半堕刀剣 2018-04-15 23:28:01 |
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…話したいだけなら俺なんかよりもずっと明るい名刀達があんたの周りには沢山居るだろう?同じ写しの俺が憎くは無いのか。( 覗き見て )
( 彼を待つ間に垣間見た相手の横顔は何処と無く感傷的な面差しで、少しの間本丸を離れるのがそんなにも哀しいことなのかと勘違いして不思議がるも、直ぐにその理由に見当がつき )――主に何も言わず来てしまって良かったのか。見送りだけとはいえ、気付かれたら罰を受ける事になるのでは?( 自分がそうであるから。それが己にとっての当たり前のことであるから、きっと彼も審神者からの懲罰を恐れてあんな哀しい表情をしたのではと、向かって来る相手を心配そうに見遣りつつ歩む速度を落とし )
っ、( びく )…え、憎い?何故あんたを憎まなくてはならない?( きょと )俺はあんたと一緒に居ると安心するが。( 首ゆるり )
平気だ。主なら分かってくれている。( 相手が倒れ手入れ部屋で審神者には事情を話しており、審神者自身も初めて顔を合わせた際薄々乍勘付いていたようで。朝方になれば彼は本丸へ帰る筈だということは分かっていたこともあり見送りという名の審神者と合うことを主張するも主は苦い顔を浮かべて。彼の本丸に首を突っ込むことはしてほしくないが心配なんだろ、と何度も何度も頼んだ結果、溜息をつき諦めたように言うと”気をつけろ。彼の審神者は闇が深そうだ。お前とて何されるかわからない。何かあった時は遅いんだぞ。それでも行くんだな。…なら、これと、何が何でもこの本丸ヘ彼と共に帰ってこい。”と約束を交わし御守りを渡されて。心配げにする相手へ頭に手を軽く置き )…そら、早く行くぞ。
俺達は名工国広の第一の傑作だが…同時に写しである自分に劣等感を感じている。そんな俺自身を前にするということは、自分が写しであるという現実を再認識させられるはずだ。それが嫌ではないのかと、思って…な。
…そうか。( 相手と審神者の間には余程の信頼関係があると見え寂しいやら羨ましいやら、複雑そうに眉を下げぽつり。彼が見送りのみに留まらず己の主に会わんとしていることは薄々感じ取っていたが、やはり相手まで私情に巻き込む気にはなれず、適当なところで別れるつもりでいて )――…本丸はこの先だ。見送りは此処までで良い。あんたは帰れ。( 演練場を抜け、林を抜け、相手の本丸とは正反対の方角へ歩く、歩く。後は道なりに添えば目と鼻の先に本丸が見えるという所で不意に立ち止まってそう促すと、さり気なく通せんぼをするように相手の前へ立ちはだかり )
…嫌ならばこんな風にあんたと喋ることもないし、傍にいることもないだろ。そんなこと…彼奴らは写しなどと関係なく話しかけられているのだから。鏡写しのようなあんたを前にして嫌というより興味を持ったのもある。…なんて言えばいいかわからないが、色んな事を話してみたいとしか思っていない。
それでもあんたは俺と話すのが苦なのか?( ちら、眉下げ )
……断る、といえば?( 目と鼻の先に彼の本丸らしき建物を目前に建物から相手の方へ視線をやり。彼の事だ。私情に巻き込むのはさせたくないのは分かっている。だが、このまま放っておくわけにはいかず。彼に促されても尚帰る様子もなく寧ろこのまま立ち尽くしており )
やはりあんたは姿形は同じであれ俺とは考え方も違うようだ。…実に前向きだな。俺も見習わなければ。
苦ではないから安心しろ。名剣達に囲まれているよりあんたと居た方が安らぐ。( 貴方の手を取り )
…っこの聞かん坊め。主に会う必要は無いと言っ…――( 予想以上に頑なな相手の態度に焦りを覚え始め、つい声を荒らげた不満の声は最後まで発せられる事はなく。その表情は凍て付き、怯えた目が彼の後ろを捉える。其処には眼つきの鋭い長身の男――審神者が、相手の背後に立ちぞっとするほどにこやかな笑みを浮かべて彼を見下ろしていた。〝やァ。キミ、だぁれ。国広のお友達?〟 )
そ、うか…なら、良かった( 控えめにふっ、と笑みを浮かべ )…だが、あれだな。なんとも小恥ずかしいものだな…( 相手の手をぎゅ、 )
