隠れ吸血鬼 2018-03-16 19:58:38 |
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……悪い、
( 気が狂うほど大好きな人だからこそ、その笑顔が自然と零れたものか、それとも無理して作られたものかくらいの判別はつく。今、矢附が浮かべているのは後者のそれだ。愛する人に我慢させてしまうことの辛さは、常日頃から吸血衝動を我慢している自分だからこそ、痛いほどわかって )
お前、こそ。らしくねえ顔してんぞ。ッな――俺だって、ほんとは……っ!
( 物足りなさを煙に巻くような、悲しげな笑顔をたたえる矢附に対して、相手の頬を優しく抓りながら指摘を一つ。ねだっているようだ、と言われれば、思わずカッとなって本当のことを言ってしまいそうになるが、喉元まで出かかった真実の言葉をぐっと呑み込んで )
…ッ、すまない、ほんの軽口のつもりだったのだが…気に障ったかな。
( 悟られていけないと分かっているのに顔に出てしまう。気を遣わせてしまった。それだけでも罪悪感に押し潰されそうなのに、追い討ちをかけるような彼の叫び声にびくり、と肩を震わせた。優しくつねられた後をなぞりながら少し沈んだ声で問い掛ける。彼を蔑むように聞こえてしまっただろうか。ほんとうは。それの言葉の続きが気になったが、切ったと言うことは彼にとって言えないことなのだろう。それに私は介入できない。それに寂しさを覚えないかといったら嘘になるが、今は、どうしようもないと思えた。 )
__大丈夫。榊が話したくなったらで大丈夫だから。落ち着いてほしい。
……だーかーら。
( どこまでも優しく、自分のことではなく絆火のことを優先して気遣ってくれる矢附の愛情に、胸が締め付けられる。その痛みは、隠し事をしている罪悪感からくるのか、はたまた痛烈なほどの愛おしさなのか、判別がつかなかった。少し張り詰めてしまった空気を変えようと、語気を強めて )
ば、ん、び。いい加減慣れろよ、苗字呼びは距離感じて寂しいっつの
( 口調を荒げたからといって、怒っているわけではないということを伝えるために、まっすぐに矢附の顔を見つめてにやりと微笑んで見せる。こんな風に好き勝手振舞えるのも、矢附の包容力があってこそだ。それに内心感謝しつつ、気恥ずかしいので言葉には出さないでおくが )
あー……喉渇いた。何か飲みてえな、例えば……矢附が淹れた紅茶とか
( 喉が渇いているのは、矢附と出会って恋に落ちてからずっとのことだ。吸血鬼たる自分の渇きは、飲み物などで潤わすことができるものではない。矢附に隠れて、その辺の適当な人間の血を吸ってしまおうかと考えることも多々あるが、今のところは思い留まれている。その理性を保つためにも、絆火は矢附に甘えて )
あ、ああ。すまない…その、__ば、ん、び…。
( 優しい人だ。本当に。張り詰めた空気をどうにかするために適当な話題を振ってくれた彼に笑って応える。だが、どうしても彼の名前呼びは照れが入るようで、照れくささから彼の一語一語区切ったような言葉を反復して。少しばかり赤くなった頬を誤魔化すように立ち上がれば )
私が入れた紅茶だなんて然程美味しくもないだろうに。
( 口調こそ自分でやれと咎めるようであるが、行動は言葉と反しており、手際よく戸棚から紅茶のパックを取り出せば片手間に湯を沸かす。 )
砂糖は必要だったか?
……そ、上手。くく……なぁに名前呼びくらいで赤くなってんの。
( ぎこちなくもちゃんと名前を呼んでくれたことが嬉しくて、思わず表情が緩く綻ぶ。まるで初めての恋人が出来たティーンエイジャーのように照れる矢附の姿が可愛くて、思わず茶化してしまって )
紅茶なんて、誰が淹れようが一緒だと思ってたさ。矢附の淹れたのを飲むまではな、
( てきぱきと作業を進める姿を愛おしそうに眺めながら、まるで口説き文句のような台詞をなんの恥ずかしげもなく紡ぎながら、ソファから立ち上がって矢附へと歩み寄って )
ん……甘いのがいい。矢附、お前いい奥さんになれるよ
( 甘さの好みまで気を遣って聞いてくれる矢附に愛しさが溢れる。片時でも離れるのが嫌だと言わんばかりに、背後からぎゅっと抱き着きながら耳元で囁いて )
…ッん。それは素直に喜んでいいのかな?それとも所帯染みているとの嫌味?
