黒き桜の散るところ　[　非募　]

おっ、おい!歩きにく――!嗚呼、今しがた帰った。主、少し話があるんだがいいか?（　見慣れた風景の本丸を眼前にしては無事に何事もなく無事に帰ってきたのだと安堵の如くﾎｯ、と胸を撫でおろし。一歩中へ入ると、短刀達と遊んでいたのか審神者の姿をも目に入り此方に気付いた他刀と審神者から”お帰り”と言葉を貰うも己の後ろに警戒心剥き出しの彼が気になるらしく、寧ろ同じ容姿である為興味津々に見つめており。審神者もその様子に気付き軽く頷くと隠れている彼ににっこり笑みを見せ”ようこそ我が本丸へ。何もない所だがゆっくりしていきなさい。さ、手入れ部屋に先に行っておくから切国と一緒の方がいいだろ。案内してあげな”と声を掛け如何にも察したような口ぶりで　）…!嗚呼。すまない、主。…大丈夫だ。こいつらは何もしない。あんたを歓迎している。

分霊…、その、だな。事前に言うべきだったんだがもう既に書いてしまったから遅いのもあるんだが…。今更か、と思われるだろうがあんたに謝りたくて。話の展開で勝手に創作審神者を出してしまったんだが、よかっただろうか…?（　ちら　）
嫌なら再度書き直すこともできるが…、

何故謝る？話が早くて寧ろ有難いことだ。そんなことで悩む必要なんかないさ。あんたが必要だと思う時に、好きに創作審神者を登場させてくれ。
…いずれ話が進めば、俺の主をあんたとぶつけてみるのも一興かもしれないな。その場合は俺の方で主を操らせて貰おう。…あんたが苦手な展開でなければ、の話だが。



…っ、（　　気配の正体はこの本丸の主と、短刀の面々。己が最も嫌い、畏怖している審神者の姿を目にするや一層険しく殺気立たせ、先程相手から奪った刀の鯉口を切って。そんな己に対し向けられた言葉と眼差しは思いの外優しく、更には相手から大丈夫だ、と宥められるとほんの少し安心したように警戒を解くも刀を完全に鞘には納めることなく、びたりと相手の背に刃を添え当て。全ては忠告として、審神者に見せつけるための行為　　）…おい人間。俺を裏切ればあんたの大切な山姥切国広を折る。その事を、忘れるな。（　　それだけ伝えると静かに納刀し、不意に鋭い視線を近くの短刀達へも投げて計らずも彼らを怯えさせてしまう始末　　）

そうか…ならよかった。（　ほっ　）わかった。俺の判断で創作審神者を登場させてもらう。
…いや、そんなことはない。いつ何時起きても可笑しくはない展開だろ。俺はあんたの主と話してみたいと、思っているしな。



（　今まで興味津々だった短刀達も相手の視線で明るい表情から一変、恐怖にとらわれた表情へと変え審神者の所へ逃げ込み後ろに隠れしがみつく短刀達を慰めるように頭を撫で短刀達の恐れた顔とは違い彼だけは呑気な表情で”はっはは!そうかそうか。それは困るな。切国が居ないと仕事を全部押し付けられなくなるんだがな…まあ冗談はさておき。まだ俺の事は信用ならないだろうが、切国が居なくなるのは困るのは本当だ。お前を裏切らないと約束しよう。そのままではお前は折れてしまう。落ち着いてからでいい切国と共に手入れ部屋へ来い”とだけ告げると、短刀達と共に中へ入っていき　）…分霊。（　審神者と相手の会話を黙って見守ることしかできず暫く口を慎んで。審神者を見送った後、視線だけ相手へやりぽつり心配げに　）

ああ、任せたぞ。分霊。
――では、こちらも来るべき時がきたらあんたと主を引き合わせよう。…しかし俺の主と話してみたいとは酔狂な奴。どうなっても知らないぞ。（　　首傾げ　　）


（　　剣呑な威嚇もこの審神者には通じぬらしい。飄々として掴み処の無い言い回しから楽天家という印象を受け、拍子抜けしたように審神者の言葉を反芻し。体の良い言葉だが要するに、隣の分霊が自身の監視役という事かと己なりに解釈すると“　分かった　”と一言審神者に告げてはその背中を見送る。元より衰弱している肉体のせいか、はたまた審神者の前で余程緊張していた為か、再び相手と二人きりになるとつい気が緩んでしまい、ふらりとよろめいて　　）――…う、（　　相手の心配げな眼差しを余所に彼の肩へ凭れる格好で、意識朧げなままに呻き声。力の抜けた指先から刀が滑り落ち、がしゃんと硬質な物音を立てた　　）

