〖 非募集 〗砂糖と昼寝。

良いじゃん、お姫様と騎士の恋。身分違いの恋っての俺は結構燃えるけどな。(ケタリと笑い声あげた後、にっと口角を上げどこか悪戯地味たような笑を浮かべればほんの少し目にかかっている前髪を軽く掻き上げて。文句を言いながらも促すまま素直に玄関へと向かって行く相手の背を追いかけつつ。玄関へと辿り着いたなら黒のスリッポンへと足を入れ扉開けて)それは言い過ぎだって。それに、俺は晴から格好良いって思われてたらそれで良いんだからさ。

…ん、綾相手なら何でも良い。(相手の笑みと仕草に目を奪われ、一瞬惚けたように見詰めてしまうも我に返るとだらしなく頬を緩ませながら頷き。玄関先へしゃがみ込みスニーカーを履きながら相手の声に耳を傾けているも、付け足された一言にぎゅうっと胸を締め付けられると立ち上がり首元に抱き着き)いっつも思ってる。そういうとこもかっこい。

ん、俺も晴となら何でもいい。身分違いだろうが反対されようが守るつもりだし。(緩みきった頬に熱を帯びたように見えた瞳、何処を取っても愛おしさが溢れてきて。相手の片手を持ち上げれば恭しく手の甲へと口付けを。何の前触れもなく首元へと回ってきた腕に加え急にかかった己以外の体重に少しバランスを崩すものの片手を壁へと付き転けるのを防ぎ。ちら、と相手の表情伺い目元へとキスを)晴から「綾かっこいいー！」ってオーラ駄々漏れだから知ってる。

…うぅ、綾好きー…(相手からの言葉は何度も胸を擽り、鼓動が一層速まるのを感じると堪らないと言った様子で小さく呻き。手の甲に唇の感触があれば相手の肩に額を押し付け、すりすりと擦り寄りながら呟いて。目元に触れた唇に笑みを漏らすも、告げられた言葉は些か気恥ずかしさを煽るもので。それを誤魔化すように話題を変えると、早々に扉に手を掛け)…え、そんなに？うわ、なんかすげえ恥ずい…。…もう行こ、早くしないと遅くなるし。

ふは、急にどうした。俺も晴の事好きだよ。(肩に擦り寄るようにして頭を押し付けられる相手の頭をぽんぽんと軽く撫でつつ、相手に見られる恐れの無い口元は緩みきっていて。玄関の扉へと相手が手を掛ければすんなりと開き、外の光が室内にも差し込んでくる。それを見て、二人だけの世界が割かれたような、そんな気がしてしまうのだから余程重症であろう。ただ、二度寝に入る前から言われていた外出を今更取り止める気も起こらず、素直に外へと足を踏み出せば相手の方へと手を指し出し)そんなに。俺と居る時、すげぇ可愛い表情してんよ。……晴クン、手。

綾が無駄にかっこいい事してくるからー…。(同じ言葉を交わせる幸福感を噛み締めつつ、肩口に顔を埋めたままぽつりと呟き。返された自分の知らなかった事実に益々羞恥が込み上げるのを感じながらも、扉が開いてしまえばそれ以上言い返す事はせずに口を噤み。此処から先は相手と友人のような距離感で歩かなけらばならないが、一体どの程度が近すぎない距離というのかが分からなくなってしまっており。心配と寂しさにあれだけ楽しみにしていた目的が憂鬱なものになりかけた時、横から聞こえた声と差し出された手に目を見開き。何度か手と相手の顔とに視線を行き来させていたが、程無くしてゆっくりと其方へ手を伸ばせば指先を軽く絡めて)

(ん、と差し出した手に戸惑う様子を見せる相手。繋いでくれる気になるまではこの場を動くつもりは無い、という意思表示をしようかと思っていれば程無くして相手の体温がそこから伝わってきて。指を絡められれば此方も応じるように、解くつもりは無い事を相手に伝える為にもほんの少し力を込めて絡め直してから、こめかみへと軽く唇を寄せ。隣に居る相手の顔覗き込めば道を問う声色は普段、家で二人きりの時とりか幾分明るいものを心掛けて)……俺はどこ行くか知らねぇんだから案内よろしくな？

(触れてしまっても尚蟠る迷いを掻き消すように強く繋がれた手、その意思を感じ取れば思わず頬が緩み。互いの関係が世間的にイレギュラーであっても堂々としている相手の様子に憧れもあり、同時に強く惹かれると此方からも手を握り返し。こめかみに触れる唇や声色さえ普段よりも甘ったるく感じてしまい、自らを律するべく軽く頭を振るとできる限り平然と言葉を返し)おう、任せろ。あんまり遠くねえから。

