匿名さん 2018-06-10 21:12:24 |
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爆豪
( 気が弱く、間が多い返事。さっきの調子だと、少なくともオレにとっては大したことないものばかりなのだろう。尋ねてやってるんだから答えればいいものを。変な奴だ。何とも自己中心的な思考回路で不思議そうに相手の様子を観察し続ける。思い出したように、前と同じ女子っぽい香りが鼻腔を掠めていった。距離が近いからか。あまい、と一言では纏められず柔らかい感じの匂いとしか形容できない。奴の顔は俯いたまま。若干の赤みを帯びている気がしないでもない。 )
__、
( _瞬間、それが目に入った時、咄嗟に体が動いていた。意識の範疇外での行動だったから、恐らく衝動に駆られていたのだろう。多分、今のコイツにオレはそそられていた。ガラ空きの前髪を上に持ち上げ、姿を現した額に軽く口付ける。触れるだけの方。意識して可能な限り優しいキスにした。 )
…テメェはこういうの、されたくねぇんか。
( うざったいとか嫌いだとか、普段からこの女に対して抱いているマイナスの感情は一切合切感じなくて、ただ今の瞬間だけでもコイツに触れたいと強く願った。願っていた。揶揄している訳ではなく、しかし心のどこかでは彼女に仕掛けているような気分。よく分からない感情のまま、未だ視線は外さずに鋭く相手を見つめ続けて。 )
耳郎
んー…、じゃあCDかな。先に買って早くモールで遊びたいし。
( 此処からならどっちのお店も同じぐらいの距離だし、多分上鳴もそれを考慮して尋ねてる。でも今日はとにかくCDを買いに来たんだし、先に買っておかないと多分気持ちが落ち着かなくてあまり楽しめないような気がする。少し悩んでから提案。「で、その次は上鳴の行きたいところに付いてくから。何処から行くのか決めといて?」上鳴が行きたい所の方が断然多かったし、CDを買ったらすぐ行けるようにしたい。仮にも放課後だから時間も限られる。途中で時間が無くなるのは嫌だから、今のうちに一言声をかけておいて、頭の中でもモールをどのように回るか頭の中で計画立てておく。…今になって二人で遊べるんだって実感が湧いてきて、何だかさっきよりももっと楽しみになってきた。 )
( /それは心配ですね…当方も同じく脱水気味になってしまった方がいて、何だか慌ただしい日々です。
今後も猛烈な暑さが続くようですので、どうか背後様もご自愛ください…! )
成合
( 急に涼しくなった額。目線を上げる前にひどく柔らかい感触が時を止まらせて、そのまま彼が言葉を発した後の数秒まで秒針は動かないままだった。何をされたかを噛み砕いて理解する前に体はびくりと震え、本能的にそれが何だか分かってしまう。──なんでだろう、なんでなんだろう。なんで彼は、ここまで私が喜ぶツボを的確に突いてくるんだろう。ぐるぐると回り行く思考の中でそんな問いがふと浮かんで、好きだからなんだとすぐに答えが出た。 )
…えと、
( やめてほしい。本当に、そうやって問いかけるのはやめてほしい。隠そうと努力していた下心だとかが全部漏れ出てしまいそうになる。いとも簡単に開けね て、そうやって。尋ねられたことへの答えはもう口先まで出かかっていた。 )
…したいし、されたいです。
( 視線だけを彼にやれば、久々に瞳に映った気もする彼の姿がどうも愛おしくてすぐに言葉が零れた。今世紀で最大くらいには恥ずかしくって仕方なくて、それでも目を逸らすことはできないからちらちらと彼を盗み見るだけだけど。 )
上鳴
おー、りょーかい。
なんかスゲーな、母親みてーだわ。
( テキパキと物事を決めて、CDを買ったあと最終的には俺の判断に任せてくれるらしい。どっかで見たことあるなーなんて既視感を感じたと思ったらよくこういったショッピングモールなんかに連れてきてくれた自分の母親で、褒め言葉のつもりでそんな感嘆の一言。「今日はデートだからちょっとちげーけど」なんて訂正も加えつつCDショップへ向かうことにした。 )
…つーか、俺らみてーな奴ってけっこーいんのな。見てるだけで羨ま…、…胸焼けしちまいそうだわ。
( CDショップへの道筋で見かけたのは、同じような出で立ち、つまり制服を着た高校生カップルたちだ。どうもベタベタイチャイチャと甘い雰囲気をそこら中に解き放っては1人で来ている成人男性に睨まれていたりと異様な光景が広がっていて、なんだろう正直羨ましい。…いや俺も今日はデートだけど!実際には付き合っていないわけだし、どっちかと言うと友達と遊びに来たって風に見えるかもしれないし。いやデートだけどね?もしもの話よ?マジマジ。誰に向けているのか分からない言い訳を頭の中で繰り広げながら小さく「彼女できたら引っ付いて歩いてやるからな…」なんて恨み言ともとれる言葉を呟き。 )
(/ ありがとうございます…!これから夏も本番ですし、無理をなさらずお顔を出していただければそれだけで嬉しいです!
またもう1ヶ月が過ぎました!どうも時間が経つのが早いなあと感じております。これからも末長くお相手して頂ければ幸いです!)
爆豪
( 素直な奴だ。そういう奴は嫌いじゃないし、コイツらしいと思うとそれだけで満足出来る。多分、本当は心の底で疑っていた。いや、正しくは綺麗な願いだけじゃなくて、もっと正直な望みがある筈だと思っていた。いまいち微妙に俯いている顔を無理にでも引き上げてやろうと、空いている手を奴の頬に伸ばしかけた。 )
…、しねぇよ。はよ帰んぞ
( やや遠く離れた方から足音が近付いて来て、ようやく頭が冷静に状況の把握を進めていく。こんなところを見知らぬ他人に見られる訳には行かない、ましてやクラスの奴らには当然。両手をズボンのポケットに突っ込んで素早く踵を返す。頭の思考が止まらなかった。もしあのまま空気に流されていたら、どうなっていたのか。正直あまり考えたくはなかった。しかしきっとオレは何にしろ止まれなかっただろう。本能的にそう感じる。「……チッ」一瞬、自分自身に恐怖した。意識の外で勝手に動いていた自分の体も、それを認識すらできなかった事も、全部。 )
耳郎
アンタの母親だけは勘弁だわ。苦労しそうだし
( いやなんで母親。せめて姉とかにする気はないのか。多分無いんだなコイツ。てかそれほんとに褒めてんの? 頭の中で怒涛の突っ込み大会が発生しつつ呆れ顔で返す。と、上鳴の言葉に反応して、彼の視線が向かう先を目で追ってみた。この時間帯だからか、眼前を過ぎていく人は高校生が多い。それも男女。上鳴のことだからその子達を見てるんだろうと思う。その後に上鳴が何か呟いてるようにも見えたけど、周りが騒がしくて流石に分からなかった。…ていうか、羨ましいって言いかけたよねこいつ。ちょっとだけムッとしてしまう。 鈍感め。鈍感鈍感鈍感馬鹿。ばーか。ウチにしたらいいじゃんって言いたい。言ってやりたい。 )
…はいはい、じろじろ見過ぎてみっともないからやめろー。
( でもそんな馬鹿みたいに恥ずかしい台詞なんて言える度胸なんてある訳ないから、なんでもないことしか返事できない。上手く、いかないものだな。もうちょいウチも女子っぽく見られるようにした方が良いのかも。いやでもこれから買うCDめっちゃロックだ、ヤバい全然可愛げ無い。頭の中で色々悶々と考えながら上鳴の腕を引っ張りながら店の方へと歩いていき、 )
( /もうそんなになりますか…!