ああ。その時が来たら宜しく頼む。（　こく　）…まあ、何かあった時は何かあった時だ。そうなった場合、あんたが助けてくれるんだろ?（　目細目首を緩く傾げ　）

え…っ―――…!おい!分霊、しっかりしろ!（　突然の事で何が起きたかも解らず審神者が居なくなった刹那、緊張の糸が切れたのか立っている状態が保てなくなってしまったらしい相手に困惑。それも一瞬の事で自身から奪った刀が落ちる音で暫し思考が停止していた意識を取り戻し慌てて相手の頬を軽く叩いてたり、呼び掛けたりと行動に移すものの反応が薄い。このままではいけないと慎重に相手をおんぶし足元に落ちた自身の刀を拾いあげ早足で審神者のいる手入れ部屋へ　）…っ、主!分霊が…っ（　血相を変えて手入れ部屋に着くな否や審神者もその状態の彼を見るなり真剣な眼差しで”早くここへ寝かせてあげなさい!”と言われた通り布団の上に寝かせ手入れを行いはじめ　）

どうだろうか。俺にも、自分がどう動くかはその時になってみないと分からないな。あんたを助けたい気持ちもあるが、主には逆らえない。分かってくれ。（　　申し訳なげに俯き　　）



（　　心配の声と何やら騒がしい部屋の空気を意識の彼方で感じ取るも反応する余力は無く、何より手足に力を込めるのが億劫で。襲い来る微睡みに遂には完全に意識を手放すと、屍のように身動ぎ一つせず布団の上に横たわったまま。陽は沈み月昇る宵のうち、ようやく長らく閉ざされていた目蓋をはたと開けば暗い天井をぼんやりと眺めると共にゆっくりと意識を覚醒させていき。その頃には、審神者の手により修復も済まされているはずで　　）

…ふっ…冗談だ。（　頭ぽんぽん　）あんたにとっては酷い主だとしてもその人間に顕現された唯一、たった一人の主なのだから逆らえる筈もない。俺は俺で何とかしてみせる。…困らせて悪かったな。


（　彼の腰元にさしてあった刀を取りだし鞘から刀を抜き拝見してみると殆ど手入れが行き届いていなく最悪なことに刀切れまでも目にしてしまうと眉を顰めた審神者は”切国。かなり時間がかかりそうだから手伝ってくれないか。大丈夫だ。必ず直して見せる。”と真剣な眼差しでそう促されると小さく頷き加担し。—―それから暫くし審神者の手によりなんとか彼の修復も終え一先ず折れずに済んだようで。ホッ、と一安心しつつ審神者はゆっくりと立ち上がり目覚めるまで傍にいてあげろ。と一言告げては手入れ部屋から出ていき。体育座りで相手が目覚めるのを待っていたのだが、どうもあまり慣れないことをしたせいなのか眠気に襲われそのまま寝てしまい　）

――…優しさは時に身を滅ぼす。俺の主に深く関われば、怪我をする。時に血を流すことにもなるかもしれない。それでも良いと…？
だが主命の埒外ならば俺はあんたの味方だ。心まで主にくれてやる必要はないからな。（　　布ぐい　　）


（　　暗闇に目を慣らし、緩慢に起き上がる。長く意識を失っていたせいで気倦さはあるものの節々の傷による痛みから久々に解放される肉体の爽快感は計り知れぬもの。日没後の夜半はとても静かで、審神者や他の刀の気配も無くすっきりとした表情で手入れ部屋をぐるりと見渡せば、直ぐに居眠りする分霊の姿を見付け、と同時に自分が目覚めるまでの間ずっと見守っていてくれたのだろうと容易に想像がつき。規則正しい相手の寝息に微かに口元緩ませると、起こさぬよう押し入れから毛布一枚を探し出し、相手の肩に羽織らせて。“　おやすみ　”そう小さく彼の耳元へ囁けば再び布団の中へ戻り、朝まで休もうと目を瞑って　　）

