若き将校 2018-03-28 22:31:14 |
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きっと、敵国の方が豊かなんだろう…、あの銃を見れば分かる…俺達の軍ではあのような代物は大金を叩いても無理だ…
(連れて行かれる若き軍人を見届けては溢れるのは溜息か、どっと押し寄せる疲労にその場に立つ事さえままならず上半身を起こしたままで荒くなった呼吸を繰り返し。彼の肩口を見れば紺色の軍服を更に濃くさせたように染まっているのを確認すればそれが直ぐに血液であるという事が分かり、直ちに手当をと残った兵達に目配りを。寒気もしてきたようで手元を見れば赤に染まりどうやら己の太腿からも血液は流れているようで、まだ痛みは全く感じられないがその内に手当を受けようと壁を伝って立ち上がり)治療が必要だな…、此処には医療器具も揃ってないというのに良い迷惑だ…
ーー総一郎、お前はもう動くな。出血が酷い、急に動くと貧血を起こす。
本部から少量の医療器具は持って来た、すぐにモルヒネを打ってやる。…だから、
(言葉尻はあくまで上に立つ者として冷静なもの、立ち上がろうとする相手を制止し兵士に担架を持ってくるように指示を出し。相手を落ち着かせるように自分の怪我をしていない方の肩へと顎を乗せさせると抱きしめるようにしてその背中を優しくさする手は相手にここまで無理を強いてしまったことに対する罪悪感と、相手を失うかもしれないと感じた恐怖に小刻みに震えて。やがて担架が来ると相手をそっと寝かせ基地の医務室へ。医療に通じる兵士に痛み止めのモルヒネの点滴薬を手渡し相手の腕へと)
(薄れゆく意識の中、己を支える身体が小刻みに震えるのを感じて安心させてやりたいと願ったのを最後に暗がりの中へと落ちていき。モルヒネによる鎮痛効果は直ぐに結果を出し、同様に副作用の眠気によりその日一日は眠ったまま過ごす事となり。翌朝、医務室にて目を覚まし身体を起こせばぼんやりとした意識の中何となく記憶を辿って己の状況を把握し。足の痛みは恐ろしいほど無い、爽快な気分にさえさせてくれる。空軍兵士や軍医が容態を伺って来るがモルヒネの効果か苦痛と何も無く、その場にじっとしているのも落ち着かず無理にでも松葉杖を受け取れば早速立ち上がってその辺りを徘徊し)
(相手が意識を失ってから丸一日、数回様子を見に医務室を訪れたもののほとんどは事件の後処理や本部との連絡、警備の再配置に追われ、結局事件が起きた夜から一睡も出来ないままで。我を忘れたように仕事へと駆り立たせられるのは若い兵士の裏切りに衝撃を受けたからか、それとも怪我をさせた相手を始めとする兵士たちへの償いの思いか。相手が意識を取り戻した事も知らず、その頃ようやくその日の本部との長い長い会話、時折非難めいた言葉を投げかけてくる上層部との話を終えると電話を切って。深く息を吐き出し眉間を抑えるその顔には隠しきれない疲労が色濃く浮かぶが、警備の確認に行かなければと立ち上がり)
(一日寝て過ごすような怠惰な生活は身に合わず、慣れない松葉杖にやや足を取られながら訪れたのは司令室前。先日破壊してしまった扉は既に直っているようでその奥に相手がいるか居ないかは此処からは分からない。扉を見つめる背後には昼間の日差しを差し込む大きな窓、照らされた廊下の先に木々の影がゆらりと揺れる様子が平和を語っているようで。恐らく心配してくれているであろう相手への第一声はどうするべきか、そもそもこの扉の先には居ないかもしれない。少しばかり気まずさを胸に抱きながらノックもせずに扉をゆっくりと開き)
ーー…総一郎、