( 指摘されれば更に顔を赤らめ、君の名前は私にとって特別なのだとまごついた口調で反論するも、口説き文句のような甘いの言葉に態度が一変したように頬が緩む。たかが紅茶といっては失礼だが、特別と言われるのは大変嬉しい事である。その後回った手と耳元で囁かれる良い声に擽ったさから肩を跳ねさせつつ、くすりと笑えばその顔にすり寄り、あまり近いと私の目が焼かれてしまいそうだ。と笑いかけて。 )
__…っと、湯が沸いたな。危ないから離してくれないか?
( だが、雰囲気を壊すようなぷしゅ、と空気が無理に抜けようとする嫌な音が聞こえ、顔をしかめながら行動範囲内で火を止める。持ち前の過保護さ故に火傷なんてして君の最高の体に傷がついたら大変だ、と後ろに声を掛けて。 )
さーあ、どっちかな。信じたい方を信じたらいいんじゃない?
( こちらとしては完全に純度100%の誉め言葉のつもりだったのだが、謙虚にも嫌味の可能性を提示してきた矢附に、ふ、と含みのある微笑みを向けて )
あ、そんなこと言うんだ。だったら、もう俺からハグはしないことにしよっと
( 危ないから離してくれ、という言葉は、矢附の優しさからくるものだと分かっている。分かっていてなお、わざと拗ねたような態度を取るのが、絆火という男である。どこかつんとした口調だが、顔に浮かんでいるのは意味深で儚げな笑み。俺の考えてること、分かる?とでも言わんばかりの魔性の笑みだ。ともかく、言われた通りにふいっと矢附から離れ、大人しくソファに座って紅茶を淹れてくれるのを待つことにして )
――――ん、……はい、榊です。ああ部長、お疲れ様です。……××商事の件は――、
( ふと、スマホから甲高い着信音が鳴り、ディスプレイに表示された“会社”の文字に、余所行きの凛々しい声音に切り替えて電話に出る。矢附と話す時よりも意図的に声のトーンを上げ、てきぱきと発言する様子は、矢附と二人きりの時とはまた違った雰囲気があって )
(/こんばんわ。次のレスから新しい展開に移行しようと思っているのですが、大丈夫でしょうか……?)
_…君なぁ、またそんな顔を。
( 意味深げの笑みには曖昧な笑みを返しつつ、嫌みでないことを祈るばかりだよ。と溜め息混じりに述べて。すっと素直に離れていった体温に寂しさを覚えようとしたところで残酷な一言にどよめいたような声を上げる。それは死んでも嫌だと後ろを勢い良く振り向けば迎えたのは見るものを惑わす魔性の笑み。もに、と唇を歪ませ、目尻を下げては酷く情けない声で呟いた。それでも言うことは聞いてくれる辺り彼はいい人だ。何処か拗ねたように言ってしまった背中を無意識に追い掛けた後、紅茶パックの入ったカップにお湯を注いだ。砂糖を入れて完成。と持っていこうと思ったとき、高鳴る着信音と直ぐ様対応する彼の気配にそっと身を潜める。恐らく会社だろう。明らかに外向きの女性を虜にする凛々しい魅惑のボイスに、ぼんやりと浮かぶは先ほどの出来事。あの声で耳元に囁かれたいと。つい癖で夢想しそうになったが、そうじゃない、せめて彼の邪魔にならないように紅茶を音立てず置き、キッチンに籠って。 )
( / 今晩わ。展開の進行、了解しました。
此方からも一つ、確認なのですが、キャラ崩壊や、ロルが合わないなどの事はありませんか?何かあれば遠慮無く仰って頂けると幸いです…! )
――はい、かしこまりました。ではそのように……ええ、大丈夫ですよ。今度、旨い酒でも奢ってもらえれば。はは、冗談ですよ。失礼いたします。…………はぁ……
( プツン、と電話を切ってスマホをテーブルに置いた瞬間、深くソファに体重を預けて深い溜息を吐く。電話の内容としては、新人が取引先に何かしらの不手際を働いてしまったらしく、新人の教育係である榊にその尻拭いが回ってきた、という塩梅で )
……旨い。矢附、ありがとな……やっぱりお前のじゃなきゃ駄目だ
( 癒しを求めるかのように、矢附が淹れてくれた紅茶を一口含めば、知らず知らずのうちに表情が綻ぶ。甘すぎず渋すぎない、まさしく自分好みのこの味は、自分のことをよく分かってくれている矢附にしか出せないだろう。お世辞抜きで店でも開けそうなほど美味しくて、素直に称賛の言葉を並べて )