(握り返された手に先程までの弱弱しさは無く意思は過不足なく伝わったのだと安堵の息を。平然を装いつつも平素の調子を取り戻したのであろう相手の様子を見れば、歩を進めだし)んじゃあ早速行こうぜ。

ん。(促されるまま頷いて歩き出し、相手の手を引いて目的の場所へ向かい。視界に人影がある度鼓動が跳ねるが平然と歩き続け、ただ握った手に僅かに力を込め。十数分程歩いたところでふと足を止めて振り返ると、笑みを浮かべて相手を見据え)…はい、目閉じてー。

(相手に手を引かれつつ目的地への道を歩み始め。視界の隅に人影が映る度に僅かに握る手に力が込められれば、それに応えるように力を込め返し。陽の射す中、十数分程度歩いた辺りでほんの少し前を行く相手が足を止め振り返れば、その顔には笑みが浮かんでおり。小さく首を傾げつつ言われたままに目瞑り)…ん？分かった…。

(相手が目を閉じたのを確認すると両手を取ってゆっくりと歩き、角を曲がった小さな店の前に立ち。ジュエリーショップだが煌びやかでなく、落ち着いた雰囲気のある場所なお陰で一目見ただけでは気付かないかもしれないと考えつつ声を掛け)…開けて良いよ。

(瞳閉じたまま、相手に両手を引かれつつゆっくりとした足取りで着いて行き。暫くして歩みを止めた相手に半ばぶつかるようにして立ち止まれば、指示通り目を開いて。そこに見えたのは落ち着いた雰囲気のある一軒の店で。状況を飲み込めないために苦笑混じりの笑みを浮かべつつ小さく首を傾げ)…っと、ココに来たかった、って事であってる？

ん、あってる。ほら、入って入って(どんな反応をするだろうかと若干緊張しながら相手の様子を見詰めていたものの、此方を向いた表情からは一体此処が何処であるのか分かっていないらしい事は一目瞭然で。思わず頬を緩めてしまいながら相手の背後に回ると、背中をぐいぐい押しながら店に入る事を促し)

こらこら、そんな押さなくてもちゃんと入るから。(何時の間にか横に立っていた相手は己の背後へと回り、店の中へと入るのを促すとともに背中を押してくる。その力に半ば負けるようにして店内へと足を踏み入れれば視界に入ってきたのは、控えめながらきちんと主張をしているアクセサリーの数々。この場所に連れて来た、という事は何かしら欲しい物があるのだろうがその真意は未だ掴めずに居て、ちらりと後ろを見遣ればそのまま首を傾げ)…んで、どした？何か欲しいモンでもあんの？

……もー、前言ってただろ指輪欲しいって。(店内に入れば勘付くだろうと思っていたものの、予想に反し未だ目的を理解していない様子に不服気に眉間に皺を寄せ。唇を尖らせながら最終的には自ら目的を明かすと、相手の後ろを離れてディスプレイされている指輪を見詰め)

ああ、そういえばそうだったな。(瞳をぱちくりと瞬かせ、相手の言葉にて思い出せばすぐに思い出したように両手をぱん、と叩いて。背後を離れて指輪の類がディスプレイされている棚へと進んでいくのを見ればその後を追いかけて。相手の背後に立てばそこから覗き込むようにして)…んで、晴はどれが良いとかある？

…俺シンプルなのが良いんだよなぁ…。なんも模様無いのか一本線入ってるやつ。…あ、あれ。(思っていたよりも種類が豊富な指輪の一体何が違うのか分からないが、それらを幾ら比べてみてもやはりどれが良いのかはよく分からず。相手と同じ物であれば良いのだから余計な装飾は要らないだろうと考えながら、自分が言った物に該当する指輪を指し)

んー、シンプルなやつか…。ん？ああ、晴が言ってるのにぴったりだな。(顎に手を当てケースの中に並ぶ物を品定めするように眺めていれば、ピンと来たものを見つけたのか聞こえてくる相手の声。指さされた方へと視線を向ければ目立つ装飾のついていない、相手の要望にぴたりと当て嵌るものがあり。辺りをキョロキョロと見回し男性の店員を見付ければ、相手の頭くしゃりと撫でてからそちらへと歩を進め)…ちょっと待っててな。

ん、あれ──…えぇー…何それ……。(並ぶ指輪の中指した物を見つけたらしい相手からの言葉に頬を緩ませて頷くも、早速何か行動に移すらしい相手に頭を撫でられると返事もできないまま動きを止め。頭を撫でられた事など幾らでもあるのに外出先で何気なくされると一際鼓動が跳ね、一瞬で頬が熱くなるのを感じると思わずずるずるとその場にしゃがみ込み、あまりにも情けない自らを辟易しながらぽつりと呟き)