毎日お相手させて頂けることが楽しくて、あまり日にちの感覚がありませんでした…!!
こちらこそこれからもお暇な時間などに構って頂ければ幸いです~! )
成合
( 彼が踵を返した後、何故だかホッとした。安堵のため息が出たくらいにはホッとした。別に嫌だったわけじゃないし、もちろん怖いわけでもない。なのに何で安心したんだろう。彼の後ろをやはり俯きながら歩きそう考えてみる。たぶん、あまり自分のみっともない姿を見られたくなかったのだ。1番良い顔を見せていたいのにあれじゃどうも不恰好で、それが嫌だった。顔の熱を冷ますように両手を頬にやれば小さく息を吐く。何だかドッと疲れた気がする。 )
…爆豪、
( 彼の背中にそう声を掛け、少しだけ距離を詰めた。熱も少しだけ冷め、人に見せられるような状態にはなったと思う。そういえば伝え忘れたことがあったのだ。声を掛けるような動作にも心臓がキュウと音を立て、どうしようもなく緊張してしまうのは何故だろう。以前だったらむしろワクワクしたというかなんというか愛しさ全開のはずだったのに、 )
上鳴
別にひがんでねーし!
( 別にそんなこと言われたわけじゃないけれど、そう言われているような気がして思わず噛み付く。…いや確かに羨ましいとは思ったけど。でもそれだけじゃん!俺には一生ないってわけでもねーじゃん!そんなことを喚きながら腕を引っ張られていると周りの視線というものを集めるようで、お子さん連れの母親からはクスクスと笑われJKには何あれーなんて言われる始末。先ほどまで別のカップルを睨みつけていた男からの舌打ちは頂くわで結構散々だ。俺たちがそんな関係だなわめ勘違いをしているらしい男にはちげーしなんて叫びたくなったけれど、今日のこれがデートで一応耳郎が彼女ポジションなのは間違いないためそれは我慢して、これ以上笑われるのもなんなので黙って腕を引かれることにする。 )
…あ、先言っとくけど嫌そうな顔すんなよ。
( 多分、これから先歩いていればそんな勘違いをされることだってあるだろう。ただそこでコイツに嫌そうな顔をされれば俺が傷付く。非常に傷付く。「一応デートじゃん?」なんて付け加えをしながらもそう言えば、相手の方を見て軽く首を傾げ。 )
爆豪
…ンだよ。
( 落ち着かない。原因が何もかも全部にあるようだから解決しようにも叶わない。オレはきっと、コイツが。認める認めないの問題じゃねえ。そういうことじゃない。ならどういう訳だと聞かれたら、確実に答えられない。未練がましく記憶を回想する度にどうしてだと問いかけるばかり。何か特定の標的があって問いかけているのでは無いので出口も無い。さっきからこのパターンの繰り返しで自分自身嫌になる。その最中に聞こえてきた奴のか細い声は、そんなオレに現実の認識を迫ってくるようで、些か逃げたくもなる。だが実際にはんなことは出来ず小さな返事を。 )
耳郎
( いやいや、んなとか言ってないじゃんウチ。でもやっぱひがんでたんだねこの野郎。人の気持ちも知らないで、お気楽な奴。もうちょっと頭の中で考えること覚えなよって話。なんでよりにもよってデリカシー皆無馬鹿の上鳴が好きになったんだろ。むむむむむと延々考えながら上鳴の腕を引きつつ歩き続ける。意識が全部頭の方に持って行かれてる所為で周りの様子なんて全く気に留まらず、さっさとフロアを横断していると背後から上鳴の声が聞こえて、 )
しないよ。
…しない。べつに、嫌じゃないから。
( 驚くぐらい早く返事が言えた。多分、結構強気な声音で。意識が到達する前にというか、感情が追いつく前に言葉は出ていた。まるでずっと前から返す言葉は決まってたみたいで、今聞いたことなのに変だ。…てか早すぎて軽く気持ち悪かったんじゃなんてまたマイナスの方に思考が傾いて、取り急ぎ頭に浮かんだことをぽつぽつ繋げて言葉にするけれど、ただ高速で墓穴を掘っているだけのような感じがする。途端に頭の中が混乱を極め始め内心では既に冷や汗が、 )
成合
えっと、
あの…よろしく、これから。
( 理由はどうであれ、というか数十分前の彼がどう考えてそう発言したかはともかく、一応そうしろと言われて自分は頷いたのだ。つまり付き合った部類に入る_と思いたい関係の中にある。なら挨拶もなしなのは少し礼儀がないかもしれない。人と付き合った回数というのが片手で数えられる数の中でもかなり小さな方だからかこういうのに慣れていなくて困るけれど、多分そうした方が彼の機嫌を損ねずに済みそうだからそうしておこう。勝手な偏見だけど。 )
明日とかいつもよりたくさん絡みに行っちゃうかもなんだけど…ほら、理由できちゃったし。
( これまでは大義名分にあたるものがなかったから精一杯彼に絡みに行く理由というものを作っていたけれど、これからはそんなもの作らなくたって肩書きという理由が付いて回る。今でさえこんなに舞い上がっているのだから、自分は絶対調子に乗る。「嫌だったら嫌って言ってもらえると助かるかなって思って」だからこの関係をちょっとでも長く続けるためにそう伝えて。 )
上鳴
( 思ったより早く答えが返ってきてビビった。というか、それが予想の斜め65度くらい耳郎らしくない答えで更にビビった。嫌じゃないってそりゃ良かったけど、耳郎のことだからアンタとアタシなら親子がいいとこでしょとか冗談は髪色だけにしときなよとか言われると思ってたのに。いや俺の中の耳郎どんだけ辛辣なんだよ。いやそうじゃなくて。まあとにもかくにも、こうして今も俺の手を引く耳郎響香は思ったより好感度が低くないらしい。というかなんなら素直だ。何となく新しい一面が見れたようでちょっと得した。 )
…なんか、思ったより耳郎って俺のこと恨んでねーんだな。告白されてる気分だわ。
( まあでも、嫌じゃないなんて言われれば期待するのが健全な男子高校生だ。こいつにはするだけ無駄だって分かってるけど、借りたモンちょっと汚しちゃったりとか横にいたヤオモモにドン引きされるくらいのイジりかましたりしてるからマジでいつか殺されんじゃないかとすら思ってたわ。いやあなら安心安心、夜道にも気を付けないで済むわ。少しだけ距離を詰めて彼女の隣に移動し、気分が良いからか笑顔を浮かべて目的地を目指す。今度から耳郎にも優しくしてやろっと。腕を引く手はふりほどかずそのままに、そんなことを考えてみて。 )
爆豪
( 素直で律儀と来た。破天荒なのか生真面目なのかハッキリしない奴だ。気まぐれなのだろうか。それっぽさなら多少あるだろうが、ただのバカに一票入れておく。返事代わりに軽く鼻を鳴らす。)
