悪夢に魘される貴方は唐突に目が覚める
醜く穢く、汚泥に身を沈める様な
塩水に浸される様な、茎に錆が浮く様な
そんな夢を見ていた
それは貴方の過去だ、忘れ得ぬ傷だ
見回すとそこは見知らぬ部屋だ
据え付けの調度品、部屋の作りから何処かの本丸である事は確かだ
貴方の記憶は夢の終わりに遡る事だろう
汚泥の中で呪詛に塗れた最期を迎える筈だった貴方は、政府の手で拾い上げられたのだ
貴方の頭には様々な憶測が飛ぶ事だろう
"此処は政府の施設か? 或いは他所の審神者に預けられたのか?"
キィ、と床の軋む音がした
畳を歩く音ではない、と障子の外へ目を配れば眠っていた貴方のすぐ近くの障子に人影が映っていた
いつの間にこんなに近付いたのだ、と貴方は驚くのだろうか
それは貴方にとって脅威になりそうな姿はしていない
それは貴方に審神者の様な強制力も持たず、斬ろうと思えば斬れる物だと確信するだろう
それは、貴方の神経を逆撫でない声で、こんな風な事を言った
「貴方の気が済むまで、貴方は此処に居ていい。貴方にはその権利が有る」
影はゆっくりと障子の外を横切って行った
❁︎暫くレス禁止