半堕刀剣 2018-04-15 23:28:01 |
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ああ。といっても、俺も初心者だがな。――そら、見えてきたぞ。( 海風が吹き、潮の匂いが微かに香る林を抜ければ其処は青々とした海が輝いて )
ん…、こら、( 嗜めるように背中ぽんぽん )
そ、それは…。しかし、あんたを傷付けることだけは避けたいんだ。お前、そういう知識に疎そうだったからな。いきなり襲ったら、嫌われると、思った…。( 布深々と被り縮こまるチキン )
――あんたの知っている国広は、どんな刀だった。今の俺は、本当にあんたの知っている俺とは違うものか?( 戸惑った様子の彼らであったが、動き出したのはやはり分霊の方。此方に近寄る彼に表情は一変、ふ、と優しげに微笑んだかと思えば自ら相手の元へ足を踏み出し、愛おしげな手付きで相手の両頬に触れて。傍から見れば、そんな己の突然の変化は却って異様で不自然なものに映るだろう。だが、紅く染まった瞳で彼の双眸を見詰め続け、此方側に取り込むような甘さを含んだ声で相手の耳元に吹き込み )俺は俺だ。怖がらなくても良い。
――!海…海だ…!( 林を抜ける際目映い光に思わず顔を腕で晒し歩みを進めたその先には初めて見た光景にこれでもかと目を輝かせ )
…ん、( やんわり力を抜きすりすり甘えるようにすり寄り )
っ、あ…当たり前だろ。俺はそんな経験も知識も…あるわけじゃないんだ…。そういった…く、口吸いとかもあんたが初めて、だし…( ふい )…っ、ふふ。ばか。いきなりする奴が何処にいる。まあ…でも…俺はそんなあんたは嫌いじゃない。…きて、国広。( ふ )
( 更なる仕打ちに着いていけずやや困惑気味な一振りと審神者。そんな困惑していた一振りも彼の一言で安心したのか"国広…!"と嬉しげに抱きついている様子。一体彼に何が起きているのか。先程の光景を端から見れば不自然に見えて仕方がないもののもしかしたら彼は正気に戻ったのかもしれない。それならそれで安堵したように息をついた審神者は彼らの元へ近寄ろうと )
――あんた、海は初めてか。…もっと近づけば、更に迫力があるんだ。( 相手の手を取り砂浜の方まで彼を引っ張り )
…はあ。これではあんたを気持ち良く出来ないだろう。( 満更でも無さそうに撫で撫で )
だからこそ、知識も経験も無いあんたを好きにして良いのか分からないと言っているんだ。お前は…、俺に抱かれたいのか?――まさか意味も解らずに誘っているわけじゃあるまい。( じ )
( 彼を手に入れたい、己の元まで堕ちて来ればいい――なんて刀の付喪神にあるまじきそんな歪んだ独占欲から、相手を洗脳すべく態度を変えたものの。当てが外れあっさり彼に抱きつかれてしまうと身動きも取れず、困り顔で瞳を泳がせ。従順で健気な相手の愛おしさに気勢をそがれ、いつしか瞳は元の翡翠色に変わり、今や若干の呆れを含む半目で近寄る審神者を見詰め、救いを求めて )おい、このひっつきムシを何とかしてくれ…。
ああ、初めてだ。( ぱああ )――国広!海、海が近いぞっ、( 近くで見る海に表情を明るくさせ。無邪気にはしゃぎ )
…ぅ、もう…無理、だ( うぐぐ、 )
意味なら少し…分かる。だからこそ…その…なんというか…( 顔反らしぶわわ )
はっはは。まあまあ、いいじゃないか。切国は君と随分離れて寂しかったんだ。少しの間甘えさせてあげてくれ。( なんとも和む光景というのか先程のシリアスムードは何処へ。それもこれで少しは不穏な空気もなくなり嬉しげに彼に甘える刀を見守るようにそう告げ。 )
靴を脱いで海水に足を浸してみれば良い。冷たくて気持ちが良いぞ。( 相手のはしゃぎように子供のようだと苦笑しつつ、微笑ましげに目を細め )
もう降参か?仕方ないな。( 一瞬物足りなげな表情浮かべるもへらりと笑って )