…どうせオレがやめろっつったところで懲りずに来るのがテメェだろ。
( 今更何言ってんだ。散々今まで絡んできたのはテメェだろ。今になって畏まる意味が分からん。まさか、こんな調子がこのまま続くのか。想像しただけで気が重くなる。んなのは御免だ。「テメェの好きにすればいいだろが」振り返らず歩き続けながら、何だかこんな台詞はついこの間吐いたように感じていた。教室で付き合うように言った後から何となくコイツの振る舞いはぎこちない。変人の考えることはよく分からん。仮に付き合ってるだけで、コイツの対応なんぞは最低限で済ませば良いものを、オレは必要以上のことをしているような気がする。まあ実際、してるんだろうが。じゃなかったかこんな事言わねぇだろ。頭の片隅で先程の思考を踏まえながらそう結論づける一方、別の所では色々思考の整理を進めつつ。 )
耳郎
( これは失態だ、間違いない。間違いなく墓穴は掘ったし言葉は選び間違えた。無意識こわ。ってかついさっき色々気をつけようとか考えてたのにこの体たらくって、ウチは鳥頭か? そうして秒単位で顔が青ざめていく中で、恐れていた上鳴の返事が耳に届く。しかも自分で意識せず発してしまっていたこともあり告白という単語が無闇に強調され余計に思考の崩壊が進行してしまう。そうじゃん告白みたいだよ、告白だって思われても全然おかしくないこと言ってたんだよウチ。一度言ったことは無かったことにならない、だから今から訂正なんて出来るわけもない。でもとかいやとか、うにゃうにゃとはっきりしない単語が頭の中を行き交う。そんな風だったから、急に上鳴が距離を縮めてきたと気がついた時は驚いた。そういえばさっき掛けてくれた返事の声は柔らかかったようなと記憶の断片が蘇り、恐らく豆鉄砲をくらったような顔で上鳴の方を見上げてた。 )
……能天気…。
( ウチがどんだけ焦ってたのかだなんて全く関係無しに笑っている。優しく笑っている。それで少し気持ちも落ち着いて、八つ当たりのような愚痴が小さく零れた。もしや、嫌いじゃないって言ったから笑っているんだろうか。だとしたらとんでもなくチョロい男だ。しかしこれは想像してたよりも上手く纏まってる結果だってことでもあるはず。ほっとしたようで、でもなんか複雑。だって上鳴なら誰にでもそうやって言われたらそうやって笑ってくれそうだし、喜びそうだ。…趣味だけじゃなくて性格までかわいくない、とは思う。どうしてもっと素直に喜べないんだろう。上鳴を見習えとどこからか声が聞こえてきそうだった。そういえばここまで距離が近いと腕を掴むのにも違和感がある。多少の名残惜しさはあるけど、手は離してそのまま下ろしておく。 )
成合
そっか、良かった。
( せっかく彼が一応交際を申し込んでくれたのだ。ならそのポジションに収まり続けていたいというのが少しだけ汚い本音で、つまりそれには彼の気に障る行動だったりを控えなくてはならないという第1条件が発生する。付き合うっていうのはかなり難しいものだったらしい。高校1年生にして気付いて良かったとも言える。どうしようもなく頬が緩んでしまうのを抑えきれずにニマニマと笑みを浮かべれば、あっいい匂いするとかワイシャツにはシワがないだとか、そんなことばかり目につく。変態みたい。 )
あ、ねえ。爆豪って何が好き?
( ポンと思い浮かんだのはそんな話題で、初対面でもあまり使わなそうなくらいざっくりとしたものだったかと一瞬思考がよぎるも知らないフリ。だって一応そういう関係なわけだし、なんて言うのだろう、あわよくば休日に一緒におでかけとかおでかけとかおでかけとか、そんなことを少しくらいは考えてしまうわけで。 )
上鳴
( 能天気も何も、気分が良くなったのだからそれでいい。俺と峰田は自慢でもないが女子の一言に一喜一憂する男子高校生代表と言っていいくらい健全なモンだから、嫌じゃないと言われれば嬉しくなるだろ普通。これで期待しちゃってうっかり告白した後フラれるまでがワンパターンだ。世の中の女子になら期待させんなって言いたいくらい良くあることじゃんそーゆーのって。まあさっきも言った通り、このイヤホン嬢ちゃんには期待するだけ無駄なんだけど。 )
何だ、離すのかよ。
( ふと腕に触れていた女子特有の手が離れ、思わずそう口にした。周りの高校生カップル達もちらほらとそんな格好で歩いていたしちょっとデートっぽくていいじゃんとか思ってたんだけど、まあ耳郎からしちゃリードみてーなもんか。…いや自分で言ってて悲しくなるんですけど。まあ一応デートっつっても俺たちは周りと同じカップルじゃないわけだし、そもそも耳郎は耳郎でダチと欲しいモン買いに来たぐらいの感覚なんだろう。だから少し冗談めかして「別に嫌じゃなかったのに」なんて先ほどの耳郎の言葉を引用して笑ってみせ。 )
爆豪
( ただ思ったことを当然のように言った。それだけでコイツは笑っている。オレの言葉が奴の喜びに繋がったとして、例えそれが真実でも。オレにとってそれは奴を利用する為に吐いた欺瞞に過ぎない。瞬間的な事だったとしてもオレは奴を騙し、嘘で縛ったことに変わりはない。はたと頭の隅でそう何かが囁いた、感覚があった。 )
あァ?テメェに教える義理はねぇ。
( とは言うものの今更っつー話。この女を有効利用する算段を立てた時点から、この結果は約束されていたしそんなことは承知の上だった。コイツ自体に価値を置いていた筈では無かったというのに。未だに胸の奥が詰まって気持ちが悪い。問に対して噛み付く気分ではなく、適当に返す。「大体回答するにも広範囲過ぎんだろ頭使えやクソが」もう何だって良いから早くあの女を振る計画を考えたい。そんで早くこの女とは別れた方が良いと直感が訴えている。コイツが近くに存在する限りオレの平穏は保たれることは無い。恐らく。いまいち質問の焦点が何処に当てられているのかが掴めず、普段のように口悪く愚痴混じりに付け加え。 )
耳郎
な、ばっ、
( バカにしてるな。バカにしてるんだろこの男。顔に熱が集まって、微かに下唇が震える。調子乗んなって言い返したい、でもでも数分前に正体不明ではあるけれど女子っぽさを目指そうと決めた手前そんな喧嘩腰に話すのは駄目だ。とはいえこういう流れで下手なこと言うと空気が冷めるのもよくあるアレだし、あーもう分からん。 )
…じゃあ聞くけど、上鳴は嫌じゃないわけ?
