大切に扱われた人形には、心が芽生える御伽噺。
人間になれる訳ではないけれど、
自由に動ける訳では無いけれど、
たった一つだけ出来ることがある。
『優しい心を持つ人との対話』
人形と持ち主の、あたたかな恋の物語。
聞いたことはありますか?
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ひどい嵐の夜だった、目が覚めたのは。
ずっとずっと、大切な誰かと一緒にいたはずなのに、覚えていない。
主が誰なのか、どうして記憶がないのか、どうしてここにいるのか、自分の名前は何なのか。
覚えているのは存在だけ。大切な大切な、温かい温もりだけ。
古びたアンティークショップにある棚の三段目。そこに置かれた30cm程の青年の人形は、今日も大切な人が戻ってくることを祈っている。
【俺の声が、届きますように】
【俺の名を、呼んでください】
貴方は俺の主ですか?
それとも、初めましての人ですか?