…ありがとう。だが、俺はあんたの審神者にやられるわけにはいかない。あんたを救うまでは…俺は何が何でも生き残る。


（　翌朝。小鳥達の囀りで小さな呻き声と共にふるりと目蓋を開け顔だけあげ少しずつ意識を覚醒させるべくぼんやりと何処かを見つめており。半分意識が疎かながらもきょろりと辺りを見渡していると、手入れ部屋のようで。手入れ部屋…—―そうだ。確か俺は分霊を運んで、と昨日会った出来事を思い返し意識は段々と浮上していくと同時に眠っているであろう彼の様子を窺がうべくそろり、と相手を起こさないようそろりと相手へ近づこうとし　）

頼もしいことだな。…でも無理はしないでくれ。暴力的なこととか、血を見るのが嫌いであれば言って欲しい。あんたが本気で嫌がることは避けたい、から。


(　　心地好さそうな寝顔を晒し、遅れて意識を浮上させれば何やら視線を感じて其方へ寝ぼけ眼を向け。昨日までのぎらついた瞳は其処にはなく、ただ無防備で眠たげな眼差しを合わせると共に昨夜の記憶を辿り。ずっと傍で見守ってくれていた分霊に対し少しは警戒も解けたようで、小さく呟くと横たえた体を無理矢理起こそうとして身動ぎ　　)――朝か…？

分霊…、無理はしていないから平気だ。気遣わせてしまって、すまない。（　眉下げ　）俺の事は気にしなくていい。好きなように…というのも可笑しな表現だが、あんたの想う審神者の形を正々堂々と出してくれて構わない。それに…彼方であんたに声を掛けた意味も為さないだろ。


――っえ…、?!（　相手の様子を窺がうべく起こさぬようにそろりそろりと相手へ近づいて見て見ると、そこには心地よさそうな寝顔を晒して寝ている相手が。昨日の彼とはまるで別人かのようなスッキリした表情に少し安堵したものの驚きのあまり声を漏らした同時に自身の声で目覚めてしまったのかはたり、と視線がぶつかり合い。無理やり起こそうとする相手の肩をやんわり抑え　）っ、あ…ま、待て!無理やり体を起こそうとするな。修復して間もないのだから今日は寝ていろ、分かったな。

分かった。あんたがそう言ってくれるのなら此方の思うようにさせて貰おう。
…何せ、どの程度が許容範囲なのか分からなかったものでな。此方こそメタくさい話をしてすまない。


…だが…帰らないと主が…。無断で不在にしたことを主に知られたくない。陽が昇ったら此処を発とうと決めていた。だから、頼む。（　　起き上がることを制するように肩を抑えられ、渋々と身体の力を抜くが諦めた様子は無く強気な瞳で相手を見上げ。完治はしたが根源的な解決には至っておらず、命令外の勝手な行動に怒った主の顔が目に浮かぶようで。執拗に懇願の言葉を述べた後は肩に添えられていた相手の手を取り、平気だとでも訴えるかの如く力強く握ってみせて　　）俺なら大丈夫だ。

ああ、頼む。（　こく　）
…いいや、俺の方こそ、だ。前から言っていればよかったな。確認不足だった俺も悪い。お互い確認できてよかった。


……っ、すまない。俺が行き成りあんたをここを連れってしまったせいで…、（　演練場にて相手の状態を見れば居てもたってもいられず出しゃばってあのような行動に出たことに対し彼の審神者に関して少しばかり想像できてしまい。自身のせいでまたあの悲惨な姿になるのではないかと思うと悔し気な表情と申し訳なさでいっぱいになり目を伏せ　）

あんたは悪くないだろう。何れ他にも疑問が出来れば質問させて貰うかもしれない。
逆に、あんたからも何かあれば言ってくれ。話しかけてもらえると俺なりに喜ぶ。…なんてな。(　　相手の頭へぽふりと手を置き　　)


いや、いい。恩人には変わりないさ。(　　手入れを施されなければどの道壊れていた命。それを救い、生き長らえさせてくれたのは紛れもなく相手の存在があったからだと首を振り否定の意を示せば、緩慢に起き上がり懐から取り出した幾枚かの小判を畳の上へと置いて　　)…宿代と治療費だ。少ないが受け取ってくれ。世話になったな。(　　平和な時間への未練を断ち切るように敢えて簡素に言い放ち、刀掛台に添えられていた自身の本体を手に持つとそのまま部屋を後にしようと　　)