…!!( 彼の表情の変化と審神者らしき男性独特の低い声音。そう、彼の審神者がとうとう来てしまったようだ。命令外な行動を察して彼を迎えに来たか、はたまた別の事で来たのか定かではない。まだ心の準備はできていないが、仕方ない。息を吐き心の蔵を整えてからゆっくりと其方の方へ振り返り相手を見上げる形で見やれば、なんとも不気味な笑みを浮かべる審神者か。ゾワッ、と背筋が凍る感覚がするも怯えている暇はない。そんな恐怖心は消え去れ )…俺は山姥切国広だ。…分霊とは演練場で会った。酷い有様だったもので俺の本丸へ連れ帰った。勝手な行動をしたことを許せとは言わないが、…あんた、分霊の主なら何故ここまでほったらかしにした。( 彼を庇うように前を出て静かに言の葉を紡ぎ怒りを露わにし )
…俺の為に必死なあんたは格好いいのに、案外恥ずかしがりなんだな。何がそんなに小恥ずかしい?( 手を握り返し、じいと窺い見て )
( 分霊により事情を知った主と不意に視線がかち合い、頼もしい相手の背に隠れるようにして縮こまり )分霊、よせ。もういい。( 主の顔色を伺いつつ震える声音で相手の耳元へひそりと懇願。一方の審神者は手入れの面倒が省かれたことにより無断で外出した件については存外腹を立てることもせず、寧ろ彼の生意気な態度が気に食わないとばかりに片眉を吊り上げ。〝其奴は役立たずだが練度はそこそこ高ェから手入れに時間が掛かって面倒くせーの。分かる?まんばチャン。手間が省けて良かったわ。〟懐から煙草を一本取り出し、口に咥えながら審神者は気怠げに答えた )
うっ、煩い。なんだっていいだろ…見るな。( うぐぐ、俯きぼそ )
( 嗚呼、成程。少し話した程度でもわかる。目の前に居る長身の男は審神者としての責任感も何もないのだと。だからそんな非道なことができるのだと、こんな奴に分霊は返せない。 )…どうでもいいな。あんたの都合なんて。…役立たず?それはあんたがちゃんと分霊のこと見ていないからだろ。…ああ、それもそうか。手入れもなにもしていないのだから、分かるはずもないよな。( キッ、と相手を睨み付け思ったことを次々と口にしてしまい )
……俺でも嫌か?( 眉下げ残念そうに )
( 〝ひっでえ言い草だな。さすがの俺も初対面の山姥切にそんなこと言われたら傷付くじゃん。おい国広、お前は俺の味方だよなァ?こいつにお仕置きしてもイイ?〟久方ぶりの威勢の良い刀、この男にとっては玩具に過ぎず、相手の無防備な左腕を掴み火のついた煙草を押し付けるフリ。我が刀が主を裏切れないことを知っていて、敢えてその光景を見せつける )……ッ、…、( 突然主に話を振られ、過度の緊張に浅くなる呼吸。相手を助けたいのは山々だが反抗の言葉を上手く声に出せず、顔を背けるのみで )
ぅ…い、嫌じゃないが…その、あまり見られるのは好きじゃない、だけで( うう、ちらり )
…やめろ。分霊があんたを裏切るなんてことできるわけないだろ。( 抵抗をしたところでこの男は面白がるだけ。それを解ってか左腕を掴まれても微動だにせず睨みを利かせ続け。空いた右手で彼の手を取り”俺なら平気だ。落ち着け、分霊”と視線を其方へやり落ち着かせるように言葉を掛け )…そら、やるんだろ、お仕置きというのを。そう言っておいてそれは口からでた出まかせなのか、この薄情者め。
鏡を見る様なものだろう?…だが話をする時は相手の顔を見るのが礼儀だと聞いた。困ったな。( ううん )
( 繋いだ手の温もりに、ほんの少し体の震えも和らいだ――束の間、振り翳された煙草を見てみるみる血の気を失い。“そんなにされたきゃ痛めつけてやんよ。”言葉と行動の何方が早いか、男は彼の白い腕に煙草の穂先を押し付け、灰皿にそうするようにぐりぐりと躙り )――っ!やめろ…ッ!( じゅ、と肉の焼ける音、焦げ臭い匂いに胸を締め上げられるかの様な感覚。主に刃向かう怖さより大事な者を傷付けられる恐怖の方が勝り、思わず主の手首を掴みその手を引き剥そうと )
……っ、!( 急いで顔を上げじぃ )…こ、これでいいんだろ…( ぽそ、うぅ )
ッ、!!ぐっ、あ…あ゙ぁっ…、( 痛い、苦しい、熱いこの三拍子が言えるかのような腕に鈍い痛みを感じるもこれも彼が何度も経験した恐怖。そうと思えばこんな苦しみなんてことない。自身を助けようと必死に審神者に歯向かう彼の姿が。駄目だ。あんたまでこの男に何されるかわからないのに。繋いでいた手にできるだけ力を入れぐい、と相手の手を引きその行為をやめさせ )…ッ、俺、は大丈夫、だから…っ
やれば出来るんじゃないか。( なでなで )俺もじろじろと顔を見られるのは好きでは無いが…あんたなら平気だな。どうせ写し同士、何を気負うことがある?
