Kyle 2018-10-24 21:25:53 |
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約千年前、世界九大陸と天空と地底を統べた【エルフの王、エレイン・フォルストル・オベイロン】は、人類の勇者【人祖、ヴェルグル・エイルレイヴン】によって滅ぼされた。
人祖ヴェルグルは、かの覇王討伐の証に、その全権を奪い取り、ここに人類史最初の国家として【帝国】を建国した。世界九大陸を版図した、有史上最大国家の誕生であった。
帝国の出現により、これまで迫害を受けていた人類たちは、その柵から解き放たれ、瞬く間に知性有する数多の種族の頂点に躍り出た。【人類至上主義】の黎明である。
人類至上主義による人類ならざる知性種族(亜人)は、数世紀の時の中で壮絶な迫害と権利侵害を受けてきた。モノとして、あるいは無垢なる獣として。
帝国建国から九百年もの歳月が経ち、人類一等の社会制度が構築され、疲弊しきっていた亜人種族の中から、叛逆の種が芽吹いた。
かつて【ロイヤルエルフ】と呼ばれた希少種族の生まれ、【反乱軍元帥、ユスターフ・イフリート】率いる反乱軍が蜂起。全亜人種族が集結し、帝国と衝突。四〇年の長きに及ぶ大戦が幕を開けた。
大戦は熾烈を極めた。帝国は、その版図の広いが故に膨大な戦線を抱え込むこととなった。帝国軍の姿は、鈍足を極めた青銅製の獅子、揃わぬ足並みと複雑に絡み合った指揮系統は、反乱軍によるゲリラ戦によって、壊滅的な被害を被った。
大戦初期は、反乱軍に分があった。ユスターフ・イフリートの天才的な指揮により、帝国の都市や砦は陥落。物量と多種多様な戦術展開が帝国を翻弄させ、じわじわとその版図を喰らっていた。
帝国軍参謀本部は昼も夜もない作戦会議が続き、帝国中央大議会に至っては、戦争継続派と講和終戦派と政局を二分し、ついには当時戴冠して間もない、講和終戦を唱えていた時の皇帝【アルブレヒト三世】が戦争継続派に暗殺されてしまった。帝国は戦争継続の一色に染まり、地方の農民でさえ武器を携え、地獄の様な戦場に派兵させられるようになる。
帝国に劣勢が続く中、【先帝暗殺】を受け新たな皇帝が即位。議会の大多数を占める戦争継続派によって擁立された若き帝【ジゼル・ノールホーン帝】は、勅命にて帝国政治部および軍部を再編成。戦線を後退させつつ、帝国内部の大改造を半年で行い、【ジゼル体制】が敷かれた。
貴族平民問わず、有能な人材を国家中央に登用。文官武官の面々を一新し、それまで議会に委任されていた統治権を皇帝自ら振るう事態にまで至る。
後退していた戦線は、中央で改造を経た大軍団と軍備交代を行い、帝国全土に秘められていた膂力を一気に反乱軍にぶつけた。この時期より、人類が器具による魔導を扱い始め、帝国軍の新装備に魔導銃器が見られるようになる。
帝国による魔導具の戦場投入により、それまで物量によるゲリラ戦に頼っていた反乱軍は大打撃を受けることになる。当然、人類よりも圧倒的に魔法を扱える種族も存在したが、術を扱う戦力には大きなムラもあり、確固たる戦力として計上はできなかった。
対する帝国は、小規模な訓練のみで攻撃魔法を弾幕のように展開できるようになると、戦局は一転して帝国が有利になっていった。
長きに渡る大戦の終結は、人類代表【時の皇帝、オットー・エイルレイヴン・エッセナート】と亜人代表【反乱軍元帥、ユスターフ・フォルストル・イフリート】による種族相互平等条約――
・全亜人類と人類の権利平等化
・人祖ヴェルグル・エイルレイヴン崇拝禁止
・帝国領土である全九大陸の解放と割譲
・亜人類による国家建設の容認と無条件援助
・帝国国庫の解放と分配
・魔導具技術の無条件提供
・亜人類による商いの自由化
などをまとめたものが締結された。
これにより、四〇年続いた大戦が終息する。
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