相手の女の子をお願いしたいです*
──初めまして、千代子と申します。
(翌朝、見合いの席である料亭に向かい言われるがままに相手が通された部屋には、控え目なワンピースを纏った器量の良い娘が一人。部屋は以前食事をした料亭にも少し似た造り、外には池が広がるやや広い和室に机を挟んで向かいあって座り。彼女の方はというと、人柄の良さそうな彼に対する第一印象は悪くなく、少しはにかんだように微笑んで。挨拶を済ませぎこちのない少しの沈黙の後、話を振ったのは此方から。事前に彼が文学好きで、とある有名な小説家の家で働いているらしいという情報は聞いていて、)
…総一郎さんは、文学がお好きなんですよね。母から聞きました、小説家の方とお仕事をされていると。
(/ そうですね、その流れでお願い出来ればと思います!お見合い相手の女の子、ご相談もなしに私の勝手なイメージで作ってしまいましたが、短い登場ですので少しだけお付き合いください…!そして毎度の事ながら、ハイペースで申し訳ありません。)
─初めまして。僕の名前は総一郎と申します。本日は宜しくお願い致します。
(当日、後に着いた自分は先に部屋には先方がいる事を知り緊張感を胸に。戸を開けると、洋服を纏った黒髪の女性。清楚で、朗らかな印象を受けつつ互いに自己紹介。席に着き、暫しの沈黙が流れる。そういえば、学生の頃は好きな人はいたしその話をする事こそはあったが特に発展もせず、卒業して直ぐに先生の元へと行った自分は年相応の恋愛経験が乏しい。その場の緊張感も合い待って、女性が好む話がぱっと思いつく事もなく、不意に先に口を開いたのは彼女だった。お喋り好きの母だ、きっと先方には事前─通りの情報は伝えてあったのだろう。普段、先生は名の知れた方なので自ら世話役をしているとは言わない。母が名前まで出しているかは知らないが、名前は伏せつつ会話を返そう。職業と文学について話し出すと、ついつい言葉が饒舌になる。途中でふと我に帰り、咳払い。自分はというと、急な見合い話だったので彼女の事は何も知らない。質問を返して、話を繋げようと。)はい、あまり公にはしていませんが、小説家の方のお側で、家事洗濯等の身の回りのお手伝いをさせて頂いております。先生の創る文章はとても繊細で、それが時に美しく時に儚く、時に切なく…。先生と、先生の創る本に出会えた事が、この上なく幸せで…こほん。すみません、お喋りが過ぎました。千世子さんのご職業やご趣味は何ですか?
( いえいえ、お気遣いありがとうございます。お見合い相手の彼女を提供してくださったおかげで、シーンがとても回しやすいです!何から何までありがとうございます。ハイペースなのもお気になさらないで下さい、返せない日もありますが返信を見ては毎度心が踊り、返せる時間が出来るまでふとした時に何て返そうかと考えるのですがその時間がとても楽しくもあります。人間愛から恋愛へと感情の違いが出始めましたが、今後とも末永く宜しくお願い致します!
…本当にお好きなんですね、小説も、その小説家さんのことも。
(穏やかそうな相手、自分からぐいぐいと来るような強引なタイプではなさそうだ。優しい表情を浮かべて文学について饒舌に話し乍、ふと我に返ったようにはにかむ相手。小説は勿論、其れを書いている小説家のことも含めて本当に好きなのだろうという思いが伝わってきて、思わずくすりと微笑んで。自分の事を問われると少し考えた後に答え。週に何度かではあるが小料理屋で仲居として働いており、料理も接客も好きなのでその仕事も天職だと思っている。趣味と言われれば、自分も読書は好きな方。幼い頃から習っていた三味線やお琴も好きで、今でも時々弾いていた。)
私は、小料理屋で仲居として働いています。お料理も好きで、お客様とお話しをするのも好きなので…私も本を読むのは好きです。あとは三味線やお琴、音楽も好きです。
(/ 本当に嬉しいお言葉です!増えている数字を見て心が踊るのは私も全く同じです。お互いのペースでこれからも末永くやり取りを続けていければ嬉しいです。こちらこそ、これからもよろしくお願い致します!)