周りからウチらが付き合ってるって思われて。
( さっきみたいなことしてたら普通にその辺のカップルと大差無い。勘違いされるに決まってるのに、上鳴はどう思っているんだろう。さっきと同様の問いを今度は上鳴に投げかけてみる。この手の話は何か気恥ずかしいから苦手なんだけど上鳴はそうじゃないんだろうか。ていうかさっきから上鳴のテンションが異常に高い気がする。嫌じゃないパワー? 雰囲気からぽわぽわしててなんかいつもとは違う。どうしてこんなにも余裕があるんだ。上鳴のくせになんか腹立つ。無意識にも眉根を寄せてじぃと睨みつけていたかもしれない。 )
成合
えー、いーじゃん。仲良くなるためだよ。
( 好みくらい把握しているっていうのがなんかふわっとしている恋人像だ。あっこれ好きだよね、とかそういうやり取りをしてみたいし、もう過ぎちゃったけど誕生日とかクリスマスとか…その時になって聞くんじゃ遅すぎるだろうし。ってなんかすごい飛躍してるけど、とにかく知っておいて損はないと思う。…まあ嫌がるなら別に何がなんでも聞こうとは思わないけど。 )
…あ、着いちゃった。
( 徒歩5分とは結構早いもので、こんな他愛もない話をしているだけで寮に着いてしまった。この前までは寝坊しても間に合うじゃんとかって寮に感謝していたものだけど、ここまでくると話は違ってくる。なんで寮なんて作ったんでしょうか雄英高校。いや安全性を考慮してってのは分かるけど生徒の青春に随分と優しくない。 )
えっと…。じゃあ、また明日ね。
( また明日って言っていいのか分からない。けど一応また明日。また明日会いたいからまた明日だ。部屋までご一緒しようにもそもそも男女別れてるからそうもいかないし、やっぱりウチの高校って生徒の青春に優しくないと思う。 )
上鳴
へ?
( 思ったより俺はテンションは上がっているらしい、耳郎の一言でからかう余裕ができたし、好感度というものもちょっとだけ上がった。だって今まで刺されてもおかしくないとすら思ってたからな。それが嫌じゃないなんて言われればテンションブチ上げだ。そろそろCDショップに着く頃だろうか、別に買いたいものとかねえけどテンション上がってるし全然興味ないバンドのCDとか買っちまいそうだ。そんなご機嫌で歩いていれば、耳郎から飛んできたのは質問。ただ今までされてきたのとは少しだけ毛色が違ったように感じて、思わずそんな声が出た。 )
嫌ってか、嫌なら一緒に来なくね?
( 特になんも考えずそんな言葉が出てきた。いやだって高校生の男女2人組って8割方そういう目で見られると思うし、そもそも俺なら8割どころか9.9割はそういう目で見て羨ましいなとか思っちゃう。いや別に羨ましくはねーけど。嘘ちょっとだけ羨ましい。…まあそういうことだ。別に俺らが意識してる意識してない関係なく第三者の目線って降りかかってくるわけだし、それが分かっているんだから嫌なら一緒に来ていない。「つか今デート中だし。…いやまあ俺の勉強兼ねてだけど」デートって、そういうことじゃないのだろうか。そんな思いと共に少しだけ首を傾げて。 )
爆豪
( 気が付けばあれほど待ち望んでいた寮が眼前で、後方からは別れの挨拶が聞こえてくる。長そうで存外すぐに終わった下校時間。校舎からの距離が短いのだから当然でこんなことは前から知っていたってのに、今になって改めて知った。だからって理由にはならないだろうが声が出た。奴を引き留めるためのような、そういう言わば自分には似合わん話。 )
…明日の朝、
( まだ離れたくないからこんな言葉が出た訳じゃねえ。そんな女々しい望みは願ってもいない。騙している罪滅ぼしでも無い。そんなものがこんな言葉で解消されたら人生どんだけ楽か。「ロビーで待つ。…はよ来い」所謂、待ち合わせ。何故か単語を無理やり繋げて話すことしか出来なかったのが謎だった。こんなこと言い慣れてなんぞ無いからなのかもしれない。急にこんな誘いをしたのは、明日偶然ばったりコイツに会いきゃんきゃん絡まれ目立つぐらいなら先にこうして共に登校した方が断然マシだったから。コイツに合わせてるようで心底非常にムカつくが平穏な生活を優先させると耐える選択肢しか残らんので仕方がねえ。それに、今日の下校みたいなので満足するならオレにはさして害が無い。朝も早く寮を出れば人目を気にする必要もない。そうした考えを踏まえて、ただこうした方が都合が良いから提案した。以前ならそう断言できていただろうに、胸の片隅に変な情が芽生えていることに気が付いてしまったものだからそうもいかない。こうもイラつくような、もやついた気分になるぐらいならこんな言葉掛けない方が良かったのかもしれない。そんな風に考え込んでしまって愛想も無しに振り返りもせず、そのまま背中を向けた状態で。 )
耳郎
……そう、
( だよね、って続きそうだったのに気が付いたら声が出なかった。あまりの恥ずかしさで勢いのまま話してたとは言え話題の選択をミスったのは反省する。いや、確かに上鳴の言う通りだし。嫌なら始めから出掛けないし。だよねーって思うよ、でも。でも、そんな風にさらっと言える人は少ないと思うんだよ、上鳴さん。何だか気恥ずかしくなって俯いてしまう。期待だってしたい。でも誰にでも軽くて優しいのが上鳴なんだって苦しいほど身に染みて分かってる。なんか複雑だ。そういえば目に入って気になっただけなんだけど、上鳴って結構首傾げるよね。いやかわいいんだけど。ていうかぎゃんぎゃん騒いだ途端に静かになってるから変な奴って思われてないかな。思われてても別におかしくない。)
…あ、着いたね。
( そのまま歩いていると通り慣れた道に出て、気が付けば目的地のCDショップは目前だった。ふとCDのことを思い出し、思わず声が漏れた。「上鳴はどうするんだっけ、一緒に回る? 」もうすぐで念願のCDが買えると思うとどうしてもテンションが上がって意識せずとも声が明るくなる。単純な思考回路だなって馬鹿にされても今なら許せる。テンション上がるのだって好きなんだから仕方ないし。)
( /背後です。いつも楽しくお相手してくださってありがとうございます!
