黒き桜の散るところ　[　非募　]

…付き合うというのはなんだか難しそうだな。（　むむ　）…そういえば誰かがそういう関係になるとでーと…?するものだとか言っていたが、そうなのか?（　首ゆるり　）…なんであんたはそういう考えに行きつくんだ。（　溜息　）俺はあんたが好きだから初めてを許したんだ。（　じー　）
えっ。いや、俺に聞かれても、だな。…というかなんでこんな格好になっているのかもわからないのだが…っもう十分だろう。退いてくれ国広。（　視線すす　）


（　先程の答えとは違う返しが来たことに気付かぬわけもなく。無理やりにでも震えを抑え込むその仕草といい答えといいあまりあの本丸へ行きたくないということが伝わってきて。だが、行きたくなくともあの本丸には彼の仲間がいるのであって様子が気になるのも無理はなく。恐怖を少しでも和らげようとそっと彼の手を両手で包み込み小さく掠れた声で途切れ途切れに　）――っ、…ぁ…ほん、とは…さに、わ…に…あいた、く…ない、んだ、ろ。さっ、き…と、ちが、う…こた、え、が…かえっ、て…きた、ぞ…。

でーと？ああ、共に飯を食ったり買い物をすることか？仲間と共にすることと何が違うのか、俺にもよく分からん。(　　頭上に疑問符浮かべ　　)好き…。し、しかし、あんたはさっき俺のことが嫌いだと言った。(　　しゅん　　)
…俺以外の者にこんな事されるなよ。(　　渋々といった様子で離れ、ふと思い出したように彼の足をつんつん　　)で、足は治ったのか？


…あんたには何でも分かってしまうな。(　　重なる手の平の温かみにほんの少し落ち着きを取り戻し、一人で悩んでいた頃と違い今は心強い味方が居てくれることを実感すれば控えめに微笑んで。一人じゃないことにそれだけで勇気付けられると決心したように顔を上げて　　)だが、近いうちには帰らないといけない。例えそれで折られるようなことがあっても…悔いはないさ。

やはり国広でもわからないか…（　しゅん　）…多分、同じなんだろうが…何かが違うのだろうな。（　うむ　）…あれは冗談だ。あんたの事好きだぞ。（　控えめにちゅ、　）
…え?あ、ああ?（　よくわかっていないまま頷き　）…あ。そういえば…（　足さすさす　）治っている。ん…?何か忘れているような…、


（　またあの時の様に折られる寸前だった彼の事を思い出してしまうと、苦い表情を浮かべ僅かに手が震えて。でも、そう彼が決意したのであれば何もいうことなはないがやはり行かせたくない気持ちの方が強いもののそれを彼に悟られないよう首をぶんぶん振り困ったように小さく笑んで　）

まあ、ただ一つ言えることは――(　　ぐい、相手の口端に口付け　　)友や仲間にはこんなことはしないだろうな。
ん…良かった。俺も、大人げなかったな。つい子供染みたような悪戯を…すまない。(　　ぺこ　　)
おい…あんた、買い出しを頼まれていたのでは…？(　　肩がし　　)



(　　彼の微笑みが何処と無く寂しげなものに見えると思わず決意が揺らいでしまいそうになり、相手から目を逸らして立ち上がり。重苦しい空気を転換させるべく改めて彼を寝室へ促すと　　)…そら、あんたは部屋へ戻れ。何か作ってこようか？あんたの食いたい物。(　　夕餉というよりは既に夜食の時間帯に近いが、まだ昼以来何も口にしていない為に自分が腹を空かせており。相手に食欲があるかは分からないがどうせならと彼のリクエストを問うてみて　　)

え――っ、あんた…なんで…そん、な…っ～ほんと…ズルい…（　口に手を当てぼふん、　）
いや、俺の方こそムキになってしまってすまない。（　ぺこり　）
…?!（　相手に言われ思い出した顔　）っ、あ…あ、す、すまない国広。今日はこれでまたな…!（　ジタバタ　）


（　そういえば何となしに小腹が空いたように思うも特に食べたいと思う物はピンと来ず顎に手をあて悩む仕草。—―そうだ。昼餉に食べた彼が作ってくれたお粥がいいと思い立つと筆を持ち紙にサラリ”あんたが昼餉に作ってくれた粥がいい。”と書いたものを見せ　）

――ふっ、初々しいな。あんたは本当にそういう経験も無いのか。…花街に行ったことも無いんだろうな。（　　ぼそり　　）…じゃあ…仲直り、するか？（　　自らの唇をとんとん、と叩いて示し　　）
え…っ。あ、ああ。（　　呆気にとられた様にその背中を見送り　　）…また、会えると良いな。


