【ショコラ色のコスモス】

あ あぁ…うん？
そんなに温泉好きだったっけ？
旅館とかこだわるタイプなんだね

（分かりやすくはしゃぐ姿を微笑ましく思いながら 首を傾げる。てっきり 遊びに行くのが楽しみなのだろうと思ったが、気にしているのが宿泊施設なことが気にかかる。）

風呂も、割と楽しみだけど…
"初めて"はそれなりの雰囲気があった方がいいだろ

（不思議そうな顔をする相手に サラリと言ってのける。初めての泊まりがけなのだから そういう事も期待してしまうのは仕方ない事だ。）

…今すぐ離せエロガキ
お前 そんなこと ばっか考えて…！

（相手がそんな事を言った瞬間 立ち止まり、握られた手を振り払おうとする。少しでも期待した自分が馬鹿だった。ついさっき 怒ったばかりなのに全く懲りていない。そういう時期なのは分かるが デリカシーがなさすぎるのではないか。）

はぁ？！いい歳して何恥ずかしがってんだよ！俺なんかよりよっぽど経験豊富なくせに。…好きな奴と外泊っつたら 夜の事もそりゃ考えるに決まってんだろ？！
つーか いつまで待たせるつもりなんだよ！少なくとも 三年は待ったぞ俺は！！

（腕を引っこ抜こうとする相手を頑として離すまいとガッチリと最近受けた防犯講座で習った 犯人を掴んで離さない技術を応用して掴んでおく。三年間何度アプローチかけても躱されてきて、大人になったら と言われてきたが もう二十歳になったのだからその手は使わせない。）

だ…ッ それ関係ないだろ…！
おま…別れて 復縁した途端にそれは ヤリたい盛りのガキじゃねーか！！

（赤裸々に欲望を隠そうとしない相手にこっちが恥ずかしくなってくる。せめて そういうのは言葉に出してくれるなよ！と心の中でツッコんでおく。純情ぶるつもりはないが そういうのはまだ早いと思っていて。
そこでふとコイツは、役割的にはどちらを担うつもりなのかと疑問が浮かんだ。）

ヤリたい盛りだよ俺は！これからは積極的にいくって言っただろ！！もう俺 未成年じゃないし、何の問題もないじゃねーか！何が不満なんだよ！？

（割と本気で抵抗してくる相手に 本心から自分との行為を嫌がってるんじゃないかと思う。俯いている為 宮尾の顔が見えないのもその不安を掻き立てる。）

いや だって…、っ
そりゃ 今はもう未成年ではないけど…
でも…お前 が… まだ、そういうの 早いし

（これは本気で逃してはくれなそうで 俯きながら狼狽える。激しく抵抗する力はもうないが 何とか切り抜けたい。正直 性経験に良い思い出はなく、ただ圧迫感や形式的な運動のような印象しかない。しかも 異性愛者である早坂が 自分相手に本当にその気が起こるか不安で。まだ相手を信じきれない。 ）

…さては アンタ 未成年にどうとか言って逃げてたの 単に ビビってただけだな？！
つーか 何なら 今すぐラブホに連れ込んでもいいんだぞ！？

（特に理由も言おうとせず 俯いてモゴモゴ言う相手に、そんなに自分とするのは嫌なのかとムッとする。まさかここまで拒否されるとは思っておらず多少なりともショックを受ける。とりあえず 道の真ん中で口論を続けるわけにもいかず、どこか公園にでも行って座って落ち着こうと思って。）

えっ ぁ…ご ごめ…ッ？！
…ま まって…や、

（相手の怒った様子に ビクリと肩を揺らす。まさか本当に と思いながらも 抵抗することも出来ず連れられ 背筋が凍る。自分でも どうしてここまでびびっているのか分からない。）

……冗談だから、
そんな 無理矢理する訳ねーだろ…
場所変えて 話すだけだから

（あんまり怖がらないでくれ、とまでは言葉に出せなかった。振り返るまでもなく真っ青な顔をしているのが声で分かる。今この手を話したら逃げられてしまいそうで 手を緩めることすら出来なかった。）