急で悪いんだが、ちょっと出てくる。書類を手渡すだけだから、すぐ戻る。――好きだ、矢附。
( ゆっくりと紅茶を飲み干せば、黒いジャケットを片手間に羽織りながら、A4サイズの茶封筒を手に、玄関へ向かう。この家の間取り的に、キッチンを通らなければ玄関へは行けないので、必然的にキッチンにいる矢附に話しかけて。そのまますうっと玄関まで行ってしまうと見せかけて、くるりと振り返って矢附の腕を掴んで引き寄せ、頬に触れるだけのキスを落とせば、耳元で囁いた )
*******************
――――で、これがその書類。理解できたか?分からないことがあれば、自分で解決しようとせず俺に聞け。教育係なんだし、遠慮するなよ
( 絆火と矢附が同棲している家から徒歩2分ほどの場所に、小さな広場のような公園がある。そこが新人との待ち合わせ場所であり、絆火の姿を見つければ申し訳なさそうに何度もペコペコと頭を下げる新人。新卒社員ゆえにまだ22歳、若々しくて雰囲気の眩しい可愛い女性だ。絆火は、てきぱきと茶封筒の中の書類を説明し、もう尻拭いは御免だと、溜息交じりに忠告する。ふと、書類に目を通していた新人が、不運なことに紙で指先を切ってしまったようだ。思いのほか深く切れてしまったようで、予想より多くの血が出ていて )
…………!
( 不意打ちで香った血の匂いに、吸血鬼の本能を揺さぶられて絆火が瞑目する。どこか底光るような、獣じみた眼光を宿している。そのまま無意識のうちに、強引な動作で新人の怪我した方の手をがっと掴み、裂傷のある指先を自分の口元にぐいっと近づけ、本能的に血を舐めようとして。まさかそれが、矢附に目撃されているなんて夢にも思わずに )
(/いえいえそんな、むしろ毎レスごとに素敵な台詞とロルの連続で、にまにまさせて頂いております。
新しい展開についてですが、何かしらの理由で矢附くんが絆火の後をつけていて、血のくだりもばっちり物陰から目撃してしまっている、という現場設定でお願いいたします。割って入って吸血を止めてもらっても、そうでなくてもどちらでも構いません。どちらにせよ、今回は寸でのところで絆火が理性を取り戻し、新人から吸血するようなことはないので……!
此方こそ、何か意にそぐわない点や、背後様がやりたいシチュがある、という場合は遠慮なく仰ってくださいね!)
_…ぁ、…ああ、いってらっしゃい。
( 電話を終えた様子の彼に直ぐ様近寄ろうとして、次に吐かれた深い溜め息に何か合ったのだと察せば容易に声を掛けるのは憚られ、飛び上がってしまいそうなほど嬉しい彼からの賛辞にああ、君をよく見ているから。と些か安心できない言葉を返した。少し躊躇った後、彼の座るソファに向かおうとしたところで彼が黒いジャケットを羽織っているのを見れば首を傾げるも質問をする前に掛けられた言葉に、無意識として眉間に皺が寄ってしまったのは仕方がないだろう。余程急ぎなのかと此方を見もせず玄関に向かう彼を駄目だと理解しつつ引き留めようと伸ばした手。すると、それを逆に引き寄せられ、落とされたキスと、夢想にまで見た甘ったるい囁きに平静を保っていた瞳はどろり、と蕩けて。その言葉に酔いしれ呆然と意味の無い言葉を溢した後、酷く上気した赤く染まった顔で小さく手を振れば微笑みかけた。 )
__さて。彼を追い掛けねば。
( 暫く放心したようにその場にいたが、途端にすう、と据わって行く目はそのままリビングに戻ることはなく、然も当たり前かのように玄関に忍ばせておいた上着と取った。発せられた言葉は感情の一切籠らない声で誰に言うわけでもなし独白のように冷たく響く。急ならば仕方がないだろう。そう理解した。だが、私には彼の帰りを忠犬よろしく待つことはできない。せめて彼の道中の安全だけでも確保せねば帰れないのである。もしかしたら書類の受取人、とやらが彼に不埒に近づく可能性も無きにしもあらず、もし、彼が嫌な思いをして帰ってきたのならばそれを未然に阻止できなかった私は悔やんでも悔やみきれないからだ。 )
___よし、彼が気付くこと無いよう影で君を守るからな。
( 固く決意したそれは彼に恋をしたときから誓っていたもので。一定の距離を保ちながら歩いてすぐ、小さな公園へと足を踏み入れた彼を確認した後、手頃な草影に隠れた。 )
……え?