大変言い難いのですが、今月4日から10日までかなり忙しくなる予定でこの期間はお返事があまり、というか全然出来なくなってしまいそうでして…。
実は前回三日間ほどお返事出来なかったのと同じく、習い事の合宿が理由でして、ネットが使える環境が整っている場所ではないようなのでご連絡させて頂きました。
度々お待たせして本当に申し訳無いのですが、必ずお返事はいたしますので何卒お待ち頂ければ幸いです…すみません;; )
成合
( そのままじゃあね、なんてことにはならなかった。彼が声を発してくれたのが思いのほか嬉しくて、次の言葉を待つと同時にわくわくとこそばゆい感情が胸を支配する。ちょっとだけ期待しちゃうのを許してほしい。だからちょっとだけ期待した彼の言葉が期待以上のものだった時、思わず跳び上がりそうだったのだ。あの、あの爆豪が、誘ってくれている。誰かに真っ先に報告したかったけど誰かに言っちゃうのも惜しい気がして、ぐるぐるとした思考の中とりあえず首だけを縦に振った。 )
あの、その、ありがとう、
( 彼が気を使ってくれているのだと思った。だからお礼を言ったし、ちょっとだけ寂しくもある。気を使わない関係が1番の理想なのだけど、やっぱり簡単にはいかないのかなあなんて思いながら笑ってみせる。彼の真意は知らないけれどでもそれでも私は爆豪が好きだし、ならこれから気を使わない関係を目指すだけ。決意を固めつつも彼の背中を見据え、見えていないだろうけど頬は緩みっぱなしだ。どうしようここから動きたくないけど、そんなわけにはいかない。だって爆豪は明日の朝の約束だってしてくれたのだ。「それじゃあ、ね」軽く手を振って別れの挨拶をする。彼がエレベーターに乗り込む間だけは見送っていようと思った。 )
上鳴
んー、俺も耳郎と回ろっかな。どこに何があんのか分かんねえし。
( 自分が前に立ち寄った時と少しずつ陳列が変わっていて、ポップスが置いてあったところには今はアニメソングがずらりと並んでいる。何か買おうかと思っていたけれどあてもないしどこにあるかもわからないし、とりあえず耳郎について行けばいいかなんで安易な考えでそう口にする。そういえば耳郎って何買いたいっつってたっけ。まあこいつのことだからロックなんだろうけど。というか今まで気にしたことなかったけど、コイツってどんな曲聴いてんだろ。まあそれを試聴させてもらうために着いていくのがいい。 )
てもなんかちょっとテンション上がるよな、俺女の子とこーゆーとこくんの初めてだし。
( 陳列が変わっただけなのだろうけど、何となく物珍しく見えてきょろきょろと辺りを見回してしまう。こういうなんかCDとかいっぱい置いてあんのってちょっとテンション上がんね?俺だけ?俺が単純なだけ?なんか音楽通になった気がすんだけど。 )
(/ こんにちは!こちらこそ毎日ありがとうございます…!
夏ですし、背後様もお忙しい時期ですよね…。もちろんリアル優先ですのでお気になさらず!
こちらはいつまでも待っておりますので、お時間に余裕ができたらまたいらしてください!)
爆豪
( 奴の事だから飛んで跳ねて喜んで暑苦しいアピールでもすんのかと想像が脳裏を過ぎったが、現実はそうではなく。そこでようやく彼女の方に向き直って観察するように顔を見詰める。それでも奴はいつものお気楽な笑顔を浮かべるばかりで、ぎこちないようには到底思えない。しかし心の内で違和感の蟠りが燻って、すっきりしない。またよく分からんことでも考えてんのか知らんが、そこの返事は分かったでいいだろうに。うやむやな気分のまま、エレベーターへ向かうべく歩き出す。が、三歩程度進んだところで何か、まだ残しているような気がして立ち止まり、振り返る。早足気味で奴の目の前まで戻る。右手を振り上げて、そうして、奴の頭に置く。これに羞恥心はなく、多分抱えている罪悪感を少しでも解消したかった。オレに向ける笑顔がうざったろうが、例えそれが奴の幸福で喜びなら、それを利用し続けようとする自分に寄せられる業は多い。だからこれは逃げ。置いていた手を雑に動かして髪がぐしゃぐしゃになったところで、くるりと背を向けエレベーターに乗り込む。「…今日は早く寝ろカス」言い終わるよりも早く扉の閉まるボタンを押し、何でもないことを口走る。すぐに扉は自動的に閉まって奴との視線は無理やり打ち切られた。 )
耳郎
ん、そーだね、
( 頷きながらそう返す。若干返事がさらっとしてるのは気のせいじゃない。何度言われても、上鳴の口から女の子という単語が出てくるのになかなか慣れないから。いや上鳴は言い慣れてるんだろうけど、ウチを女の子って言い切ってるのが、なんか新鮮で、いつものペースで話せない。でもこんな所でぎゃんぎゃん騒げないし、気にしないフリ。それに店内に入った途端、早く買いたいCDを見つけたくて内心気が気じゃない。冷静に振舞っているつもりだけど、顔が訴えているかもしれない。とは言え、いくら陳列が変わるとしても新しい商品の配置場所は目立つ位置と大体決まっている。きょろきょろ辺りを見回しながら店内を進んでいると、ふとした時に探し求めていたCDが棚に並んでいるのが見えた。「…、あった! …あったよっ、上鳴!」明るい声が出た。ぱっと軽い足取りで棚まで近寄ると、CDを手に取り、朗らかな表情でじっと見詰める音楽と上鳴にはとんでもなく単純ですねと何処からか声がするけどこれも気にしない。)
( / 何日もお待たせしてすみませんでした…!! 何とか合宿も終え、これからまたお相手に専念できそうです!
いつもご寛大な背後様には甘えてしまって申し訳ないです…またこれからもよろしくお願いしますね! )
成合
〜ッ!
( ポカンとその一部始終を眺めていただけだったのだ。頭に触れた感触で我に帰り、それでもどうすることもできなくてそのまま彼を見送ってしまった。どう、しよう。どうしよう。エレベーターの扉が閉まってから羞恥心だの何だのが一気に押し寄せてきて、もう立っていられなくってその場にしゃがみ込んで顔を両手で覆った。ああもう本当にどうしよう?喜ばせて殺そうとしているのだろうか。先ほどまで頭の中にあった彼の突然の告白の理由だの利用されてるかもしれないだのそんな考えを吹き飛ばすくらいの波があって、しばらくその場でプルプルと震えたままだった。 )
…ずるい……、
( やっと顔が上げられたのもそれから5分後のこと。立ち上がるまでにはまだ少し勇気が必要で、しゃがみ込みながら思い返してみる。何で頭を撫でられたんだろうとか、そんなものは感じなくって。ただただ嬉しくて仕方がなかった。また顔を覆ったり蹲ったりを繰り返して行く間に時は過ぎ、流石にこれ以上いたらそろそろ誰か来てしまうかもしれない。いそいそとソファに腰かければ体育座りで悶々と考え、それでも答えは出なくってもう自室に戻ることにした。眠れる気はしなかった。 )
上鳴
お、みっけた?