ッ、大丈夫なわけ無いだろ…!( 力一杯に腕を引かれてはよろめいて後方へ退がり。苦しげな呻き、痛みに歪むその表情に自身も胸を痛ませ、見てられないとばかりに何度も首を横へ振って。“哀れだなァお前。こいつに関わらなきゃ痛い目に遭わずに済んだものを。尻尾巻いて帰んな、子猫チャン。”男は煙草の残骸を適当に地へ放ると捨て台詞を吐いて本丸へと足を向け )……すまない、俺の、せいだ…。
…主からはそう教えられたのでな。( 視線すす )…今まで他の刀剣から見られるのが嫌でこいつで顔を隠してきたんだ。彼奴らがどう俺を思っているのか、とか色んなことに対しての恐怖心というのか…それがあるからかあまり見られたくないだけだ。…っあ。あんたなら平気だと思ったが…やはり怖い。あんな前向きなことを言っておいてなんだが…、
ッ…、っ!( じわじわと攻め立てられた腕をやっと解放されると力なく膝から崩れ落ち。捨て台詞を吐きこの場を去る相手の背を穴が開く程睨み付け。その気配を感じなくなると、額から冷汗と荒い息を何度も繰り返しつつ )…っん、…あんたの、せいじゃない。悪いのはアイツだ。自分を責めるな。
そうか…。まあ、同じ顔といえそれぞれに自我があるわけだからな。そう思うのも致し方無い。
だが他人の評価を気にするだけ無駄さ。…俺は俺だ。不安を払拭するには、己を磨いてもっと強くなるしかない。努力は自信に繋がるものだと兄弟も言っていた。
( 本当は主の気迫に彼もまた恐怖していたのだろうか。突然頽れた相手に合わせ自らも傍に屈んで心配そうに目線を合わせるも、息絶え絶えに紡がれたその言葉をすんなりと受け止めるには己自身後ろめたい気持ちがあって。彼を助けたい気持ちと、主に認められたい思いがせめぎ合い、翡翠の双眸に涙を溜め衝動的に硬く握った拳を地面に振り下ろし )いいや、俺が悪い。主を止められなかった俺が。…中途半端に抵抗しただけで、本当は、主に嫌われる事を恐れたんだ…ッ。
…努力、か。あんたみたいに堂々としたいものだな。自信を持てるようになるだろうか…( ふ )
( どうしてそうも自身を攻め立てるのだろう。彼のせいではないのに、全部アイツだ。だけど、相手の気持ちもわからないことはない。己とてもし相手と反対の立場になれば、たった一人の主から顕現してもらったのだから逆らえる筈もない。助けたい気持ちはあるにせよ主に嫌われたくない、信頼を失いたくない、とその思いがこみ上げて彼と同様の行動をするかもしれない。やられていない方の右腕で肩を持ち此方へ抱き寄せ )…もういい。これ以上精神的に追い詰めるんじゃない。保てなくなるぞ。…それでもあんたは俺を助けようとしてくれた。それが…俺は嬉しいと思ったが怖さもあった。あんたがまたアイツに何されるのかわかったものではないし、あんな行動をとったが…無事で何よりだ。
なれるさ。俺達は名工国広の第一の傑作だろう?そこは誇りを持って良いんじゃないのか。
…俺なんかどうなったって良い。大事な者を失う苦痛に比べれば…。( 相手を怪我させておきながら自分だけ窮地を免れた事を喜べるはずも無いと居心地の悪そうに視線を逸らし卑屈な呟きをぽつりと零すや否や、不意に抱き寄せられ咄嗟に身を守るように身体を硬くさせ。だが直ぐに乱暴にされる訳でも無いと分かると他者の温もりに身を委ねつつ彼の肩にそっと頬を擦り寄せ、相手の左手を取ると腕の傷を伏し目がちに見遣り )――…本丸へ来てくれ。手入れは出来ないが、怪我の手当てなら出来るから。
!ああ。それも、そうだな。…あんたに言われると不思議と自信がつく。ありがとう。( ふ、 )
どうなってもいいわけがないだろ。…それを言うなら俺だってそうだ。あんたを…失いたくなかった。( 卑屈な呟きに対抗するかのように自分の本心を相手に伝え、落ち着かせる為に何度も何度も背中を優しく叩いてやり。相手に左手を取られ自身もその腕を見やると、痛々しく残る火傷の痕、そして相手の表情を伺い見遣れば何処か悲し気に見えて )…いい、のか?
…感謝されるほどのことでは。( 布で目元を隠し )らしくもなく偉そうな事を言ってみただけだ。
……、そうだな。すまない。( 折れようが朽ちようが誰も悲しむ者などいなかった過去とは違い、今は己の死を嘆いてくれる同士がいる。その現実だけでとても心強く、温かい気持ちになると初めて彼の前で少しだけ微笑を見せ。触れた手をそのまま引くように立ち上がっては彼の問いに快く頷き )そのまま帰すわけにもいかないだろう。大丈夫だ、主には見つからないように行く。
偉そう…?俺はそんな風に感じなかったが。( きょと )あんたは俺にそれをしたらどうだと助言してくれたんだ。偉そうになどと思っていない。
…!( 今まで見せたことのなかったたった一瞬だけの出来事。少しだけでも小さな微笑を目の前にしては驚きのあまり目を丸くするも此方も控えめに微笑み返し。あの審神者の事だ。こんなことでさえ勘付いているかもしれないのだから懸念してしまう。念の為、警戒心だけを強めて行こうと相手に手を引かれるがまま立ち上がり )……すまない。何かあれば俺があんたを守る。
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