同じ物で良いのか？分かった、作って来る。部屋で待っていてくれ。（　　相手の書き記した文字を見てぱちりと目を瞬かせ。だが余程気に入ってくれたことがそれだけで分かると満更でも無さそうにくすくすと笑みを零し、ひらりと手を振って自身は厨へと向かい。食欲も少しは出てきた様子に安堵するも、栄養が偏る事は避けて昼餉とは少しだけ加える野菜の品を変え。相変わらずの危うい包丁裁きだが昼間よりはまともな見目の卵粥が出来、再び部屋へと参じて　　）

っあるわけないだろ。（　うぐぐ　）あんたはそういう経験ある…のだろう?く、口吸いとか慣れたようだったが…（　ちら　）…ん、（　こく、目を瞑り　）
（　買い物を済ませ本丸へ帰り、長船派の刀に心配げに問いかけられるも”大丈夫だ”と詳しい事は言わず朝餉の手伝いを済ませあの場所へ向かい　）…、国広はいない、か。（　しゅん　）


（　こくり、頷き手入れ部屋へ向かう際にシーンと静まり返った本丸にどことなく寂し気に感じ。体調も先程よりも大分真面になったように思いつつこれなら明日には――治れば彼はあの本丸へ行ってしまう。できれば治ってほしくないなんていうのは本当のところだが、これ以上彼に心配かけたくない。なのにやはりあの本丸へは…なんて悶々と考えつつ手入れ部屋へ帰る途中で歩みを止め縁側へと腰を下ろし　）

…、主の付き添いで花街へは行ったことがある。だが俺には刺激が強すぎた。故に何もしていない。（　　遠い目　　）……、ん、（　　性懲りも無くまた指先を相手の唇に添えてみた　　）
（　　本丸へはなるべく戻りたくなく、また分霊が現れるのではないかと期待を込めてその場に留まり。川岸からは離れた一本の大きな木の下で襤褸布に包まり、すぴすぴと転寝をしていて　　）――切国…。


（　　部屋へ戻ると、居る筈の彼が居ない。まさか何かあったのでは、と青ざめた顔で一先ず粥の乗った盆を文机に置き、手入れ部屋を後にして。だが心配は杞憂だったようで、直ぐに縁側にて相手の姿を見付けると安堵に表情を緩ませるも直ぐに顔を引き締め、相手の背後に立ち痛くない程度に頭をコツンと軽めに叩き。何か物思いに耽っているような彼の様子から、再び心配は募る　　）おい、部屋で待ってろと言っただろう。心配したんだぞ。それとも気分でも悪いのか？

…そ、そうか。（　視線すす　）へ、変な事聞いてしまってす、すまない。（　何故か視線を合わせられず←　）…、（　何となしに片目だけ開け口を離し　）…国広、（　じとぉ　）
――!くにひ…寝てる。（　もしかしたらいるのではないかときょろきょろ辺りを見渡してみれば彼の姿を見つけ急いで駆け寄り名を呼び掛けるも寝ていることに気付き。彼の隣へ腰かけそ、っと頭を撫でやり　）


――!（　ぼんやり満月を眺めそろそろ手入れ部屋へ戻らないとなんて思うも中々腰が上がらずそのまま時間が過ぎていき。ここへ彼が来たことすら気付かず頭を叩かれては漸く気づき其方へ振り返り。彼の問いには何でもない、と首を振り作り笑いを浮かべその場から立ち上がり何事もなかったように手入れ部屋へと進め　）

何だその反応は。そういう気の遣われ方をするのが一番傷付くんだぞ。おい、此方を向け。（　　相手の頬を片手で無遠慮に掴み　　）――…、（　彼が少しだけ目を開けたところで唐突に唇を奪い、初めから彼の口内へ舌を差し入れ　　）
（　　頭へ触れられるとぴくり、と眉寄せ反応を示し、少しの間を置いて突然がばりと飛び起き。其処に居るのが己を連れ戻しに来た審神者かと一瞬勘違いしかけ　　）――！す、すまないっ、つい寝てしまッ……、な、何だ、あんたか。（　　ほっ　　）


（　　本丸へ帰ると言い出してから相手の様子が可笑しいことに気付かぬ自分では無い。分霊だからこそそういった事情には敏感に察することが出来ると、その寂し気な背中を見つめながら一定の距離を空けてゆっくりと着いて歩き　　）なあ、切国。先程の話だが、俺が本丸へ戻る時は、その…途中まで、一緒…に…、（　　危険な頼みだとは分かっていても、自身も独りで帰るのは心細いというのが本音。彼に元気が無い事も相俟ってついそんなことを口走ってしまい、最後には後ろめたさから尻すぼみに言い淀んで　　）