( 暫くはぺこりと何度も頭を下げられる彼の姿をひっそり眺めていた。相手は女性だ。それだけで少しずつ温度を無くして行く指先に、これは仕事だから。と言い聞かせた。そうしてなんとか平常心を保っていたところで、__突如目を疑うような光景が飛び込んできた。……違う、今のは女性から迫っていた訳ではなかった。彼自ら相手の手を取り__? )
__何をしているんだ、榊。
( そこまで来たらもうアウトだった。思考が追い付くより先に体が動く。行動は乱心する心と反して酷く落ち着いていた。自然な様子で公園へと足を進め、榊の行動を咎めるように女性の手を掴む相手の手を叩く。直ぐ様相手の女性に向き直ればにこり、とそれはもう彼にも見せたことが無いほどの最上級の笑顔に申し訳なさそうに目尻を下げれば、すみません、榊が失礼致しました。どうも彼は血が苦手らしく、少し動揺したみたいで。本当にすみません。微笑みは心あらず、優しげな声とは一変して心臓は底から冷えて行くばかりである。なぜ、なぜ、なぜ?うわべだけの取り繕いはものの数分として持たなかった。彼の腕を叩いた右手で今度は彼を掴むと、すみません。これ以上迷惑をお掛けするわけにはいかないので、発作が酷くなる前に失礼させて頂きます。笑顔は終止穏やかであったが背中に隠した左手は血が滲んでしまいそうなほどきつく握り締められた拳。彼を傷付けないための唯一の怒りの逃がし方。押さえきれなくなってしまう前にとそのまま女性の返答も待たずに公園を後にすれば、一言も発さずに彼の手を引くばかりで。 )
( / こちらこそ、榊君の思わず抱き締めたくなる可愛さに毎度毎度持っていかれそうです…!
早速場面を投下しましたが、歪んだ愛情に榊君共々背後様が引いておられていないかとても心配です…。シリアスに持っていかれる様でしたら矢附の弱さや依存性。女々しさ等が垣間見えてくると思いますので、何か地雷があれば言ってくださいね。
気を遣ってくださり有り難う御座います…!今のところ欠点どころか美点しか見つからないので問題ありません…!では、お言葉に甘えさせてシチュは思い付き次第投げさせて頂きますので、貴方様も何かあれば声を掛けてくださればと! )
――ッや、づき……?
( 弾かれたような腕の痛みに、ハッと意識が我に返る。そちらを見遣れば、此処にいるはずのない恋人の姿があって、露骨な動揺に瞳が揺らぐ。数秒の間、思考が停止してしまい、その間に巧く矢附が誤魔化してくれたようで、きょとんとする新人を置き去りにする形で、矢附に引っ張られてゆく )
( 一言も話してくれずにずかずかと歩く矢附の後姿を眺めながら、ぐるぐると思考が堂々巡りする。――見られて、しまった。決定的な場面までは見られていないので、現段階では絆火が吸血鬼であるなんてことは、矢附は夢にも思っていないだろう。それでも、たちの悪い誤解を与えてしまったことには違いなく、むしろこちらのほうが厄介だ。どう釈明しようか、と悩んでいるうちに、2人の間の静寂は深くなってゆくばかりで。ともかく、あんなに間近で血の匂いを嗅いでしまったことにより、絆火は一種の興奮状態にあった。飢えた獣の前に、新鮮な血肉をちらつかせるのと同じ状況だ。もしも万が一、矢附が少しでも出血するようなことがあれば。今度こそ、自分を律せる自信がない。……だとすれば、絆火がとるべき行動は一つだった。ぴたりと、足を止める。慣性が働き、矢附に引っ張られそうになるが、ぐ、と足に力を込めてその場に留まって )
…………誤解させて、嫌な思いをさせてしまって済まない。少し、頭を冷やしたい。……ッは……、先に……、帰って、いてくれ……ッ、
( あの新人に、ビジネス以外の感情なんて1ミリも持ち合わせていないことを、眼光の強さで訴えるように、まっすぐに矢附の瞳を見つめて。神経が昂り、敏感になってしまった本能の琴線は、愛する者の鋼色の瞳を見つめるだけで、ドクンと鼓動を高鳴らせる。このままでは、見境なく矢附を襲ってしまうかもしれない。喉をかきむしりたくなる衝動をギリギリのところで堪えつつも、あまりの渇きから苦しげに喘ぐような吐息が言葉の合間に漏れて )
(/しっかりしてるのに弱いところもあるメンズなんて美味しすぎるし、依存なんて萌え対象でしかないので、むしろばんばんやっちゃってください。絆火こそ、自分勝手な振る舞いが目立つ部分もあると思うので、もし萎えポイントがあればお気軽に教えてください。それでは、今後ともよろしくお願いいたします……!)