……、ッごめん

（そこでやっと 早坂が悲しそうにしている事に気付いた。そりゃ あれだけ拒否されれば当然だろう。ただ謝る事しか出来なくて 俯きながら大人しくついていく。
到着したのは近所の公園で、ベンチに隣り合わせに座らされる。）

…俺こそ悪かった 流石に、急過ぎたな
すっげー 余裕ない、ガキだ俺…ごめん
もっかいチャンス貰えて 浮かれてた…
知らない一面見れて 嬉しくて 前よりもっと好きになったから…ぜってー逃したくなくて焦った

（隣に座るが手は離さないままにしておく。この手を離してしまったら やっと繋ぎ止めた意味がなくなってしまうかもしれない。他の奴らにはこんなに上手くいかないことないのに、宮尾相手だと空回りしてばかりだ。）

…八尋、

（どんな時でも理不尽なほど強気な相手がこんなにしおらしいのは滅多に見ない。叱られた後でもここまで弱気になってるのは初めて見たかもしれない。きっと これが彼の本音なんだろう、素直で 偽りない言葉なのだろうと握られた手が震えている事で伝わってくる。）

…名前呼ばれんの、久しぶりぃ…
す げぇ落ち着くし、なんか安心する…
やっぱ 好き…めちゃくちゃ好きだわ…
……もっと 呼んでよ、智也ぁ…

（相手の肩に寄りかかり甘えるように額を擦り付ける。自分でも情けない声なのは分かっているが、この時だけ 中性的で嫌いだった自分の名前が好きなれる。）

…八尋、やひろ…
八尋はさ、…正直 僕に、男に対して性的に反応出来るの？キスするのとは 比べ物にならないけど

（少しだけ重いが 甘えた声を出す相手を押し返す理由は見当たらなかった。今なら不安に思っていた事を吐き出せるかもしれない。とはいえ、多少 オブラートに包んで尋ねてみる。）

……今更過ぎないか？
男はともかく、智也だったら余裕で勃つ
野郎同士のビデオ見た時 微妙だったけど、智也で置き換えたら めちゃくちゃ…、

（その時点で疑われていたのかとガックリするが質問には答える。以前こっそりネットで割と若い男優のソレを見た時はなんとも言えない感想だった。その後に妄想で重ねてみたら容易に興奮できた。思い出すと また勃ちそう。）

あ そう、なんだ…
…で でも イメージとは、違うかもしれないだろ

（ましてや実際はAVの様な簡単なものではないし、現実の姿を見ても同じことが言えるとは限らない。現に 自分は何度となくキスのイメトレをしていたのにも関わらず 不意打ちであそこまで動揺してしまった。）

…智也はどうなん？
俺と エッチすんの 嫌？具体的にどこが不満？

（ここまではっきり言ってもまだ不安そうな相手に、いっそ本気で押し倒してやれば信じるのだろうかと思う。しかし 無理矢理犯すなんて趣味はないし、相手の怯えながら泣きじゃくる顔を想像しただけで 夢見が悪そう。自分を好きでいるんだろうという自信はあるのに どうしてこう上手くいかないのか。）

…、嫌って訳じゃない
でも…僕は言うほど…上手いわけでも 経験豊富でもないから…それに いい思い出もない…、だから 大人としてリード出来ないし…

（早坂との行為を妄想した事がないわけじゃない。しかし いつも余裕な大人ぶってるくせに、大して上手くもない姿を晒すのが嫌だった。年上だから 自然とリードしなきゃと思っていたのだった。）

全然 リードとか必要ない。
…上手く出来なくたって別にいいし…そりゃ、互いに気持ちよくなれたら最高だけど…触るだけでも満足する…ダメなら何度でも挑戦してみればいいんじゃね？

（そんな事を気にしていたのか と呆れるが今まで 大人の姿を演じて、弱みをみせてくれることのなかった相手からすると話してくれた時点で改善に向かってる。むしろ 無茶苦茶慣れていてあれこれ教え込んでくれるのは、男の浪漫ではあるが それはそれとしてショックが大きかっただろう。そっと引き寄せぺったり寄り添う。）