うぐっ…?!ははへ…っはひほはい（　むぐっ、それでも視線を逸らしたまま←　）!ふっ…は、ン…ぅ…（　片目を開けていたのもぎゅ、と目を瞑り服を握り　）
…（　きょと　）おはよう、国広。大丈夫か?（　首ゆるり　）


…、…（　その続きが言いたいことが分かってしまうと寂し気な笑みを浮かべ彼は本当にあそこへ行ってしまうのだな。それなら少しでも彼と一緒に居たい。彼の勇気を無駄にしたくない。そう思えば歩みを止め其方へと振り返り今迄雲に隠れていた月も顔を出し淡い月明かりで二振りを照らし口パクで”いいぞ。”とだけ伝え　）

――はひほ杯……？（　　伝わらなかった　　）――ン、…っふ、（　　水音立てて相手の舌を吸い、腰へ腕を回しゆっくりと撫で這わせ　　）
ああ、すまない。てっきり主かと。…それより何故此処に？帰ったのではなかったのか…？（　　首傾げ　　）


…ありがとう。（　　相手の返答に心持ちが軽くなったような気がし、ほんの微かに微笑むと二人それ以上の会話も無いままに月明かりに照らされた渡り廊下を歩き。程無くして手入れ部屋へ辿り着くと文机に置いた卵粥の様子を見るべく其方へ歩き、そっと土鍋に触れてみて。時間の経過したそれは冷え切ってこそいないが少し生温い程度に冷め、少々残念げに声色落とし　　）…少し冷めてしまったな。温め直すか？

…っ、（　一旦離せ、とぺしぺし叩き　）ぅン…っ、ぁ…（　いやに響く水音に耳を塞ぎたくなる衝動にかられるもそれよりも腰を撫でられる感覚にぞわり。思わず腰を反らせ　）
…あ。いや、もしかしたらまだあんたがいると思って…腹、減ってないか?朝から何も食べてないだろ?これ、持ってきたんだ。余りもので作ったんだが…、（　不慣れなこともある故に二つのおにぎりと卵焼きを笹の葉で包んだものを渡そうと　）


（　明日には彼に会えなくなるのなら今日くらいは彼と一日でも長く一緒に居たい。だから卵粥が少し冷めていても気にしないとでもいうようにフルフル首を振り。彼の隣へ正座し自ら彼の分の茶碗を持ち卵粥を装うと先に渡し、それから自身の分をも装うといただきます、と手を合わせ食べ始め　）

…、何だ？（　　渋々と手を離し　　）――…切国、おいで。（　　びくつく腰を支えるように手を添え唇を離すと、熱のこもった翡翠で相手を見詰め空いた手でその手を引こうと　　）
…！わざわざ作って来てくれたのか？有難い。夜戦の後で腹が減っていたんだ。今食べても良いか？（　　笹の葉に巻かれたそれを大事そうに受け取り、目を輝かせ　　）　　


（　　相手から卵粥を受け取ると小さく礼を言い、彼に続いて自分も一口。熱々ではないが少し冷めている分口に運びやすく、これはこれでと美味そうに食していき。余程腹が減っていたのか相手よりも先に完食すると、何とはなしに彼を観察。声は出ないものの食欲も日増しに回復していることから明日には大分病状も良くなっていくだろうと予想すると共に彼との別れも近い事を予感すれば何処か寂しそうに目を細め。相手の頬に手を振れ、今朝よりは熱も下がっている事を確認すれば　　）…美味いか？だいぶ元気になったようで、良かった。

……国広…その…だな。ほ、本当に彼方に言っても何もしてないんだよな。（　じぃ　）っ…ん?（　僅かに潤んだ瞳を向け見詰め自ら彼の手に手を重ねて　）
ん、どうぞ。握り飯や卵焼きは変に形が歪だが、味だけは保証する。（　こく　）


（　此方はマイペースに卵粥を一口、一口味わいながら咀嚼していれば頬に当たる彼の温かみのある手が触れられ思わず肩を揺らすもちらり彼を見やり。最後の一口食べてしまいその場に茶碗を置いて自身の手に彼の手と重ね合わせ小さくこくり頷き”美味しかった”と控えめに笑い。もうここまで回復しているのであればもしかしたら声がでるのではないかと、期待を胸に試しに声を発しぽつり彼の名だけでもと　）――…国広、

