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聞こえますか？記憶を無くした人形の声が、
とある人形 2018-09-15 22:16:46 |
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大切に扱われた人形には、心が芽生える御伽噺。
人間になれる訳ではないけれど、
自由に動ける訳では無いけれど、
たった一つだけ出来ることがある。
『優しい心を持つ人との対話』
人形と持ち主の、あたたかな恋の物語。
聞いたことはありますか？
～～～～～
ひどい嵐の夜だった、目が覚めたのは。
ずっとずっと、大切な誰かと一緒にいたはずなのに、覚えていない。
主が誰なのか、どうして記憶がないのか、どうしてここにいるのか、自分の名前は何なのか。
覚えているのは存在だけ。大切な大切な、温かい温もりだけ。
古びたアンティークショップにある棚の三段目。そこに置かれた30cm程の青年の人形は、今日も大切な人が戻ってくることを祈っている。
【俺の声が、届きますように】
【俺の名を、呼んでください】
貴方は俺の主ですか？
それとも、初めましての人ですか？
…今日もダメみたいだ。
（天気が傾き薄暗い雲がにじり寄ってきているのを視界の隅にある窓から確認した。只でさえ訪問の少ないアンティークショップだ、これからの来店は期待出来そうにない。レジの向こうでは俺を拾った店長が帽子を目深に被り新聞を読んでいる。＿彼には俺の声が届かない。優しい人ではあるのだが、やっぱり対話は簡単に出来るものではないのだと最近思い知らされた。自分の力では動くことも出来ないただの人形が心を持つのは厄介で、どうしても「寂しい」と感じてしまう。そう感じたところで、俺には結局どうする事も出来ないのだが、と諦め半分でついた溜息はやはり静かに室内に響いて）
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