( 耳郎の嬉しそうな聞こえてそう反射的に返事をした。人との付き合いが長いとそういった会話への返事って自然と、ってか無意識に出てくるもので、今もそれにあたる無意識の返事ってやつだった。大抵はその次の瞬間にその言葉を噛み砕くことが多いんだけど、よくよく今回も噛み砕いてみればいつもより耳郎が明るい声色で話してる気がして。あーホントに欲しかったんだなーとかマジで好きなんだなーとかって思いながらパッとCD売り場から耳郎に目をやる、と。キラッキラした瞳でアイツがCDを見つめてるわけだ。学校にいる時のアイツってぶすっとしてるか低血圧っぽい顔してるとかで実は俺たまーにしか笑顔を見たことがない。ほらギャップ萌えってやつ?俺多分そーゆーのによえーんだわ。だって今耳郎の笑顔に正直ドキッとかしちゃったわけで。…いやいや待て俺、正気になれ俺。相手は耳郎だ、期待するだけ無駄でおなじみのあの耳郎響香チャンだ。ウッワでもやべー本音言うと一生その顔しててほしい。いや嘘たまにでいい。 )
…なんか、アレだ。耳郎ってそんな顔すんだな。ちょっとモテる理由分かったかもしんねー。
( 腹の辺りがくすぐられるような笑い方に変な思考が混ざって余計変だ。「ちゃんと女の子でドキッとした」なんて言葉と共にはにかんでみせ、彼女宛にしては珍しい褒めの言葉を。 )
(/ 合宿お疲れ様です!何度も言っておりますがリアル優先なので、全く気にしておりません…!
また忙しくなる時が来るやもしれませんが、その時も無理せずお気軽に言ってくださいませ!)
爆豪
( 鳥のさえずりは室内だから聞こえない。ただ眩い太陽の光とか、それに反射してきらめく埃が今が朝なんだと主張してくるようで事足りた。午前6時過ぎのロビーに人影は無い。何人か座ることが出来るソファの端に座り、手持ち無沙汰に足を組み替える。具体的な待ち合わせ時間を告げていなかったから奴が何時に来るのか見当もつかんが、早くしろと釘は刺したし十分だろう。遅く来やがった時には1発平手打ちでもくれてやる。相当無慈悲な算段を立てながら音楽プレーヤーとイヤホンを鞄から引っ張り出し、適当に曲を流す。昨日のその後は普通に自室へ戻り、課題と復習予習をやっつけてから寝た。頭ん中あの女のことばっかで全く眠れる気がしなかったから、だ。と言っても結局は勉強で脳が活性化してなかなか寝付けられなかったが。 )
……なりあ…こう…。
( ぼす、と背もたれにもたれ体をソファに預ける。ぼんやり天井を意味も無く見つめながら結局考えるのはあの女。呼べと求められた名前を、誰もいないのを良い事に覇気のない声でぼやいてみる。これは世間一般が言う、恋煩いと断定できるのだろうか。母親がアレなのもあって女なんぞ面倒なだけだと思い込んでいたし、実際奴がまさにそれだ。恋人のフリをしてそれの空気で思い込みが働いているだけの可能性も十分ある。だから現実的な話、とにかくこの状態を終了させる必要がある。思い込んでいただけなのか、それとも本心なのかどちらにしても。眉間に皺を寄せながら上手く片付ける方法を考えながら。 )
耳郎
……なに、急に、
( は? え? なに? 顔、って何だっけと一瞬頭がショートした。そんな顔って、一体どんな顔? まさか嬉しすぎてにやけてた顔じゃないよね。いやそんな顔面上鳴に見られてたかと思うと軽く地に埋まりたい。…何しろ、また上鳴の口から女の子って。それも、多分、ウチの顔が。きっと前から諦めて、でも懲りずに憧れてた言葉。上鳴に言って欲しいって多分心の底で思っていた言葉だった。加えて上鳴のはにかみ笑いが胸に刺さって嬉しいのやら苦しいのやら。また変な顔でもしてたら嫌だから持っていたCDで口元を隠しながらそう呟く。呆気にとられて頭の中がまだ正常に動いてなくて、女の子らしさもない返事しかできない。感情がうまくコントロールできなくて、少し気弱な声になった。軽く顔に触れただけなのにCDが結構ひんやりしているから、顔が非常に熱く、多分相当赤いんだと気が付いた。それで羞恥心が増して上鳴を軽く睨んでしまう。「…、て、ていうか、モテるって何そのデマ情報…?」ちょっとこの空気が続くとかなり辛いような気もして、というか恥ずかしいので無理やり話を転換しようと、何気にさっき衝撃の一言だったアレについて問いかけてみる。ウチがもて…? そんな記憶は無いし、逆に社交性もあって心も広い上鳴の方がモテる気がする。チャラいのとアホが無ければの話だけど。驚き過ぎて脳が正しく聞き取れてなくて上鳴が本当はそんなこと言ってなかったりしたら笑い草ですねこれ。 )
成合
( 考えた。そりゃもう考えに考えて考えて、結局考えすぎて眠れないし課題は手につかないし、そんな中睡眠時間は極端に少なくなったしで最高なはずの朝が最低な始まりを迎えた。といっても彼との待ち合わせに遅れるなんて大失態は許されなくて、目覚まし時計は大音量で携帯のアラームも追加。家でテレビを見ていたらしいお母さんに明日モーニングコールして電話まで済ませた完全装備だ。起きれるには起きれたけれど、明らかに寝不足の頭を起こしたりいつも以上に身だしなみを整えていたら時は過ぎる過ぎる。気付けば時刻はもう6時10分に差し掛かるところで、これぐらい早くから待ち構えていないとどこかに行ってしまいそうな気がする。ポケットのコームやらリップやらを確認した後大慌てで扉から出た。 )
うわ爆豪はっや、
( エレベーターを降りてさあ待っていようとした矢先、目に入ったのはソファに座る彼だった。一目見ただけで眠気は飛ぶしやる気は出てくるしで多分彼は私の麻薬なんだと思う。思わず素直な感想を漏らしながらも駆け寄り、「えっと、おはよう!」とまずは挨拶を。 )
ごめんごめん、待ち構えてようって思って早く来たつもりなんだけど遅くなっちゃった。あ、でも私は待ってくれてて嬉しいかも!何か本当に彼女みたい。
( 昨日考えに考えて出した結論だ。今まで素っ気なかった爆豪がいきなり交際を持ちかけてきたことに何か私の知らない裏があるんじゃないかって疑っていたのは認める。だから今までは何となく遠慮して来たのだけど、意味がないと分かったからそれはもうやめる。今まで通り、普段通りのただただ一緒にいれて嬉しいことだけを考えればいい。裏があろうとなんだろうとときめくし好きだし、だったらそれはそれでいいって、少しお気楽すぎる結論だけど。 )
上鳴