─はい、とても。
(彼女の言葉に、本や先生の事を脳裏に浮かぶとするりと素直に言葉が出てきた。それが恋心を表すのか、はたまた人間愛なのかはまだ知る由もないが、躊躇いも何も全てを取っ払って出た言葉に戸惑いはなく、柔い笑みをふつり零す。後者、顔の整った彼女は性格も穏やかな印象で、かつ家事も出来て本も読むしお琴だって弾ける。欠点が見当たらない所か、秀でた物しか見当たらず、読書が好きという共通点に親近感を湧きつつも、まるで子供がヒーロー番組を見るような、そんな尊敬の眼差しを向けながらうんうんと頷いて見せる。彼女の弾いてる姿を見てみたい、と言葉を返す心中は、彼女が働く小料理屋に行って、和食を食べながら、お琴または三味線を聞く時間、先生と行ったらとても喜ぶだろうなぁ、と無意識ながら、ここまで来ても考えるのは先生の事で、)わぁ多彩な趣味や才能をお持ちなんですね。僕は千代子さんのような特別に秀でた才能も何もないので、とても尊敬致します。いつか、三味線やお琴を聞ける日が来ることを楽しみにしていますね。
(早速とても遅くなって申し訳ありません…。マイペースの度が過ぎて、解消されてもおかしくない立場にありながら、お待ちいただいて感謝しかありません。これからも宜しくお願い致します…!(泣)
…いつか、小説家の先生と一緒に来てください。サービスしますから。
(自分を見つめる相手の目は、子供のようにキラキラしていて、紡がれる言葉は素直なもの。いつか聞いてみたい、という言葉からは無意識であろうが結婚前提の話し合いの場であることをすっかり忘れている様子が伺い知れて、思わずクスリと笑った。自分に興味を持ってくれているのは確かな様子だったが、それ以前に彼の心中は大半が小説家の存在が占めているようで、自分も同じように料亭に遊びに来て欲しいと返して。お互いに今はまだやりたい事があるのだから、むしろ自分にとっても彼の様子は好都合で、無理に今結婚を急ぐ事はないと思えば自分の思いを口にして相手と視線を合わせると、微笑んで。)…結婚したら、女性は家庭に入ることが多いでしょう。──だけど、私もね、まだもう少し好きな仕事をしていたいって思っていたんです。…総一郎さんも、私と同じでしょう?早く小説家の先生に会いたいって、顔に書いてありますもの。
(一方彼の屋敷では、留守を任された世話役が既に困り果てていた。茶を差し入れる以外一切仕事を与えられず、食事の用意が出来たと声を掛けようにも話しかけるなと怒られる。小説家の為の食事は手を付けられることなく、昨夜唯一与えられた仕事は、滅多に晩酌をしない彼のもとに酒を運ぶことだけだった。どうしていいか分からないまま、彼の見合いの当日も食事を摂らせる事が出来ずにいて。)
(/ いえいえ、お気になさらず!やりとりが楽しみだと言ってくださったお陰で、少し間が空いてもお返事は必ずくださると信じて待つ事が出来ております!むしろ私の返信スピードのせいで急かしてしまっているような気がして心苦しいです…いつもお付き合い頂き、此方からの解消など微塵も考えたことはありませんよー!こちらこそ今後ともよろしくお願い致します。)
─あ、…はは、千代子さんは冗談もお得意なんですね。いけない、顔が緩み切ってたようで。お恥ずかしいです。
(彼女の後者の言葉に、思わず咄嗟に両手で頬を覆う。顔に文字など書いてあるはずもなく、すぐに冗談だと気付き恥ずかしさからやや顔赤らめながら笑って誤魔化す。図星だったのかはさておいて、彼女がそれほどまでに言うという事は随分と頬が緩んでいたようで、ぐっと引き締め直しながら咳払いをこほん。)千代子さんのお店に行く日を楽しみに、僕もお仕事頑張りますね。
__ふぅ。
(少しばかり躊躇っていた見合いも、いざ行ってみれば美味しい料理に弾む会話はとても楽しく。それもこれも、お見合い相手の千代子さんのお人柄の良さがあってこそ、簡単な自己紹介を終えた後は小説や休みの日の過ごし方など他愛のない話で盛り上がり、共通点もちらほら見つけた。あっという間に時間は過ぎ、帰路につく。実家に着くと、楽しかったとはいえ長い時間、外で初対面の方とのお話に、普段は着ない少々かしこまった装いを脱ぐと疲労感でと溜息を零す。明日の昼には先生の元へと帰るので、早々と入浴を終えて、荷物の整理を行う。ひと段落したところで、母から声をかけられた。『今日のお見合い、千代子ちゃんはあんたには勿体ないくらいのお嬢さんだと思うんだけど、どうかしら?そろそろ良い人でも見つけてくれれば、お母さんもお父さんも安心するんだけどね…』と。「もう少しだけ、考えてみるよ。今日はありがとう。」とだけ返事を返し、布団に潜る。真っ暗な中、ふと考える。母の言う通り、欠点の1つもない、ステキな女性だった。共通点も沢山あり、きっと彼女のような人と結婚したら幸せなのだろう。ただ、どう考えても彼女といる未来が見えない。今だって、明日には先生に会えると実家にいながらも浮き足立っていたし、お見合いの最中に時折思い出すのは先生だった。先生のおそばに居たい、自分が望む未来と現実との狭間で名前のない感情が渦を巻いて、そこから逃げるような深い眠りについてしまおう、)
( 毎度お優しい言葉に感謝致します泣
これからも末永く宜しくお願い致します!
さて、お見合いの場面をここで切って、明日昼に帰宅という流れに持って行こうと思うのですが貴方様のご希望の再会シーン・告白シーンなどありますでしょうか?1つの大きな場面にもなるので、やんわりでも流れを決めてから場面に移る方が良いのかなと考えました。当方としては、お世話役として雇ったは良い物の、台所家具等にまともに立てず、触らせず状態・当の本人も荒れて、今日には帰って来るからとそうそうに帰らせた先での帰宅ですと、2人の空間になるのでその後の展開はスムーズにいくかな…と漠然で何の根拠もないやんわり考えなので、この後の流れご希望ありましたら、全然そちらでも大丈夫です*
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