ああ、してない。…俺からはな。(　　目逸らしぼそ　　)――まあ、座れ。此処ならゆっくり出来るぞ。(　　とある座敷に招き入れると畳をぽんぽん。自らの唇を指し示して誘い　　)
そうか、それは楽しみだな。…では早速。(　　ゆっくりと笹の葉を解いて中の握り飯を一つ持ち、そのまま豪快にばく、ばく、と口一杯に頬張り　　)


あんた、声が…。(　　完食してくれた事に感慨を覚える間も無く、短いながらもはっきりと放たれた彼自身の声に目を瞠ったなら繋いでいない方の手で自らの喉元を指差し、ちゃんと聞き取れたことを彼に示して。このまま一生声が出なかったら、と心配していたこともありその喜びは一入で、彼を押し倒さんばかりの勢いで強く抱き着き　　)良かった、本当に…。だが無理はするな。ゆっくり治していけばいい。俺は此処に居るからな。

……ぅ、…あんたは…そいつと…そういうことを経験したということ、か（　その言葉で察してしまえば彼から視線を逸らし　）…?ここは?（　きょろきょろ見渡しおずおずと畳に座り。彼から誘われては其方へ近づき手を握りちゅ、と控えめに口づけ　）
…ど、どうだ?（　おろおろ、じぃ　）


――っ?!く、国広…くるし、い…っ（　彼の重さに耐えきれず押し倒された形で後ろへ倒れてしまうとゴチン、と鈍い音を立てて頭を打ってしまい。主も彼にも相当心配かけてしまった申し訳なさに彼の背中へ腕を回しぽんぽんと叩いて。でも、彼の台詞に小さく首を振りはやく治して彼を本丸へ送らなければ、そう思えば口を開き　）…もう大丈夫、だ。あんたは…本丸へ帰らないといけないだろ。

…俺は写しだがそんなふしだらな男じゃない。あれは不可抗力だったんだ。(　　頭抱え　　)あんたは、主に誘われたりしないのか？
長期遠征に行く際にいつも使っている仮宿だ。古びているが、此処なら誰も居ない。二人きりだな。(　　擽ったそうに口付けを受け、此方も手を握り返し熱帯びた視線を送り　　)
んごご、…もが……っ、むぐ…。(　　※喋れない　　)


あ…すまない。(　　相手に重心を掛けた事で勢い余って覆い被さってしまうと慌てて抱き締める腕の力を緩め、心配そうに相手の顔を覗き込んで。いつもより近い距離感に不思議と胸の高鳴りを覚えつつも、そんな熱は彼の言葉によって瞬時に冷却され。帰りたくない、そんな想いが表情に滲み出てしまう苦い顔をしてぽつりと呟き　　)そう、だな。明日にでも発つか…。(　　ゆっくりと相手から身体を離し、畳に手をついて起き上がろうと　　)

…無理して言わなくていい。もう…してしまったのだろう。（　しゅん　）っえ、主から…か?いや、そんな処へは…誘われるなら甘味屋ばかり連れってくれるぞ。（　るんるん　/　←　）
っ、（　二人っきりという言葉にぼふん、　）…ここで、するのか?（　不安げに見つめ返し　）
…あんた詰め込み過ぎだ。（　くすくす　）そら…口の端に米粒、付いてるぞ。（　そ、っと躊躇なく米粒とりぱくり、　）


（　本当は言いたくないのに。言いたくなかったのに自然と口から出てしまった自身の言葉に傷ついた表情を浮かべてしまって。その言葉のせいなのは確かなもので自信から離れる際に見た彼の苦い顔を見てしまうと徐々に目を見開き咄嗟に彼の首元へ腕を回し引き寄せ　）…行くな…行かないでくれ…国広…っ、我儘なのはわかっている…だが、俺は…あんたと一緒に、居たい…!

…切国…。俺の心はあんただけのものだ。もう、二度とあんなところには行かない。(　　ぎゅ　　)…甘味屋か。行くなら俺もそういう処に行きたかったな。好きな甘味は何だ？
嫌か？(　　彼の頭の布を払い、綺麗な金髪にするりと指を絡ませ　　)
ん…っ、…そういうことは恥ずかしげもなく出来るんだな。(　　照れたように頬赤くし、ふい　　)


――っ、(　　強く抱き寄せられ、今度は己が驚く番。行くな、という彼の心の叫びに本丸へ帰る決心がいとも簡単に揺らぎ、しかし主や仲間を放っておくわけにもいかず、その葛藤の板挟みにされ只々言葉も出ず困った顔で彼を見詰め。抱擁されている事からろくに身動きも取れないでいると、取り敢えず離してくれと言わんばかりに瞳で訴えて。本当は自分も彼と一緒に居たかった、ずっと。この我儘が許される状況だったらばどんなに良かっただろう　　)