___、
( 気持ちの整理がつかない。荒ぶる激情に押し流されるままに無言を貫き通す口と、速足で進む歩幅。ああ、どうしよう。私は彼になんて言えば良い?なんて言えば彼に見捨てられずに済む?どうしたら一時でも彼の慈悲を乞うことができるんだ?私の中に彼を問い質すと言う選択はあったとしても、彼を怒る、傷付けると言う最低極まりない選択は元より存在しない。浮気、と呼ばれるものなのだろう。彼のした行為は。非常に悪辣で世間からすれば私に対する裏切りなのだろう。でも、私には彼を責めることはできない。どうしてかって?__少しでも彼に嫌われたくないからに決まっている!もし、私に飽きたと言うだけならば良い。でも、嫌われてはどうしようもない。彼に嫌われるなど死ぬより怖くて恐ろしい。彼と言う存在に心底心酔している己は彼無しではもう、生きれないのだ。非常に情けないことだが、駄目なのだ。他の人ではもう、代えは効かない。だからこそ、彼の言葉はヒビの入った心を打ち砕くには丁度良かった。 )
__…そう、か。わかった。うん、__だいじょうぶだ、安心して、くれ…。わたしはなにもきかない。なにもいわない。ぜんぶきみのいうとおりにする。
( やんわりと、否、はっきりと拒絶されたそれに一瞬呆然として。そして、乾いた笑みが浮かんだ。少しずつ上手く回らない呂律に鞭を打っては、震えた声で述べる。真っ直ぐで此方を見てくる輝かしい目も今は、離せ、と遠回しに伝えられているようにしか見えなかった。吐き出させる喘ぎ声にも何時もなら過保護なほど心配すると言うのに、今では気も向かない。ぎこちなく、それはもう錆びたロボットのようにぎぎぎと音立てて無理にでも笑みを型どった。それは徐々に泣きそうに歪んでは、ついに決壊したように吐き出した。 )
…ッ、……_だからッ、きらわないでくれ!かならずかえってきて…すてないでくれッ、おねがいだ…ッ。
( ぐずり、と音を立てるのは彼の隠れしたコンプレックスからの反動だった。ずっと、女性に憧れていた。彼の隣に並び立つは可愛らしくて気立てのよい素敵な女性だとずっと思っていた。だからこそ、羨ましい。妬ましい。苦しい。悲しい。収集のつかない感情が渦になって彼の理性を蝕む。人より嫉妬深いのは彼がいつ他に行ってしまうか分からなかったから。不安要素は出来る限り潰しておきたかった。なのに、それが仇になるとは思ってもみなかった。 )
( / 二度目ですがお言葉に甘えさせて、女々しさ全開です。矢附のコンプレックスを爆発させてみました。キャラ崩壊が著しく申し訳無いです…。
こちらこそ、見るに耐えなくなりましたら即お伝えください。こちらこそ、宜しくお願い致します。 )
( 心のどこかで、期待していたのかもしれない。矢附ならば、何も言わなくても理解してくれると。必ず自分を引き留めてくれると。だから、彼があまりにも従順に、絆火を手放すような言葉を口にしたことに、一瞬呆然とし、視界がぐらつくような錯覚すら覚えた。お前の俺に対する想いはその程度なのか――と絶望しかけた時、決壊したダムのように吐露された矢附の懇願に、ぎゅぅ、と胸が締め付けられて )
……なぜ、俺がお前を嫌う話になるんだ……?逆だろう、俺はお前に誤解させて、ろくな弁明もせず……、……ッ
( きらわないでくれ、と。ダイレクトに心を揺さぶる矢附の言葉に、一周回って頭上にはハテナマークが浮かんだ。悪いことをしたのは此方なのに、愛想尽かされるなら此方のはずなのに。感情に任せて罵られることなら、覚悟はできていた。どんな怒りも受け入れるつもりだったし、これで矢附が自分から離れてしまうなら、ここで手を引いて後はひたすら彼の幸せを祈り続けることしか出来ない、と。なのに、矢附の口から零れ出すのは、予想を遥か斜め上までぶっちぎった言葉ばかりで )
俺が、お前を、きらう……すてる……?なん、だ……、何を言ってる……?