( あ、そのCDで顔隠すの何かいいな。いやあ耳郎にもそんな仕草できるんだって初めて知ったわ。いつも俺とか峰田とかにはあんなツラだからだから珍しく見えるけど、結構表情も変わるしこーゆーの見ると耳郎ってあーちゃんと女の子だよなーこいつなんて思う時がある。つか今がそう。なんか、あれだ。麗日みたいな正統派って感じ?いや別の女子出すのもあれだけど、いい例えが浮かばない。「え、知らねーの?俺よく聞いてたけど」耳郎の話を聞けばモテてるなんて話聞いたことがないらしい。俺は峰田から聞いた上耳郎と廊下歩いてるとあーなんか視線感じてんなーみてーなことが結構あったから感じてはいたし、別によく見ると笑わないだけで…いや俺の前でだけ笑わねーのか?…まあとにかくそこそこ可愛い部類には入るから仕方ねーかとは思っていた。「高校入ってから彼氏くらいできてんだろーなーとか思ってたぜ、俺」と素直に感じていたことを口にした。 )
んでもちげーならいーや。彼氏いたら飯誘いにくいし、つか耳郎なら彼氏いるから遊び行かねえとか言いそうだもんなー。
( せっかく今日耳郎が女の子らしいと発見したのに彼氏がいるんじゃあ当たり前だけど誘いにくい。てか多分誘わない。一応そこらへんの礼儀はわきまえてるっつーか、最初から望みねーとこには行かねーしめんどいこともパスだ。彼氏ナシならどんなガード固いヤツでも誘いまくるけど。「なんなら俺遊び相手ほしいし彼氏作んなくてもいーぜ!」笑って言った。遊ぶだけの相手なら覚えてないくらいいるけれど、気を遣わずに遊べる相手っていうのは中々いない。その相手がやれ彼女だ彼氏だ勉強だって減ってくのはもちろん悲しいししんどい。その点俺の仲良いやつは基本的に危ねえから心配なのだ。その中に耳郎ももちろん含まれていて。 )
爆豪
( 空を見ながら考えをまとめていると視界の隅で何かが動き、奴がようやく来たのかと察しがつく。体を起こしているとこっきに寄ってきて、途端朝っぱらだと言うのにべらべら話し始めた。来るのがとんでもなく遅い訳でもないので何も言わない。もうちっと遅ければ軽く小突いていた。と、途中に『ほんとうに彼女みたい』なんて聞こえた気がして「あ?」怪訝そうな声で聞き返しながら顔を上げた。イヤホンを外しながら半分聞いて半分聞いてないような状態だったから確かではない。とは言うものの尋ね返すほどのことでもない。これは確実に疑われている、というか100%それだ。コイツの利用価値だけを見て俺は付き合った。それだけだと、始めから思い込んでいた。今は違う。みっともなく悩んでいる。また頭ん中でループしているネガティブ思考が蘇ってきたので、そろそろ行くかと腰を上げる。鞄を肩に引っ掛け、行くぞと声をかける寸前になって、少し気に留まることができた。)
…おいテメ、昨日寝たの何時だ
( 気のせいかもしれない。その可能性は確実にある。何となく奴の顔色が悪い気がしただけだ。想像するに睡眠不足からのこの結果。まあ朝だってのもあるが、今まで体調が悪いこの女をお目にかかったことは一度もない。まじまじと奴の面を凝視しながら「肌荒れてんぞカス」無駄に柔らかい頬に触れて調子を見る。ジョークのつもりで言ってみたが、やはり少し肌の質が悪いし、血色も些かよろしくない。女なんてこんなもんだろうか。互いの息がかかりそうな距離で未だ観察を続け。 )
耳郎
( どんな顔すればいいんだろ。いや、別に上鳴は変な事は一切言ってない。ウチがモテるとか現実味はないし、あ、そうなんだ、みたいな感じだし。ただ上鳴は、まあ当然ながらウチにそういう気持ちは無いんだなって。こんなこと軽々しく話せるのはそういうこと以外ありえない。まあでも上鳴だからこれが普通なのかも。 )
…、はは、そっか。ウチも今は彼氏とか、あんまそういうのは考えらんないかな。
( それでも、それでも上鳴を嫌いにはなれない。諦められない。上鳴につられるように笑った。いや、多少気分がアンニュイになってたかもしれないけど嘘っぽい笑い声じゃなかったとは思う。清々しいまでに話す上鳴はやっぱ上鳴で、それでつい笑いが漏れた。でもやっぱり視線の行き先に困ってCDの陳列棚に向き直ってる辺り、多少なんか緊張してたのかもしれない。「こうやってしてるほうが楽しいし…うん、すきかな」なんかこう、他の男の人と付き合ってるんだと思ってたとか言われたら流石に反抗心?みたいなのが湧いてくる。マジでウチ上鳴にベタ惚れだよね。すぐキレてヒステリックだし、鬱陶しくて可愛げ無い女ですけど、胸の奥で生きてるあの気持ちは全部本物だから。本当に好きだから、上鳴のこと幸せにする覚悟もある。…本当はこれ男の人が言う台詞のような気がするけどまあいいよね。改まったこと言って若干気恥ずかしいので目は合わせられないけど、まだ目元は笑ったままで。 )
成合
えっ、
( 嘘でしょ私肌荒れてるの!?と大声で叫びかけ、それを飲み込んだのはぐっと距離が縮まったからだった。声が出ないどころか体さえも動かなくて、ただただ頭の中は顔近い今日もかっこいい荒れてる肌見ないでくださいなんてどんちゃんと騒がしい。それよりうるさい心臓の音を落ち着かせるように深呼吸をしようとして、でもやっぱり顔が近くってそれもできなくて。とりあえず投げかけられていた質問に答えようと小さく口を開けば「…3時…半?」と最後に携帯を見た時に表示されていた時間を答えて。多分そのくらいだったはずだ、携帯を見た後も寝付けなかったから実際はもうちょっと遅いかもしれないけど。 )
…えっと、その、ちょっと顔近くて恥ずかしい、かも…。
( 話すと吐息がかかってしまいそうで話しづらいって言うか単刀直入に言うとものすっごく恥ずかしい。何だろうこの人私が爆豪のこと好きなの忘れてるのかもしれない。それはそれでちょっとだけ寂しいけどとにかく離れてほしい、…嘘ほんとは惜しいからちょっとだけでいい。ぶつかる赤い瞳の距離感がとんでもなく羞恥心を煽るものだから目線だけをふいと逸らし、そんなお願いの言葉を口にした。触れられている頬の感触が妙にリアルで、いやマジのリアルなんだけど神経という神経がそこに集中しているかのごとく意識が向く。ふつふつと顔に熱がこもっていくのを感じた。 )
上鳴
( 女の子らしいって思った。あーこいつやっぱモテんだなーとかも思った。普通の、俺がデートするような女の子となんて言うんだ、そこまで変わりはねーんだなとか。いくらヒーロー志望でいくら俺には不機嫌そうな顔しかしなくてもちゃんと女の子だなーとか思った直後なわけで、そのなんだ、そんな時に好きとか言われちゃうとドキッとしないわけがない。俺のことが好きとか言われたわけじゃねえけど!でも俺は何を言われようと表情1つ変えない轟みたいな鋼メンタルマンじゃないし、悲しかったから泣くし怒るし笑うしっていう普通の男子高校生なわけで。耳郎が俺の方を見てないことが不幸中の幸い、いや別に不幸じゃねえけど!言葉のあやってやつな!!ちょっとだけ、マジでミリほどだけ顔が熱くなるのを感じた。 )