……無理はしなくて良い。俺はあんたの身体が欲しくてお前と付き合っているわけじゃない。お前がその気になったら、また、おいで。( ぐしぐしと頭を撫で回し、ゆっくりと立ち上がって )
――…俺が居なくても、平気になってくれなければ困るんだ。( 政府の人間に立てつき、ただでさえ半堕刀剣と呼ばれるまでになった出来損ないの付喪神。いつまでもこうして会える保障など何処にもなく、少し寂しげに目を伏せた後ぐい、と力任せに肩を押して引き剥がし )ほら行くぞ。帰るんだろ?( 彼らの護衛をすべく簡単に身なりを整え、問い掛けの形を取りながらさっさと門の方へ足を運び )
ほんとか!( ぱあ、いそいそと靴を脱ぎズボンの裾を少し折り曲げてから海水の中へちゃぷ )っ、つめたい…!( ぱしゃぱしゃと足をばたつかせチラリ相手の方を見やれば屈みこみ海水を手で掬っては相手の方へかけてやり )
…、しない。降参なんてしない。( あむあむと相手の首筋に甘噛み )
っ国広…!( 咄嗟にがし、と手を掴み )…無理なんてしてない。その気、だから俺はあんたを誘ってるんだ。( じ )
…、( しゅん、と何処か寂し気に相手を目で追いつつ審神者の隣へ歩み寄り共に門を潜りあの本丸を後にし。そんな少ししょげたような隣を歩く刀に手を置き頭を撫でてやり乍相手の方へ視線をやり )…すまないな、護衛を任せてしまって。切国も本調子ではないから助かる。…あの本丸は、いつもあんな風に政府の番人が付いているのか。
っうわ…、やめ…ッ――切国、覚悟は出来ているんだろうな…?( まさか海水を浴びせられるとは思わず、怯んだように後退り。僅かに濡れた衣服が冷たく、自らも靴を脱ぎ足の裾をまくればゆっくりと相手に近付きつつ両手わきわき )
――う…、何をする…っ、( ひえ、咄嗟に首を竦め )
切国…。…後で泣き言を言うなよ。( 決心したように目つきを変え、彼をひょいと姫抱きにし )
――…そうだ。ああして訪問者の確認をすると共に俺達の監視もしているのさ。外へ出たのは、何日振りだろう。( 彼らの少し先を行く己は周辺の様子に気を配りつつ歩みを進め、平坦な語調で審神者の問いに淡々と答え。その言葉に嘘はなく、外へ出たのも本丸へ戻って以来だと思えば眩しそうに陽の光を手で遮り、そんな当たり前の自由でさえも喜々として目を細め空を仰ぎ見て )
?!なんだその妙な手の動きは…!( ひえ、嫌な予感がしたのか後退りつつ咄嗟にパタパタと逃げ始め )
…今までされた、お返し( はむ、はむ、ふと小さく笑いちら )
っ、言うわけない…!( うが、 )というよりなんで…なんでこの格好…( あわわ、簡単に姫抱きされたことがショックなのか両手で顔を覆いうう、 )
( 彼の話を聞く限りもうその状態は”籠の鳥”でしかなくもう苦痛で苦痛で仕方がなかっただろう。そんなこんなでやっと自身たちの護衛としてだが、久方振りの外へ出た事もありここからでは表情は見えないがどことなく嬉しそうに思えて。暫く歩き続け林を抜けると自本丸へ辿り着き門の前では心配していたのだろう、刀達が此方に気付くと同時に少し安堵した表情へ変え”おかえりなさい”と手を振っており )
こら、待て!( 逃げる相手を追いかけ、後ろから引っ捕まえようとするも勢い余って相手ごと海水の中に転倒 )
擽ったい、やめろ。小動物みたいだな。( 背を反らし逃げ姿勢 )
乱暴にされるよりは優しくに触れられたいだろう?( 涼しい顔で応え、布団まで運び丁寧に寝かせ )
( 遡行軍や敵方に奇襲されることもなく無事彼らの本丸へ辿り着くと、彼らを迎える刀達の群れからは敢えて離れた所へ行き、遠巻きに審神者や分霊の姿を見守って。自らは黒子に徹して存在を消し、頃合いを見計らってこっそりとこの本丸を後にしようと踵を返し門の前まで来たのだが、仲の良い伊達の刀一振りに行く手を阻まれ軽い口論に )――燭台切。…邪魔だ、退け。
えっ…ちょ、っ…!?( ばしゃん、と勢いよく海水の中。ぶはっ、勢いよく飛び上がり )…っ、冷たい。