( ぎこちなく反芻してみて、その言葉の流れの不自然さに、胸糞の悪さすら覚えた )
違う。お前が、俺を嫌って、棄てて……しまうかもしれない。今はそういう状況だ、そうだろ……?
( ともかく現状の整理をしたくて、受け入れがたい言葉をなんとか並べる。口に出せば出すほど、そんな現状は絶対に嫌だという我儘と、でもそうなっても仕方ないほど最低なことをしてしまった、という諦めが渦巻いて、最終的には何かを請うような瞳で矢附を見つめて )
…わたしがきみをきらう…?___ははッ、それこそ無い話だ。
( 嫌う嫌われるの押収の中に、異物とも呼べた言葉。彼を嫌う、棄てる。など、絶対にあり得ない。諦めの隠った笑みと浮かばせれば、些か思考の食い違いがあるようだなあ。と呑気に思って。 )
__…棄てる、だなんてあるわけ無いだろう?だって、……棄てられたのは私の方じゃないか。
( もう君は私に飽きたか?だなんて聞けない。飽きたなんて言葉が返されればきっと、正気を保っていられないだろうから。彼のことを自分漬けにしたい。そんな邪な感情で世話を焼いて、意味もなく嫉妬をして、馬鹿みたいに彼にすがり付く。一度は彼を閉じ込めて自分だけを見てもらいたいと考えた己だ。そして、自分で放った言葉に自分で傷つくなんて阿呆らしい。そう、現実は残酷だ、彼の意図せぬ不貞から守るため彼の後を付けたと言うのに、彼から不貞を行う姿を見てしまった己にもう、取り貯めた感情の置き場など何処にもなかった。 )
君は、優しいからな。せめてもと私に気を遣って、自然に事を行おうとしてくれたのだろう?__…それもまあ、他でもない私自身がぶち壊しにしてしまったわけだが。
( そう、"彼は優しいから"。彼に咎は一切無いとそれはもう全くの潔癖を証明したがる姿は神の御前に頭を垂れる信者そのものだった。仕方無いよな。こんな変わり種を愛すばかりの生活が長続きしたのが逆に凄いと私は思うよ。そう笑いながら述べた。こんな同性の私よりよっぽど彼女の方がお似合いだ。そう思ったが、すんでで涙は、出さない。それは、折角私に"気を遣って"くれた彼を困らせたくないとの取り繕いであったし、優しい彼はその涙一粒で慈悲を掛けてしまうような絵に描いたような素晴らしい人だから、最後ばかりは重荷にならぬようにと堪え忍んだ結果であった。 )
__私はね、帰ってきてくれさえすれば良いんだ。君にどう当たられようとも私は耐え抜くよ。君を私に"縛る"権利をくれると言うのなら、浮気でも夜遊びでも幾らでもすると良い。…………だから、せめて、君が帰ってくることを約束してくれ。
( 駄目だ。駄目だ、駄目だ駄目だ駄目だ。荒れ狂う感情は自分が発したとは思えない言葉に驚きを、そしてどろどろと貯まって行く嫉妬に身を焦がして行く。彼にそんな相手が居ると言うことを想像しただけでもその相手を殺められそうだ。それほどまでに彼に執着しているというのに、彼に嫌われたくない一心で出たそれは先程までの震えた声とは一変して平坦で、穏やかとも感じられた。 )
私にはもう、……きみがいないとだめなんだ。
――――がっかりだ。
( 捲し立てるような矢附の言葉や主張を全て静聴し終え、深い悲しみと共に呟くように一言だけ呟く。勿論、今回のこの騒動、火種を撒いてしまったのが自分だということは重々承知している。自分が新人に書類を手渡していなければ、新人がうっかり指を切っていなければ、自分が本能を理性で完璧に押し殺すことが出来ていれば。こんなことには、ならなかったのに )
お前は、俺を……浮気や夜遊びに興じる軽い男だと思っていたんだな
( 表情に宿っているのは、怒りでも自嘲でもない、ただただ深海のように昏い悲哀。こんな形で矢附の“本音”を聞くことになるなんて、思ってもみなかった。まるで、自分が矢附に注ぐ愛情が、いもしない不特定多数の愛人に向けるそれと同等だ、と言われてしまったように感じて )
俺は……。お前が、俺なしでは生きていられないと思っていた。俺が愛でるのは、この世でお前ただ一人だけでないと、死んでしまうくらいに。でも……違ったんだな。それは俺の、思い上がりだったというわけだ
( 知らず知らずのうちに、眉間に深い溝が刻まれてゆく。自分が持っているたった一つの心、その心全てを独占するのは、矢附しかいないというのに。そのことが分かってもらえないことも、きちんと愛を伝えきれなかった自分の不甲斐なさにも、ただただ虚無感が募って )
……一つだけ答えろ。いいか、俺が愛するのも、興味があるのも、一生傍にいて欲しいと思うのも。この世でたった一人だけだ。お前は、その一人が一体誰なのか知っているはずだ。答えろ、それは誰だ?