解った。俺が答えられる事であれば答えよう。（　こくこく　）
…（　きょと　）…ふっ、俺もあんたから話しかけられるのは嫌いじゃない。質問ではなくても他でもいい。いつでも話かけてくれ。（　控えめに小さく笑みを浮かべ　）…だが、あんたの無理のない範囲でな。


――…待て。待ってくれ…!（　そう優しい言葉をかけられてもやはり己の勝手な行動をしたことは変わらないのだから。それに彼の審神者の事だ。ここまで変わった今の彼の姿を見れば一目で勘付くのは目に見えているし、何をされるかわかったものではない。ならば、相手を救うしか他にはなく畳の上に置いてある小判を取り相手の腕を掴んで　）…宿代も治療費も要らない。俺が勝手にしたことなんだ。これはあんたの好きなことに使え。…それと、あんたと共に本丸へ行こうと思う。審神者から何を言われても俺のせいだと言うことも何もかも正直に話そうと思っている。（　掴んでいた腕を離しては相手の手を取り、幾枚の小判を返しては決意したかのような視線で相手を見つめ　）

ほう、世間話にでも付き合ってくれるのか？…この程度負担にはならんが、それはあんたにも言える事だろう。此方は適当に切ってくれて構わないぞ。（　　ふむ　　）


（　　咄嗟に腕を引かれ何事かと振り返れば其処には何がしかの決心の込められた彼の顔ばせがあり。その気迫は有無を言わせぬほどの強い意思のようなものが感じられ、思わず一人で先へ進むことが憚られてしまい。本当は、一振りで主の元へ帰るのがどうしようもなく心細くて　　）……すまない。（　　受け取った小判を懐へ仕舞いながら、ぽつりと呟く。それは相手の言葉に甘えるという意思表示でもあるのだが、彼を私情に巻き込んでしまうのは本意ではなく敢えて冷たく言葉を付け添え、かと思えばくるりと布を翻し手入れ部屋の外へと歩を進めて　　）だが見送りだけで良い。あんたが俺の主に会う必要は無い。触らぬ神に祟りなし、だ。

付き合ってもいいぞ。…俺もあんたと同じで負担ではないからな。それにあんたとこうやって話すのは好きだしな（　ふっ　）まあ…あんたさえ嫌じゃなければだが。



（　相手からの冷たい言葉を受け取るもののこれは一緒に行ってもいいということだろうか。それならそれでいいと相手の後ろを着いていき歩を進め。まだ朝も早いこともあり刀達はまだ誰も起きていないようでしんみりとした廊下を歩きつつ玄関へと辿り着き。靴へと履き替え玄関から出てゆき相手が来るのを待ち　）…いや、一緒に行く。一人だと心細いだろ。あんたの事が心配なんだ、共に行かせてくれ。

…そうか、良かった。
嫌じゃない。…とはいえ俺はこの通り口下手でな。誰かを楽しませるなんて写しには敷居の高い事だが…それで良いなら。あんたなら言わずとも分かるだろ。(　　じ　　)


……物好きめ。(　　好きにしろとでも言うようにふ、と鼻を鳴らし皮肉を零すがその表情には僅かばかりの安堵が滲み。もう此処へ来ることも無いだろう、そう思えばこの平和な本丸との別れが惜しくなるようで振り返り何かに堪えるようきつく唇を引き結びつつ、玄関を抜け相手の傍を素通りし演練場の在る方面へすたすたと早足で歩き始め　　)此処からは俺が案内する。

…それは言わずとも写しの俺とてそうだからな。（　目伏せ　）…無理敷いて楽しませることはない。俺は…その、あんたと…話せればそれでいいと思っているし、な。（　視線すす、ぽそそ　）

――…いってきます。
（　相手に着いて行く前にくるり、と本丸の方へ体を向け。なんとなしに自身の本丸を目に焼き付けるようにしっかり見つめそして誰に聞こえるわけもなくそう呟くもその言葉は、審神者や他の仲間に向けけており。黙って行くことを許してくれ、主と顔を下へ向け謝罪しつつ暫く本丸を見つめもう心残りはないと、布を深く被り直し相手の元へ　）…頼む。