…小動物とか言うな。( ぽそ、渋々離れむむ )
えっ、( 顔ぶわわ )
( "退かない。なんで皆に黙って行っちゃったの。一番心配してたのは山姥切くんなんだよ…!"ふるふる首を振り退くことはしない伊達刀の一振り。遠くの方でその口論を耳にした己と審神者は何事かとそちらへ振り返り己は彼らの元へ )
あ、いや…こんなつもりでは…。つい、はしゃいでしまって…。( しゅーん )
いや、すまない。あんたのお返しとやらがあまりに生温……いや、可愛らしかったのでな。( 言い直した )
ん?( 何か変な事言ったかって顔 )
…っ、( 頑なに退こうとしない刀に苛立ち小さく舌打ち。言葉で通じないのならば力づくで押し退けようかと考えが過ぎるも、彼もまた自身にとって大切な存在に変わりは無く荒事は避けたいところ。表門は諦めて裏手から逃げようと反対へ走り出そうとした刹那、騒ぎを聞きつけてやって来たらしい相手と鉢合わせてしまい、逃げ場を無くし弱々しく後退って )切国…。
…ん、( ばしゃ、と相手の顔にかけては満足げに )これでおあいこだ。( ふっ )
おい…今、何を言いかけた?( じとー )
なにもない。( ふい )…なあ、やらないのか?( ちら )
…国広、( そこで相手と出くわしては何処か悲しげに彼の名を呼び。伊達の刀と何があったのかは分からないが、此処を黙って行こうとした彼を許すわけには行かず静かに拳を握り )…また…黙って行くのか…?
っ…しょっぱい。( 初めて含む海水にぺ、ぺ、 )
別に。想像に任せる。( ふは )
まあ、待てよ。物事には順序ってものがある。( のそり、相手の上に覆い被さってはちゅ、頬に口付け )
言えば、別れが辛くなるだけだ。…俺はもう…――( まるで今生の別れだとでも言わんばかりの顔で俯き、何かを言い掛けてはふるふると首を振って口を閉ざし。気まずい沈黙を打ち破るよう一度は噤んだ唇を再び開けば、言葉を変えて )…護衛はもう要らないだろ。
ふん。…くしゅ、( 小さな嚏をして )
……やはりあんたは意地悪だ。( む )
っ、…なんだか余裕そうだな。( 此方もお返しとばかり頬へちゅ、それからじーっと見つめ )
…でも…っ( 感情が高ぶり我慢しきれず両目からは涙がたまりぽろぽろ零れ落ち始め。その何か言いかけた言葉はなんとなく察してしまうとそれも刺激され涙は止まることなくそれでも行ってほしくないという気持ちが勝るもそれを何故か躊躇してしまい言葉に出たのは )…もういい。あんたなんかどこでも行ってしまえ…!もう…俺は、あんたなんか…嫌いだ…っ、
大丈夫か?早く拭いた方が良い。風邪をひく。( 荷物の中からタオルを取り出し、相手の髪をわしゃわしゃ )
そんな俺に惚れたあんたが悪い。( でこぴん )
余裕?そんなものあるか。直ぐにでもお前を喰いたくて堪らないんだ。( 相手の手を取り早鐘打つ自らの胸元を触らせ )
( 嗚呼、また泣かせてしまったと彼の両目から伝う涙を見て心の中で切なく呟く。己が居ることで彼には辛い思いばかりさせてしまっていることに改めて気付けば尚の事この本丸を立ち去らなければならない気に駆られ、相手の元まで歩み寄ったかと思えば、耳元へ囁く言葉は冷たいもので )嫌いで結構。お前なんかに好かれようなんて思っていない。精々、もうこれ以上審神者を心配させてやるな。( そう言い残せばそのまま彼とすれ違い、本丸の裏口から足早にこの場を後にし )
ん…だが、着替えがない。( ぼそ )
…ぅ。意地悪( 額さすさす )
!早いな…あんたの心臓、( 直に伝わる相手の心の臓に小さく笑い )
――…っ、( そう耳元で囁かれた言葉にえらく傷付いてしまい涙は一向に収まる気配はなく彼がこの場から居なくなったのを合図に啜り泣く一振りの刀の声が響く。――もうそろそろここへ来るだろうと、待ち構えていた審神者は彼の姿を捉えると苦笑いを浮かべており )…山姥切。君はまた黙って行こうとしたろ。…護衛、ありがとうな。切国には…言ってるのか?