(ノックもなく不意に開いた驚いたように扉に視線を向ければ松葉杖をつく相手の姿をその瞳に捉え僅かに目を見開かせると相手の名を呼ぶ小さな呟きが唇から溢れ。もう大丈夫なのか、まだ安静にしていた方が良い、無理をさせて悪かった、さまざまな事が頭を駆け巡るがそれを言葉にすることはできずに。きっと今の自分は酷い顔をしているのだろう。安堵からか今まで張り詰めていた気持ちが少し緩みどっと疲れが押し寄せてくるのを感じつつも、彼らしくもなく感情のままに相手を抱きしめるとその背中に腕を回し相手の肩口に額を押し当て、ようやく小さく言葉を告げて)
ーーお前が、目覚めなかったらと…
おっ…、と…
(開いた扉の先に現れた親友の姿、その変わらぬ姿に此方も安堵したのは確かで。今にも泣き出しそうな顔をするものだから大袈裟だとぎこちなく笑ってみせては己を抱き締める頭部を見下ろし、撫でる代わりに頬を頭頂部に押し当てて。本来ならば両腕で抱き締めてやりたいが今回は致し方無く松葉杖の持たぬ腕で更に抱き寄せ優しく叩き。何がともあれ彼が無事であり良かったと深く息を吐き出しつつさり気無く負傷したであろう肩を見つめては小さな呟きの中から憂愁に閉ざされていた感情を感じる事となり胸の奥が締め付けられ)…目覚めるに決まってるさ、お前を残して逝くわけないだろう?
ーー嗚呼、…
(相手の言葉に安堵した様子で僅かに声色が柔らかなものへと変わり、相手の体温に安堵したのかここ数日の疲れがぶり返し急に眠気に襲われて。名残惜しくも相手から身体を話すと、相手を見つめるのは将校としての顔、まだ心配げな色を残したまま)
まだ、もう少し休んでいた方が良い、身体に障る。
きちんと敵軍の行動は見張っている、安心して休め。
それが、オピオイドの効果のせいでじっとはしていられないんだ。このままでは夜間覚醒してしまいそうだしな。
(離れて行く身体を見届ければ明から様に肩を竦めてみせ。効果によるもので無くとも性分から寝て休むなどは以ての外で、寧ろ目の下にクマを作る相手こそ休むべきなのでは無いかと片眉を上げて)完全復帰とまではいかないが俺も手伝う、お前の方が心配だ、ろくに寝てない顔をしている
俺は何ともない、ずべこべ言わずに休んでろ。
寝ないにしても、身体を休めていた方が良いだろう。
(普段通りの様子に戻るとそう言って相手の背中叩き。しかし相手がいつものように自分の元を訪れたことで安堵したのはその通りで今まで覚醒仕切っていた頭が少し朦朧とし始めて)
…俺もそう忙しい訳でもないんだ、上からの説教を聞いたり今後の進退を検討しているくらいで。
…情け無いだろ、少しは手伝わせてくれ。
(己の身を案じての言葉につい反論を口にしてしまいそうになり、一度言葉を飲み込み深く深呼吸をすれば肩を竦めて。敵軍の見張りも怠る事は出来ぬ状況で彼が倒れてしまえば軍の力が衰える事も目に見えている。上層部との連絡程度なら己にも可能であるとやや弱々しい視線を送って、また懇願すべく彼の手首を握り)
…分かった。
警備を終えた兵士が此処に異常なしを伝えに来る。その確認と、次の指示を頼んでも良いか。
(相手の視線と手首を掴むその手に少しの間を置いて頷くとそう答えて、自分の仕事を相手へと頼み。きっと相手は一人で背負いこんでいるとまた自分の事を心配してくれているのだと思えば、大丈夫だと相手の心配を拭うように少し申し訳なさそうに微笑みつつ。相手へと仕事を任せると狭い司令室の床に毛布を広げるとそこへと横になり)
ーー少しだけ寝る、2時間したら起こしてくれ。
ああ。
(頷く様子にほっと胸を撫で下ろし、同じように深い頷きを見せ。このように狭い場所で慣れる程疲労も溜まっているのかと思えば責務の重大さを身に染みて感じさせてくれる。時計を見て時刻を確認し、椅子へと座り込めばじきに訪れた兵士達が彼の姿を見る事がないよう配慮して司令室の外で指示を出し一時間が経過して。既に眠りについると思われる彼を見遣れば徐に側によりゆっくりと横へ腰をかけて見下ろし)凄いクマだ、血色もこんな悪くなって…昨日は一睡もしてないんじゃないだろうな…。
