若き将校 2018-03-28 22:31:14 |
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へえ!他所でも俺の事を話してくれていたんだな、流石親友だ。
(彼の気持ちを汲み取れる程長けていない思想は素直に表情を綻ばせ、他所でも己を忘れる事の無い事実に満足さえ覚え。詰め寄った距離はほぼ肩が触れるほど近く、時折動作中に軽く擦れ合う事も。酒を煽りたい気分だが目先にあるのは湯呑みのみ、己から振った話題だが彼の将来を約束する者存在を改めて感じ取れば胸の底も疼くようで誤魔化すように咳払いを)
ーーもう良いだろう、この話は。
(相手に面と向かって自分の許嫁の話をするのはどうにも慣れず気恥ずかしい気もして、早々に切り上げようと。相当に興味を持っているのか肩が触れ合う程に近付く相手の頬を片手でつまみながら、相手の心の内の声には気付くはずもなく食事のトレイを持つと立ち上がって)
そろそろ戻る、
痛ッ…もしかして、照れてるのか?
(制裁を食らわすような頬に走る小さな痛み、口を閉じるべきだが話を切り上げ去ろうとする姿は心底嫌がる様子では無くどこか気恥ずかしそうなもの。断定に至るまでに情報が足りないがそれでも十分すぎるほどで、にやけた顔付きで相手の姿を目で追っては共に立ち上がり背後へとついて)待てって、一人にはさせられないだろ。
もう十分だろう、あいつの話は。
(何故そこまで許嫁のことを知りたがるのかと思いつつ相手が着いてくる足音を聞きながらも気恥ずかしさから振り返ることはせず司令室へと。先程入り口は厳重に施錠しており、もう裏切り者は外へ出る事も叶わない上に周りの兵士が寝静まるまで行動を起こす事も出来ない筈だと、相手と共に司令室へと入り)
羨ましいな、将来を約束する者がいるというのは。
(司令室まで振り向く事の無い態度で先程想像した事が明瞭化されて行く中で彼の新たな一面を見た様な気がし揶揄い交じりに言葉を吐き。その中には彼と永遠を誓った存在への羨望も入っているが言葉を吐き出す当本人はそれには気付かず。司令室に入れば己が身を潜める場を確認し、懐にしまって置いた拳銃を取り出せば不発弾が無いよう点検をし)
…まあな、家庭を築く実感はまだ全くないが。
結納も戦争が終わらない事には済まられない、あと一年は掛かるだろうな。
(相手の言葉には淡々と答えただけで、正式に夫婦になるのもまだ先だろうと。椅子へと座ると己もすぐに取り出せる腰元へと装填した銃を確認しつつ煙草を一本取り出し煙を吐き出して。彼女は確かにとても良い妻になるだろう、自分の事も好いてくれているようだが何処かで家庭を持つ事に寂しさを持ってしまうのは親友の存在があまりに大きすぎるからだろうか、と)
随分長い事。早くしないと何処かの男に横取りされるかもな。…一年後か、俺は何しているんだろうなあ
(紡がれる言葉に深い意味は無く、銃弾を確認している間に徐々に思考は此れからの使命について傾きつつあり。シリンダーを元は戻せば傾きつつあった思考は自身の将来へと移り、暫く思考を巡らせるが思い付くのは空を駆け巡り続ける現在となんら変わらない日常で。椅子に腰をかける相手を見下ろす様に机に凭れ掛かり、回答を求める瞳を向けて)
…全くだ、機会を伺っている奴も多いだろうな。
ーー1年後も、きっとお前は毎日上機嫌で空を飛び回ってるさ。ただ乗っているのはもう、戦闘機じゃない。
そんな未来のために、俺たちはいま奮闘してるんだ。
(苦笑しつつ答え、その唇から煙を吐き出しつつ相手を見上げて視線を合わせ。己の頭に浮かぶ光景も、相手が機嫌良さそうに空を飛び回る姿。平和な空を風を切って飛んでいるはずだと少し微笑んで)
ーーー…そうだな。少し妬いたよ、お前が俺から離れていきそうで。
(己と全く同じ思想を持っていた事に対して意外そうに瞳孔を丸めて一時見つめたまま固まって。次第に口元に笑みを浮かべればもう隠す事も無いだろうと白状する様に胸に抱いた疼きを最も近い言葉で伝える事とし。彼の手から煙草を奪い一度煙を吸い込めばおかしな事を言ってしまった脳も麻痺するようで、彼の指先に戻せば時計を確認し、そろそろか、っと身体を正して扉の横のクローゼットへと)
家族が出来たら家庭が第一、そんな事分かりきってはいるがーーー俺には、寂しがり屋な親友がいるからな。困りものだ。
(相手の言葉に優しい笑みを見せると、相手が一吸いした煙草を再びその形の良い唇へと。やがて沈黙に支配された部屋、短くなった煙草を灰皿に押し付け深く息を吐き時計へと視線をやり、警戒の色を瞳に浮かべて)