……俺のを貸してやる。( 荷物の中から内番服を取り出して見せ )
悔しければ俺を嫌いになればいい。( ぷい )
――…分かっただろう。俺にも余裕なんて無い。…しても良いか、切国。( かぷ、首筋甘噛み )
( 本丸の裏口に差し掛かった際、見慣れた男の立ち姿を視界に捉え密かに眉を寄せ。己の考える事は全てお見通しらしく、尋ねられることは矢張り分霊のこと。説教は聞きたくないのかあからさまに顰め面を浮かべつつ、気まずそうに顔を背けて )…出ようとした所を見つかった。あいつは、俺なんか何処へでも行ってしまえ…と。
え…いいのか?( きょと )…ありがとう。助かる。( 彼の内番服を受け取り、きょろきょろ着替える所がないと思ったのか彼の目の前で脱ぎ始め← )
…悔しい…悔しいが、あんたのこと嫌いになれない。( む、彼に抱き着きぎゅう )
っん…聞かなくてもわかるだろ。きて、国広。( ぴく、フと笑って )
…あの子も素直じゃないからな…君もそうだが( はあ、と大袈裟な程溜息をついて彼との間に合った出来事は簡単に想像ができてしまい。今頃、自身に素直になれなかったことや言いたくなかった言葉で泣いてしまっているだろう。本当に困った子達だ、と困ったように笑ってしまうと )…、君だってわかっているだろ。切国が言いたかったことも、俺に内緒で君の本丸へ行ったことも。…何度、何度も傷ついても気にもせず君を守れるなら立ち向かうぞ、あの子は。
――!おrうぇ、…おまっ、…ここここんな所で着替える奴があるか…ッ!( わたわた )
…あんたも物好きだな。こんな俺が好きだなんて。( 受け止め、背中撫で )
――…灯りは点けたままで良いな?あんたの顔が見たい。( するり、相手の布の止め紐を引っ張って脱がせつつ )
( 先程の分霊の言葉は本心ではないことは分かっているつもりで、だからこそ自分の為に神経を擦り減らしていく姿を見たくないばかりに相手の言葉を否定するよう首を横に振って。分霊は何故そうまでして己を救いたいのか、何故目前の彼は刀を信じてそんな風に笑っていられるのか理解出来ず、大真面目な顔で )あんた、切国が心配ではないのか?俺と関わり続ければ…あいつは、これから先も傷付くことになる。あんただって、俺が憎いだろう。
え?俺とあんたしかいないんだぞ。何か問題でもあるのか。( きょと、恥ずかしげもなくぬぎぬぎ )
…それをいうならあんたとてそうだろ。いいのか。俺なんぞを好きになって。( ちら )
っ、ばか。嫌だと言っても…点けたままなんだろう。( 少し不安気に彼を見詰め )
――…心配なわけがない。どれだけ傷つけば気が済むんだ…もう、やめてくれって…そう思ったのが正直だ。だけど…君だって、最初に来た時からもうこれ以上傷つく姿は見たくないんだ。切国と、一緒にずっと仲睦まじく暮らしてほしい。それが俺の願いだ。( 彼の言葉に左右に首を振り今迄の二振りの出来事を思い返し苦い顔を浮かべ本心を相手へ伝え。相手はまだ彼方側だが、いつかは此方で預かりたいと考えてはいるもののあの政府の男がどう動きだすか正直分からないところ。切国が相手を助けたい理由はただ、自由にさせてのびのびと暮らしてほしい。そしてもう一つは相手の事が好きだから。その相手の本心はどうかは分からないが )…俺も切国も君が好きだからだ。それも切国は別の”好き”だろうがな。俺は君を政府に話を付けようと思う。…此方の本丸で預かると。
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