(相手の返事の声を聞き安心して目を伏せれば一瞬にして眠りへと引き摺り込まれて行き。深い眠りに夢を見る事もなく、今は相手の声にも気がつかずにただ懇々と眠るばかり。僅かに動いた指先が隣に腰を下ろす相手の手に触れれば無意識にほんのすこし力が入り相手の指先に絡め、白い頬に伏せられた長い睫毛が影を落とし)
……灯夜。
(無意識だろうが触れてきた指先に少しばかり驚くも絡んだ指を離す事はせずに、静かに寝息を立てる様子を見守るばかりで。たまに胸の内を擽るこの感覚は何だろうか、親友であり軍人でありながら他の者には感じない時折胸を締め付ける不思議な感覚。良く寝顔を見ようと上半身を屈め、ゆっくりと顔を近付けその小さな唇に視線を落とし)
(相手の指摘通りクマは酷いがその寝顔は穏やかなもの、目を覚まし仕事に向かっている時の冷静で硬い表情は今は影を潜め、目を伏せたその顔には昔の面影すらある。相手と指先を絡めたまま、その唇がほんの僅かに開いて小さな吐息をひとつ溢し)
この後もう少ししたら、島での任務を終えて帰還という形で良いでしょうか?
(擽られる感覚は小さな吐息によって疼きと変わって行く。将校としての顔、親友としての顔はこんなにも違って見えるのは幼馴染として過去の相手を知っているからこその特権。小さな唇を奪ってしまいたい、と巡る衝動に唇は触れるか触れないかの瀬戸際まで近寄り)
はい、構いませんよ!
(深い眠りに身を沈めながらも相手がそばにいるという安堵感は意識の中にあり、目を閉じたままの彼から聞こえるのは小さな寝息。偶然の寝返りで顔を背けてしまうこともなく、気を許しているからか普段の様子からは想像もつかない無防備な寝姿で)
了解です!帰還したら、許嫁に会いに行ったり諸々をまた進めていきましょう〜!
ちなみに後に、喧嘩をしている間に本人も風邪かな?くらい少しずつ体調に異変がで始める感じにしようと思っています。
(触れたのは不注意だ、と言ってしまえば誤魔化せると言い訳を咄嗟に考えたのは既に相手の唇を奪った後の事。軽く触れる程度の接吻だが生涯己の人生において忘れる事の無い記憶となるだろう。柔らかな感触が残る唇をゆっくりと離し、無防備な姿を眺めていれば時期時間となり軽く揺さぶって)
そうしましょう!おお…後半に差し掛かるのですね…、なんだか寂しいやら悲しいやら…しっかり最後までお付き合いさせて下さいませ!
…ん、…嗚呼、時間かーー…
(相手の唇が触れたことは全く気付かず、その秘密を知っているのは相手ただ一人のみ。やがて揺さぶられている感覚に徐々に意識が浮上すると薄く目を開き、まだぼんやりとする意識の中相手の姿を認識すると小さく声を漏らし。短時間の睡眠でまだ身体が怠いのか相手の方へと腕を伸ばすと起こしてくれと子供のようなアピールを)
物語として後半に差し掛かるのは、まだだいぶ先かもしれないです!
病気も一気に悪化する訳ではないので、風邪気味?くらいから始めてしばらくそのまま日常生活を続けて、少しずつ少しずつ悪化して病の真相が相手に気づかれ、軍を離れる決断をするまでがおそらく前編になるので!
私も物語を作っておきながらあまりに良き親友すぎて切なすぎます…これが完結して、その時にもしまだ付き合ってやるぜ!というお気持ちであれば幸せストーリーも考えるので、その時はお知らせくださいませ…!泣
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