わぁ 2018-03-15 23:34:03 |
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唐突に始まります…すみません
【私は今日、外で野宿をしていた人間の子供を拾ったわ】
【最近メイドを雇おうと思っていたし丁度良いから、この子供を見習いメイドとして飼う事にしたのだけれど、名前が無いようだから名前を付けてあげたの】
【夜に私が手を差し伸べて、笑った顔が綺麗な花のように咲き誇っていたから《咲夜》と名付けたわ…我ながら良い名前を付けたわね】
【とりあえず次の日からメイドの仕事をさせようと思って、私が散歩をする時に日傘持ちをやらせてみたのだけど…】
【背がまだ小さいから私の頭より上に傘を持つのが大変そうで、頼り無く震えた腕を伸ばして頑張って日を遮ってくれていたわねぇ】
【いつもいつも一緒に居て…背伸びして私の髪をといてくれたりもして…】
【『無理しなくて良いのよ?』って言ったけれど、『いえ、大丈夫です』って…この子はきっと良いメイドになるわ】
【そういえば門番の美鈴が腕を組んで居眠りしてる時に、彼女の大きい胸を見た咲夜が夜色の瞳を輝かせて…】
【『いつかは私も…』とか呟いていたわねぇ】
【咲夜の成長からして残念な運命が見えてしまったから、つい笑っちゃって】
【そしたら咲夜ちょっと不機嫌そうな顔して…】
【貴女が側に来てから私は、いっぱい笑えていたのね】
【夜寝る時は咲夜が、いつも『おやすみなさい!お嬢様!』って言って部屋に戻って行ったけれど】
【貴女ともっと喋りたくて会いたくて、朝まで待つのが大変だったわ…もっと時間が早く進めば良いのにって思ったくらい】
【それで、『おはようございます』って声がすると猫のように敏感に反応して喜んでいた気が…】
【十六夜の月…彼女はすくすく育って背も伸びた】
【散歩の時に日傘を持つ腕を目一杯上げる事もなくなったわ】
【居待の月…まだ日傘持ちは慣れないようで、腕が未だ震えていたわ】
【少し日差しも漏れて、眩しかったわね…】
【更待の月…咲夜が紅茶を出してくれたのだけど、とても苦くて飲めたもんじゃなかったわ…彼女が手を滑らして頭にお盆が当たったりして散々だったし…】
【けど私の為に紅茶を出してくれたし、涙目だったから叱るにも叱れなくて…】
【下弦の月…咲夜は立派に成長して綺麗な女性になった】
【いつの間に日傘持ちも上達していて…】
【有明の月…日傘を持つ手も震えず日差が漏れて当たる事もなくて、つい鼻歌を歌いながら散歩をしたわねぇ】
【三十日の月…咲夜が悪戯で紅茶に福寿草を入れて出してきた】
【それを飲んだ時は死ぬかと思ったわ…】
【小望の月…歳をとった咲夜は少し背が縮んだ】
【満月の夜…咲夜が出してくれた美味しい紅茶を飲んだ】
【そして、その日の夜に咲夜は『おやすみなさいませ、お嬢様』と言い終わらない内に目の前で倒れた】
【直ぐベッドに寝かして様子を見る事にしたわ】
【次の日の散歩は美鈴が代わりに日傘持ちをしてくれたのだけど…】
【彼女は背が高くて傘で覆いきれてない日差しが漏れて眩しかった】
【私は咲夜を生かす方法を探る為にパチェの大図書館で本を漁り尽くして散らかして】
【結局、何も方法は見つからなくて…】
【他にも色々と試して…】
【永琳にそれ相応の薬を作れるかと、グングニルを片手に荒々しく訊きに行ったけれど】
【彼女は首を振って、何も得られず…】
【そしてーー】
「…そろそろみたいです」
咲夜がベッドの上、そう呟くのを私は背を向けたまま聞いた
こんな私の情けない泣き顔なんて本当は見せたくなかった
ずっと拳を握って我慢していると、ふいに咲夜が言った
「幸せでした」
私は振り返った
そして咲夜の手が私の頬に添えられて、その手を両手で握り泣きじゃくった
時間なんて止まってしまえと、私はベッドに涙を零してシミをつける
最期に、その頭を咲夜は優しく撫でてくれた
【新しいメイドを雇ったわ】
【未だ幼い、その子に私は《咲夜》って名付けたの】
【夜に咲き誇る漢字2文字で《咲夜》】
【貴女が去って、おかしな紅茶は出なくなる、けれど…】
【しょっぱい紅茶はやはり美味しくないわね…咲夜】
~終わり~
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