(クローゼットは広いが決して居心地がいいものでは無く、カビ臭く埃っぽい。張り詰めた空気が緊張感を誘い動悸を早くさせるが獲物を捕まえられるとなればその緊張も良い意味で刺激となり。ーー静けさに響き渡る秒針の音、どれぐらい待ったかも暗闇の中では確認する事もできず僅かな隙間から溢れる明かりと椅子に着く彼の姿だけがくっきりと視界に入ってくる。更に待つ事数時間、他の兵士も寝静まり帰ったであろう時刻、廊下の奥から靴底を叩きつける足音が鳴り響き)
(書類に目を走らせたりして時が来るのを待っていたもののやがてそれから数時間、周りが寝静まった頃に聴こえてきた足音に警戒するとその瞳に鋭い色が浮かび、いつでも銃を取り出せるようにと片手を銃に添えたまま。この足音が裏切り者の足音だろうか、緊張した空気の中部屋の入口をじっと注視して)
(司令室の前で止まる足音、そして三回ノックが室内に響く。落ち着いた歩調と緩やかに叩かれる流れはまるで軍の兵士が報告に訪れた時となんら変わりのないもの。次いで聞こえて来た若い青年の声、それは基地内を点検し終わった事の報告であり。”失礼します”と言葉を残して後ずさる靴音とは別に突如ドアノブを回し僅かな隙間から拳銃を覗かせれば数発続け様に発砲し。)
ーー!
(緩やかな流れ、何も可笑しな点のない普段と同じ報告が一変、扉のわずかな隙間から覗いた銃口。まさか部屋にすら入って来ないつもりか、それではまた敵の顔も分からぬまま見失い朝を向かいかねない、それは避けなければと。決して逃すまいと、焦りから反射的に立ち上がったその肩口を数発の内の一発が掠めると床へと鮮血が飛び散り)
おい!!灯夜……!!
(クローゼットから身を乗り出し扉に向けて此方からも銃撃戦となり再び飛び交う弾丸。彼が負傷したとは知らず少し開いた扉に近付こうとするが隙間から発射される弾の数は通常の拳銃の物とは異なり、外国製のマシンピストルに近しいもの。最早扉を蹴破る他無いかと至り、そうと決まればすぐに行動へ大胆にも一直線に扉に駆け出し)
ッ、総一郎!!!
(弾と弾の間隔は異様に短く早い、扉を開けそこにいる男を拘束せねばと思うもののそれを許さぬ続け様の攻撃に動けずにいて。不意に相手が扉へと駆け出したのを見れば、まだ高速で打ち込まれる弾に被弾しかねないと青ざめれば思わず相手の名を叫んでいて)
(身体の節々が燃える様に熱い気もするが心身共に興奮状態にある中で活発になったアドレナリンの過剰分泌によるものだろう。既に弾切れになった拳銃を握ったまま勢い良く扉に蹴りを入れれば木が裂かれる音と小さな呻き声、勢い良く開かれた扉の向こうへ倒れ込めば胸の下には確かに何者かがいて。握った拳銃を振り下ろし手関節を強打すれば離れる銃、咄嗟に振り向いて相手を呼び)ーーよしッ!灯夜、一緒に抑えてくれ…!!!
嗚呼、!
(あまりに華麗な相手の動き、そして一瞬にして男を捕らえ動きを封じる姿に息を呑み。男の手から離れた銃を拾い上げ隙を見て撃たれることがないように部屋の中へと投げ入れ、そのまま相手に言われた通り相手の下に捕らえた男を押さえつけまずは無力化して。)
はあ…、…随分と、これはまた…幼い顔立ちだな…。
(彼が男の身体を抑制した事により漸く顔を拝む余裕が出来たようで、一応首元を押さえつけながら上半身を起こせば10代後半の日本の青年で。抵抗する間も無く気絶して居る様子から青臭いただの餓鬼であった事が分かるが銃の腕前だけは確かだと皮肉にも感心してしまう。兵達も駆け付け驚愕した視線を送るため思わず力無く笑ってしまい、彼へと視線を送り)
ーーどうして、裏切りに手を出した。この程度の年齢で、…まだ何も、どちらの軍の本質も理解していない若造がここまでのリスクを犯して…!
(軍への裏切り行為、彼は全てを供述させられた上で処分されることだろう。若くして裏切りという行為を働いた彼、それにどれだけのリスクが付き纏うか。そこまでして、敵軍に惹きつけられた理由は一体なんだ。同情するつもりは全くない、しかし若い兵士が裏切りを働いたという事実は心に暗い影を落とすようで、自分の統率力も含めた日本軍の在り方が若者を裏切りに走らせるほどに軌道を外れてしまっているのかと、遣る瀬無い気持ちを抱えることとなり。)
ーー連れて行け、本部にはすぐに連絡を取る。
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