お、…お、おお…さんきゅう…。
( 超うれしい!とか俺も俺も!とか軽いノリで言おうと思ったらだいぶキモくなってしまった。やべえこれどうしよう、今の俺が何もかも笑い飛ばせそうではないのは俺が1番分かる。ドキドキするとは言っても他の女の子相手ならたぶんじゃあ俺と付き合う?ぐらいは言えてたはずで、でもそれができないのは相手が相手だからだ。これまで女子の欠片もないと思っていたあの耳郎。真っ当な返答ができそうになくて、回らない頭と口を同時に動かしつつ「俺も楽しいし、…あー、えっと…元気貰ってる…?みてえな、うまくまとまんねーけど!」妙に照れてそんな大真面目な返ししかできなかった。 )
爆豪
( 寝た時間を聞くや否や軽く舌打ちする。真夜中まで何しとんだコイツ。何考えてんのか分からんアホだな。つーか若干さっきより頬が熱い気がする。触り過ぎて余計肌が荒れたのか。考え込んでいると奴の声が再び耳に入り意識が戻る。奴の逸らされた瞳が何か強いものを訴え、堪えているようで、頬は薔薇色に紅潮していた。奴は気恥しいのだと言っている。それだけでここの所で溜まっていたストレスとかその他諸々が一掃されたような気分になった。 )
…テメェの顔なんざ見てねえよ。見てんのは肌だ
( 意識なくとはいえ良いものが見れた。気が付けばにぃと笑顔が漏れていて、恐らく傍から見れば意地の悪い笑顔だったことだろう。わざとそうした。からかってやろうと若干意味の分からん返事を吐いてしまったが、取りあえず弾力のある頬からは手を離し、少しばかり距離を作る。で、「オイ、てめー寝ろ。ここで」親指でソファを示す。早く登校したかったがこの際だ、仕方ねぇ。寝不足で日中ぶっ倒れやがったらその責任は俺が被るに決まってる。そもそも体調不良者と共にいては気分がわりぃ。一時間程度ではあるが眠れば多少体調も改善されるだろう。是が非でも寝させようと睨みを利かし。 )
耳郎
…っ、あはは、分かった分かった。
ウチすぐこれ買ってくるから、上鳴はこれ聞きながら待っててよ。
( 上鳴をぽかんと見ながら考える。今の言葉って一体何の枠に収まるんだろう。告白、にしてはちょっと軽い。でも友達へ普通に言うようなことでもない。真面目なことってなかなか気恥ずかしくて言えないものだし。だからこれはなんなんだろうとは思うものの、込み上げてくる感情の方が圧倒的に強かった。言った。言ってやったぞ。声に出なくてもふふーんと満足気な顔をしてたかもしれない。いつもこっちがわたわたさせられてたけど、ようやくお返しが出来たようで少し嬉しい。悪趣味かな。でもかなり上鳴テンパってかわいーし、言わなきゃよかったとは思わない。でも慌てている人とこのまま一緒にいるよりは、少し一人にしてあげた方が良いと思ったので先にお目当てのCDを買ってくることにする。テンパり上鳴にけらけら笑いかけながら手元のCDをひらひら振って、近くにあった店内の視聴用ヘッドホンを押し付けるように渡しておく。ウチが買うつもりのCDに入ってる曲も聞けるのかな。じゃねと一言残して、さっさか一人でレジの方に向かうけど未だに口元は緩んで程度ってものを知らない。それだけこの時は浮かれてたんだと思う。レジの前に並びながら上機嫌で財布を鞄から出して。 )
成合
( ウッと一瞬言葉が詰まる。くそ、笑えば私が屈すると思ってるんでしょ。ハハハ残念だったなその通りだ、私は君のことが好きだからな!くそ!多分寝不足からくる深夜テンションなのであろう思考はよくない方向にぐるぐると回る。今なら特に何も考えずおかしいことを発言してしまいそうで、とりあえず何か言い返してやろうと口を開いてみるけれど思い浮かんだ言葉はどれも使い物にならなさそうだった。 )
え、今ここで?!
( 突然人肌の温もりが消えて一瞬物寂しさを感じたと思ったら衝撃的な言葉が聞こえた。寝ろって、それってその、もしかして私心配とかされちゃったりしてる!?本当に!?嘘でしょ勝手に1人で舞い上がって勝手に彼の好感度を爆上げしてしまいそうだ。ちらと彼を見上げてどうしようか逡巡する。すごい決意のこもった睨みだ。いつも何言っても聞かないけどこの時は特に私の話なんか聞かなそうで、普段ならすぐ諦めて折れるんだけどもそうはいかない。だってこの私自慢じゃないが寝起きはクラスで1番ブサイクな自信あるしよだれだって出てしまうかもしれない。つい最近想いを伝えたばかりの人にそんな姿見せようものなら今後の関わりがなくなってもおかしくないのだから、せめてフルフェイスで寝させてほしい。ダメか。 )
えっと、その、じゃあその、なるべくこっち見ないでくれると嬉しいかなとか…。ほら私も乙女なわけだし、
上鳴
…あー……、
( そりゃため息も出る。何でもうちっとかっけー言葉が出てこなかったんだ俺!何があってあんなテンパったクソダサい言葉を…、もっとなんかあっただろ!まだ嬉しいとかかっこつけて言った方が良かったんじゃねえの?!渡されたヘッドフォンを素直に耳にあて、適当に曲を選びながら静かに反省する。心臓に響くようなロックが俺の心境と真逆すぎて空笑いすら出てきた。ウッワマジでダセー…、照れてる女の子を見るのとだいぶ心の楽さとかが違うのは当たり前なんだけど、女の子のセリフで戸惑うことってほんとにねえから驚いてどうもできなかった。あと1週間はヘコんでられそうなんだけど俺。サビに入ったらしい高温の歌声が耳に刺さってもうなんか惨めだし歌詞も聞き取れねえし、ロックは俺には分かんねーわなんて思いながらもふと耳郎お目当てのCDが大々的に宣伝されているコーナーを見た。そいやあいつどんなヤツ好きなんだろ。何となく気になってジャケットを選択、一瞬静かな沈黙が訪れ、曲が流れ出した。 )
…まあ、歌詞は聞き取りやすいな。
( 先ほどのバンドとは多いに違った点をぽつりと口に出した。いい趣味してんなー、俺もなんかバンドとか追っかけよっかなー、あーでもギターとか弾けたらかっけーかも。そんな軽い気持ちでできるわけはないのだけど、想像くらいならしてもいいだろう。しばらく曲を聞くと後悔はまだ残るもののだいぶ心は落ち着いてきたようで。 )
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