( 悲しみを振り払い、真剣な瞳でまっすぐに矢附を見つめる。もし、矢附がこの問いに答えられなければ。その時はもう、終わりだろう。だってそれは、今まで自分が矢附に注いできた愛を、すべて否定されることに他ならないのだから。どこか覚悟を決めたような、戦争に向かう尖兵のような雰囲気すらまとい、矢附の答えを待って )
( がっかりだ。嗚呼、そうだろうとも。ほろり、と静かに堪えていた涙が頬を伝った。この、胸を掻きむしりたくなるような想いは、彼にも私自身にもお互いに分かり合えているようで、分かり合えていなかったのだから。私は臆病で仕方がない奴だから、君の愛が唯一無二のものだと、私だけに向けられるものだと信じることが出来ない。愛してる。私は貴方が大好きだ、彼の言うことは正しい。彼が愛するのは私ただ一人では無いと駄目だ。大変的を射ぬいている。だって私は、きっと、それに目を背けたくて彼の周りに酷く嫉妬しているのだろうから。だからこそ、浮気に興じる男だなんて本当は思ってもいないし、してほしくもない。でも、私は、そんな彼を傷付けるような事しか言えないのは単に、些細な事であった。 )
__…その問いに答える前に、一つだけ君に質問がある。君は、素直に私が家に帰ったとして、その後、どうする気だったんだ?頭を冷やすだなんて、__君の隠している"ソレ"は一体なんなんだ?
( 今まで突きたくて突けなかった核心。彼が前々から何かを隠そうという素振りを何度か目撃しているのだ。お互いに嘘が一つもなく、また、隠しだてするような事柄が無い清い関係な訳ではない。お互いに隠したいものの一つはあるであろう。だけれども、私には頑なに漏らそうとしない"ソレ"が気になって仕方がないのだ。彼嫌がる事はしたくないし、それで嫌われるだなんてもっと嫌だ。だからこそ、黙って容認していた"ソレ"をとうとう引き合い頃合いになってきてしまった。少々狡い聞き方ではあるが、彼がもし、この世のたった一人に他でもない私を選んでくれるのであれば、或いはと、そう思った。恐らく"ソレ"は先程の新人に対する尋常じゃない様子も関係しているのでは無いかと踏んでいる。誠に認めたくはないし、彼にも悲願滲む声でそんな男だと思われていたのかと言われたが、彼には申し訳無い。まだ、疑うことを許してくれ。ほんの気の迷い、浮気だというのならそれもまた、隠すべき秘密となるであろう。それなら甘んじて受け入れるつもりであったし、なにより私は、"言ってくれる"事がなによりも大事であったからだ。真剣な面持ちで、殺伐とした剣呑な雰囲気中、黙って雫をし垂らせる姿で見つめ返せば、 )
( もう終わりだ、と。素直にそう思った。 )
……いいだろう。お前に全てを見せる。絶対に、目を逸らさないでくれ
( これ以上、正体を隠すのも。怪物たる己と、善良な人間たる矢附との束の間の愛も。全ての終わりを感じながら、そっと絆火は目を閉じた。周囲の空気が張り詰めてゆくのは、決して気のせいではない。一陣の夜風が吹き荒れ、濡れたような絆火の前髪を揺らし――そして絆火は開眼する。その瞳は、闇夜に浮かび上がる、煌々と輝く赤へと変貌していた。そして、ビリビリと音を立ててジャケットが破れ、その下からは蝙蝠を彷彿とさせる一対の大きな翼が現れる。はぁ、と官能的な吐息を零せば、口の端からちらりと覗くのは、まるで毒蛇のような、鋭く長い牙。 )
醜いだろう。恐ろしい、だろう。絶対に、お前には見せたくなかった……
( 人外のバケモノそのものである姿を、愛する人の前に晒してしまった虚無感に、自嘲気味な薄い笑みすら浮かべて。ふと、死人のように白い己の手首に、鋭い牙で咬みつく。激痛から眉をしかめるが、手首を咬んでいるので呻き声は漏れず。ボタボタと地面に垂れる赤い雫を、喉を鳴らしてごくごくと飲み干してゆく。自分で自分の血を貪るその姿は、おぞましくも儚さすら感じさせて )
そう――俺は人間じゃない。吸血鬼、という概念が、人間には一番しっくりくるだろう。俺は生き血を啜らねば生きられない、化物だ。お前と出会うまでは、たくさんの人間を牙にかけ、貪り、生き延びてきた。お前と、出会ってからは……今見せた通りだ。自分の血を飲むことで、何とか飢えを誤魔化していた。だがそれは、漂流中に海水を飲むようなもの。次第に募ってゆく飢えに、俺は……とうとう一瞬理性を失い、あの新人の血を啜ろうとしてしまった。お前が止めてくれていなければ、今頃俺はこの街から姿を消さなくてはならなくなっていただろう
( 矢附の頬を伝う涙を拭ってやりたかったが、もう今の自分にその資格はない。ただただ、真実を吐露することしか出来ないのなら、せめて全ての真理を伝えようと、丁寧に今までの己の生い立ちを説明して )
今の俺は、飢えた獣と何ら変わりない。そして、俺が最も美味いと思う餌は、俺が誰より愛した人――矢附、お前なんだ。……もう、一緒には、いられないな
( 矢附を傷つけ、その血を啜って生き永らえることなんて、望むはずもなく。くるりと踵を返し、矢附から離れるように数歩歩けば、翼を使って飛び去ろうと、ゆるゆると翼を動かし始めて )
>ルシアン
そうだぞ、仲良しだ。流石ルシアン、賢いなあ(こくりと頷いて貴方の言葉を肯定する。どうやら貴方の辞書に意気投合の四文字は刻まれていなかったようだが、言葉端からニュアンスを汲み取った貴方の聡明さに惜しみない称賛を贈りつつわしゃりと頭を撫でて。キラキラと輝くような貴方の瞳は、ショーケースに入れられた宝石とは別の、純粋無垢な美しさを持っていて思わず目が眩むような錯覚さえ覚える。はっきりと“怖くない”と言い切った貴方に、ふと緩めた表情はどう映るだろう。「……ルシアンは、物知りだな。怖い場所で育ったのか?」最後まで人の良い顔をして――その一節がどうにも心に突き刺さり、数秒間の沈黙が訪れる。自分こそそうだ、貴方を気遣い精一杯優しさを注いだとして、捕食者と獲物という構図は覆らない。ぐ、と何かを堪えるように息を飲んだ後、鋭く真意を突くような貴方の言葉に知性を感じつつ、その生い立ちを問うてみる。貴方の生い立ちに心の底から興味があったわけではなく、ただ心を疼かせる罪悪感を誤魔化したいだけなのかもしれない。胸を抑えたい気持ちを堪え、貴方の顔をじぃっと眺めて。「そうだな、噛まれたら痛そうだ。ただ、もし――。もし、俺がお前に悪いことをしたら、その時は力いっぱい俺を噛んで、
>ルシアン
そうだぞ、仲良しだ。流石ルシアン、賢いなあ(こくりと頷いて貴方の言葉を肯定する。どうやら貴方の辞書に意気投合の四文字は刻まれていなかったようだが、言葉端からニュアンスを汲み取った貴方の聡明さに惜しみない称賛を贈りつつわしゃりと頭を撫でて。キラキラと輝くような貴方の瞳は、ショーケースに入れられた宝石とは別の、純粋無垢な美しさを持っていて思わず目が眩むような錯覚さえ覚える。はっきりと“怖くない”と言い切った貴方に、ふと緩めた表情はどう映るだろう。「……ルシアンは、物知りだな。怖い場所で育ったのか?」最後まで人の良い顔をして――その一節がどうにも心に突き刺さり、数秒間の沈黙が訪れる。自分こそそうだ、貴方を気遣い精一杯優しさを注いだとして、捕食者と獲物という構図は覆らない。ぐ、と何かを堪えるように息を飲んだ後、鋭く真意を突くような貴方の言葉に知性を感じつつ、その生い立ちを問うてみる。貴方の生い立ちに心の底から興味があったわけではなく、ただ心を疼かせる罪悪感を誤魔化したいだけなのかもしれない。胸を抑えたい気持ちを堪え、貴方の顔をじぃっと眺めて。「そうだな、噛まれたら痛そうだ。ただ、もし――。もし、俺がお前に悪いことをしたら、その時は力いっぱい噛んで、俺を
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